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1089ブログ

空前絶後の神道美術展、来年4月に開催!

トーハクでは来年、「国宝 大神社展」(2013年4月9日(火)~6月2日(日)平成館)を開催します。
2012年11月20日(火)に報道発表会を行いました。

本展覧会担当の上席研究員・池田宏より展覧会の見どころと各章の解説を、教育講座室長・丸山士郎より「神像」の解説をいたしました。

池田研究員 丸山研究員
(左)池田研究員、(右)丸山研究員

この展覧会のすごいところは、過去最大の、そして今後も実現は難しいであろうほど大規模な神道美術展、ということです!きっぱり!
日本全国の神社から貴重な文化財がなんと200件もこのトーハクに集まります。
そのうち、国宝・重要文化財は約160件!神社の皆様、ご協力いただきどうも有難うございます!

「国宝 大神社展」ポスター
「国宝 大神社展」ポスターデザイン


この展覧会を楽しむキーワードのひとつが、「古神宝(こしんぽう)」。
神社の社殿が造られて、そこに神々が祀られるようになると、人が住んでいるのと同じように、祭神のための装束や身の回りの調度、武具がつくられました。
神社に古くから伝わるこれらの服飾や調度類のことを、古神宝といいます。

表着
国宝 表着 白地小葵鳳凰模様二陪織(うわぎ しろじこあおいほうおうもようふたえおり)
鎌倉時代・13世紀 神奈川・鶴岡八幡宮蔵
展示期間:4月9日(火)~5月6日(月・休)


この画像は古神宝のひとつです。表着とは、かつて宮廷女官たちが着用した装束のこと。
小葵の地文様の上に、さまざまな色の鳳凰が飛ぶ素敵なデザイン。お守りの布のデザインにも、よく使われているそうです。


金銅製雛機
国宝 金銅製雛機(こんどうせいひなばた)
奈良時代・8世紀 福岡・宗像大社蔵


織機のミニチュアなので、雛機といいます。
織機が神への捧げものとして重要な意味をもっていたのだそう。普通の織機よりも小さいのですがとても精巧に出来ていて、心くすぐられます。


もうひとつのキーワードは、「神像」です。
神像とは、神をかたどって作られた彫像や絵画のこと。
国宝・重文に指定されているの名品や、これまで秘されてきた初公開の神像が一堂に会します。

なかでもこの2作品は必見です。

家津美御子大神坐像
国宝 家津美御子大神坐像(けつみみこのおおかみざぞう)
平安時代・9~10世紀 和歌山・熊野速玉神社蔵


お名前もお顔もりりしいこのお像は、熊野速玉大社に伝わる4体の国宝神像のうちの1体です。


吉野御子守神像
吉野御子守神像(よしのみこもりしんぞう)
南北朝時代・14世紀 個人蔵


ポスターやチラシでもセンターをつとめられるこのお像。女房の装束が美しい和装の女神像の代表作です。

このほかにも、魅力あふれる文化財がたくさん展示されますので、今後も1089ブログでご紹介していきます。
この展覧会を見ずして神社を語れません!
来春のトーハクは、神社パワー全開です!どうぞお楽しみに!

カテゴリ:news2013年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2012年11月23日 (金)

 

出雲展 残すところあと4日!

連日多くの方にお越しいただいています、特別展「出雲-聖地の至宝-」(2012年10月10日(水)~11月25日(日))も
展覧会終了まで残すところあと4日となりました。

これまでお越しいただきました皆様、誠にありがとうございます。

先週11月17日(土)・18日(日)には、島根県より観光キャラクター「しまねっこ」が来てイベントを行いました。
17日はあいにくのお天気の中でも多くの方にお越しいただき、両日ともイベントは大成功でした!

 
(左)雨のため本館入口でイベントを行いました
(右)しまねっこ、トーハクくん、ユリノキちゃんの3ショット

そんな「しまねっこ」のおすすめの作品を紹介します。

なんといっても、やはり「宇豆柱」!


重要文化財 宇豆柱 
鎌倉時代・宝治2年(1248)

出雲大社境内遺跡出土 島根県・出雲大社蔵

そして、展示替をして後期(11月6日(火)~11月25日(日))より展示している「三月会神事図屏風(流鏑馬図)」


三月会神事図屏風(流鏑馬図)
江戸時代・17世紀

島根県・出雲大社蔵

まだ展覧会にお越しいただいていない方、3連休のご予定が決まっていない方、
上野公園の木々の色づきを感じながらトーハクにお越しいただくのはいかがでしょうか。

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

カテゴリ:2012年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年11月22日 (木)

 

生まれ変わった東洋館─インドの細密画を見てみよう!

インドの細密画というのをご存知でしょうか。もともとは、11世紀頃、棕櫚(しゅろ)の葉に仏教やジャイナ教の経典の挿絵を描いたものにはじまりますが、後にムガル王朝(16~19世紀)の時代になると、神話をはじめ、歴史・文学・音楽や自然の景色などを鮮やかな彩色によって、文字通り細密に描くようになり、これが宮廷を中心に栄えました。


当館では、7年ほど前に、そのまとまったコレクションを購入し、これまで幾度か単発的に展示してきましたが、このほど、東洋館のリニューアルに際して、地下の展示室(13室)の中に専用のコーナーを設け、常設展示をすることとなりました。

 
左(図1): ラズム・ナーマ  インド、ムガル派 16世紀末
右(図2): 蓮の上に坐すクリシュナ インド、ビカネール派 18世紀後半
展示期間: 2013年1月29日(火) ~ 2013年2月24日(日)


