特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」 入場者20万人達成!
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」は、2012年4月29日(日・祝)午後、20万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心から御礼申し上げます。
20万人目のお客様は、川口市よりお越しの渡邉孝さん(40歳)とそのご家族です。
東京国立博物館長 銭谷眞美より、記念品として、本展図録とオリジナルグッズの中から、龍虎のマスコットを贈呈いたしました。
左から、渡邉千怜さん、莉子さん、孝さん、銭谷眞美館長
2012年4月29日(日・祝) 東京国立博物館平成館にて
渡邉さんは歴史がお好きとのこと。博物館や城跡などにご家族で出かけることが多いそうです。
今日のお目当ては、蕭白の龍。当館の「博物館でお花見を」にいらした折に、本展に「雲龍図」が出品されることを知り、今回もまたご家族でお出かけいただいたとのことです。
大画面の龍をじっくりお楽しみくださいませ。
「雲龍図」で話題の曾我蕭白については、千葉市美術館で特別展「蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち」を開催中(5月20日まで)。
さらに、平治物語絵巻については、本展で「三条殿夜討巻」(6月10日まで)、総合文化展(本館2室 国宝室)で「六波羅行幸巻」(5月27日まで)、さらに東京・静嘉堂文庫美術館で「信西巻」(5月20日まで)と、現存する3巻が揃って公開されています。
このGW、首都圏にお出かけの際には、美術をめぐるとっておきの旅が楽しめそう。
まさに2度とない機会です! 是非お出かけくださいませ。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」は2012年6月10日(日)まで開催しています。
カテゴリ:2012年度の特別展
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posted by 小林牧(小林牧) at 2012年04月29日 (日)
凛とした佇まい。息を飲むほどの緊張感。真剣な面持ちで刀剣を見つめる男性のお客様をよく見かけます。女性の皆様、刀剣の展示室を素通りしようとしていませんか?
『至宝とボストンと私』第3回目は、平常展調整室研究員の酒井元樹(さかいもとき)さんと、刀剣のコーナーを見てゆきます。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」刀剣のコーナー
『独特の、美の世界』
広報(以下K):刀剣の展示室は緊張感がありますね。とても引き込まれます。
でも、一般の方にはどうも分かりづらいところもあるように思います。刀剣ってどのように鑑賞したら良いのでしょうか…。
酒井(以下S):小島さん、身長は何センチでしょうか?
K:えっ、なんですかいきなり!?158センチですが。
S:今回の展示は、身長が160センチの方の目線に合わせて、刃文(はもん)が綺麗に見えるように工夫したつもりです。この身長に設定したのは、来館者の方々の一番多い身長と思ったからです。
K:そうなんですか!実は先ほど展示を見ていたときに、自分が左右に動くたびキラキランと刀が光るのがとっても素敵だと思っていました。
でも「そういう見方は間違いだよ」と言われてしまいそうで…。
S:いえいえ、そんなことはありません。刀剣の美しさは輝きと深い関係があるので、そう仰っていただけると嬉しいです。
K:ところで、「刃文」とはどこの部分のことですか?
S:刀剣には、黒く見えるところ(地鉄[じがね])と、白いところ(刃)があります。
黒い地と白い刃の境界の少し下に、刃の中で明るく浮き上がって見えるところがあるでしょう。この浮き上がった部分の模様が刃文です。
刃文は、焼き入れをすることによって生まれます。
焼き入れする前に刃文となる部分に粘土性の土を薄く塗るのですが、この塗り方で刃文の形が決まるのです。
太刀 銘 備前国長船景元作
長船景元作 鎌倉時代・14世紀
(下図は部分)
残念ながら、画像では刃文が明るく浮き上がって見えません。ぜひ会場にてお確かめいただきたいと思います。
刃文は刀剣の大きな見どころのひとつです。
K:パッと見ただけではわかりませんが、しばらく目を凝らして見ているとだんだん刃文が見えてきました。
この作品の刃文は、小さな凹凸のような模様が波打っているように見えますが。
S:この部分の刃文は「丁子乱(ちょうじみだれ)」と呼ばれています。
丁子乱とは、丁子(クローブ)の実を横から見たような形が連続するものです。
丁子乱(本作品の場合は、より小さな模様になります)
他にもいろいろな模様がありますよ。この作品はどんな刃文が見えますか?
短刀 銘 来国俊
来国俊作 鎌倉時代・13世紀
(下図は部分)
K:これは…、まっすぐな線ですね。
S:そうです。まっすぐなので「直刃(すぐは)」と呼ばれています。その線はまっすぐですが、ふっくらしているように見えませんか。
刃文にはこのほかにも、半円形の模様を繰り返す「互の目(ぐのめ)」や、細かく不定形で複雑なかたちを見せる「小乱(こみだれ)」など、とてもたくさんの種類があります。
(詳しくは会場内パネル、または図録259ページをご参照ください。)
ぜひ好みの刃文をぜひ探してみてください。
『刀剣は抽象芸術?!』
K:こうした様々な種類の刃文は、刀の機能上必要なものだったのでしょうか?
