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ようこそ、美しき混沌へ─本館18室「近代の美術」工芸の見どころ─

4月15日、本館18室が「近代の美術」の展示室として新装開展し、二週間になろうとしています。もうご覧いただけたでしょうか。
近代の絵画、彫刻と、工芸とが18室、19室という二つの展示室に展示されていたものが、今回のリニューアルで久々に絵画、彫刻、工芸すべての分野が18室というひとつの部屋に集まり、日本の近代美術の全貌を見ることができる部屋となりました。

18室全景
18室全景

全部一緒ということは
絵画に日本画と洋画があり、彫刻にも伝統の木彫や新しいブロンズがある。そして工芸では江戸時代以来の技と、西洋からの影響を受けた新たな動きが混在する。工芸の中には絵画となろうとするものまで現れる。これこそまさに日本の近代美術が体験した混沌なのであります。

会場で
入ってすぐにあるのが仏師の流れをひく木彫の大家高村光雲の「老猿」。鷲が飛び去った先を睨む姿がそこに。右手の長い壁付きケースには、軸装や屏風の日本画とともに額装された洋画が展示されています。「老猿」の先、左の壁沿いには平櫛田中の木彫「木によりて」。そして展示室中央には熊、鷲、兎、鳳凰、鯉が。彫刻家、工芸家による金工、陶磁作品の競演。



その先にすくっと立つのが、口縁に向かって大きく広がる大瓶。その伸びやかな姿全体を使って菖蒲が描かれる。これがあの蟹を張り付けた脚付鉢を作った帝室技芸員宮川香山の作品であることの驚き。

左手壁沿いのケースには、額装の作品が並ぶのですが、西村荘一郎の作品は「萩蝶木画額」。色彩の異なる木を組み合わせて萩と蝶を描くもの。加納夏雄の「月に雁図額」、三浦乾也の「鵞鳥図嵌入額」とまさに絵画であるかのような工芸の数々。



そして立体造形として力感溢れる関沢卯一の「宝相華唐草文花瓶」があり、その先の大きなケースには、巨大な工芸が。



横山孝茂・横山弥左衛門の合作による「頼光大江山入図大花瓶」の一対はウィーン博覧会事務局から引き継いだ作品。1873年のウィーン万国博覧会出品にあたり、シーボルトから「大きなものを。一対で」というアドバイスを体現した作品は、大きさに感動したらば、すぐさま近くによって、その細密なる装飾をご覧下さい。「よくぞ、ここまで。どうして…」

 
頼光大江山入図大花瓶 横山孝茂・横山弥左衛門作 明治5年(1872) ウィーン万国博覧会事務局(2014年8月17日(日)まで展示予定)

竹内忠兵衛・初代川本桝吉の合作による「七宝花鳥文大壺」もまた一対の大作でありますが、今回はその大きさにより一点のみの展示です。そして七代錦光山宗兵衛の「色絵金襴手双鳳文飾壺」は京薩摩の到達点というべき技巧の粋を尽くしたもの。

明治初期から大正、昭和にかけての工芸が、その近代の混沌の世界の中で輝きを放っています。同僚が「凄いですね、近代工芸は。初めて見ました。」と言ってくれました。本当はすべて今までも展示していた作品なのですが…。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ展示環境・たてもの

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posted by 伊藤嘉章(学芸企画部長) at 2014年04月26日 (土)

 

本館リニューアル─本館18室「近代の美術」 絵画・彫刻の見どころ─

新しい「近代の美術」の展示室はたいへん明るくなりました。以前は少し陰鬱な展示室でしたが、展示室の壁面をぬり直し、ケース内の経師(壁紙)を白くして、天井光を増やし、透明度の高い展示ケースを導入した結果、作品がたいへん見やすくなっています。
 

展示室風景
展示室風景

今回はリニューアル・オープンを記念して、当館を代表する近代美術のスターたちの作品をご覧いただこうと思います。

高村光雲は仏像を彫る技術を活かして迫力ある写実表現で「老猿」を制作しました。アメリカで開催されたシカゴ・コロンブス世界万国博覧会(1893年)に出品されて、その迫真の表現で人々を驚かせました。光雲の子であり、『智恵子抄』で有名な詩人でもある高村光太郎の「老人の首」は、人物の内面まであらわされたようなブロンズ像です。