インドの古典文学の中で燦然と輝く『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』という2大叙事詩の神話(図1)、シヴァ神やヴィシュヌ神(クリシュナ神)などのヒンドゥー教の神々(図2)、諸王の肖像(図3)や歴史的な逸話、男女の恋模様、動物の姿、そして、図像による音楽表現(図4)など、実にバラエティに富んだ内容となっています。

   
左(図3): ママーラシュ(象)に乗る藩王アマル・シン インド、メーワール派(ウダイプール) 18世紀中頃
展示期間: 2013年1月29日(火) ~ 2013年2月24日(日)
右(図4): 弓を番えながら戯れる男女(ヴィバーサ・ラーギニー)  インド、ブンディ派 18世紀前半
展示期間: 2013年1月2日(水) ~ 2013年1月27日(日)


日本では、インドの細密画は、まだまだなじみの薄い分野ですが、東洋館リニューアルオープンを機に、えもいわれぬ叙情性にあふれた奥深い魅力をもつインド細密画の世界を、ぜひ味わってみていただきたいと思います。

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 松本伸之(学芸企画部長) at 2012年11月21日 (水)

 

書を楽しむ 第26回 「世尊寺」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第26回です。

本館3室(宮廷の美術)(2012年11月20日(火) ~12月24日(月・休))に、世尊寺家(せそんじけ)が大集合します!

せそんじ、
日本の書の歴史、とくに「和様の書」(わようのしょ)にとって、
世尊寺は重要です。
覚えて欲しい!!

世尊寺家については、書を楽しむ11回でも少し触れました。
藤原行成(ふじわらのこうぜい、972~1027)を祖とする
能書(書の上手い人)の家系です。

藤原行成は、
三跡(平安時代中期を代表する三人の能書、小野道風・藤原佐理・藤原行成)の一人で、
日本独自の書「和様の書」を確立しました。
書を楽しむ第9回で紹介した、
国宝「白氏詩巻」は行成の筆跡です。

世尊寺家から、次の作品を御覧ください。

(左)藍紙本万葉集切、(右)巻子本古今和歌集切
(左)藍紙本万葉集切 藤原伊房筆 平安時代・11世紀
(右)巻子本古今和歌集切 藤原定実筆 平安時代・12世紀 植村和堂氏寄贈


左は、三代目・藤原伊房(これふさ、1030~69)、
右は、四代目・藤原定実(さだざね、?-1077~1119-?)です。

この二人、親子ですが、書風を比べてみてください。
まずは、全体を見た感じはいかがですか?

次に、字の拡大を比較してみました。


左から:伊房「あ」、定実「あ」、伊房「も」、定実「も」

「あ」は、よく似てますよね。
「も」は、縦線の曲がり具合が違いますが、点を打つ位置が似ています。


左から:伊房「て」、定実「て」、伊房「を」、定実「を」

「て」は、すこし形が違って見えますが、
どちらも、横線のあと、一瞬はなれて縦線を書いています。
「を」はいかがでしょうか?

全体で見た雰囲気が違っていても、
一字一字を取り出してみると似ています。

伊房、定実、定信 三代の字
定信、定実、伊房 三代の字

これは、当館の島谷副館長が作った画像です。
右から、三代・伊房、四代・定実、五代・定信の筆跡です。
島谷は、「骨格は類似しているけれど、筋肉のつき方が違う」
と言っています。
伝統を受け継ぐ書ですが、
それぞれの創意工夫で、
新たな創造ができるのです。

今回、展示室には、
三代、四代、五代、六代・藤原伊行(これゆき、?~1149~68-)まで
並べてご紹介します。

能書の家系・世尊寺家、
代々の字を比較してみてください。
そして、
それぞれの書の個性的な魅力を楽しんでください。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年11月19日 (月)

 

生まれ変わった東洋館─クメール彫刻

みなさんこの写真、どこで撮影したものかわかりますか?

 クメールの彫刻展示室

カンボジアです。トーハクの中の。
2013年1月2日(水)にリニューアルオープンする東洋館にはこれまでなかった展示室や稀にしか展示しなかった作品のコーナーを新設し、充実をはかりました。彫刻を担当する私の一押しは地下の11室、クメール彫刻18点を展示するこの部屋です。クメール人は古くから現在のカンボジアの地に住み、9世紀から15世紀までアンコール王朝を繁栄させました。その代表的な遺産にアンコール・ワットがあります。ここではアンコール・ワットと同じ頃造られた石造の仏像、神像、精緻な浮彫りがほどこされた建築部材を展示します。

クメールの彫刻展示室
手前は獅子、奥に象の頭に人間のからだのガネーシャ。
カンボジアの獅子は中腰のようなふしぎな姿勢。


クメールの彫刻展示室
建築部材(砂岩)にほどこされたみごとな浮彫り。象の頭の上に乗るのはインドラ神。

残念ながら日本からの直行便がないため、カンボジアを巡る日本の観光客はあまり多くないようです。しかしアンコール・ワットのあるシェムリアップには欧米、中国、韓国の観光客が多く、町は整備され清潔で、快適なホテル、レストランが並んでいます。
みどころはとても多く、少なくとも2泊はして、ゆっくり見て回ることをお勧めします。
 
バンテアイ・スレイ
アンコール・ワットと並ぶ必見の遺跡バンテアイ・スレイ。
東洋のモナリザと呼ばれる女神像がある。


どうも個々の人間と同じようにそれぞれの民族にも得意分野があって、カンボジアは世界でも屈指の彫刻家揃いだったようです。東南アジアでは第一位でしょう。まずはこの部屋でじっくりその造形の美しさをご覧ください。そして興味をもたれたら、ぜひ現地を旅してみてください。
 

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 浅見龍介(東洋室長) at 2012年11月18日 (日)