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1089ブログ

実感、能面の彫刻としての魅力

日本が世界に誇る伝統芸能のひとつである能楽に欠かせない「面(おもて)」の作家を「面打(めんうち)」、木を「彫り」、表面に「彩色」をして面を作ることを「面を打つ」といいます。
木を彫り、彩色する。まさに、彫刻です。
当たり前のことなのですが、なぜか忘れがちなことでもあります。
実際能面を鑑賞するとき、どうしても能楽の道具として、どの演目のどの役がつける、ということに注目してしまいます。
しかし、彫刻としての魅力を持つ能面はたくさんあるんです。
しっかりじっくり能面と向き合える博物館での鑑賞だからこそ、彫刻として楽しんでいただきたいなぁ、と思っていました。

彫刻としてという視点を持つためには、彫刻しているところを見るのが一番!
特集陳列 日本の仮面 能面 是閑と河内」(2014年2月16日(日) まで、本館14室)にあわせ、11月24日(日)に面打新井達矢氏をお迎えし、実演とトークショーを開催しました。
ちなみに、特集陳列のタイトルにある、是閑と河内も安土桃山時代から江戸時代初期に活躍した面打です。

新井さんによれば、ひとつの面をつくるのには1~2ヶ月ほどかかるとのこと。
イベントですべての工程をご覧いただくことは叶いませんが、彫刻らしい、特集陳列の鑑賞の参考になるだろう工程を選んでご覧いただきました。
面のおおよその形をつくる粗彫りなど彫りの工程の実演では、勢いよく鑿が振るわれます。
おだやかな能面からは想像できないような大胆な作業を見ていると、「面を打つ」という言葉に妙に納得。
木を打つ音、削る音が響き、材である檜の香が漂い、私もお客様と一緒に見入ってしまいます。


実演風景
粗彫りの工程です

トークショーでは、新井さんとトーハクの浅見龍介研究員が登場。
仕事も経歴も年齢も違うおふたりの共通点は面が好きであることと、多くの人にその魅力を伝えたいと思っていることだけです。
そのおふたりが作り手と彫刻史研究者、それぞれの視点で展示作品についてお話されました。
キーワードは「彫刻としての能面の魅力」。
演目などの話はあえて省き、仏像との比較を交えながら、材、道具、彫りや彩色に焦点をあてた和やかなトークショーでした。

ご参加いただけなかった皆様のために、「特集陳列 日本の仮面 能面 是閑と河内」鑑賞のポイントをひとつご紹介します。
肌の質感です。
是閑と河内の面の肌によく見られる特徴的表現があります。
ぜひご自身の目で肌の質感の違いをご覧ください。

能面平太と天下一是閑
(左) 「能面 平太」 「天下一是閑」焼印 安土桃山~江戸時代・16~17世紀
(右)
「能面 十六」 「天下一河内」焼印 江戸時代・17世紀


是閑と河内の肌 
是閑の肌(左)は彩色後に磨いてつやを出し、河内の肌(右)は彩色で凹凸をつくる梨地などと呼ばれる肌です。

新井さん、お集まりいただきました皆様、ありがとうございました。
能面は彫刻としての魅力に溢れていました。
このイベントを企画する前からもちろんそう思っていたのですが、
面を打つ工程を見てから、彫刻としての魅力という視点で改めて能面を鑑賞すると実感するものです。
能面の彫刻としての魅力を皆さんの目でみつけ、感じ、お楽しみいただければと思います。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及催し物

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年11月26日 (火)

 

東京文化財ウィーク2013に参加します!

文化の日(11月3日)を中心とし、東京都内全域の文化財の公開や文化財に関わる様々な企画を行う「東京文化財ウィーク2013」が開催されます。

特別公開期間は10月26日(土)~11月4日(月・休)の10日間。
講演会などさまざまなイベントが開催されるのは、10月1日(火)~11月30日(土)の2ヶ月間です。
(参加施設によって多少期間の幅があります。)

今年は、トーハクも初めて参加。

東京都指定有形文化財に指定された「虫豸帖(ちゅうちじょう)」 の公開(本館8室にて10月1日(火)~11月10日(日)まで展示)、
東京文化財ウィークの企画「旧江戸城を歩いてみませんか」に関連し、特集陳列「江戸城」(本館16室、10月22日(火)~12月23日(月・祝))が対象となっています。


