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文化財レスキュー事業が始動しました

 東京国立博物館を含む国立文化財機構と関係団体は文化庁からの要請に基づいて、「東北地方太平洋沖地震被災文化財等救援委員会」を設置し、東京文化財研究所に本部事務局を置き、亀井東京文化財研究所長を委員長に決定しました。
阪神淡路大震災で学んだ多くの教訓を生かし、文化財を救い出す本格的な事業に取り掛かりました。

  現在、宮城県から具体的な支援の要請を受け、仙台市の市立博物館に現地本部を設置しています。最初のレスキューは、津波で大きな被害を受けた石巻文化センターで開始されました。海岸のすぐ傍に立つ文化センターは津波の直撃を受け、重さ数トンのブロンズ像が流されるほどの強い衝撃を受けました。近所の製紙会社から流れ出したロール状の紙は、海水を含んで鉛のように重くなり、それが収蔵庫入り口を塞いでいました。レスキューはその撤去から始まりました。

  収蔵庫に残された油画などの近現代作品は海水と汚泥を被っていましたが、破損は比較的少なく、濡れた状態のまま仙台市内の一時保管場所に移されました。汚れたままでは、気温の上昇とともにカビが発生する危険性が高いことから、手応急のクリーニング作業が専門家たちの手によって保管場所で続いています。
  レスキュー活動は、今も同館の考古資料・民族資料(特にアイヌ関係)などについて進行中です。
 

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posted by 神庭信幸(保存修復課長) at 2011年05月13日 (金)

 

新人ボランティアさんの活動が始まりました

東京国立博物館では、現在、163名の生涯学習ボランティアが活動しています。
毎年4月には、約50人の新規ボランティアが加わり、3年間の任期で活動しています。
研修を終えた新規ボランティアが、ついに活動を始めました。

現在、先輩ボランティアと一緒に、館内各所でのご案内や、本館20室みどりのライオンの体験コーナー、お客様に配布する「日本美術の流れ」などの印刷を行っています。


先輩ボランティアと一緒に、お客様をお迎え


体験コーナーで。「やってみませんか?」


印刷機を駆使して「日本美術の流れ」パンフレットを作成 


切っているのは、5月1日から本館20室で始まったアクティビティ「写楽に挑戦!」の台紙


特別展「写楽」にあわせた体験コーナー、どうぞ、ご期待ください。

来館者の方々に博物館で楽しんでいただくため、
しばらくの期間、新規ボランティアは先輩ボランティアと一緒に活動し、自分たちでも対応の仕方や博物館のことを学習しています。

館内で、ピンクのネームカードをつけているボランティアをみかけたら、気軽に話しかけてみてください。
本日のおすすめの展示や、ボランティアならではの楽しみ方をご紹介します。
ボランティアは、ほかにも、各種ガイドツアーや一部のワークショップなども行っています。

ぜひ、ご参加ください。

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posted by 鈴木みどり(ボランティア室長) at 2011年05月11日 (水)

 

初物尽くし!「手塚治虫のブッダ展」

特別展「手塚治虫のブッダ展」(~ 2011年6月26日(日)まで )が 現在、本館特別5室にて好評開催中です。

 トーハクの長い歴史の中でも、漫画を展示するのは今回がはじめてのことです。
しかも、漫画と仏像とを並べて展示するのは、他の博物館でもあまり例のないことですから、今回の展覧会は、まさに初物尽くしともいえますね。

会場では、まず手塚治虫の原画に注目。漫画は、印刷されてしまうと平板な感じに見えがちですが、それが原画となると、細部の描写や微妙な陰影まで、くっきりと目にすることができます。原画を間近でみつめていると、まるで手塚治虫の息遣いが聞こえてくるようです。

 仏像も、粒よりの傑作がそろっています。中でも、東京調布市にある深大寺の釈迦仏倚像は、教科書にも載るような白鳳仏の傑作です。奈良国立博物館の出山釈迦像は、とても珍しい作例で、展覧会関係者の中でもこの仏像のファンになる人がたくさんいるんですよ。

  会場全体は、森林をイメージした、さわやかな緑色で統一して、周囲の壁面には、葉や木が揺らいでいる様子も表現しています。
どんな手法を使っているのか、そんなところにも着目してみてください。

