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日本国宝展の見方~国宝土偶が勢ぞろい~

日ごとに寒さが増していますが、「日本国宝展」の会場はケースの前に人垣や人溜りができ、
それを感じさせない熱気にあふれています。



今回の展覧会では考古遺物の多くが第2章「神を信じる」にて展示されています。
この第2章では仏教とともに日本の信仰の礎となっている神道、
そしてこれらに先立つ祈りやまつりに関わる作品をご紹介しています。

展示室は奥へ進むに従って時代を遡る展示順となっており、
手前から、カミから神へと信仰が体系化されていく様子をよく表す
沖ノ島祭祀遺跡出土品から始まり、藤ノ木古墳出土の金銅製鞍金具、
平原遺跡出土の内行花文鏡、加茂岩倉遺跡の絵画銅鐸へと続きます。



そして展示室の一番奥では、まさに祈りのかたちの原型である縄文時代の女神たちが
みなさんをお待ちしています。

 
「合掌土偶」(左)と「縄文のビーナス」(右)

      
国宝 土偶(合掌土偶)            国宝 土偶(縄文のビーナス)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年      縄文時代(中期)・前3000~前2000年
青森県八戸市風張1遺跡出土         長野県茅野市棚畑遺跡出土
八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館蔵     茅野市蔵 尖石縄文考古館保管


縄文時代の土偶はこれまで2万点ほど発見されていますが、国宝の土偶はたったの5点。
その国宝土偶が11月21日(金)~12月7日(日)の期間に、勢ぞろいします。
縄文時代の出土品として初めて国宝に指定された「縄文のビーナス」、
ほぼ形が残っている土偶では日本最大の「縄文の女神」、祈りの姿そのものともいえる「合掌土偶」、
北海道唯一の国宝「中空土偶」、そして今年指定されたばかりの国宝「仮面の女神」。


国宝 土偶(縄文の女神)        
縄文時代(中期)・前3000~前2000年   
山形県舟形町西ノ前遺跡出土           
山形県蔵 山形県立博物館保管     
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日) 



国宝 土偶(仮面の女神)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年
長野県茅野市中ッ原遺跡出土
茅野市蔵 尖石縄文考古館保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日) 



国宝 土偶(中空土偶)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年
北海道函館市著保内野遺跡出土
函館市蔵
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)


これら国宝土偶は個性的な姿かたちや愛らしい表情も魅力的ですが、
縄文時代の人びとが祈りのかたちをも私たちに伝えてくれるものでもあります。

考古遺物は他の分野の作品と比べて、言葉少なではにかみやです。ぜひ歩み寄ってじっくりとご覧ください。

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 品川欣也(考古室主任研究員) at 2014年11月15日 (土)

 

横河コレクション―宋・元のやきもの

明治から昭和初期にかけて活躍した建築家、横河民輔(1864~1945)生誕150年を記念して、いま東洋館5室では横河コレクションの貴重な中国陶磁を展示しております(「横河コレクション―宋・元のやきもの」)。

横河は三越本店や旧帝国劇場などの建築にたずさわった人物で、現在の横河電機、横河ブリッジホールディングスなど横河グループの創設者でもあります。
そして建築家や実業家の顔とは別に、中国陶磁の収集家としても世界的に知られています。
新石器時代から清時代(1644~1912)まで、さまざまな種類の土器・陶磁器を体系的に集め、質・量ともに世界最大規模のコレクションを築きあげました。その総数は5000点に及んだとも伝わり、厳選されたおよそ1100点が昭和のはじめに東京帝室博物館(現在の東京国立博物館)に寄贈されました。

横河民輔
横河民輔

ところで、なぜ建築家である横河が中国陶磁を集めることになったのでしょうか?
そしてなぜ、そのコレクションが博物館に寄贈されているのでしょうか?

