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1089ブログ

特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」開幕!

本日、特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」が開幕しました!


上海展入口


一級文物(日本でいう国宝)が18件、全40件もの作品が、ついに日本まで来てくれました!
上海博物館とトーハクの深い交流があって実現した展覧会。こんなにたくさんの一級文物を貸し出してくださって、関係者一同感無量です。
ご尽力いただいた皆様に心から感謝いたします。

本日の開幕に先立ち、昨日は報道関係者向けの内覧会が行われました。


見入る報道の皆様


展示室に入ると、そこは中国文人の世界。じっと向き合っていると、その深い精神性がしみじみと伝わってきます。
報道の皆様も食い入るようにみていらっしゃいました。


真剣です

真剣に見ていらっしゃいますね。どの作品かというと…



煙江畳嶂図巻
一級文物 煙江畳嶂図巻 (えんこうじょうしょうずかん)
王詵(おうしん)筆 北宋時代・11~12世紀 上海博物館蔵  展示期間:10月1日(火)~10月27日(日)


美しい水の流れと山々がとおく霞の向こうにひろがり、よく見るとその中に小さく4人の人物が描かれています。
どこにいるのでしょうか?本当に細かく、ふんわりと幻想的に描かれているので、見逃さないでくださいね。


さて、こちらの方々がご覧になっているのは…


琴高乗鯉図
一級文物 琴高乗鯉図軸
李在筆 明時代・15世紀 上海博物館蔵


国宝 秋冬山水図 雪舟等楊筆 室町時代・15世紀末~16世紀初 東京国立博物館蔵(2014年1月28日(火)~2月23日(日)まで本館2室にて展示予定)の作者、雪舟が師事した李在の名品。
名品が生まれるルーツは、中国にあったのですね。


また、展覧会担当の塚本研究員による熱いギャラリートークも行われました。

ギャラリートーク

ギャラリートークの様子。 マイクをもっているのが塚本研究員。

ちなみに塚本研究員のトークは、10月12日(土)の講演会、11月8日(金)のリレートークだけでなく、音声ガイドでもお聞きいただけます。
担当者ならではの深い愛情が伝わってくる、分かりやすい音声ガイドです。ぜひ聞いてみてください。

音声ガイド


このあと開会式・内覧会も行われ、上海博物館の皆様をはじめ、多くのご来賓やお客様が来館されました。


開会式
手前から3番目に上海博物館副館長 李仲謀氏、その隣に東京国立博物館長 銭谷眞美。


江戸時代の日本の文人たちも憧れた中国文人画。
当時の日本には、その正統派とされる作品が存在しなかったため、彼らは本物を見ることが出来ませんでした。切ない…
しかしいま、その名品中の名品がトーハクに来ています。日本人が憧れ続け、日本絵画のルーツともなった中国絵画を、ぜひその目で確かめてみてください。

今後、当ブログにて特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」の見どころについて研究員がご紹介してまいります。
どうぞおたのしみに!

カテゴリ:news2013年度の特別展展示環境・たてもの

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posted by 小島佳(広報室) at 2013年10月01日 (火)

 

この秋、上海博物館の至宝に会える!!

トーハクでは今秋、特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」(2013年10月1日(火)~11月24日(日)東洋館8室)を開催します。
2013年8月20日(火)に報道発表会を行いました。

報道説明会の様子

本展覧会担当研究員、塚本麿充より展覧会の構成と見どころを解説いたしました。

塚本研究員
塚本麿充 東洋室研究員


一級文物18件!中国絵画史に燦然と輝く名品きたる!


