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1089ブログ

お姫様のお嫁入り道具、貝合せをつくりました

恒例のワークショップ「貝合せに挑戦」を開催しました。

貝合せに使う蛤の貝殻は、もともとペアだった殻としか合わないようにかたちができています。
どんなに似ていても、他の貝とは合わないのだそうです。
そのため夫婦円満の象徴として、江戸時代のお姫様がお嫁に行くときの行列の先頭は貝合せをいれた貝桶だったとか。

今回は、当日本館に展示している作品のモチーフをつかって考えたオリジナルの貝合せを1組つくるというもの。
まずは本館14室の特集陳列「おひなさまと雛(ひいな)の世界」へ。
雛道具のなかに、貝合せや貝桶がありました。
雛道具は江戸時代のお姫様がお嫁に行くときにもっていった婚礼調度をもとにしているといわれています。
だから貝合せがあるんですね。

雛道具の見学
雛道具の見学

本館8室には江戸時代の貝合せが展示されています。
その大きさ、豪華さにみんなで驚きました。
江戸時代の貝合せ
源氏絵彩色貝桶  江戸時代・17世紀(本館8室にて3月23日(日)まで展示)


雛道具と江戸時代の貝合せを見た後は、本館に展示されている作品から、貝合せのデザインを考えます。
その後、ペンで絵付けをします。参考にした作品と出来上がった貝合せをご紹介します。

袱紗貝合せ
(左)袱紗 萌黄繻子地桜樹孔雀模様 江戸時代・19世紀(本館10室にて4月20日(日)まで展示)
(右)孔雀の羽に注目した個性的な貝合せ

三彩龍文鉢貝合せ
(左)三彩龍文鉢 永楽保全作 江戸時代・19世紀(展示は終了しました)
(右)宙を舞う龍をのびのび表してくれました


貝合せ完成
完成した貝合せをもって親子でパチリ!

貝合せは、貝殻の模様や大きさを見比べて、ペアを探すゲームでもあります。
二枚貝の蛤(はまぐり)の貝殻をふたつに分けます。
片方は「地貝(じがい)」として伏せて並べておきます。
もう片方は「出貝(だしがい)」といい、ひとつずつだして、貝殻の模様や大きさをヒントに、その出貝のペアである地貝を探します。
ファミリーワークショップでは、最後に家族対抗貝合せ大会をして楽しみました。

貝合せ大会
みんな真剣に地貝と出貝を見比べます

ひな祭り目前の週末に開催したワークショップでした。
トーハクで貝合せにこめられている意味や願いを知り、家庭で季節の行事を楽しむことができたでしょうか。

 

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2014年03月05日 (水)

 

お正月はトーハクうま三昧!

トーハクにはたくさんの作品があります。
いろんな時代に作られたもの、いろんな素材のもの、いろんな地域で作られたもの。
お客様からはよく、「どの順番で見たらいいですか?」と聞かれます。
2014年、午年のお正月にトーハクにいらっしゃる皆様に同じ質問をされたとしたら、私は「うま」めぐりをおすすめします!
干支にちなんだ特集陳列「博物館に初もうで-午年によせて-」はもちろん、他の展示室にもうまを表した作品が展示されています。
うまの造形を楽しんでいただくために、ワークシート「クイズラリー トーハクうま三昧」をつくりました。


ワークシート「クイズラリー トーハクうま三昧」
ワークシートをヒントに作品を鑑賞し、クイズに挑戦しながら、「うま」をテーマにトーハクをめぐってみませんか?
展示室の順番に鑑賞することが多い方は、時代、ジャンル、地域ごとに作品を鑑賞をなさってきたと思います。
モチーフをテーマにトーハクをまわれば、これまで見過ごしていた作品、意外な造形にも出会えるはず。
ワークシートではうま以外の、お正月らしいものもご紹介しています。
 

カレンダー

ワークシートの裏面は長谷川等伯筆「牧馬図屏風」をもとにデザインされたカレンダー。
牧馬図屏風は、野生の馬、調教中の馬、子馬など様ざまな馬が描かれた屏風です。
松林図屏風とはまた雰囲気のちがう等伯の屏風と一年お過ごしいただければと思います。

ワークシートは1月2日(木)、3日(金)の11時~16時、先着3000名の皆様限定でお配りします。
配布とクイズの答え合せは東洋館エントランスで行います。是非いらしてください!

さて、私のイチオシのうまがこちら!