 
重要文化財 老猿 高村光雲作 明治26年(1893) シカゴ・コロンブス世界博覧会事務局
重要文化財 老猿 高村光雲作 明治26年(1893) シカゴ・コロンブス世界博覧会事務局(2014年7月13日(日)まで展示)




明治時代、絵画の世界では油彩画が日本に導入されました。日本で描かれた油彩画を「洋画」といいます。今回は明暗法や遠近法などの西洋画法を学んだ高橋由一や浅井忠の写実的な風景画をご覧いただきます。そして近代洋画の父といわれる黒田清輝は、フランスで学んで明るい画面の洋画を描きました。その成果が「読書」です。そして次第に西洋近代の価値観や思想が日本に紹介されたことで、黒田清輝に指導を受けた青木繁の「日本武尊」のように作家自身の思想や自我などが絵にあらわされるようになります。

読書 黒田清輝筆 明治24年(1891)
読書 黒田清輝筆 明治24年(1891)(2014年5月25日(日)まで展示)
 
日本武尊 青木繁筆 明治39年(1906)
日本武尊 青木繁筆  明治39年(1906) (2014年7月13日(日)まで展示)

そして「洋画」に対して、日本の伝統的な絵画は「日本画」とよばれることになりました。水墨画など中国に由来した絵画や、平安時代に発達して連綿と受け継がれた大和絵や、浮世絵などが、次第に融合して一つの流れとなりました。そこでは西洋美術の手法を吸収して、日本画に活かそうとする作品も描かれました。また、伝統的な表現を研究することで、新たな日本画のなかに再生しようとする絵画も生まれました。今回は日本の近代日本画を代表する画家の横山大観や、彼に学んだ前田青邨、小林古径といった画家の作品とともに、京都画壇で活躍した上村松園や土田麦僊の個性が際立つ作品をご覧いただきます。とりわけて上村松園の「焔」は画面からあふれでてくる凄まじさは一度実感していただければ、忘れられない体験となると思います。

 焔 上村松園筆    大正7年(1918)
焔  上村松園筆  大正7年(1918) (2014年5月25日(日)まで展示)

今回のように綺羅星の如く近代美術の代表的な作品が一堂に展示される機会はそうそうありません。ぜひこれら名品の数々にふれていただき、明治時代以来の日本の近代美術の流れを体感してみてください。

カテゴリ:研究員のイチオシ展示環境・たてもの

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posted by 松嶋雅人(特別展室長) at 2014年04月25日 (金)

 

特別展「栄西と建仁寺」10万人達成!!

特別展「栄西と建仁寺」(3月25日(火)~5月18日(日) 平成館特別展示室)は、4月24日(木)午前に10万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、練馬区よりお越しの船橋知子さんと船橋純一郎さんのご夫婦です。
船橋さんご夫妻には、東京国立博物館長 銭谷眞美より、記念品として本展の図録と、展覧会グッズ等を贈呈いたしました。

特別展「栄西と建仁寺」10万人セレモニー
特別展「栄西と建仁寺」10万人セレモニー
船橋知子さん(中央)・船橋純一郎さん(左)と館長の銭谷眞美(右)
4月24日(木)東京国立博物館 平成館エントランスにて


ご自身も日本画を学んでいらっしゃるという船橋さん。
「すこし前に、京都の建仁寺にお伺いした際、風神雷神図や障壁画のレプリカを拝見しているので、本物を見るのが楽しみです。」とお話いただきました。

特別展「栄西と建仁寺」も、会期後半に突入!
4月22日(火)~5月6日(火・休)は本展における目玉のひとつ、海北友松筆「雲龍図」の全8幅が揃い踏みします。
阿吽の二龍が対峙する迫力の展示をどうぞお見逃しなく!