中国でも最大規模の収蔵を誇る上海博物館。
そのなかから、一級文物18件をふくむ40件もの名品によって、中国絵画の流れをご紹介します。

煙江叠嶂図巻
一級文物 煙江叠嶂図巻(えんこうじょうしょうずかん)(部分) 
王詵(おうしん)筆 北宋時代・11~12世紀
展示期間:10月1日(火)~10月27日(日)

この作品は、文人画家・王詵の現存唯一の作品。そもそも北宋時代の絵画は、数が少なくて大変貴重なのだそうです。
美しい淡彩で書かれた岩山が、水上に幻想的に浮かび上がる山水画です。

この雄大な景色に溶け込むように、人間が8人描かれています。

人間発見1 人間発見2

山水画版「ウォーリーをさがせ!」のようで、見つけると嬉しくなってしまいます。小さいですが、ぜひ会場で見てみてくださいね。


日本人が見ることがなかった「正統文人画」


中国絵画は、日本でも古くから蒐集され、愛好されてきました。室町幕府8代将軍・足利義政によって収集された「東山御物」が有名です。
しかし、中国で「正統絵画」と言われている王道の作品は、実は日本ではほとんど所蔵されていないのをご存知でしょうか。
トーハクでも中国絵画の名品を所蔵していますが、それらは中国絵画史上「非正統絵画」と呼ばれている作品です。
(「正統文人画」の意味や、誰が正統だと決めたのかなど、詳細は後日、本1089ブログにてご説明する予定です。)

漁荘秋霽図軸
一級文物 漁荘秋霽図軸(ぎょそうしゅうせいずじく)
倪瓚(げいさん)筆 元時代・1355年 上海博物館蔵
展示期間:10月1日(火)~10月27日(日)


元代を代表する文人画家・倪瓚の作品です。
すっきりとした筆墨によって描き出された無人の山水画。のちの中国絵画の規範になったのだそうです。
でも…、ただ枯れ木が描かれているだけのようにも見える…。
いえいえ!これこそが文人の心の風景、中国人の原風景といっても過言ではないのです!
ここに描かれた人生の機微を、ぜひその目でお確かめください。


正統だけじゃない!中国絵画1000年の歴史!

山陰道上図巻
山陰道上図巻(さんいんどうじょうずかん)(部分)
呉彬(ごひん)筆 明時代・1608年 上海博物館蔵


うねうねと波打つような山のかたち。怪奇的で、なんだか夢に出て来そうです。
明代末期になると、正統派に背を向けた異端の画家たちが現れます。これらの個性的な画家は、奇想派(エキセントリックスクール)と呼ばれました。
当時の人々もきっとこの絵に驚いたことでしょう。しかし奇想派は、日本ではあまり注目を浴びることがありませんでした。
本展覧会ではこのようなラインにも注目し、今まで知らなかった中国絵画の歴史を初めてご覧にいれます。

中国の五代・北宋から明清にいたる中国絵画の系譜。
その歴史を、これまでにない新たな視点も交えて名品で辿ります。
東京国立博物館と上海博物館の長年の友好が生んだ奇跡の展覧会に、ぜひご期待ください。

作品紹介やイベント情報など、今後も1089ブログでご紹介していきます。どうぞお楽しみに。

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posted by 小島佳(広報室) at 2013年08月22日 (木)

 

呂紀「四季花鳥図」と中国花鳥画の精華

私たち博物館には、実際に足を運んでいただけなければ、わからないことがたくさんあります。
その一つが作品の大きさ。まずはこの大きさをご覧ください。

宮廷画家たちの作品が並ぶ今季の8室は、明代宮廷に迷い込んだような豪華な空間!
宮廷画家たちの作品が並ぶ今季の8室は、明代宮廷に迷い込んだような豪華な空間!

東洋館8室で4月7日まで展示中の「呂紀「四季花鳥図」と中国花鳥画の精華」から、周全「獅子図」をご紹介したいと思います。
今まで周全は漠然と明代の宮廷画家であろう、ぐらいしかわかっていませんでしたが、近年研究の発展によって、より詳細なことがわかってきました。
『明実録』という、明代宮廷の公式日誌のような膨大な記録がありますが、そのなかに、周全の死亡記事と略伝が付されています。

(左)『図絵宝鑑』巻六、(右)『明実録』
(左)『図絵宝鑑』巻六、には「画馬に工(たく)み」という一行記事のみでした。
(右)『明実録』はお隣の東京文化財研究所で閲覧することができます。

