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1089ブログ

ユネスコ無形文化遺産 特別展「体感! 日本の伝統芸能―歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界―」が開幕したほ!



ほほーい、ぼくトーハクくん! 1月7日から表慶館で開幕したユネスコ無形文化遺産 特別展「体感! 日本の伝統芸能―歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界―」 にやってきたほ。

トーハクくん、事前予約(日時指定券)推奨だから、予約しておいたよ。

ありがとうだほ。ところでこの展覧会なんだか聞き覚えがあるほ。

それもそうよ、本来なら2020年3月10日から5月24日までの会期で開催するはずだったけど、新型コロナウィルス感染症拡大防止のために中止になったのよ。でもねその後、内容を一部リニューアルして開催することになって、1月7日から始まったんだよ。

すごいほ、復活したほ! この展覧会はタイトルの通り、日本の伝統芸能を感じることができるほ?

うん。ユネスコ無形文化遺産に登録された、歌舞伎、文楽、能楽、雅楽、組踊を集めて、芸能の美しさとそれを支える「わざ」を紹介するのよ。

実際に何かするほ?

歌舞伎とか実演するわけではないけど、再現舞台にあがれたり、各芸能の小道具もあったりして、まるごと体感できる展示空間になっているのよ。

楽しみだほ、さっそく見に行くほ。

まずは歌舞伎の部屋よ。これは『金門五山桐』「南禅寺山門の場」の再現展示ね。


大道具「金門五山桐」南禅寺山門 現代 製作:金井大道具(株)

いいかぶきぶりだほ。衣装も舞台もきらきらして、華やかだほ。

この舞台はのぼることができるのよ。


スロープからお上がりください

登ってみると、役者気分が味わえるかもだほ。

舞台の様子を間近に見ることもできるね。

ほかにも錦絵や小道具とかも展示してあるほ!


「歌舞伎」コーナー展示風景


2階に行くよ、次のコーナーは「文楽」ね!


「文楽」コーナー展示風景

からくり人形みたいなものもあるほ。内側が見れて面白いほ。

文楽は江戸時代初期に大阪で生まれた人形を使う人形劇だけど、人形の首【かしら】にもさまざまな仕掛けがあるらしいわ。隣の部屋には再現舞台があるよ。


大道具「義経千本桜」可連法眼館の段 現代 製作:関西舞台(株)

舞台の裏側も見られて、リアルさを感じられるほ!

文楽の次は「能楽」のコーナーよ。このコーナーのおすすめはこれ!


能面(般若) 現代 国立能楽堂蔵

お面が浮いているようにしか見えないほ。どこかだほ。

お面の後ろにスペースがあるのに気づかない。顔ハメパネルのように、まるでお面をはめているのかのように写真撮影できるのよ。

なるほどだほ。あれ、ユリノキちゃん、特別展だけど撮影できるほ?

写真撮影なら一部の作品を除いてできるのよ。会場の入口に注意事項があるからまた確認しようね。

次のコーナーに行くほ。がらっと雰囲気が変わったほ。


大道具 御冠船舞台 現代 製作:金井大道具(株)

琉球で生まれた「組踊」のコーナーよ。色使いが鮮やかできれいなものが多いわ。1月15日からは特別企画 沖縄県立博物館・美術館 琉球王国文化遺産集積・再興事業 巡回展 「手わざ -琉球王国の文化-」が平成館企画展示室で開幕するからあわせてみたいね。

今年の5月3日からは沖縄復帰50年記念 特別展「琉球」が平成館特別展示室ではじまるから、予習にぴったりかもだほ。

次は最後のコーナー「雅楽」よ。見て、大きな太鼓があるよ。


鼉太鼓【だだいこ】 現代 国立劇場蔵

これも何かの舞台を再現しているほ?

雅楽の曲のひとつ、「還城楽」【げんじょうらく】っていう舞台を再現しているのよ。

ほー。あっ、映像も上映されているほ。なんだかイメージがしやくなったほ。

映像は各コーナーにあるからそれを見てから、再現舞台を見るとよりイメージしやすくなるかもね。「雅楽」のコーナーで展示はおしまいよ。

再現舞台とか実際に使用されている小道具とかを間近に見ることができて、伝統芸能をまるごと体感できた気がするほ。

この展覧会は3月13日まで開催しています。展覧会公式サイトでは、伝統芸能の舞台を支える人とその技を紹介する動画も配信していますので、ご来館前の予習としてご覧いただくのもおすすめです。

ほっ!予習わすれていたほ!

