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1089ブログ

悪戦苦闘! 文化財取り扱い体験

5月25日はとてもお天気のいい日曜日でした。
この日にトーハクで開催したのが「学芸員に挑戦!」という体験型ワークショップです。
抽選で選ばれた参加者が、学芸員の仕事である展示や調査に欠かせない、「文化財の取り扱い」に挑戦しました。
ところが思った以上に悪戦苦闘!
その様子をご紹介します。

今回の講師は、工芸を専門にしながら仏教絵画にも造詣が深く、アニメ、映画、音楽、お酒など、さまざまな分野に精通する伊藤信二研究員。
まずは伊藤研究員と一緒に展示室へ。
作品ひとつひとつの解説ではなく、文化財の形や展示方法についてのお話はあまり聞く機会がないためか、皆さん真剣にメモをとったり、展示ケースを覗き込んだり。
伊藤研究員の軽妙なトークが、皆さんの緊張をほぐしていきます。

展示室
掛幅がかけてあるところしか見たことがないし、収納時の形は知らない、という参加者も。

そしてついに、取り扱い体験です。
今回のテーマは4つ。掛幅(掛軸)、絵巻、茶碗、そして刀剣。
皆さんどれも初挑戦だそうですので、伊藤研究員のお手本をじっくり見ます。
 

巻物の取り扱いお手本
伊藤研究員が当たり前のように行う所作ひとつひとつが、初挑戦の皆さんにとっては目からウロコなことばかり。

お手本のあとは、順番に体験しましょう。
ここで実感するのは、「見るとやるとでは大違い!」ということ。
頭ではわかっているのにできない!
緊張しすぎて手の汗が止まらない!
できたと思うけど、何か違う!
といいながらの悪戦苦闘。私も何度も呼び止められ、質問をされました。
私たちに何度も質問しながら、参加者同士アドバイスしあいながら、やり遂げたあとの安堵の笑顔は、まるでこどものようでした。
 

掛軸取り扱い、お茶碗取り扱い
掛幅の取り扱い(左)と、お茶碗の取り扱い(右)

展示をご覧いただく機会が多くても、取り扱いの経験をする機会、学芸員とお客様がこうして話す機会も少ないはず。
そもそも、大人になってから、全く違う職業の技術に挑戦することもなかなかないのでは?
てこずりながらも童心に返ったかのように楽しく過ごしてくださった皆さんが、文化財に対する学芸員の姿勢、展示作業の裏側を垣間見ることで、これまでと違った博物館の楽しみにつながることになればうれしく思います。

 

カテゴリ:news教育普及

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2014年05月28日 (水)

 

上野の山でクマめぐり

5月11日(日)、上野動物園国立科学博物館、東京国立博物館を1つのテーマでめぐるイベントを開催しました。

クマめぐり

今年のテーマは「クマ」。
小学5年生~高校生を対象に、それぞれの専門家3人が力を合わせたツアー形式のセミナーです。

上野動物園 小泉さん
上野動物園からスタート。
動物解説委員の小泉祐里さんと一緒に「生きたクマの観察」です。



上野動物園といえば、おなじみの「パンダ」。パンダもクマの仲間、クマ科の動物なのです。
座り方や、手を上手に使って食べている姿を観察します。

パンダ

夢中で竹を食べてるパンダ、よく見ると頭がもりもり動いています。
これは頭の筋肉も使いながら食べている証拠。堅いものも食べられる強い筋肉が、パンダのかわいい丸顔を作っています。


ひとことで「クマ」といってもさまざま。それぞれにいろいろな特徴があります。

さまざまなクマ

じっくりと観察したあとは、国立科学博物館へ。
動物研究部の川田伸一郎さんに「クマの骨格」をテーマにお話を伺いました。

国立科学博物館 川田さん


動物園で見たクマの体のひみつについて、骨格を見ながら探っていきます。
もちろん実際に骨にも触ってみます。
骨格の特徴もさまざま、種類によってちがっています。

クマの骨格


お昼ごはんのあとは、最後のトーハクへ。
教育講座室の神辺知加さんが、平成館企画展示室(「熊めぐり」 ~2014年6月1日(日))で「トーハクのクマたち」についてお話しました。

