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特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」 記者発表会

東京国立博物館では、2015年3月17日(火)~5月17日(日)、表慶館にて特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」を開催します。
展覧会開催に先立ち、11月7日(金)、報道発表会を行いました。

コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流
コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流

会場は、なんとインド大使館。そうそう足を踏み入れることのない場所だけに、緊張もし、また晴れやかな気持ちもいたします。インド大使館のご厚意に深く感謝申し上げます。
おかげさまで会場は、プレス関係の方々でほぼ満席の状態でした。

この展覧会は、インド政府が主体となって開催されるアジア国際巡回展で、「日本に於けるインド祭2014-15」の主要な文化交流イベントとしても位置づけられています。
発表会のはじめに、ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使よりご挨拶いただき、当館の銭谷眞美館長からは挨拶と本展の意義が語られました。

ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使 銭谷眞美東京国立博物館館長
(写真左)ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使
(写真右)銭谷眞美東京国立博物館館長



続いて、展覧会ワーキンググループのチーフである小泉惠英企画課長が、展覧会の概要を説明しました。
冒頭こそ「いささか緊張しております」でしたが、しかしインド仏教美術は小泉の専門領域であり、まさにストライクゾーン。説明もしだいに熱を帯びてきます。

小泉惠英(よしひで)企画課長
小泉惠英企画課長

本展では、アジア最古の博物館(1814年創立)であるコルカタ・インド博物館から、仏教美術作品およそ90点が来日、展示されることとなります。
インドを代表する博物館が所蔵する名品の数々によって、インド仏教美術の発生と歴史をたどります。

ここで主要な作品をご紹介します。

古代初期の仏教寺院は、ストゥーパ(仏塔)を中心に造営されました。インド中部のバールフット・ストゥーパ遺跡の品々は、コルカタ・インド博物館で最も著名なコレクション。ストゥーパの周りを囲っていた欄楯(らんじゅん)には、ブッダ(釈迦如来)の生涯や前世の行いなど、さまざまなストーリーが、石の浮き彫りで、いきいきと表されています。
この時代(紀元前2世紀ごろ)、ブッダはいまだ人形(ひとがた)に表象されることが一般ではなく、下の写真にみるような樹木や、法輪、足跡などで象徴的に表されていました。
人々が菩提樹(ぼだいじゅ)に向かって礼拝をしているのがわかります。

菩提樹(カナカムニ仏)の礼拝
菩提樹(カナカムニ仏)の礼拝 バールフット出土 ジュンガ期(紀元前2世紀) インド・コルカタ博物館所蔵

ブッダの像を人の似姿(にすがた)に造形するようになるのは1世紀ごろ。現在のパキスタンにあるガンダーラや、北インドのマトゥラーで、ほぼ同時期に作られ始めたとされます。
大乗仏教の発展にともない、釈迦をはじめとする阿弥陀や薬師などの如来、観音や弥勒(みろく)などの菩薩の像も造られていきました。
写真のような、みずみずしい肉体をもったマトゥラーの仏像、荘重で洗練された姿を見せるガンダーラの仏像です。

仏坐像 弥勒菩薩坐像
(写真左)仏坐像 アヒチャトラー出土 クシャーン朝(1世紀頃) インド・コルカタ博物館所蔵
(写真右)弥勒菩薩坐像 ロリアン・タンガイ出土 クシャーン朝(2世紀頃) インド・コルカタ博物館所蔵


5~6世紀には仏教の中に密教が萌芽し、バラモン教やヒンドゥー教の神々をも取り込んで、多様な仏たちが次々と登場していきます。8世紀、東インドに興ったパーラ朝では、仏教が手厚く保護され、密教が信仰されました。下の写真で中央に立つのは密教において多彩な変化身を展開した観音菩薩の一つ。
上部には大日・宝生(ほうしょう)・阿弥陀・阿閦(あしゅく)・不空成就(ふくうじょうじゅ)の五大如来を配しています。
この五仏にピンときた貴方、そう! 言わずと知れた(ちと言い過ぎか)「金剛界五仏」(こんごうかいごぶつ)。日本の密教でも重要視される両界曼荼羅(りょうかいまんだら)のうち、金剛界曼荼羅(こんごうかいまんだら)に描かれています。
時空を隔てた五仏の響きあいに、大いなるロマンをかきたてられませんか?(あくまで個人の感想です)
これはなんとしても、彼我の印相(いんぞう)(仏のとる手のポーズ)を比較せねば。

カサルパナ観音立像
カサルパナ観音立像 チョウラパーラ出土 パーラ朝(11~12世紀頃) インド・コルカタ博物館所蔵

質疑応答のあと、サプライズゲストが!
芸能界きっての仏像好きで知られる、みうらじゅんさん、いとうせいこうさんの登壇です。
みうらさん、いとうさんの、インドと仏像に寄せる熱き心は、かの『見仏記』でもよく知られるところ。そしてお二人は、この日この時をもって、「インド仏像大使」に就任されることとなったのです!
オリジナルグッズのプロデュースなど、展覧会をいろんな方面から応援してくださる心強い味方です。
軽妙かつ真剣に、仏像大使就任の意気ごみを語ってくださいました。その後、ディーパ・ゴパラン・ワドワ大使からお二人に記念品が贈呈され、華やかにフォトセッションへと移ります。

みうらじゅんさん、 いとうせいこうさん
前列左から、みうらじゅんさん、 いとうせいこうさん
後列左から、佐藤雅徳日本経済新聞社副社長、ディーパ・ゴパラン・ワドワ駐日インド大使、銭谷眞美東京国立博物館長


かつてインドで生まれた仏教と仏像は、東へと道をたどり日本に到達しました。
仏教を信仰した、いにしへの人々は誰しも、仏教生誕の地にはるかな憧れを抱きました。
そのインドから今、初期の仏像をはじめとする、まさに珠玉の仏教美術が、海を越えてトーハクにやってきます。
ご期待ください。

カテゴリ:news2015年度の特別展

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posted by 伊藤信二(広報室長) at 2014年11月11日 (火)