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1089ブログ

考古学者に挑戦!

10月5日、雨にも負けず平成館に子どもたちが集結、これから考古学者に挑戦するというので密着です。
挑戦を受けてたつのは、トーハクの品川研究員と井出研究員のふたり。正真正銘の考古学者です。
子どもたちに考古学者体験をして楽しく学んでもらおうと意気込んでいました。

まず考古学者体験に挑んだのは小学校1~4年生のちびっこ考古学者。
毎日の生活で使っている食器やお鍋などをみて、その役割をあてるゲーム。
お鍋は煮炊きに使います。お皿には食べものをもりつけます。飲み物を飲むためにはやかんやコップが必要ですね。
役割にあわせて、いろいろな形の食器を使い分けているんです。これって当たり前だけど、とっても大切なポイント。

トーハクくんも一緒に挑戦!
トーハクくんも一緒に挑戦!

縄文時代も役割によって食器を使い分けていたのかな?
ということで、縄文時代の食器である土器のシルエットシールを使って、土器の役割をあてる2つめゲーム開始。
シルエット、大きさや色ではなく形だけで役割を予想します。
「なんだろう、これ」「わからないよ」という言葉も聞こえてきますが、みんな制限時間いっぱい一生懸命考えました。
答え合せはせっかくなので平成館考古展示室で!
まずはシルエットシールのモデルになった土器を探します。本日3つめのゲームです。
探し当てた土器をみんなで観察、2つめのゲームの答え合せをかねて、その役割を品川研究員、井出研究員が教えてくれます。

シルエット探し
ほんものは意外に大きい!思ったよりもようがいっぱい! ユリノキちゃんも応援してくれていました。

観察していてみんなが気になったのは土器のもよう。
最後はどんな道具でもようをつけたのか、粘土板を使って考えるゲーム。
自分で「これ!」と思った道具を使って、ほんものの土器のもようを粘土板で再現したら、ほんものの土器をもう一度観察。
「あれ、違うかも。貝じゃなくて竹かなぁ」
思ったようにいかなかった子どもたちは、すぐさまやり直しにいきます。すごい根気と集中力!
何度も観察して考えて、時にはみんなで相談して、正解がわかったときの表情はまるで、新知見を得た考古学者です。
学んだ成果をニコニコしながらお父さん、お母さんに教えてあげる姿は頼もしくもありました。


粘土
じっくり見て、しっかり考えてみるといろんなことに気づくはず。

続いて午後は小学校5年生から中学2年生の考古学者のタマゴたちの挑戦です。
タマゴたちは考古学者の仕事を勉強したあと、土器片の拓本に挑みます。
まずは品川研究員、井出研究員のデモンストレーションをじっくりみてコツを伝授されます。


拓本デモ
井出研究員もタマゴたちも真剣。トーハクくん、邪魔しちゃいけませんよ。

さっそくそれぞれ拓本に挑戦。
拓本という言葉すら聞いたことがない彼らにとっては緊張する体験だったでしょう。
「拓本だと、写真でみるよりももようがよく見える」という驚きもあったようです。
みんな無事に拓本が完成しました。

頑張ってつくったはじめての拓本
なれない作業に四苦八苦。土器片と考古学者のタマゴがとった、はじめての拓本です。


最後に展示室でほんものの土器を観察。
拓本体験をした直後だからでしょうか、みんなもように夢中です。
かたちや大きさ、色などの変化についての解説を聞き、もようだけでない土器の魅力を楽しみました。
ちびっこ考古学者のみなさんも、もう少し大きくなったら、今度はこちらに挑戦しましょう!




考古学者体験に挑戦し、考古学者とふれあい、土器と向き合ってたくさんのことを学んだ子どもたち。
考古学者になりたい!という夢を大きく大きく育ててください。
いつかみんなの夢が叶いますように。

集合写真
ちびっこ考古学者と考古学者のタマゴたち。ユリノキちゃんとトーハク君もちゃっかり…



カテゴリ:教育普及考古

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年10月08日 (火)

 

夏休みに発見! 料紙の魅力

当館所蔵の国宝・古今和歌集(元永本)をご存知でしょうか。

国宝 古今和歌集
国宝 古今和歌集(元永本) 藤原定実筆  平安時代・元永2年(1120) 東京国立博物館蔵(特別展「和様の書」にて展示中)

私はこの作品が展示されるたびに、その筆跡はもちろんですが、紙の美しさに驚きます。

美しく飾られた料紙、そのバリエーション、筆跡とのバランス。
この作品の前に立つと“日本人の美意識”を漠然と感じてしまう、そんな力をもった作品のひとつです。
特別展「和様の書」にも展示されている国宝 古今和歌集(元永本)の魅力をぜひとも多くの方にお伝えしたい、と思い、ファミリーワークショップ「きらきら光る唐紙を摺ろう」おとなのためのワークショップ「唐紙の魅力、料紙の魅力」を開催しました。

国宝 古今和歌集(元永本)には版を作ってもようを摺った唐紙も使われています。
雲母をいれた絵具で摺ると、キラキラと光るもようが浮かび上がり、光の加減でもようの見え方も変わります。
ついつい見入ってしまう美しい唐紙に感動していただくべく、トーハク特製「国宝 古今和歌集(元永本)から起こした版」をご用意しました!

