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キリン好き集まれ!「上野の山でキリンめぐり」(開催報告)

「キリン」をテーマに恩賜上野動物公園と国立科学博物館、そして東京国立博物館をめぐるイベント「上野の山でキリンめぐり」が5月13日に行われました。

例年、大人の方の参加が多いのですが、今年参加してくれたのは小学校5年生から高校生まで。いつもと雰囲気が違います。
中には珍しいキリン柄のショートパンツをはいている女の子もいて、キリンめぐりに対する気合いが伝わってきます。

まずは動物園にて解説員の小泉祐里さんと一緒に「生きたキリンの観察」から。
本物のキリンを見る前に参加者のみなさんに向けて小泉さんから問いかけがありました。「キリンは何色かな?」
思わず黄色、と答えたくなってしまったのですが、実際に見てみると・・・思っていた以上にキリンは「茶色」でした。

小泉さんはカバンからいろいろなものを出しながら説明してくださいました。
これは何だと思いますか?

正解はキリンのしっぽ、本物です。虫を払うために使うそうで、かなり堅い毛です。

小泉さんが葉のついた枝を持って誘うとキリンが近寄ってきました。すりつぶすように顎を動かして葉を食べています。あまりのかわいさに思わずみとれます。

次は、国立科学博物館に移動して、モグラ博士として知られる動物研究部 川田伸一郎さんにお話しを伺いました。
初めにキリンの骨格標本を見学しました。動物園で見たときよりも大きく感じます。

川田さんは「キリンの首はなぜ長い?」「キリンはどうして網目模様なの?」など、ずっと気になっていたことについて最近の研究結果も交えながらお話してくださいました。

実際に骨格標本をみんなで触ってみました。さっき動物園でみたキリンを構成していたのは、このような骨だったのか・・・と思うと不思議です。

骨だけでなく、こんなものまで。めったに間近では見ることのできないキリンの体毛とまつ毛です。

昼食をはさんで、午後からはトーハクに向かいました。トーハクでは、本物のキリンだけではなく、伝説の動物「麒麟」についても触れます。教育講座室 丸山室長が、日本に初めてキリンがやってきた時のことや麒麟にまつわる作品についてお話しました。
 

平成館企画展示室では、「キリンめぐり」のイベントと関連させて特集陳列「幻の動物 麒麟」(~2012年5月27日(日))を行っています。参加者のみなさんと、本物の作品を鑑賞しに展示室に向かいました。

麒麟は決まった形はないものの「体は鹿 尾は牛」「蹄は馬」「毛は5色であるが腹は黄色」「高さは2丈(6m)」という不思議な姿をしているといわれています。まさにこの作品もその一例といえるのではないでしょうか。

博物館写生図 関根雲停・中島仰山他筆 江戸~明治時代・19世紀 (~2012年5月27日(日)展示)

こちらは本物のキリンを描いた作品ですが、動物園やかはくで見てきたキリンと比べると何か変ですね。足が短かすぎます!
小泉さんや川田さんに伺ってみると「これは頸の長さが5mと書いてありますが、背の高さの間違いのようですね」とのことでした。

博物館図譜 百鳥図・異獣類 博物局編 江戸~明治時代・19世紀(~2012年5月27日(日)展示)

一つのテーマで、こんなにもいろいろな切り口での体験ができるのは上野の山ならでは。
次はどの動物をテーマにめぐることになるでしょうか。早くも来年が楽しみです。

カテゴリ:教育普及

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posted by 小西早苗(教育講座室) at 2012年05月24日 (木)

 

人と文化財について改めて考えてみる「保存と修理見学ツアー」

3月1日(木)、2日(金)に建学ツアー「保存と修理の現場へ行こう」が行われました。その様子を教育講座室、神辺がレポートいたします。

このツアーは、平成館企画展示室にて、現在行われている特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」(~2012年4月1日(日))の共催企画で、一般の方に、当館で行っている修理の現場を保存修復課研究員の解説付きで見学していただき、文化財の保存について知ってもらうことがねらいです。