「虫豸帖(ちゅうちじょう)」 は、伊勢長島藩第六代藩主、増山雪斎(ましやませっさい、1745-1819)の描いた博物図譜です。
雪斎は詩や絵を得意とし、木村蒹葭堂(きむらけんかどう)、太田南畝(おおたなんぼ)など文人たちとの交流でも知られています。
この精緻な写生図に描かれている虫のほとんどは巣鴨にあった下屋敷で採集されたもので、19世紀初頭の江戸の昆虫などの生息状況を知ることができる、貴重な資料です。

虫豸帖
東京都指定有形文化財 虫豸帖(部分) 増山雪斎筆  江戸時代・19世紀 東京国立博物館蔵

トーハクの近くにある、寛永寺境内には、雪斎の写生の様子などが刻まれた「虫塚」があります。
写生した昆虫を供養したいという雪斎の遺志により、1821(文政4)年に建てられました。
こちらもあわせて足を運んでみてはいかがでしょうか。

虫塚
寛永寺境内の虫塚



特集陳列「江戸城」は、家康・秀忠・家光の徳川三代にわたる普請によって築かれた壮大な江戸城の往時の姿を、最新の発掘成果も交え、御殿内の装飾下絵や建築指図、古写真などで振り返るものです。

忠臣蔵でおなじみの松の廊下にはこんな障壁画が描かれていたのですね。

松の廊下
江戸城障壁画 本丸松廊下 伺下絵(部分) 狩野探淵・住吉弘貫筆 江戸時代・弘化2年(1845) 東京国立博物館蔵

松の廊下跡は現在、皇居東御苑内に石碑が残っていますので、展示とあわせて、往時の江戸城に思いを馳せながら散策するのもよいのでは?


また、通年公開の文化財として、旧東京帝室博物館本館(現在の本館)表慶館
旧因州池田屋敷表門(黒門)、旧十輪院宝蔵の4つの建築物もエントリーしています(いずれも重要文化財)。


平成館ラウンジ自販機前のカウンターにガイドブックを用意していますのでご利用ください。
(数に限りがあります。無くなり次第配布終了となります。)

ガイドブック


10月26日(土)~11月4日(月・休)はエントリーした建築や「虫豸帖(ちゅうちじょう)」 の解説カードもインフォメーションなどで配布します。
都内各所の文化財を訪ねてカードを集める方もおられるとか。

文化の秋。連休の行楽はトーハクで文化財に触れてみませんか?

 

カテゴリ:news催し物

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2013年10月06日 (日)

 

9月28日(土)はスペシャルイベントデー!

9月28日(土)は夜8時まで開館し、さまざまなイベントを開催します!

9月28日(土)は、「秋の特別公開」の終盤を飾る、スペシャルイベントデーです。講演会やコンサートなどのイベントが目白押し! 秋の一日を博物館でのんびり過ごしてみませんか。

まずは、トーハク収蔵品のなかでも特に人気の高い、酒井抱一筆の夏秋草図屏風をじっくり鑑賞。驟雨(しゅうう)に打たれる夏草と、野分に吹き流される秋草を描いた抱一の最高傑作です(9月29日(日)まで本館7室に展示)。
15時からは平成館大講堂にて講演会「酒井抱一筆『夏秋草図屏風』の魅力」(講師:当館研究員 本田光子)も開催します(当日先着380名)。奮ってご参加ください。

関連グッズも本館ミュージアムショップ特設コーナーに多数取り揃えました!

ショップグッズ


芸術の秋にちなんだ音楽イベントも続々開催します。
Music Weeks in TOKYO 2013 まちなかコンサートをトーハクで開催!フルートとハープのコンサートを、表慶館エントランスホールで11:00~、13:30~の2回開催します(フルート:上野由恵、ハープ:平野花子、各回先着100名)。
クラシックの優雅な調べをお楽しみください。

夕方からは、東洋館リニューアルオープンを記念して、ジャワガムラングループ ランバンサリによるガムランと舞踊(小島夕季)のコンサートを、平成館ラウンジで16:30~、18:30~の2回開催します(各回先着200名)。
青銅製の打楽器が奏でる、インドの伝統音楽 ガムランの調べとともに、幻想的なアジアの夜をお過ごしください。公演後は、ガムランの演奏体験もできます。

ガムランコンサート
参考イメージ(写真:古屋均)


東洋館エントランス前では、アジアンビアガーデンを開催! インドネシアビールをはじめ、上海ヤキソバやエビチリ春巻きなど、アジアンテイストのメニューも揃えて、皆様のご来店をお待ちしています。大人気の「一番搾り フローズン<生>」もあります!
ソフトドリンクもご用意しておりますので、ご家族でお楽しみいただけます。

※ビアガーデンは15時開店、ラストオーダー 19:20 (雨天中止)


作品を鑑賞し、音楽に触れ、アジアンビールに酔う秋の一日。
皆様のお越しをお待ちしております!