横河自身の言葉によれば、その収集は大正3年(1914)頃にはじまったといいます。
ちょうどこの頃、日本でも東京帝国大学工学部教授であった大河内正敏(おおこうちまさとし 1878~1952)を中心として、陶磁器を科学的に研究する動きが生まれていました。帝大の建築学科で教鞭をとった横河も大河内のグループの中心メンバーの一人でした。

しかし、中国陶磁を収集する直接的なきっかけとなったのは、建築の仕事で欧米を訪れ、各地の美術館・博物館を見て歩いたことにあるようです。

大航海時代以来ヨーロッパの皇帝・貴族のあいだでは、東洋のやきもの、とくに中国・明(1368~1644)、清の青花磁器が大変好まれました。シャルロッテンブルク宮殿の「磁器の間」に知られるように、飲食の実用だけでなく、収集した陶磁器を部屋の壁面に豪華に飾り立てることが流行していました。

さらに、清朝が斜陽を迎えた19世紀後半から20世紀初頭になると、清の宮廷や高官の手元にあった美術品が海外に流出したり、鉄道敷設工事にともなって地下に眠っていた古代遺跡の出土品が知られるようになり、中国陶磁に対する関心が世界的に高まります。それまで知られていなかった明時代以前の古いやきものにも、欧米の陶磁器愛好家たちの目が向けられることになったのです。

横河が欧米を訪れたのもその頃のこと。イギリス、ドイツ、フランスの美術館・博物館で巨大な中国陶磁コレクションを目の当たりにして、日本にもそれらに負けないコレクションが必要だと決意したのです。

そうして横河は亡くなる直前まで、陶磁器の収集を続けます。賢妻として知られる下枝(しずえ)夫人からの後押しもあり、博物館への寄贈は戦前の昭和7年(1932)に行なわれました。第1回目の寄贈でおよそ600点の中国陶磁が収められ、その後足りない部分を補うようにして昭和18年まで計7回にわたって続けられたのです。空襲を受け、高輪にあった横河邸も被災したとのこと。もし博物館に寄贈されていなかったら、東京国立博物館、そして日本が誇るこの中国陶磁コレクションは成り立っていなかったかもしれません。

展示風景
題箋(だいせん:解説キャプション)
展示中の題箋には、寄贈年月が表記されています。
いつ収蔵されたのかという視点で作品を見るのも、楽しみ方の一つです。


この秋は「横河コレクション―宋・元のやきもの」として、北宋時代(960~1127)からおよそ元時代(1271~1368)の頃につくられた作品を紹介しています。白磁、青磁、白釉陶、黒釉陶などさまざまの種類のやきものが中国の南北各地において華ひらいた時代です。毛彫りや片切彫りなどの線刻文や筆による絵付けを施したり、異なる釉をもちいて表面を彩ったり、装飾も多種多様です。その多くはなにげない日用の器たちですが、古代から連綿とつづく轆轤(ろくろ)技術、焼成技術をもって生み出されたものであり、熟練した技の一つ一つに悠久の時間を思わずにはいられません。

題箋
展示風景
横河コレクションの中国陶磁のなかでも優品がそろう「宋赤絵」。
上絵付けののびやかな筆づかいに目を奪われます。墨書銘が施されたものもあって、大変貴重な作例です。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 三笠景子(保存修復室研究員) at 2014年11月14日 (金)

 

特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」 記者発表会

東京国立博物館では、2015年3月17日(火)~5月17日(日)、表慶館にて特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」を開催します。
展覧会開催に先立ち、11月7日(金)、報道発表会を行いました。

コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流
コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流

会場は、なんとインド大使館。そうそう足を踏み入れることのない場所だけに、緊張もし、また晴れやかな気持ちもいたします。インド大使館のご厚意に深く感謝申し上げます。
おかげさまで会場は、プレス関係の方々でほぼ満席の状態でした。

この展覧会は、インド政府が主体となって開催されるアジア国際巡回展で、「日本に於けるインド祭2014-15」の主要な文化交流イベントとしても位置づけられています。
発表会のはじめに、ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使よりご挨拶いただき、当館の銭谷眞美館長からは挨拶と本展の意義が語られました。

ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使 銭谷眞美東京国立博物館館長
(写真左)ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使
(写真右)銭谷眞美東京国立博物館館長



続いて、展覧会ワーキンググループのチーフである小泉惠英企画課長が、展覧会の概要を説明しました。
冒頭こそ「いささか緊張しております」でしたが、しかしインド仏教美術は小泉の専門領域であり、まさにストライクゾーン。説明もしだいに熱を帯びてきます。