今年で12回目となるこのツアーは事前申し込み制ですが、大人気の企画で毎年多くの応募があります。今年も約2倍の倍率を潜り抜け、各日40名が当選されました。

4班に分かれて、いよいよツアーに出発です。


まず、特集陳列「東京国立博物館コレクションの保存と修理」で今年度の修理を終えた作品を見学します。当館の修理は、文化財本来の姿を損なわないミニマムトリートメントが基本。修理材料は文化財を傷めないよう安全第一で、後世文化財のオリジナル部分から修理材料を文化財に負担を与えることなく除去できるようなやり方で行います。

次は本館17室「文化財を守る‐保存と修理‐」でレクチャー。文化財を長く後世に伝えるためには、文化財を修理しなくても良い状態に保つことが理想です。そのため当館では修理技術の向上ばかり目指すのではなく、文化財を取り巻く環境を整えること、いわゆる「予防保存」に重点を置いています。

そして地下の長い長い廊下を歩き、次はX線写場。文化財の破損を未然に防ぐため、見た目では分からないところをX線で撮影し、文化財の診断、調査を行います。現在撮影画像がフィルムからデジタルデータとなり、より正確な分割撮影や分析が可能となりました。仏像の内部、ミイラの骨格、屏風の下絵などを詳細に知ることができ学術研究の幅も広がります。

余談ですが、昨年の見学ツアーは3月11日に行われ、ツアーの最中にあの大地震が起こりました。揺れ続ける真っ暗な廊下を走りぬけゴーという地響きの中、このX線写場から建物の外へツアー参加者を必死に誘導しました。その時の情景が思い出されます。

さて、次は本館の地下廊下のつきあたりにある実験室へ向かいます。室内の温度を一定に保つための二重扉の向こうに、静かで清潔な部屋があります。文化財の救急医療室である実験室では、処置に使用する接着剤の成分にも心を砕き、文化財に与える負担を最小限に抑えようと研究を重ねています。文化財の保存環境を整えるための保存箱製作も重要な仕事です。

最後は刀剣修理室です。刀剣は研ぐと確実に減ります。そのため、当館では研がなくても良い状態に保つ環境づくりに心血を注いでいます。それでもどうしても刀剣にさびができやすい状態になってしまう場合があります。そのような状態を素早く見つけ、さびが進行するのを未然に防ぐため最低限の研ぎをします。

約1時間半のツアー終了後には、参加者からの質問コーナーがありました。当館の修理理念から具体的な修理方法まで様々な質問が出ました。

印象的だったのは、放射能が文化財に及ぼす危険について質問が出た際の神庭保存修復課長の言葉。「文化財にとって放射能は確かに危険だが、放射能のせいで人が文化財に近づけず、文化財の状態を判断できる人が文化財のそばにいないことの方が危険なこと。」さらに「博物館での文化財保存は、保存と公開は両輪であり、どちらが欠けても次世代に文化財は伝えられない。」とも。

人が生み出した文化財を守るのも人で、人に伝えるのも人。この当たり前の流れについて再認識できるツアー。

あなたも来年参加してみてはいかがでしょう。

カテゴリ:教育普及

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posted by 神辺知加 at 2012年03月08日 (木)

 

ワークショップ「考古学者に挑戦!」が開催されました

2011年10月15日(土)と16日(日)、トーハクでは
考古学者に挑戦!」というファミリーワークショップが行われました。
「考古学っていったい何?考古学者って、何をする人?」
というのがそのテーマ。
参加者は、各日10組、小学1年生から5年生までの子どもたちとそのご家族でした。

はじめに、考古学を専門としている当館の研究員、
品川さんからお話をうかがいます。


考古学者の使う道具に、興味しんしん


「考古学とは、『古』い時代の人びとがくらしたあとや
出土(しゅつど:土の中から出てくること)したモノから
そのころの生活や社会・文化について『考』え、
今の社会に生かすことを『学』ぶこと」