※会期中一部作品の展示替えがございます

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2021年度の特別展

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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2022年01月14日 (金)

 

閉幕御礼!本展のバトンは九州へ


伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
の東京会場は、21日(日)をもちまして、無事に閉幕いたしました。
ご来場いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

ご来場かなわなかった皆さまには、
1089ブログ、天台宗による「伝教大師最澄1200年魅力交流」で活動されている学生さんの瑞々しいレポート、ご来場いただいた皆さんのSNSなどで、会場の様子をご覧いただけましたら幸いです。

今回は東博展覧会史上最多と言ってもよいほど多くのご秘仏にお出ましいただいておりました。
お寺のご本尊にお出でいただくのも実はとてもハードルが高いのですが、それが秘仏、ましてや寺外初公開ともなると、さらに難しくなるのはご想像のとおりです。

巡回展とはいえ、東京国立博物館から九州国立博物館、京都国立博物館にもお出でになる仏像は、東博出展の仏像の3割に満たないのですが、九州、京都にも魅力的な仏様やご宝物が多数出展されます。
各会場の展示作品はこちらの展覧会公式サイト内「3会場出品目録」に掲載しておりますので、ご確認ください。


重要文化財 護法童子立像
鎌倉時代・13世紀 滋賀・延暦寺蔵
来春、九州国立博物館、京都国立博物館にて展示予定


さて、秘仏。
秘仏というのは、皆さんご承知のとおり、普段、拝観することの叶わない秘された仏像や仏画などのことを指します。
長野の善光寺の御本尊や浅草寺の御本尊のような、厨子の扉が開かれることのない絶対の秘仏から、60年に一度、50年に一度、12年に一度、厨子の扉が開かれる秘仏まで、その秘されっぷりはさまざまです。

秘仏という存在がいつごろ生まれたものか、ご存知でしょうか。
ご本尊を秘する事例が出てくるのは、およそ平安時代の9世紀半ばごろのこととされています。
その理由は、密教の経典のなかには本尊は秘するべきことが説かれていたり、あるいは神仏習合が進み、直接見てはならないとする神へのタブーの観念が影響したなど、様々な理由が考えられています。
秘仏という存在も歴史的のなかで生み出されたものなのですね。

重要文化財 薬師如来立像
平安時代・11世紀 京都・法界寺蔵
本展が寺外初公開である法界寺の秘仏本尊。来春、京都国立博物館にて展示予定


この度の秘仏ご開帳も、伝教大師最澄のご遠忌という歴史的な機縁によるものでした。
このご縁のバトンを九州国立博物館へつなげたいと思います。

皆さま、ありがとうございました!

 

重要文化財 伝教大師(最澄)坐像
鎌倉時代・貞応3年(1224) 滋賀・観音寺蔵
来春、九州国立博物館にて展示予定

※本展は下記のとおり巡回します。詳細は
展覧会公式サイトをご確認ください。
九州国立博物館=2022年2月8日(火)~3月21日(月・祝)
京都国立博物館=2022年4月12日(火)~5月22日(日)


カテゴリ:仏像2021年度の特別展

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posted by 皿井舞(平常展調整室長) at 2021年11月26日 (金)

 

色鮮やかで美しい二つの近世仏画

伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」(11月21日(日)まで)の閉幕が近づいてまいりました。
特別展はあっという間です。
本展の第2会場・第6章では、「現代へのつながり―江戸時代の天台宗」というテーマで、関東地方の有力な天台宗寺院である、浅草寺・輪王寺・寛永寺に伝わった御寺宝を展示し、東京会場の特色を出しています。

今回は栃木県日光市の輪王寺に所蔵される二つの仏画をご紹介します(図1)。
仏画というと、難しいし、時代が古いものは絵の具が剥落したり退色したり、あるいは画面が汚れていたりしていてよく見えない!という感想をお持ちの方も多いと思います。
ですが、こちらの作品はいかがでしょう。目を見張る鮮やかさです!ともに江戸時代に制作されました。 


図1
第2会場 展示風景

向かって左が「法華経曼荼羅図」です(図2)。


図2
法華経曼荼羅図
木村了琢筆 江戸時代・寛永17年(1640) 栃木・輪王寺蔵
展示期間=11月2日(火)~21日(日)

『法華経』「見宝塔品」の内容を描いたもので、釈迦如来と多宝如来が宝塔に並んでお説法をしています。
周囲にはありがたいお話を聞くために、いろいろな菩薩や釈迦の弟子たちが集まっています。