小泉惠英(よしひで)企画課長
小泉惠英企画課長

本展では、アジア最古の博物館(1814年創立)であるコルカタ・インド博物館から、仏教美術作品およそ90点が来日、展示されることとなります。
インドを代表する博物館が所蔵する名品の数々によって、インド仏教美術の発生と歴史をたどります。

ここで主要な作品をご紹介します。

古代初期の仏教寺院は、ストゥーパ(仏塔)を中心に造営されました。インド中部のバールフット・ストゥーパ遺跡の品々は、コルカタ・インド博物館で最も著名なコレクション。ストゥーパの周りを囲っていた欄楯(らんじゅん)には、ブッダ(釈迦如来)の生涯や前世の行いなど、さまざまなストーリーが、石の浮き彫りで、いきいきと表されています。
この時代(紀元前2世紀ごろ)、ブッダはいまだ人形(ひとがた)に表象されることが一般ではなく、下の写真にみるような樹木や、法輪、足跡などで象徴的に表されていました。
人々が菩提樹(ぼだいじゅ)に向かって礼拝をしているのがわかります。

菩提樹(カナカムニ仏)の礼拝
菩提樹(カナカムニ仏)の礼拝 バールフット出土 ジュンガ期(紀元前2世紀) インド・コルカタ博物館所蔵

ブッダの像を人の似姿(にすがた)に造形するようになるのは1世紀ごろ。現在のパキスタンにあるガンダーラや、北インドのマトゥラーで、ほぼ同時期に作られ始めたとされます。
大乗仏教の発展にともない、釈迦をはじめとする阿弥陀や薬師などの如来、観音や弥勒(みろく)などの菩薩の像も造られていきました。
写真のような、みずみずしい肉体をもったマトゥラーの仏像、荘重で洗練された姿を見せるガンダーラの仏像です。

仏坐像 弥勒菩薩坐像
(写真左)仏坐像 アヒチャトラー出土 クシャーン朝(1世紀頃) インド・コルカタ博物館所蔵
(写真右)弥勒菩薩坐像 ロリアン・タンガイ出土 クシャーン朝(2世紀頃) インド・コルカタ博物館所蔵


5~6世紀には仏教の中に密教が萌芽し、バラモン教やヒンドゥー教の神々をも取り込んで、多様な仏たちが次々と登場していきます。8世紀、東インドに興ったパーラ朝では、仏教が手厚く保護され、密教が信仰されました。下の写真で中央に立つのは密教において多彩な変化身を展開した観音菩薩の一つ。
上部には大日・宝生(ほうしょう)・阿弥陀・阿閦(あしゅく)・不空成就(ふくうじょうじゅ)の五大如来を配しています。
この五仏にピンときた貴方、そう! 言わずと知れた(ちと言い過ぎか)「金剛界五仏」(こんごうかいごぶつ)。日本の密教でも重要視される両界曼荼羅(りょうかいまんだら)のうち、金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)に描かれています。
時空を隔てた五仏の響きあいに、大いなるロマンをかきたてられませんか?(あくまで個人の感想です)
これはなんとしても、彼我の印相(いんぞう)(仏のとる手のポーズ)を比較せねば。

カサルパナ観音立像
カサルパナ観音立像 チョウラパーラ出土 パーラ朝(11~12世紀頃) インド・コルカタ博物館所蔵

質疑応答のあと、サプライズゲストが!
芸能界きっての仏像好きで知られる、みうらじゅんさん、いとうせいこうさんの登壇です。
みうらさん、いとうさんの、インドと仏像に寄せる熱き心は、かの『見仏記』でもよく知られるところ。そしてお二人は、この日この時をもって、「インド仏像大使」に就任されることとなったのです!
オリジナルグッズのプロデュースなど、展覧会をいろんな方面から応援してくださる心強い味方です。
軽妙かつ真剣に、仏像大使就任の意気ごみを語ってくださいました。その後、ディーパ・ゴパラン・ワドワ大使からお二人に記念品が贈呈され、華やかにフォトセッションへと移ります。

みうらじゅんさん、 いとうせいこうさん
前列左から、みうらじゅんさん、 いとうせいこうさん
後列左から、佐藤雅徳日本経済新聞社副社長、ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使、銭谷眞美東京国立博物館長