そんなお話を聞いたあと、展示室に行って
「考古学者が発掘されたモノを見る時のポイント」を品川さんに教えてもらいました。
モノの形、色、材質、どんな状態か、もようはついているか、
そこから何が分かるか…など、ワークシートを使って、
自分の選んだ縄文土器をじっくりと観察。

次は粘土板の上にいろいろな材料でもようをつけてみます。
貝がら、竹、木、縄など、縄文時代の人たちも
粘土で土器をつくるときに、
実際に使ったのではないかと思われる道具を使いました。

ひっかいたり、押し付けたり、転がしたり。
ひとつの道具でも、使い方は何通りも考えられます。
さきほど展示室で観察した土器のもようは
どんなふうにつけられたのかを考えて、粘土板の上で再現してみました。


土器とそっくりのもようができました


さて、ここでもう一度展示室に戻ります。
ふたたび同じ縄文土器をじっくり観察し、スケッチしてみます。
新しい発見は、あったかな?


真剣なまなざしで、土器を観察中


最後に、各家族の発表の時間です。
ワークシートにしたスケッチを皆に見せながら、
「どうしてこの土器を選んだの?」
「もようのつけ方について、新しい発見はあった?」など、
私からのインタビュー形式で発表をしてもらいました。


マイクを向けられて緊張しながら、がんばって発表してくれました


粘土板のもようつけ作業をやったからこそ、
2回目のスケッチでわかったことがたくさんありました。
縄を転がしてつけるもようが
全部同じ向きではなく、いくつかの方向に転がされていること。
細くひかれた線を観察してみたら、
ただの棒でなく、半分に割った竹で描かれていると気がついたこと。
スケッチからも、発見したことが、きちんと伝わってきました。

3時間のワークショップを終えて、
参加した小学生の皆さんは、すっかり考古学者らしいモノの見方が身についたようです。

さて、この中から将来の考古学者が何人誕生するでしょうか?

カテゴリ:教育普及催し物考古

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posted by 藤田千織(教育普及室) at 2011年10月21日 (金)

 

博物館に棲む妖怪─妖怪図鑑を作りました!

皆さん、妖怪はいると思いますか?

博物館には、いるんです。しかもたくさん!

2011年8月20日(土)、小学生のいるご家族10組を対象に、
ファミリーワークショップ「博物館できもだめし」が行われました。

まず、本館特別2室で行われている親と子のギャラリー
博物館できもだめし-妖怪、化け物 大集合-」(~2011年8月28日(日))の展示を見に行きます。

企画を担当した研究員の神辺さんが開口一番、
「皆さんの中で、妖怪はいると思う人、どのくらいいますか?」と質問。
なんとここで神辺さんは、自分の知り合いが見たことのある妖怪のエピソードを披露。
会場の雰囲気がぞ~っと冷えてきたところで、いよいよ作品鑑賞に入ります。

展示トーク

人間が使う道具が100年以上経って「付喪神(つくもがみ)」という妖怪に
変化してしまった姿を描く「百鬼夜行図」の模本を紹介。
灯台や高杯といった道具が妖怪になった様子がユーモラスに描かれています。

百鬼夜行図(模本)(部分) 狩野晴川院養信模 江戸時代・19世紀
百鬼夜行図(模本)(部分) 狩野晴川院養信模 江戸時代・19世紀

そして参加者の皆さんは、展示室で見た妖怪を参考に、
東博の展示室内にある作品が妖怪になったらどんなふうかを想像します。
自分で新しく考え出した妖怪を描き、皆が描いたページを集めて妖怪図鑑を作るのです。

熱心にスケッチ
熱心にスケッチ

東博の展示室には、作られてから100年以上が経ち、
「つくも神」になる資格がじゅうぶんにある作品ばかり。
あの作品が、この作品が、夜な夜な妖怪として博物館をさまよっていたら…
想像力が刺激されます!