ブッダ展会場風景1   ブッダ展会場風景2

カテゴリ:研究員のイチオシnews2011年度の特別展

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posted by 松本伸之(学芸企画部長) at 2011年05月09日 (月)

 

表情豊かな埴輪を楽しむ展示「古墳時代の人々」

特集陳列「古墳時代の人々―人物埴輪の表情と所作―」(2011年7月31日(日)まで)がおすすめです。

ユーモラスな表情でこちらを向いている埴輪の一群。
展示されている埴輪のほとんどは欠けたり部分が欠落しているものです。
ですが、顔の表情や髪型、装飾品や手つきなどをじっくり見ると色々なことがわかってきます。

特徴的な表情をしているのは「笠を被る男子頭部」(古墳時代・6世紀 )。
 

当館の埴輪の代表選手「踊る人々」(古墳時代・6世紀)とそっくりの表情です。

似ているのも道理で、同じ埼玉県熊谷市野原字宮脇 野原古墳から出土したものです。
口を丸くあけているのは、何か声を発しているそうです。
歌っているようにも見えます。
このような形で口をあけている埴輪は少なく、この古墳で発見される埴輪の特徴です。


下の写真で見られる、頭に四角い板を載せたような埴輪たち。

これは、女性をあらわす埴輪です。
四角い板のようなものは何かというと髷を結った髪です。
古墳時代の女性は頭のてっぺんで髪の毛を束ねていたのですね。


最後にご紹介するのは広報室員の間で密かに話題になっているこの埴輪(画像中央)

円筒形の上に目鼻がついていて、シルエットはまるでエリンギ茸。
この埴輪は「盾持人(群馬県伊勢崎市安堀町出土 古墳時代・6世紀 )」といって盾を体の前において防護している人を表しているそうです。
盾の部分はどこで表現しているのでしょうか。
実は、円筒形の本体からはみ出しているロケットの羽のような部分が盾を表しています。
まるで人と盾が一体化したようなデザインです。

埴輪は、最初にシンプルな円筒形のものがつくられ、その後、家、器財(盾、靫、蓋、大刀など)、動物などの埴輪が加わり、最後に人物の埴輪が出現しました。
人物埴輪は服装や髪型、所作などで性別や仕事まで区別がつくように作り分けられていました。


それぞれの特徴に目を凝らして、古代の人々の生活を想像するもよし、
やさしげな表情に癒されるもよし。子どもから大人まで、多くの方にお楽しみいただけます。


特集陳列「古墳時代の人々―人物埴輪の表情と所作―」は7月31日(日)まで
平成館考古展示室にて展示中です。

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posted by 広報室室員 at 2011年05月07日 (土)

 

鏡の裏でキスしているのは? ―特集陳列「和鏡」―

4月26日(火)から、本館14室で特集陳列「和鏡(わきょう)-鏡に表された文様の雅」が始まりました。

江戸時代以前は、鏡といえば銅製で、鏡面をピカピカに磨いて像を映し、背面にはさまざまな文様を表すのが常でした。東博は古鏡の宝庫。その中から奈良~江戸時代までの日本の銅鏡35点を選りすぐり、ご紹介しています。

文様の中には、真ん中に亀の形の鈕(つまみ)、その周囲に2羽の鳥が飛んでいる形式のものが多くあります。そこで、展示室では鈕と鳥の位置にぜひ注目してください。

平安時代11~12世紀の鏡

2羽の鳳凰が、中央の鈕(つまみ)を挟んで、ほぼ左右対称に配置されています。


室町時代15世紀の鏡

向かい合う2羽の孔雀は、かなり接近しています。

 

 室町時代15世紀の鏡

鈕の亀と2羽の鶴が、クチバシをくっつけています。
「接吻鶴」(せっぷんづる)ともよばれます。

時代が下るにつれてだんだん接近していき、最後にはキスしてしまうのです。これは、鏡の製作年代を判断するポイントの一つでもあります。

7月10日(日)まで。詳細はこちら

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 伊藤信二(教育普及室長) at 2011年05月04日 (水)