土偶 馬
土偶 馬 朝鮮 三国時代(新羅)・5~6世紀 東京国立博物館蔵
(東洋館10室にて、2014年4月6日(日)まで展示)


決してかっこいいとは言えませんが、茶筒のようなからだに頭、尻尾、脚をつけた素朴な雰囲気と表情に癒されます。
近くには同じように作られた「牛」も。
ちょっとした違いで「馬」と「牛」を作り分けていたんですね。
東洋館10室に展示されていますので探してみてください。

博物館に初もうで
年のはじめ、たくさんのイベントとともにうまをテーマに古今東西の文化を思う存分、お楽しみください。
 

 

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年12月25日 (水)

 

実感、能面の彫刻としての魅力

日本が世界に誇る伝統芸能のひとつである能楽に欠かせない「面(おもて)」の作家を「面打(めんうち)」、木を「彫り」、表面に「彩色」をして面を作ることを「面を打つ」といいます。
木を彫り、彩色する。まさに、彫刻です。
当たり前のことなのですが、なぜか忘れがちなことでもあります。
実際能面を鑑賞するとき、どうしても能楽の道具として、どの演目のどの役がつける、ということに注目してしまいます。
しかし、彫刻としての魅力を持つ能面はたくさんあるんです。
しっかりじっくり能面と向き合える博物館での鑑賞だからこそ、彫刻として楽しんでいただきたいなぁ、と思っていました。

彫刻としてという視点を持つためには、彫刻しているところを見るのが一番!
特集陳列 日本の仮面 能面 是閑と河内」(2014年2月16日(日) まで、本館14室)にあわせ、11月24日(日)に面打新井達矢氏をお迎えし、実演とトークショーを開催しました。
ちなみに、特集陳列のタイトルにある、是閑と河内も安土桃山時代から江戸時代初期に活躍した面打です。

新井さんによれば、ひとつの面をつくるのには1~2ヶ月ほどかかるとのこと。
イベントですべての工程をご覧いただくことは叶いませんが、彫刻らしい、特集陳列の鑑賞の参考になるだろう工程を選んでご覧いただきました。
面のおおよその形をつくる粗彫りなど彫りの工程の実演では、勢いよく鑿が振るわれます。
おだやかな能面からは想像できないような大胆な作業を見ていると、「面を打つ」という言葉に妙に納得。
木を打つ音、削る音が響き、材である檜の香が漂い、私もお客様と一緒に見入ってしまいます。


実演風景
粗彫りの工程です

トークショーでは、新井さんとトーハクの浅見龍介研究員が登場。
仕事も経歴も年齢も違うおふたりの共通点は面が好きであることと、多くの人にその魅力を伝えたいと思っていることだけです。
そのおふたりが作り手と彫刻史研究者、それぞれの視点で展示作品についてお話されました。
キーワードは「彫刻としての能面の魅力」。
演目などの話はあえて省き、仏像との比較を交えながら、材、道具、彫りや彩色に焦点をあてた和やかなトークショーでした。

ご参加いただけなかった皆様のために、「特集陳列 日本の仮面 能面 是閑と河内」鑑賞のポイントをひとつご紹介します。
肌の質感です。
是閑と河内の面の肌によく見られる特徴的表現があります。
ぜひご自身の目で肌の質感の違いをご覧ください。

能面平太と天下一是閑
(左) 「能面 平太」 「天下一是閑」焼印 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
(右)
「能面 十六」 「天下一河内」焼印 江戸時代・17世紀


是閑と河内の肌 
是閑の肌(左)は彩色後に磨いてつやを出し、河内の肌(右)は彩色で凹凸をつくる梨地などと呼ばれる肌です。

新井さん、お集まりいただきました皆様、ありがとうございました。
能面は彫刻としての魅力に溢れていました。
このイベントを企画する前からもちろんそう思っていたのですが、
面を打つ工程を見てから、彫刻としての魅力という視点で改めて能面を鑑賞すると実感するものです。
能面の彫刻としての魅力を皆さんの目でみつけ、感じ、お楽しみいただければと思います。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及催し物

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年11月26日 (火)

 

4つの列品解説を楽しむ「古典の日」

11月1日は、「古典の日」です。
日本の古典文学を顕彰する記念日として、2012年9月に法律で制定されました。

なぜ、この日が古典の日なのでしょうか。

平安時代の日記文学「紫式部日記」。寛弘5年11月1日(1008年12月1日)の日記に、紫式部に対して、貴族・歌人であった藤原公任が、「源氏物語」の登場人物の若紫(幼少時の紫の上の呼び名)を話題にしたという記述があるそうです。これが「源氏物語」が歴史上初めて記録されたものであるということから、11月1日を「古典の日」と定めることになったのです。


源氏物語図屏風(初音・若菜上) (右隻) 土佐光起筆 江戸時代・17世紀
源氏物語図屏風(初音・若菜上) (右隻) 土佐光起筆 江戸時代・17世紀
2013年11月12日(火) ~ 2014年1月13日(月・祝)まで、本館7室にて展示されます。こちらもあわせてご覧ください。



この日は、各地の文化施設や学校などで、広く古典に親しめるような行事や取り組みを行うこととなっています。
ここでいう「古典」ですが、法律では、文学のみならず、「音楽、美術、演劇、伝統芸能、演芸、生活文化その他の文化芸術、学術又は思想の分野における古来の文化的所産」と定義されています。