トーハク 神辺さん


縄文人が土で作ったクマや牙のアクセサリー、江戸時代の浮世絵などから、クマの強さは人々にとって憧れの象徴だったことが分かります。
そして昔からとても身近な存在でした。

トーハクの熊作品
(左)重要美術品 縄文人が土で作った熊 青森県弘前市十腰内出土 縄文時代(後期)・前2000~前1000年
(右)鉞を担ぎ熊に乗る金太郎 鳥居清長筆 江戸時代・18世紀


屏風
冬眠から目覚めた熊の親子(雪中熊紅葉鹿図屏風のうち左隻) 山本桃谷(1833~90)筆 明治時代・19世紀


展示室内では、上野動物園と科学博物館からお借りしたクマの毛皮やツメ、冬眠の様子も。

冬眠の様子が見られる動画
冬眠中のクマの様子が見られます


作品の説明だけでなく小泉さんと川田さんも交えて作品の中のクマも観察し、作品の見方がまた広がりました。


来年のテーマは… どうぞ、お楽しみに。
 
 

関連展示

特集「熊めぐり」 平成館 企画展示室   2014年4月22日(火) ~ 2014年6月1日(日)

 

 

カテゴリ:news教育普及

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posted by 長谷川暢子(教育講座室) at 2014年05月14日 (水)

 

本館19室が「みどりのライオン体験コーナー」として生まれ変わりました!

本館19室「みどりのライオン体験コーナー」は、博物館をより楽しんでいただくための教育普及スペースとして生まれ変わりました。
入り口では、トーハクの教育普及活動のシンボルマークの「みどりのライオン」と、ボランティアが、皆様をお出迎えします。

本館19室

この部屋では、「トーハクをさわろう」「トーハクでデザインしよう」「トーハクをまわそう」「トーハクで国宝をさぐろう」「トーハクで○○のできるまで」の5つのコーナーをご用意しています。
そんなみどりのライオン体験コーナーの楽しみ方は、これです。

1.いろいろ体験してみる
この部屋では、さまざまな体験をすることができます。
興味をもったものをじっくり体験してもよいですし、時間があれば、全部体験してみてもよいかもしれません。どれも、お気軽にお試しいただきます。

まずは「トーハクをさわろう」。
博物館の中で、モノにさわるなんてダメでしょ?いいえ、ここでは、むしろ触れてみてください。これは、さわってわかる本館の地図なのです。
1階の地図では、仏像や刀、やきものなど、ホンモノと同じ材料や技法のピースがはめ込んであります。2階の地図は、クイズのようになっています。渦巻きで縄文時代を表したり、畳の縁でお茶室をあらわしたり。次に行く展示室や見てきた展示室は、どれかな?
トーハクをさわろう


次に「トーハクをまわそう」。ここでは、センサーの上で手をかざしたり、動かしたりすることで、スクリーンに映ったトーハクの作品をまわしたり拡大したり、白黒に色を変えたりすることができます。展示では決して見られない角度に作品をまわしたら、何か新しい発見があるかもしれません。
トーハクをまわそう


「トーハクで国宝をさぐろう」では、国立博物館4館(東京・京都・奈良・九州)の国宝と重要文化財をご覧いただけます。タッチパネルを気軽にさわってみてください。作品の細かい部分まで、拡大して見ることもできますよ。
トーハクで国宝をさぐろう


そして、「トーハクでデザインしよう」。本館の展示室でみられるような日本の伝統模様のスタンプをご用意しています。トーハクを訪れた記念に、オリジナルのポストカードを作って、お友達やご家族にに手紙を出してみてはいかがですか?
トーハクでデザインしよう