それによると周全は、安南人太監(あんなんじんたいかん:ベトナム人の宦官(かんがん))であった金英(1394-1456)の養子となり、成化16年(1480)冬10月までには都指揮僉事千戸(としきせんじせんこ)という役職にのぼったことが記されています。
「獅子図」には「直文華殿錦衣都指揮周全写(ちょくぶんかでんきんいとしきしゅうぜんしゃ)」の落款があります。
文華殿とは紫禁城の殿閣の名前で、今も北京・故宮博物院にいくと、陶磁器展示館になっており、参観することができます。
明代の宮廷画家は武階を授けられ、仁智殿、文華殿、武英殿などで働いていました。

故宮博物院の文華殿
(左)「北京・故宮博物院の文華殿。
「文華」とは文化が栄える様子。ちなみに、奈良の大和文華館の“文華”もここからきています。
(右)明治34年に購入された本作品の落款は、東博の技手であった斎藤謙によって写し取られ、「支那画家落款印譜」(明治39年(1906)刊)に所収されています。


また東京国立博物館では、平成20年から22年にかけて本格修理を行いました。
その時、獅子の肉身部全体に白色顔料による裏彩色が施されているのが確認されました。

(左)裏彩色が施された裏面、(右)表面
(左)裏彩色が施された裏面、(右)表面
詳細は、
東京国立博物館文化財修理報告XI平成21年度をご覧ください。

(左)裏彩色によるグラデーション効果、(右)画絹の間から裏彩色が透けて見える。
(左)ふんわりしたタテガミには裏彩色によるグラデーション効果が。
(右)表面からでも画絹(がけん)の間から裏彩色が透けて見えます。


(当たり前ですが)裏彩色は画の表面からでもよく観察できます。
たてがみの部分をよく見ると、途中までがグラデーションのように白くなり、ふんわりと描かれています。これが裏彩色の効果です。
しかも茶色と墨で毛を描くことで、立体感を表していることがわかります。
横2メートル近くの巨幅であり、通常は縦に使う画絹(がけん)を横にして使っていることからも、本来は軸装ではなく、壁画や衝立の一部であった可能性もあります。
今でも紫禁城にいくと「貼落(ティエ ルオ)」という画絹に描いた巨大な絵が宮殿の壁に貼ってあるのをみることができます。
となると「獅子図」もかつては壁面に貼られ、紫禁城や宦官たちの邸宅を飾っていたのかもしれません。

紫禁城内の貼落画の例
左は紫禁城内の貼落画の例
宮殿の壁に貼られて鑑賞される中国独特の形式です。


たくさんの研究者、技術者のたえまない努力のもと、文献と修復の両方によって得られた新しい情報によって、600年前の画家の具体的な姿も徐々に明らかになりつつあります。
この瞬間こそ博物館で働いている人間にとって最高に嬉しい時間でもあり、その喜びを皆様と共有できることを喜んでいます。

 

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posted by 塚本麿充(東洋室) at 2013年03月06日 (水)

 

生まれ変わった東洋館―東洋館には「オアシス」がある!

「オアシス」というと、砂漠の中でほっと一息つける、水や木陰のある場所のイメージでしょうか?
東洋美術をめぐる旅がテーマの東洋館では、旅の途中に一休みして、気分転換できるオアシスを設けています。ひとつは、旅の提案をする場所。もうひとつは、これからご紹介する「アジアの占い体験」のコーナーです。

皆さま、お正月には神社やお寺でおみくじをひきましたか? 私たちの身近なところにも占いはありますが、アジアの各国でも占いがあるようですよ。そのいくつかを、オアシスでお試しいただくことができます。

まずは、モンゴルのシャガイ占いです。羊のシャガイ(くるぶしの骨)を4つ、サイコロのように転がして占います。ひとつのシャガイには上下左右4つの面があり、それぞれの面には「馬」「ラクダ」「羊」「ヤギ」という名前がついています。どの面がいくつ出たかの組み合わせで、運勢がわかります。4つのシャガイを転がしたときにすべて「馬」の面が出たり、「馬」「ラクダ」「羊」「ヤギ」の面がそれぞれ一つずつ出れば、最高の運勢!気軽に今日の「東洋館の旅の運勢」を占ってみてください。ボランティアの活動時間は、本物のシャガイを手にとって、占うことができます。どの面が出たかもボランティアが一緒に確認するので、ご安心のうえ、お楽しみ下さい。