そこで、トーハクでも「古典の日」にちなみ、日本古来からの文化に親しんでいただこうと4つの列品解説を行います。
それぞれ時間も場所も異なっていますので、1日ゆっくり滞在して4つすべて参加するもよし、気になるテーマに絞るもよし、仕事帰りに夜の回に参加するもよし。

2013年11月1日(金)「古典の日」列品解説は下記のとおりです。

「聖徳太子絵伝について」

日本仏教史上、宗派を問わず民間信仰に至るまで重視された聖徳太子。
その生涯を絵画化した聖徳太子絵伝について紹介します。
時間:11:00 ~ 11:30
会場:東洋館-TNM&TOPPAN ミュージアムシアター
講師:沖松健次郎(保存修復室主任研究員)

国宝 聖徳太子絵伝(部分) 秦致貞筆 平安時代・延久元年(1069) 東京国立博物館蔵
国宝 聖徳太子絵伝(部分) 秦致貞筆 平安時代・延久元年(1069) 東京国立博物館蔵
2013年11月12日(火)~12月8日(日)まで法隆寺宝物館第6室にて展示



「日本陶磁の展開」
平安時代から江戸時代までの日本陶磁の展開を、東アジアにおける陶磁文化の交流という視点も加えて解説します。
時間:14:00 ~ 14:30
会場:本館13室
講師:齊藤孝正(上席研究員)


「国宝 良源遺告」
平安時代の延暦寺を築いた高僧の書を読みます。
時間:16:00 ~ 16:30
会場:本館2室
講師:田良島哲(調査研究課長)


「法隆寺献納宝物と聖徳太子伝承」
法隆寺献納宝物には聖徳太子にまつわる物語が幾つも伝えられています。
今回は美術的な側面とともに、作品と伝承世界との関わりについて解説します。
時間:18:30 ~ 19:00
会場:法隆寺宝物館 第4室
講師:三田覚之(工芸室研究員)



「古典の日」を機に、日本古来の文化芸術に親しんでいただければ幸いです。
 

カテゴリ:news教育普及

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2013年10月27日 (日)

 

清時代の書に挑戦!

現在平成館企画展示室で開催されている特集陳列「清時代の書 ―碑学派―」はもうご覧になりましたか?
じつは台東区立書道博物館でも、同じ名前の展示を開催しています。
トーハクと書道博物館に展示している作品をお手本に、実際に書いてみよう!というファミリーワークショップ「清時代の書に挑戦!」を開催しました。

臨石鼓文軸
臨石鼓文軸 呉昌碩筆 中華民国・民国14年(1925) 東京国立博物館蔵(12月1日まで展示)
右は「馬」の拡大


トーハクに展示されている作品のなかの字です。
「馬」という字だとはかはわかるけれど、こんなふうに書いた事はなかなかありませんよね。
どんな書き順?
どうしたらもっと近づける?
こどもたちは戸惑いながらも考え、何度も練習し、トーハクと書道博物館の先生に相談します。
先生のアドバイスを受けながら笑顔で書いているかと思えば、書家のようなまなざしで書に向かいます。

練習

練習が順調にすすむと、段々こなれて自信がついてきたよう。試行錯誤の賜物ですね。
ついに色紙、うちわに直接清書です。
書道博物館で展示されている中村不折の作品からとった「知識」を書き続けた女の子は書道を習っているそうで、その集中力は目を見張るものがありました。
不折の雰囲気がでています。
「馬」を書いた男の子、大きく堂々とした書きっぷりです。
じつは午年なんだとか。ぜひ来年のお正月には今日書いた作品を飾ってくださいね。

清書

最後に印を押したら完成!みんなよく頑張りました!

完成

楽しかった、と口をそろえるこどもたちに、お手本にした展示作品についての感想を聞くといろんな答えが返ってきます。
「同じ字でもいろんな書き方があってかたちも違うから字を探すのが楽しそう」
「下手だけど印象に残るものがあって、その印象をあじわいといって、それもいい作品っていうことがわかった」
難しいことはともかく、純粋に作品を見て、書いて楽しんでほしい。そう思って開催したワークショップでした。
感想を聞いて、そして清書した色紙やうちわを大切そうに抱えて持ち帰る姿をみて安心しました。
目標は達成できたかな、と。

書をもっと知りたい方はもちろんですが、「わからないからいいや・・・」と食わず嫌いをしている方もぜひ、トーハクや書道博物館で開催している「清時代の書 ―碑学派―」で、まずは見て楽しんでみることから始めてみてはいかがでしょう?
書いてみたらもっと楽しめます。
書道博物館でもワークショップを企画しています(おとなも参加可)。
食わず嫌いを克服し、こどもたちにも負けないほど、清時代の書を楽しめるかもしれません。

カテゴリ:教育普及特集・特別公開

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年10月21日 (月)