2.じっくり見て、思いをめぐらせる

「トーハクで○○のできるまで」のコーナーは、一つの作品ができあがるまでの過程をご覧いただけます。
博物館で展示している作品は、どんな技法や材料を使って作られたのか、まだはっきりわからないものもあります。今回は、「突起装飾坏」を調査し、どうやって形作り、装飾をしたかといった工程を、東京藝術大学大学院インターンシップの12人の学生が作りました。球の作り方、青い突起の付け方など、考えられるさまざまな可能性を試してみました。東洋館で展示している原品とも比べてみてください。
期間中には、ギャラリートークもあります。

トーハクで○○のできるまで
この展示は、さわることはできません。


3.また展示を見に行ってみる

みどりのライオンでリラックスし、ワクワクした後は、ぜひまた、展示室をめぐってみてください。まだ見ていない展示室も、きっと、さらに楽しくご覧いただけますよ。

明日の1089ブログでは、「トーハクをまわそう」と「トーハクで国宝をさぐろう」について、もう少し詳しくご紹介します。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及展示環境・たてもの

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posted by 鈴木みどり(ボランティア室長) at 2014年04月28日 (月)

 

桜に思いをこめて、桜ワークショップ

毎年恒例の「博物館でお花見を」が始まりました。
もう少しすれば、博物館の庭園で、ソメイヨシノだけではない、多くの種類の桜を見ることができます。
花の咲く時期はもちろん、形、色合いもことなります。
トーハクのお花見はこれだけではありません。
この時期になると、本館の展示室には桜を表した作品が多く展示され、様ざまなイベントが開催されます。
まさに日本美術の殿堂・トーハクならではの世界一贅沢なお花見です。

本館では、時代を越えて、作品のジャンルを越えて桜が表された作品が作られ伝えられてきたことに驚きます。


桜の種類も描き方も全く違う!
(左) 色絵桜樹図皿  鍋島 江戸時代・18世紀(本館13室にて5月25日(日)まで展示)
(右) 八重桜  歌川広重筆  江戸時代・19世紀(本館10室にて4月20日(日)まで展示)


それをみて思うのは、日本人は本当に桜が好きなんだなぁ、ということ。
蕾が膨らむと本格的な春の訪れに心が躍り、満開の桜の下でお花見を楽しみ、散り行く姿に儚さを覚え、地に積もる花びらに雪を思い出し、葉桜にはやってくる夏を感じる。
日本人は様ざまな桜の姿を愛でてきたのでしょう。
そしてその姿を作品に表しました。


桜にどんな思いをこめて表したのか、どんな色や描き方であらわしたのかに注目し、自分だったらどう描いたかを想像するのも作品を楽しむためのポイントでしょう。
そこで今回、「桜ワークショップ ぬり絵 日本のデザイン、色づかい」を開催します。
3月29日(土)、30日(日)、4月5日(土)、6日(日)の4日間、11時~15時限定の企画(平成館ラウンジ)です。
展示作品をもとに、オリジナルぬり絵ポストカード4種類をつくりました。


作品とぬり絵シート。同じものが描かれているのに色がないだけで印象が違う!
(左)袱紗 萌黄繻子地桜樹孔雀模様 江戸時代・19世紀(本館10室にて4月20日(日)まで展示)

皆さんだったら、展示作品をどのような色で描くでしょうか。
もちろん、本館で桜スタンプラリーを楽しみながらの作品鑑賞や庭園散策の前でも後でも結構です。
ぜひ、作者が桜にこめた思いや表現方法を考えながら、皆さんも思いをこめてぬり絵に挑戦してください。

※ワークショップ詳細はこちら。各日とも、お一人様1枚限り、ぬり絵シートがなくなり次第終了となりますのでご注意下さい。
 

カテゴリ:教育普及博物館でお花見を

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2014年03月28日 (金)

 