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 田村淳朗(広報室) at 2014年04月24日 (木)

 

リニューアルした本館15室「歴史の記録」

これまで「歴史資料」と題して、本館16室で開催していた展示は、今回のリニューアルで15室に移り、タイトルも「歴史の記録」と改まりました。

トーハクには、いわゆる美術品・工芸品だけでなく、日本や東洋の歴史のありさまを物語る資料が多数伝えられてきました。原本を正確・緻密に再現した「模写・模本」、石造物や金工品の表面に刻まれた銘文などを写し取った「拓本」、日本国内をはじめ世界にも及ぶ「地図」、動物・虫・魚・植物などを科学的な視角で描いた「図譜」、文化財や国内外の諸地域を写した「写真」などです。これらの資料はかつては、博物館の仕事を支える裏方でしたが、長い歴史を経てそれ自体貴重な文化財と評価されるようになってきました。

リニューアルした15室
リニューアルした15室。壁面には古写真専用の展示ケースを設置。

新15室は小さな部屋ですが、このように多彩な各分野の歴史資料を継続して展示します。
地図や拓本は大型のものが多く、これまでの部屋ではその魅力を十分に示すことができませんでしたが、今回高さ270cmの壁付ケースを設け、大きな資料も間近に見ることができるようになりました。また、写真はできるだけ細かい部分まで見たくなるものです。その要望に応えて特別に極薄の展示ケースを制作し、目の前数センチで古写真を楽しめるようになりました。

甲州街道中分間延絵図 内藤新宿・千駄ヶ谷
重要文化財 甲州道中分間延絵図 内藤新宿・千駄ヶ谷 江戸時代・文化3年(1806) 2014年6月8日(日)まで展示

今年度1年間、まずは分野別に代表的な資料を選んで、トーハク歴史資料コレクションの幅広さをご紹介します。特に長大なのぞきケースには重要文化財「五海道其外分間延絵図」を二か月交替で展示します。江戸時代の全国の街道筋の様子をお楽しみください。
写真の展示ケースでは江戸幕府の遣欧使節メンバーをパリで撮影した写真をはじめ、重要文化財「壬申検査写真」などトーハクの誇る古写真コレクションの粋を月替わりでご覧いただけます。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ展示環境・たてもの

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posted by 田良島哲(調査研究課長) at 2014年04月23日 (水)

 

開幕! 特別展「キトラ古墳壁画」

特別展「キトラ古墳壁画」が4月22日(火)に開幕。
初日から約3600人ものお客様にご来場いただくという大盛況ぶりです。


 

極彩色壁画を持つ古墳として有名なキトラ古墳は、
7世紀末~8世紀初めに築造されたと考えられています。
今を遡ること実に1300年以上!!!
本展覧会は、そんな昔に描かれた壁画の実物をご覧いただける、大変貴重な機会です。
さらに、キトラ古墳壁画が所在地の明日香村の外で公開されるのは、今回が初めて。
ますます見逃せません。

では、キトラ古墳の壁画には何が描かれているのでしょう?
石室内には、天文図や獣頭人身の十二支が描かれていますが、
やはり注目は「四神」。
四神とは、東西南北を守る青龍(東)、白虎(西)、朱雀(南)、玄武(北)の霊獣です。
本展覧会では、四神のうち青龍を除く3点の壁画をご覧いただけます。
もちろん複製ではなく実物です!

         
キトラ古墳壁画:「四神」より左から玄武・白虎・朱雀
(写真:奈良文化財研究所)



一般公開の前日に行われた報道内覧会の様子。「四神」の展示が大人気でした


展示室内の演出にもぜひご注目ください。
作品をより一層お楽しみいただけます


壁画をご覧になる前に、どんな色なのか、どんな造形なのか、
ぜひ想像をふくらませてご来館ください。
そして頭で思い描いた「四神」と実際の壁画とを、ぜひ比べてみてください。
恐らくは、皆様の想像を超えた壁画をご覧いただくことになるのではないでしょうか。

今後、当ブログでは特別展「キトラ古墳壁画」の見どころを紹介していく予定です。
どうぞお楽しみに!

※混雑状況は特別展 キトラ古墳壁画公式Twitter @kitora2014 にてご確認いただけます。

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年04月23日 (水)