 

カテゴリ:news催し物秋の特別公開

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posted by 長澤由美子(総務課) at 2013年09月26日 (木)

 

Free admission for foreign student!! 9/21(土)は「留学生の日」!

9/21(土)は、毎年恒例「留学生の日」です。

トーハクでは、日本で学ぶ外国人留学生の皆さんに、日本の文化や伝統に触れ、理解を深める場として利用していただくために、毎年秋に「留学生の日」を設け、留学生とその同行者の方は、総合文化展観覧料金を無料としています。

 
今年のポスター・チラシはコチラ。4カ国でしつこいほどに「留学生無料!」。

 
当日は観覧料が無料となる他にも留学生を対象としたさまざまなイベントを実施!

とくに応挙館でのお茶会は、配布開始後すぐに整理券がなくなるほどの大人気となっています。
 

お茶会で日本文化を体験!


また、ボランティアによる「日本美術の流れ」英語ガイド(10:00~11:00、15:00~16:00、本館2階 1、3、4、5・6、10室)も、大変わかりやすいと好評です。
 

英語ガイドの様子。お気軽に声をおかけください
 

当日のイベントの詳細は留学生の日のページをご覧ください。当日の館内案内マップもダウンロードできます。


さらに!

 

今年はなんと、「留学生の日」が「秋の特別公開」の期間と重なっている大チャンス!

トーハクが誇る大人気のアレや、この機会を逃すと次はいつ見られるかわからないアレも、全部無料で見られる大変おトクな機会です。

 
留学生の方自身はもちろん、ご友人・お知り合いに留学生がいらっしゃる方はチャンス到来!

皆様、お誘い合わせの上、ぜひぜひご一緒にご来館ください。
 

カテゴリ:news催し物

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posted by 田村淳朗(広報室) at 2013年09月19日 (木)

 

学芸員に挑戦!

学芸員(トーハクでは研究員といいます)にはたくさんの仕事があります。
文化財の調査研究や展示は、学芸員ならではの仕事といえるでしょう。
とはいっても、いずれもお客様には見えない部分の仕事。
そこで、その「見えない部分」をすこしだけ体験していただくのはどうだろう?と思いつき、7月28日、ワークショップ「学芸員に挑戦!」を開催しました。


まずは、学芸員の仕事の真骨頂、展示を見に本館展示室へ。

展示見学
展示の工夫の話に興味津々。

ここでお話しするのは作品解説ではなく、作品の展示の工夫です。
みなさんから小さな声がもれてきます。
「えー、そんな細かいことを気にしているんですか・・・」
そうそう、展示って、いつも同じように、ただ並べるだけではないんです。
「作品を展示するための道具に注目したのははじめて!」
そうでしょう、そうでしょう!道具にも色んな工夫があるんです。
作品を安全に、見やすく展示するために専用の道具が使われることがあります。

演示具
錫杖や鏡を展示するための道具。木でできていたり、フェルトが貼ってあったり。展示室でご確認ください。

展示の構成、順序、方法には、いろんな工夫が隠れているんです。それこそまさに、学芸員の腕の見せ所。

見学のあとは作品の取扱体験です。(今回はレプリカを使用しました)
作品をきちんと扱えなければ大切な文化財を傷めてしまう、細心の注意が必要な仕事です。
取り扱う際の決まりごとを聞き、デモンストレーションを見て、実際に・・・
たとえレプリカと知っていても、緊張するものです。
特にお茶碗をいれた箱の紐の掛け方、御物袋の扱い方にみなさん四苦八苦。
大丈夫、学芸員だって緊張します。


取り扱い体験
お茶碗のほか、絵巻の取り使いも体験。鳥獣人物戯画の絵も楽しみながら扱いました。


博物館で働いている学芸員を身近に感じてもらいたい、という気持ちもありました。
取り扱い方を通じて、文化財が守り伝えられてきたことのありがたさを知ってもらいたいという気持ちもありました。
そして、この体験を通じて、「展示の楽しみ方が増えました」といっていただけたことがなによりもうれしいです。

「学芸員になりたかった夢が叶った」と笑ってくれたおとなの方、また、こんな機会を設けることができればと思っています。楽しみにしていてくださいね。
「いつか学芸員になりたい」と終了後も熱心に取り扱いの練習をしていた中学生、いつか一緒に働ける日が来るのを東博の学芸員は待っていますよ。
みなさん、暑い中、ご参加いただきありがとうございました。
 

カテゴリ:教育普及催し物

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年08月01日 (木)