一方、右側に展示しているのが「仏眼曼荼羅図」です(図3)。


図3
仏眼曼荼羅図
木村了琢筆 江戸時代・17世紀 栃木・輪王寺蔵
展示期間=11月2日(火)~21日(日)

穏やかに過ごすことや安産を願って行われた「仏眼法」という密教修法の本尊に用いられました。
仏眼仏母という仏を中心に、周囲に様々な仏が、花が咲くように広がって位置しています。

ともに良質な絵の具が用いられ、華麗で美しい作品です。
華やかさの理由の一つが、随所にみられる金色です。
金箔を細く切って模様の形に貼り付けたり、金を絵の具のように用いて文様を描いています。
今は色あせてしまった平安時代の仏画も、描かれた当時はこのような輝きを持っていました。

また、表装部分も注目です。描表装(かきびょうそう)といって、絵の周囲もすべて描いています。
表装部分は通常、裂地を用いますが、仏画の場合、この二つの作例のように、風帯と呼ばれる掛軸上端から垂れ下がる裂や、裂地の文様にあたる部分までも丁寧に描き出した例がみられます。
ただ、どうしても傷んでくるので、裂地に代わることが多いです。
古い仏画では描表装が周囲に少しだけ残っている作例が散見されます。

そして、この二つの作品、以前使われていた軸や表装裏の墨書から、「木村了琢」という絵仏師が描いたことがわかります。
この木村家、江戸時代を代表する絵仏師の家系です。
二つの作品を比べると、確かに顔立ちがよく似ている仏がいたりします(図4・5)。


図4法華経曼荼羅図(部分)
木村了琢筆 江戸時代・寛永17年(1640) 栃木・輪王寺蔵


図5
仏眼曼荼羅図(部分)
木村了琢筆 江戸時代・17世紀 栃木・輪王寺蔵
(図4・5を比較すると、目尻の上がった顔立ちは似ていますが、鼻筋を入れる、入れないの違いがみられます。この違いをどのように考えるか……今後の課題としたいと思います)



木村了琢の画風を知る手掛かりです。皆様も会場でじっくりと見比べてみてください。
近世仏画は古代・中世の仏画を考えるうえでも重要です。
ご紹介した二つの作例は、仏画が本来持つ華やかさ、美しさを今に伝えてくれています。



※会期は11月21日(日)まで。会期中、一部作品の展示替えを行います。
また、本展は事前予約制を導入しています。
展示作品やチケットの詳細については、
展覧会公式サイトをご確認ください。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ絵画2021年度の特別展

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posted by 古川攝一(平常展調整室) at 2021年11月12日 (金)

 

「聖徳太子及び天台高僧像」勢ぞろい!!

現在開催中の伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」、本展覧会の見どころの一つが、「聖徳太子及び天台高僧像」(一乗寺蔵)全10幅が勢ぞろいすることです!!
 
国宝 聖徳太子及び天台高僧像(一部複製)
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
※展示期間は各幅ごとに異なります。展示期間は作品リストでご確認ください(PDFが開きます)
 
第1会場・第1室に展示されるこの作品は、天台の教えを築き、受け継いだお坊さんたちが描かれています。
制作されたのはおよそ千年前、平安時代・11世紀です。
11世紀に制作された現存する仏画は数える程しかありません。
ですから、本作品に描かれた最澄像は、現存最古の最澄の肖像画です(図1)。


図1
国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち 最澄
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵 画像提供:東京文化財研究所
展示期間=11月7日(日)まで

本展覧会の主役である最澄は、平安時代前半に活躍したお坊さんで、比叡山に延暦寺を創建し天台宗を打ち立てました。
最澄さん、かなりのイケメンであったことが、「慈覚大師伝」(じかくだいしでん)という記録から知ることができます(図2)。

図2
重要文化財 慈覚大師伝(巻首部分)
平安時代・12世紀 京都・三千院蔵
 
「顔の色は素白にして、長け6、7尺」とあって(図2青枠箇所)、色白で背が180㎝程あったみたいです。
肖像を見ると確かにお顔は白いですね。
 
この作品、最澄のほかに9人の僧侶と聖徳太子がセットになっています。
最澄のお姿とよく似ているのが智顗(ちぎ)というお坊さんです(図3)。

図3
国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち 智顗
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵 画像提供:東京文化財研究所
展示期間=11月2日(火)~11月21日(日)