シャガイ占い
ボランティアと一緒に、シャガイ占い体験

次は、夢占い。天蓋が付いたアジア風のベッドの上に、りんごや樹木、飛んでいる人などの不思議な図柄が刺繍してあるクッションが置いてあります。古代エジプト、メソポタミア、中国の夢占いから取った図柄です。クッションを手にとり、裏返してみると、それぞれの夢占いの結果が書いてあります。どんな結果かは、実際に来て試してくださいね。ふかふかのベッドに腰掛けることもできますが、夢をみるほど熟睡はしないように。

夢占い
「飛ぶ夢」は何を暗示しているのかな?クッションを裏返すとわかります


最後に、ラッキーアイテムのスタンプを押してみましょう。ここでは、アジアの国の神様や縁起の良い動物のモチーフを立体的なエンボスで押すことができます。一番人気は、スカラベ。シャガイ占いや夢占いで、あまり良い結果が出なくても、ここで、スタンプを押せば、運を良いほうに転じられるかも。

スタンプ
好きなラッキーアイテムを押して、運気UP!?


東洋館オアシス「アジアの占い体験」は、開館中いつでもお楽しみいただけます。特に、ボランティアの対応する時間帯がおすすめです。(10:30~16:00・月曜を除く)。
オアシスでゆったり旅の行方を占い、エネルギーをチャージしたら、東洋館の旅をさらに続けて楽しんでください。
 

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posted by 鈴木みどり(ボランティア室長) at 2013年02月16日 (土)

 

生まれ変わった東洋館─「中国の青銅器」曲面ケースができるまで

【図1】 東洋館5室「中国の青銅器」の曲面ケース
【図1】 東洋館5室「中国の青銅器」の曲面ケース

これまで当ブログでも何度か取りあげられてきた曲面ケースですが、今回はこの独特な形の展示ケースが生まれるまでのいきさつをご紹介したいと思います。

東洋館の耐震補強工事にともない、各展示室もリニューアルすることになって間もない頃、中国考古の作品を展示する東洋館5室のケース配置の試案を1枚の紙に書き留めました(図2)。
 
 【図2】 東洋館4室・5室ケース配置の試案(2009年1月15日作)
【図2】 東洋館4室・5室ケース配置の試案(2009年1月15日作)

向かって右上の4室から5室に入ると、壁から伸びた横長のケースが視界に入るようになっています。
5室は入って壁沿いに直進すると、そのまま出口に抜けてしまう構造になっています。
ケースを壁から突き出したのは、観覧者が直進することなく、U字状に進むように促すためでした。
メモの内容から、当初はこの横長ケースにやきものを陳列し、U字状に進んで突き当たった壁付ケースに青銅器を並べるつもりだったことがわかります。

横長ケースは背中合わせの構造になっていて、唐時代以前の作品を陳列する反対側に宋時代以降の作品を展示する計画でした。
そこでお互いの鑑賞を妨げないように、ケースのなかに間仕切りを設けるつもりでした。
しかし、この案をデザイン室の矢野賀一氏に見せたところ、問題点を指摘されました。
展示スペースを区切るために間仕切りを立てる方法や、5室の壁に対して直角か平行にケースを並べる配置のパターンは、図3のように従来の東洋館5室ですでに行ってきました。
せっかくリニューアルしても、あまり変わり映えのしない展示空間になってしまうのではないか、と。
 
【図3】 入口からみた旧東洋館の5室(2009年6月4日撮影)
【図3】 入口からみた旧東洋館の5室(2009年6月4日撮影)

矢野氏は入口から5室全体を出口まで見渡せるように、間仕切りの取り下げを提案してきました。
それでいて、5室に入った観覧者をU字状に歩かせるように促しつつ、斬新なデザインのケースを図に書いてきたのです。
それはゆるやかな孤を描いた、これまで見たこともない形をしたケースでした(図4)。
 