展示室でスケッチした後は、筆ペンを使い、こわそうな妖怪を描きます。
妖怪の姿の横には、キャラクター設定やスペックなど、
その妖怪の情報も書き込みます(図鑑ですからね)。
「としは800さい」「おおきさ20めいとる」
「自分にふれた人の命をすいとってしまう妖怪」などなど…。

お父さん、お母さん、きょうだいと役割分担し、
絵を描く人、色を塗る人、説明の文章を書く人など、
協力して力作ができあがりました。

家族で共同作業

最後に、全員の前で、各ファミリーが考えた博物館の妖怪を発表しました。

発表

どれもユニークで、思いがけない発想に満ちた、こわくて楽しい妖怪ばかり。

ひとつご紹介します。

かまおおおばけ

こちらは巨大な茶釜の妖怪「かまおおおばけ」。
おなかの数字ボタンで電話をかけて人間をおびき寄せ、
足で人間をつかんで釜の中に引きずり込むんだそうです。
おなかの中には何人もの人がまだ入っているのが見えます。
事前に電話でアポをとるあたりが現代っ子らしい発想です。

夜の博物館にこんな妖怪たちがいたら、ぜひ物陰からこっそりのぞいてみたい…。
そんな気がする妖怪がたくさんつまった妖怪図鑑が出来上がりました。

最後に全ファミリーが書いたページを綴じ合わせ、
博物館の妖怪図鑑、出来上がり。
ファミリーに1冊ずつ、図鑑をプレゼントして解散となりました。

できあがった妖怪図鑑

皆さんも、博物館の展示室で目を凝らしてみたら、
つくも神となった妖怪が見えるかもしれませんよ。
ぜひ……

 

博物館できもだめし-妖怪、化け物 大集合-」(本館特別2室 2011年8月28日(日)まで)

列品解説「博物館の妖(あやかし)」 本館特別2室 2011年8月26日(金) 18:30 ~ 19:00

カテゴリ:教育普及

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posted by 藤田千織(教育普及室) at 2011年08月25日 (木)

 

スクールプログラム教員特別研修会

東博で、こんな風景を見たことはありませんか?

20室ガイダンス風景
これは、学校団体(小・中・高校)を対象に行っているスクールプログラムの一場面。
年間150校ほどが参加する、人気プログラムなんです。
(でも学校限定。おとなの皆様、ごめんなさい!)


8月10日(水)、このスクールプログラムに関する教員研修会を実施しました。
どんなプログラムがあるのか、どんな活用方法・実績があるのかを映像やデモンストレーションを通じて
先生方に体験してもらいます。

じっくり見る東博」というコースでは、対話をしながら、ひとつの作品をじっくりじっくり見ます。
焔、インタビュー
焔 上村松園筆
大正7年(1918)
東京国立博物館蔵
※現在展示していません


先生、この女性の表情をみてどう思います?
――うーん、なにか恋わずらいでもしているような・・・
なるほど、なんでそう思ったんですか?
――表情というか、髪をかんでいて・・・ 恨めしそうな感じもしますね
こうやって作品の世界に入ってみるんです。


一番人気のコース「はじめての東博」のデモンストレーション。
こどもたちに話すときと同じように、クイズを出したり、絵を描いてもらったり・・・
レクチャーだけど参加してもらいます!
居眠りなんてさせません!
 大講堂


最近はキャリア学習の一環での利用も増えています。
私が中学生の頃にはキャリア学習なんてなかったな・・・
博物館のお仕事や展示の裏側に先生方も興味津々。
質問もたくさんいただきました。
キャリア学習プログラム


つくる体験が見る体験に活きるように、というワークショップは美術部に大人気。
この夏休みも予約でいっぱいです。
先生方も生徒の気分で楽しんでくれました。



今回の研修では熱心に、そして率直にご意見をお寄せいただきました。
東博だからできること、東博でこそできる学び。
先生方からのご意見をもとに、探していきたいと思っています。
暑い中、ご参加いただきました全国の先生方、本当にありがとうございました。
そして、これからのスクールプログラムにどうかご期待下さい!

学校団体や、先生方へのお知らせは TOP教育学校の先生方へ にアップしていきます。
こちらもぜひ、チェックして下さい!
 

カテゴリ:教育普及

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2011年08月13日 (土)