かつてインドで生まれた仏教と仏像は、東へと道をたどり日本に到達しました。
仏教を信仰した、いにしへの人々は誰しも、仏教生誕の地にはるかな憧れを抱きました。
そのインドから今、初期の仏像をはじめとする、まさに珠玉の仏教美術が、海を越えてトーハクにやってきます。
ご期待ください。

カテゴリ:news2015年度の特別展

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posted by 伊藤信二(広報室長) at 2014年11月11日 (火)

 

日本国宝展の見方 ~名品を間近で~

絵画を担当している沖松と申します。
開催中の「日本国宝展」では、掛け軸装の絵画作品ほとんどを奥行き20センチの薄型ケースで展示しています。
開幕時のブログでも触れられていますが、名品にこんなに近づいてご覧いただける機会は滅多にありません。

細かい描写や繊細な表現を特徴としている作品では、細部を見る楽しみというものがあります。
特に、細かな描写や微妙で美しい色使い、金箔を細く切った截金(きりかね)や彩色による繊細精緻な文様表現が見所のひとつといえる平安仏画は、間近に寄らないとその造形的魅力はなかなか伝わらないと思います。
仏画のコーナーは、展示の高さも普段より低めになっているので、ケース前に規制用の白線が引かれているとはいえ、細かい描写や表現もいつもより、かなり見やすくなっているはずです。

仏画会場

11月11日(火)からの後期展示作品の中では、形や色彩に対する造形感覚の繊細さという点で「虚空蔵菩薩像」が一押しです。
金箔のみ、銀箔のみ、金と金の間に銀を挟み込んだもの、というように色味の違う截金を、全体の描写の中でかなり意識的に使い分けたり、組み合わせたりしているらしいことが、近年の東京文化財研究所との共同調査によりわかってきています。

虚空蔵菩薩像
国宝 虚空蔵菩薩像 平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵 2014年11月11日(火)~12月7日(日)
同 左膝部分の拡大 撮影:城野誠治(東京文化財研究所)

ほかに、第4章 多様化する信仰と美の会場でも絵画作品の多くを薄型ケースで展示しています。
北宋時代の仏画の名品である仁和寺の「孔雀明王像」(11月11日(火)~12月7日(日))、
京都国立博物館の雪舟筆「天橋立図」(11月26日(水)~12月7日(日))、
そして南宋絵画の名品である当館の「紅白芙蓉図」(11月11日(火)~12月7日(日))もすべて、
手に取るような距離で見ることができます。

紅白芙蓉図
国宝 紅白芙蓉図 李迪筆 中国・南宋時代・慶元3年(1197) 東京国立博物館蔵
2014年11月11日(火)~12月7日(日)

どうぞこの機会を逃さず、名品中の名品たちを間近でお楽しみください。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 沖松健次郎(保存修復室主任研究員) at 2014年11月10日 (月)

 

研究員のイチオシ作品! ~東アジアの華 陶磁名品展・日本編~

ほほーい! ぼくトーハクくん!
今日は、2014年日中韓国立博物館合同企画特別展「東アジアの華 陶磁名品展」の会場から、
日本の注目作品をリポートするほ。
この展覧会を担当した横山研究員に案内してもらうほ!




トーハクくん、こんにちは。展示室へようこそ!

横山さん、よろしくお願いしますほ! (でれでれ)



展覧会がはじまって1ヵ月以上経つけど、何で日本、中国、韓国が一緒に展覧会を
開催することになったんだほ?

3ヵ国の国立博物館(東京国立博物館・中国国家博物館・韓国国立中央博物館)は、
約2年に1回のペースで館長会議を開催しています。
前回の会議の折に「今度は一緒に展覧会を企画しましょう」という話が持ち上がり、
日本開催となる今年の会議にあわせて、展覧会をトーハクで開くことになりました。

なるほー! 記念すべき第1回なんだほ。

そうなんです。だからこそ、3ヵ国それぞれで長い歴史があり、古くから親しまれていて、
お互いの影響も大きい「陶磁器=やきもの」がテーマに選ばれたんです。

3ヵ国のやきものが一度に見られるなんて、すごいほ!