人気見学ツアー「保存と修理の現場へ行こう」

ただいま平成館企画展示室では、
特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」(2014年3月4日(火)~3月30日(日))を開催中です。
関連イベントである見学ツアー「保存と修理の現場へ行こう」(2014年3月13日(木)、3月14日(金))は、
毎回、応募者殺到の人気ツアー。
今年も多くの方にご応募いただき、ありがとうございました。

今回、この人気ツアーに広報室が参加! ツアーのみどころをリポートします。


参加者集合の後、まずは保存修復課長の神庭よりご挨拶。
そして、保存と修理を知る最初のステップとして、
荒木研究員から文化財の調査・診断について説明がありました。
文化財を修理する前には、どんな状態なのかを知る必要があります。
病院で治療前に診察をするのと同じですね。
4月から世界最大級のCTが導入されるなど、当館には文化財の状態を調査・診断するための機器が揃っています。
ただし、大切なのは人間の目で見ることなのだとか。
ひとつの修理作品を、複数の人の目で丹念に見て、文化財の状態を把握しているそうです。


さて、文化財の病気の診断がついたら、いよいよ治療(修理)です。
参加者は4班に分かれて、修理の現場へ出発!
今回は、酒井研究員の班に参加しました。


まずは、特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」の展示室へ。
実際に修理を経た作品を見ながら、修理の方法や修理過程で判明した情報について解説してもらいます。
時には「これはもはや発明ですね」と、参加者がどよめくような、スゴイ修理技術も!


解説は酒井研究員。みんな熱心に聴いています


紙の繊維の水溶液に、破損した資料を漬けて
破損部に繊維を付着させる「リーフキャスティング」という
修理方法には参加者から感嘆の声があがりました

 

展示室を後に平成館小講堂へ。
ここでは、書画・歴史資料の修理について、実際の修理道具を見ながら説明を受けます。
修理で使う糊は「接着力はあるけれど剥がしやすい」のがポイントです。
なぜなら、もともとの作品の状態を後世に伝える必要があるから。
文化財修理では、修理を施す前の状態に戻せる「可逆性」が重要なのだそうです。

   
2種類の糊の                 左側の糊の方が剥がしやすい
剥がしやすさを比較



そしてツアーはいよいよクライマックスへ!
まずは、今回のツアーで最大の盛り上がりをみせた刀剣修理室へ向かいます。
普段は入れない、博物館のバックヤードを見学できちゃうのもこのツアーの魅力です。

刀剣をそのままにしておくと次第に錆びてきます。
サビを取るためには、定期的に研がなくてはいけません。
ただし、研げば研ぐほど刀剣は磨り減っていく一方で、
文化財修理でポイントとなる「可逆性」が、この場合は当てはまりません。
そこで、まずは錆びないようにすること、
そしてごく初期の段階でサビを見つけることが重要なんですね。


実際に刀を持ってみました。想像以上に重い!

最後に、なんと実際に刀剣を研ぐ様子を見学しました!
酒井研究員でもめったに見ることがないそうで、貴重な体験です。
「刀剣は、静かな空間で音に耳を澄ませながら研ぐ」という言葉が印象的でした。


音で刀剣の状態を確かめながら研ぐそうです


ツアーのラストは実験室。
部屋の名前は「実験室」ですが、ここは比較的小規模な修理のための部屋です。
入り口は二重扉、壁に調湿効果のあるボードを使用するなど、
修理室ならではのつくりにも注目です。


1年間でおよそ1000件もの修理が行われています


ツアー終了後は、質疑応答タイム。
参加者からは盛んに質問が飛び出します。
普段は見られない場面、なかなか聞く機会のないエピソード満載のツアーだけあって、
興味は尽きません。

特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」は3月30日(日)までです。
表舞台に出ることのない、文化財の修理について知ることのできる貴重な機会です。
皆様のご来館をお待ちしております。

カテゴリ:教育普及保存と修理

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年03月25日 (火)