天台大師(てんだいだいし)とも呼ばれるのですが、文字通り、中国で天台の教えを築いた、まさに天台宗の生みの親です。
お顔の部分をよく見ると、描き直した痕跡のような丸い形が見られます(図4)。

図4
国宝 聖徳太子及び天台高僧像 十幅のうち 智顗(部分)
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵 画像提供:東京文化財研究所

天台の教えは智顗から最澄へと受け継がれていることを示すために、いつの時代にか、両者が兄弟のように似た姿となるよう描き直したのかもしれません。

ちなみに、天台のお坊さんではない聖徳太子が入っているのは、平安時代、太子が智顗の師匠である慧思(えし)の生まれ変わりであると信じられていたためです。
篤く仏教を信仰し、『法華経』を大切にしていたことから、最澄自身も聖徳太子を敬っていました。

この作品、描かれたお坊さんたちのファッションも注目です。
暖色系の色味を使った、様々な文様を見ることができます。
慧思の靴の模様や、智顗の靴の中敷きの模様は愛らしくおススメです。
 
作品の保存上、展示期間を限っていますが、11月2日(火)~7日(日)の6日間は全10幅が同時に公開されます。
天台の教えの壮大な連なりを感じることができます。


※会期は11月21日(日)まで。会期中、一部作品の展示替えを行います。
また、本展は事前予約制を導入しています。
展示作品やチケットの詳細については、展覧会公式サイトをご確認ください。   
 

カテゴリ:研究員のイチオシ絵画2021年度の特別展

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posted by 古川攝一(平常展調整室) at 2021年10月29日 (金)

 

早くも残りひと月!特別展「最澄と天台宗のすべて」のみどころをご案内



去る10月12日(火)、平成館の特別展示室にて、伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」(11月21日(日)まで)が幕を開けました。
それからあっという間に2週間が経ち、6週間の会期のうち、早くも三分の一が過ぎ去ったことに……。
そう、本展は当館の特別展としては開催期間が短めなのです。
「秋の日は釣瓶落とし」と申しますが、うかうかしているうちに本展の閉幕もすぐそばまで来てしまいそう。

会期が残りひと月を切ったところで、会場の様子を少しだけご覧いただきながら、改めて本展のみどころをご紹介いたします。



平安時代のはじめに日本天台宗を開いた最澄の1200年大遠忌を記念し、天台の名宝を通じて、天台宗の歴史と広がりをご紹介する本展。
当館での開催後は、九州国立博物館と京都国立博物館へ巡回しますが、各地の地域的な特色を示すべく、作品のラインナップは会場ごとに大きく異なります。
そうしたなか、東京会場のみどころのひとつが、会場入口からほど近い位置にずらりと並ぶ、こちらの平安絵画です。


国宝 聖徳太子及び天台高僧像(一部複製)
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
※原品の展示期間は各幅ごとに異なります。展示期間は作品リストでご確認ください(PDFが開きます)

インド・中国・日本の天台ゆかりの人物たちを描いた、全10幅の作品です。
11世紀の仏画はとても稀少なうえ、現存最古の最澄の肖像画(写真右から2幅目)を含むという点でも貴重とされます。
会期中に入れ替えを挟みつつではありますが、10幅すべてを展示するのは3会場のうち当館だけ。
さらに、11月2日(火)~7日(日)の6日間限定で、10幅の原品を揃ってご覧いただくことが可能です!
またその前後の期間も、写真のとおり複製を交えて展示しているため、10幅のスケールを体感していただけます。

会場の先へ歩を進めると、そこには、寺外初公開となる京都・法界寺の秘仏本尊が皆様を待ち受けています。
像内に最澄自刻の薬師像を納めていた、最澄にとてもゆかりの深い像です。


重要文化財 薬師如来立像
平安時代・11世紀 京都・法界寺蔵

厨子の奥深くで守り伝えられてきた秘仏と東京で対面し、360度からその姿を堪能できる贅沢。
ポスターやチラシにも登場する像ですが、写真で見る以上にほっそりとして優美な腕まわりや、光を受けてきらりと輝く截金(きりかね)文様は、ぐるりと回りながら拝観してこそ味わえるものです。
東京会場には、こうした秘仏が全部で9件もお出ましいただいています。
なかには京都・真正極楽寺(真如堂)の阿弥陀如来立像(11月3日(水・祝)まで)のように展示期間に限りのある秘仏も含まれるため、ご来館の際にはご注意ください。