会場に入っていただくと、まず3館の紹介するパネルがあって、振り返ると各国の代表作が
皆さんをお迎えします。
そして、展覧会全体をどーんと見渡していただけるような展示室になっています。



おぉ! これは圧巻だほ! それに、赤い台が中国、緑が韓国、青が日本の作品と区別されていて、
わかりやすいほ。

中国韓国の作品については、三笠さんが青磁への愛情たっぷりに解説してくれたので
今日は主に日本の作品についてご案内しますね。
日本の作品は、縄文時代の土器から江戸時代の陶磁器まで、日本の陶磁史をダイジェストで紹介する
構成になっています。
それぞれが各時代を代表する名品ばかりなのですが、今日は「茶陶」に注目しましょう。



ちゃとう・・・?

茶の湯に関するやきもののことね。

たくさんある日本のやきものの中で、なんで茶陶が注目なんだほ?

それは、茶陶が日本国内でどんどん発展していった特に「日本らしさ」の強いものだからなの。

日本らしさ…?

室町時代から安土桃山時代にかけて茶の湯が盛んになったことで、
日本の陶磁器づくりにも大きな影響を及ぼしました。
日本の陶磁器は、中国や朝鮮半島からの技術や様式の移入によって発展してきた背景が大きいのだけれど、
お茶に関わっていくなかで、茶人たちは「こういうお茶碗がほしいな」とか
国内各地で独自性が強く発展したのよ。
茶陶はそうした背景をふまえつつ、豊かな想像力でバラエティに富んだ創造性を発揮していくのです。

たとえばこのお茶碗。

  
重要文化財 黒楽茶碗 銘ムキ栗   (底裏)
長次郎 安土桃山時代・16世紀
文化庁蔵


わ、四角いほ!

これは、千利休が長次郎に作らせたといわれる茶碗なの。本来であれば「丸い」お茶碗の概念を超えて、
誰もが目を引く、四角というかたちが斬新でしょう?

“あばんぎゃるど”だほ。

それでいて角ばっていなくて、てのひらに優しく収まるという作りをしています。
使う人ならではの発想なのです。

結構考えられているんだほ。

美濃や唐津では、日本で初めて下絵付けを施したやきものが作られるのですが、
その新たな技術をおしみなく発揮して、懐石のうつわがのびやかに作られています。

                
重要文化財 鼠志野草花図鉢        重要文化財 銹絵芦図大皿
美濃 安土桃山~江戸時代・16~17世紀    唐津 江戸時代・17世紀
文化庁蔵                 文化庁蔵

それから、この蓋物のような織部は、「桃山様式」と呼ばれる独創的な茶陶の代表選手といえます。


織部扇形蓋物
美濃 江戸時代・17世紀
東京国立博物館蔵


緑色の部分と茶色い模様が交互になっていて、おもしろいほ。
扇のかたちも、すごく日本らしいほ。

そう、そうなの! トーハクくん、いいところに着目しています!

そんなに褒められると照れるほ~(でれでれ)。

緑色のくすり(釉薬(ゆうやく))と茶色(鉄絵(てつえ))の技術はずっと前からあるものだけれど、
これを「片身替わり」と呼ばれる、染織や漆工で流行していたデザインにならって表しているの。
扇というかたちも、先ほどの茶碗同様、うつわの基本的な「丸」のかたちにとらわれない奇抜さで個性的でしょ。

(ほめられて良い気分~♪)なんだか、「ちゃとう」がとっても好きになってきたほー。

そう言ってもらえると、展覧会の担当者としてとってもうれしいです。ありがとう!



(笑顔が素敵すぎるほ~!)三笠さん、横山さんのお話をまとめると、
今回の展覧会はそれぞれの国らしい陶磁器が出ているってことなんだほ?

そうですね。出品作を選ぶにあたっても、そういうところを大切にしました。
各館の陶磁器コレクションの特徴を知ってもらいつつ、
技術や様式の伝わり方、影響なども感じてもらえるといいなと思います。
3ヵ国合同の企画という、意義のある展覧会としてたくさんの方に見ていただきたいです。

横山さん、ありがほーございました!

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 横山梓(特別展室研究員) at 2014年11月07日 (金)