【図4】 第1回ヒアリング後の5室ケース配置図(2009年4月26日、矢野氏作)
【図4】 第1回ヒアリング後の5室ケース配置図(2009年4月26日、矢野氏作)

このケースを5室入口の斜め上方から見たイメージのイラストが図5です。
 
【図5】 図4の曲面ケースのイメージスケッチ(矢野氏作)
【図5】 図4の曲面ケースのイメージスケッチ(矢野氏作)

ご覧のように5室に入ってすぐ正面に曲面ケースが立っています。
しかも、全面ガラスなのでケースの背後にある出口を含めて部屋全体を見通すことができ、5室が本来もっている広さや開放感を堪能することができます。
この時点での曲面ケースは小口が5室の壁についた状態でした。
しかし、曲面ケースを壁に接したままにすることは、運用上さまざまな困難が予想されました。
また、全面ガラス貼りで見通しのよい曲面ケースの反対側に、別のケースを近くに置くと、互いに調和することなくよさを潰しあうことになる恐れがありました。
そこで図6のように曲面ケースを壁から離し、壁と曲面ケースのあいだに別のケースを置くことで、曲面ケースの個性と5室全体の展示空間がバランスよく調和できるようにしました。
これも矢野氏との話し合いのなかで出てきたアイデアでした。

 【図6】 5室図面(2009年12月11日、矢野氏作)
【図6】 5室図面(2009年12月11日、矢野氏作)

ただ、この図面を書いた時点で曲面ケースの適正な向きを決めることはできませんでした。
そのため、図面にはいくつかの向きで曲面ケースが描かれていますが、結局、もっとも太い線で描かれた曲面ケースの向きを採用することになりました。

同じころ、私は新しい東洋館の展示準備を進める一方、特別展「誕生!中国文明」を担当していました。
この特別展ではぜひやってみたいことがひとつありました。
それは青銅器を単独でなく、群としてまとめて見せることでした。

中国の青銅器のなかには、ひとつひとつ鑑賞しても見ごたえのあるものがたくさんあります。
しかし、中国古代の青銅器は酒や料理を盛って神や先祖に供えたり、宴席で用いたため、異なる種類のものを複数組合せることが普通でした。
そこで、発掘調査によりまとまって出土した4種類計28点もの青銅器を、特別展会場に作ってもらった単独の大型ケースで展示することにしました。
しかも、そのケースは支柱など視界をさえぎるものは極力抑えた造りにしてもらいました。
まとまりとしての青銅器が醸し出す森厳な雰囲気を邪魔したくなかったからです。
 
【図7】 特別展「誕生!中国文明」大型ケース内での青銅器の一括展示
【図7】 特別展「誕生!中国文明」大型ケース内での青銅器の一括展示

青銅器をまとめて展示することで発揮できた迫力は予想を上回るものでした。
私はこの手ごたえを今度は東洋館5室の曲面ケースでの展示にも生かそうと思うようになっていました。
こうして、やきもの用の横長ケースから発展した曲面ケースは、当館における中国の青銅器展示のシンボルとなり、2013年1月2日のリニューアルオープンを迎えました。
 

【図8】 東洋館入口からみた曲面ケース
 【図8】 東洋館入口からみた曲面ケース

【図9】 小口からみた曲面ケース内の青銅器
【図9】 小口からみた曲面ケース内の青銅器

現在、このケースのなかには25点もの青銅器が展示されています。
大きさ、形もそれぞれ異なるバラエティー豊かな青銅器が、正面向かって左から右へ時代順に並んでいます。
時間幅は二里頭文化期(夏時代)から唐時代にかけて(前18世紀~後8世紀)です。
図9のようにケースの小口からみると、まるで白い展示面が悠然と流れる河を彷彿とさせます。
およそ2600年にわたる青銅器の移ろいを、この河の流れのような曲面ケースでお楽しみいただければ幸いです。

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 川村佳男(保存修復室研究員) at 2013年01月19日 (土)