法界寺の秘仏に別れを告げてさらに進めば、最澄の後を継ぎ、密教を取り入れながら日本天台宗の教えを発展させた弟子たちにちなむ文化財の数々が並びます。
天台宗の歴史を時系列に沿ってご紹介しているのも、本展のポイントです。


重要文化財 不動明王坐像
平安時代・10世紀 滋賀・伊崎寺蔵

こちらは滋賀・伊崎寺の秘仏本尊です。
平安時代前期に活躍し、千日回峰行を創始したと伝わる相応和尚(そうおうかしょう)にゆかりがあるとされます。
目をカッと見開き、下の歯で上唇を噛んだ、凄まじい形相が印象的。
ちなみに、荒行として名高い千日回峰行に挑む行者の壮絶な様子は、展示室内のモニターでも映像にてご覧いただけます。


重要文化財 紺紙金銀交書法華経 八巻のうち巻第七(部分)
平安時代・11世紀 滋賀・延暦寺蔵

天台宗の教えの根本を担うのが、「悟りに至る道はすべての人に開かれている」という平等思想を説いた『法華経』です。
10世紀になると、末法の世を背景に天台浄土教が大成され、多くの人々から支持を得るようになります。
極楽往生を願う平安貴族たちは、功徳を得るために『法華経』を読み、書写することに精を出したそう。
「紺紙金銀交書法華経」のように装飾性の高い写経は、救いを求める平安貴族の想いを体現したものです。
本作品では、金泥と銀泥を1行ごとに使い分けながら、紺紙に『法華経』が書き写されています。

そして中世の天台宗は、『法華経』の思想から多様な展開を遂げることになります。
日本の神々の元の姿は仏であったとする「本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)」のもと、比叡山の鎮守である日吉山王社への信仰が盛んになり、「山王神道」と呼ばれる天台宗特有の神仏習合思想が生まれました。
本展ではこうした中世における天台宗の様相もご紹介します。



さらに時代が下り江戸時代になると、東叡山寛永寺が創建され、関東での天台宗発展の基礎が築かれました。
なんといっても当館は寛永寺のお膝元!
そうした立地を活かし、華麗な江戸天台の美術をまとめてご覧いただける点も、東京会場の特長です。
特に絵画は色彩が鮮やかに残っている作品も多く、ひときわ目を楽しませてくれます。


左 熾盛光曼荼羅図
江戸時代・寛永9年(1632) 栃木・輪王寺蔵
展示期間=10月12日(火)~31日(日)
右 摩多羅神二童子像
江戸時代・元和3年(1617) 栃木・輪王寺蔵
展示期間=10月12日(火)~31日(日)

そうそう、本展には撮影可能なエリアもあります!
それがこちらの、延暦寺根本中堂の再現展示です。


延暦寺 国宝 根本中堂(内陣中央の厨子)の再現

「根本中堂」とは、最澄が建てた草庵に由来する比叡山延暦寺の総本堂です。
堂内には、最澄自刻と伝わる薬師如来像と、最澄が灯して以来消えたことのない「不滅の法灯」が安置されています。
今回は堂内の様子を、部分的にではありますが、原寸大で展示室に再現しました。
写真手前に3基並んでいるのは、かつて根本中堂内で「不滅の法灯」を納めており、今は現役を退いた先代の燈籠です。
堂内の厳かな空気が伝わってきます。



再現展示エリアを抜ければ、全国各地で大切に守り伝えられてきた尊像の数々が皆様をお迎えします。
天台宗が比叡山延暦寺から東国へと広まっていった、その足跡を窺わせるラインナップです。
なかには、最澄が延暦寺根本中堂の薬師如来像と同じ木から掘り出したと伝えられる秘仏や、驚きの大きさを誇る秘仏も!
その姿は、会場にてご自身の目でお確かめください。

はるかな時を超え、たくさんの人々を介して伝えられてきた天台の教え、そしてその精神を表す宝物は、今を生きる皆様にはどのように見えるでしょう。
ぜひ、1200年の厚みと凄みを本展で体感していただければと思います。


※会期は11月21日(日)まで。会期中、一部作品の展示替えを行います。
また、本展は事前予約制を導入しています。
展示作品やチケットの詳細については、展覧会公式サイトをご確認ください。

カテゴリ:仏像絵画2021年度の特別展

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posted by 新井千尋(広報室) at 2021年10月26日 (火)

 

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