ファミリーワークショップ「きらきら光る唐紙を摺ろう」ではまず、特別展「和様の書」担当の高橋裕次研究員と一緒に本館の展示を鑑賞。



わかりやすい解説にケースにかぶりつくように見入る子どもたち。


今日のもようは、上の写真と同じ、花襷文、獅子二重丸文の2種類です。
版に絵具をのせ、さらに紙をのせて手で押さえ、ゆっくりと紙を持ち上げたらお手製唐紙の完成!

料紙づくり

今回はこれでは終わりません。
本館で鑑賞した手鑑(書跡を貼りこんだアルバム)にならい、巻物を作ります。
和様の書や唐紙に関する解説カードと自分で摺った唐紙を、バランスを考えて貼り、三跡の作品から「月」「花」「海」をお手本に書いて貼りこんだら完成!

手鑑づくり

貼り方、書き方、飾り方にも個性が表れています。
「特別展「和様の書」でほかの唐紙のもようを探します!」「バランスよく散らして貼るのが難しい」「夏休みの自由研究で提出します!」という声のほかに、「私の手鑑を高橋先生に見てほしい!」というかわいいリクエストも。
そこで子どもたちに人気の高橋研究員と一緒にパチリ。

集合写真

おとなのためのワークショップ「唐紙の魅力、料紙の魅力」では高橋研究員から画像を用い、研究成果を交えながらの丁寧な解説、展示室での解説、唐紙をする体験を行い、こちらも大変好評でした。

日本人の美意識。それが一体何なのか、私もまだ説明できません。
でも、日本人の美意識を感じられる時間をトーハクで過ごしていただけたのではないでしょうか。

 

カテゴリ:教育普及2013年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年08月30日 (金)

 

書のデモンストレーション

書に関する特別展では最近恒例となっている席上揮毫会(書のデモンストレーション)を開催しました。
私も、書家の先生方が書に向かう姿を拝見し、その緊張感に驚いてきたひとり。
そして今回もまた、書の魅力に感動したひとりです。

350名近い多くのお客さまにお集まりいただいた今回は、書家の立場からお話くださる原奈緒美先生(読売書法会理事、書道香瓔会理事)と、書の研究者であるトーハクの島谷弘幸副館長が進行役。

司会の原奈緒美先生と島谷副館長

午前の回では、佐々木宏遠先生、山根亙清先生、田頭一舟先生、午後の回では日比野実先生、舟尾圭碩先生、岩永栖邨先生が揮毫してくださいました。

先生の手元はスクリーンに投影されます。大講堂にいたすべてのひとが、ステージ上で真剣に書に向かう先生の姿、筆が走り作品ができていく様子に見入ります。

先生の揮毫


揮毫してくださった先生と、進行役のおふたりのお話は、私のような初心者にも見どころがわかりやすく、私も舞台袖でひとりフムフムと納得したり、笑ったり。
会場には先生方とお客様の、書が大好き、という気持ちがあふれていました。
先生方の揮毫作品は、平成館ラウンジにて展示させていただきました。(当日のみ)

ラウンジに展示


席上揮毫会のあとに特別展「和様の書」の会場を歩いていると島谷副館長のお話を思い出しました。
「読めなくても楽しい。でも読めればもっと楽しい。書けなくても楽しい。でもかければもっと楽しい。」


筆の使い方、スピード、形、墨の濃淡などに注目すると、書家の姿が浮かびます。
作品のバランスや題材となる歌の内容にあった料紙の選択などの工夫に注目すると、書家のイメージに近づけたような気がしました。
特別展「和様の書」も残すところあと2週。この2週間、目いっぱい書を楽しみたいと思います。
お集まりいただきました皆様、書家の先生方、本当にありがとうございました。
 

カテゴリ:教育普及2013年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年08月27日 (火)

 

親子で三跡に挑戦!

特別展「和様の書」には三跡(さんせき)とよばれるひとたちの書いた作品が展示されています。
三跡とは、日本らしい「和様の書」をつくった平安時代の能書(のうしょ)。
小野道風(おののとうふう)・藤原佐理(ふじわらのさり)・藤原行成(ふじわらのこうぜい)の3人です。

三跡の書をお手本に、実際に書いて三跡に挑戦してみよう!
と意気込んだ皆さんが、親子書道教室「三跡に挑戦!」に参加してくれました。
その様子をお伝えします。


髙木聖雨先生、師田久子先生

講師は書家の髙木聖雨先生(写真左)、師田久子先生(写真右)のおふたり。
それぞれ漢字とかなを書くコツを教えてくださいました。


練習と本番

三跡の作品から字をあつめてつくったお手本を真剣にうつします。


親子で
小学5年生の男の子とお母さん。
道風の本阿弥切の「ゆきふる」を書いた男の子は書道教室に通っているそうです。
さすがですね。ほんものの本阿弥切を見たら、感想を是非教えてください。

 

島谷副館長と
島谷副館長と一緒に記念撮影をした女の子は3年生。
どこまでがひとつの文字かよくわからなかったけど、学校の授業で書くのと違っておもしろかった、
と話してくれました。色紙への貼り方にも個性が出ています。


こどもたちの感想をご紹介します。

「変な字だった。書いてみたら筆の動きも変でおもしろかった」
学校で「とめ・はね・はらい」の基本を学んでいるこどもたちにとって草書は、ヒミツの暗号のようにも、不思議な図形のようにも見えたかもしれません。
三跡の字をみても「きれいな字」という感想が聞かれなかったのはきっとそのためでしょう。だからこそ楽しかったのかもしれません。
変な字、普段習うきれいな字と違うすごい字。その楽しさを展示室でも感じてね。

「むかしも夏は暑いから眠れなくて月をみたのかな」
「月っていまと同じだね、むかしのひとと同じ字をつかっているんだね」
姉妹の言葉に私もはっとしました。
道風の継色紙からのお手本「なつの月」を書きながら月を見上げるひとを思い浮かべたのでしょう。
文字そのものが伝わっているのもすごいよね。
長い時間を越えて伝わる心も字も、両方大切にしていきたいね。

「きれいな紙にかけてうれしかった。いつもは白い紙だから」
きれいな紙を料紙といいます。
きっとむかしの人も、きれいな紙に書けることがうれしかったり、自慢だったりしたんじゃないかな。

そして、完成した作品を手に記念撮影。
ご覧ください、この誇らしげな姿。
自慢の「和様の書」、大切にしてくださいね。

集合写真


書は楽しい。
彼らの姿をみると、皆さんもそう思いませんか?

 

関連イベントのお知らせ
特別展「和様の書」 席上揮毫会(書のデモンストレーション)
8月25日(日) 第1回:10時30分~、第2回:15時30分~ (各回300名)
平成館大講堂にて(どなたでも自由にご覧いただけます。)

 

カテゴリ:教育普及2013年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年08月23日 (金)

 

学芸員に挑戦!

学芸員(トーハクでは研究員といいます)にはたくさんの仕事があります。
文化財の調査研究や展示は、学芸員ならではの仕事といえるでしょう。
とはいっても、いずれもお客様には見えない部分の仕事。
そこで、その「見えない部分」をすこしだけ体験していただくのはどうだろう?と思いつき、7月28日、ワークショップ「学芸員に挑戦!」を開催しました。


まずは、学芸員の仕事の真骨頂、展示を見に本館展示室へ。

展示見学
展示の工夫の話に興味津々。

ここでお話しするのは作品解説ではなく、作品の展示の工夫です。
みなさんから小さな声がもれてきます。
「えー、そんな細かいことを気にしているんですか・・・」
そうそう、展示って、いつも同じように、ただ並べるだけではないんです。
「作品を展示するための道具に注目したのははじめて!」
そうでしょう、そうでしょう!道具にも色んな工夫があるんです。
作品を安全に、見やすく展示するために専用の道具が使われることがあります。

演示具
錫杖や鏡を展示するための道具。木でできていたり、フェルトが貼ってあったり。展示室でご確認ください。

展示の構成、順序、方法には、いろんな工夫が隠れているんです。それこそまさに、学芸員の腕の見せ所。

見学のあとは作品の取扱体験です。(今回はレプリカを使用しました)
作品をきちんと扱えなければ大切な文化財を傷めてしまう、細心の注意が必要な仕事です。
取り扱う際の決まりごとを聞き、デモンストレーションを見て、実際に・・・
たとえレプリカと知っていても、緊張するものです。
特にお茶碗をいれた箱の紐の掛け方、御物袋の扱い方にみなさん四苦八苦。
大丈夫、学芸員だって緊張します。


取り扱い体験
お茶碗のほか、絵巻の取り使いも体験。鳥獣人物戯画の絵も楽しみながら扱いました。


博物館で働いている学芸員を身近に感じてもらいたい、という気持ちもありました。
取り扱い方を通じて、文化財が守り伝えられてきたことのありがたさを知ってもらいたいという気持ちもありました。
そして、この体験を通じて、「展示の楽しみ方が増えました」といっていただけたことがなによりもうれしいです。

「学芸員になりたかった夢が叶った」と笑ってくれたおとなの方、また、こんな機会を設けることができればと思っています。楽しみにしていてくださいね。
「いつか学芸員になりたい」と終了後も熱心に取り扱いの練習をしていた中学生、いつか一緒に働ける日が来るのを東博の学芸員は待っていますよ。
みなさん、暑い中、ご参加いただきありがとうございました。
 

カテゴリ:教育普及催し物

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年08月01日 (木)