それとも純粋に美を追求した結果なのでしょうか?
S:刃文と機能(切れ味)との関係はとても難しい質問ですが、遅くとも鎌倉時代までには、刃文は刀工が意図的に表現しようとしたものと思います。
鎌倉時代には、地域や流派によって、それぞれの刀工が個性ある刃文を生み出しているからです。
K:技と美の結晶、ということですね。
S:そうですね。
刃文は、他のジャンルに比べて非常に抽象性が高い芸術と言えると思います。
刃文を線とするならば、私達はその線の織りなすリズムや変化を鑑賞するからです。
絵画で鳥を描いたり、彫刻で菩薩を彫ったりといったような具象的な表現ではありませんよね。
個人的にはそこに面白みを感じています。
K:確かに、純粋に線の美しさを見るジャンルというのは、あまり他にない気がします。
これは刀剣鑑賞のほんの入口だと思いますが、奥の深さを感じることが出来ました。
S:いえいえ、私こそ刀剣についてもまだまだ未熟者で、理解は程遠いと思っています。
ですが、来場者の方々に少しでも刀剣について興味をお持ちいただければ幸いです。
K:最後に。これだけの刀剣をコレクションできたビゲローやウェルドは、やはり鑑賞眼があったということでしょうか。
S:明治9年に廃刀令が公布され、日常的な帯刀が禁止されると、多くの刀工たちは野鍛冶(のかじ。包丁や農具などを手がける鍛冶屋のこと)になっていきました。
このように刀剣の文化が危機的状況にあった時期、日本文化を米国人といういわば第三者的に見て刀剣を蒐集した彼らに、深い敬意を感じます。
ボストン美術館の刀剣コレクションは、わが国において刀剣が重要な文化であることを改めて私達に教えてくれているようです。
K:酒井さん、どうも有難うございました。
専門:刀剣 日本金工 所属部署:平常展調整室
次回のテーマは「近世絵画」です。どうぞおたのしみに。
All photographs © 2012 Museum of Fine Arts, Boston.
カテゴリ:研究員のイチオシ、2012年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2012年04月27日 (金)
こんにちは!
ユリノキです。
いよいよゴールデンウィークが始まりますね。
皆様、予定はお決まりですか。
今日は、これから予定を立てる方に、トーハクのおすすめの情報です!
まずは、特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」(~2012年6月10日(日))の関連情報から。
特別展では、今、伝えられている平治物語絵巻3巻のうち「三条殿夜討巻」を展示しています。
そして、本館2室(~2012年5月27日(日))でもそのうちの1つ、「六波羅行幸巻」が公開されているの。
東京・静嘉堂文庫美術館では、5月20日(日)まで、残りの1つ「信西巻」が公開されているんですって。
3巻全てを見比べることのできるまたとない機会なのよ。
次に、総合文化展のおすすめ情報です。
4月28日(土)から始まる特集陳列「平成24年 新指定 国宝・重要文化財」では、
その名のとおり、今年、新たに国宝や重要文化財に指定された作品が展示されます。
指定された48件のうち、44件(写真パネル展示2件含む)が本館の特別1室・特別2室に、
残りの4件の彫刻については、本館11室で展示されるのよ。
国宝、重文だけで埋め尽くされた展示室は壮観よ。
2009年の「国宝 土偶展」(2009年12月15日(火)~2010年2月21日(日))で、トーハクに来てくれた
山形県西ノ前遺跡出土のすらりと背の高いステキな土偶(縄文時代・BC3000~BC2000、山形県立博物館蔵)が
国宝になってまた来てくれるのよ。
どちらの展示室も2012年5月13日(日)までの短期間の展示となるので、お見逃しのないように!
『ほー!楽しみだほー!
興奮したら、なんだか、お腹が空いてきたほ。』
あらあら。トーハクくん。
さっきも「トーハクくんのはにわクッキー」を
ユリノキを眺めながら、上機嫌で食べたばかりじゃない。
トーハクくんのはにわクッキー(399円)はミュージアムショップで販売しています。
仕方ないわね。
それじゃあ、今からホテルオークラレストラン ゆりの木に行ってみる?
展示を見た後の疲れを癒すのにぴったりなおすすめメニューがあるの。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」会期中の限定メニューなのよ。
まず、1つめのおすすめはこちらのスウィーツ。
「ボストンポップオーバー (単品550円、コーヒーまたは紅茶付950円)」 よ。
ふわふわのシュー生地に包まれた、滑らかでコクのあるカスタードクリームを口に運ぶと
ほのかにラム酒の香りが漂うの。
えもいわれぬ贅沢な気持ちにさせられるわ。
なんでも、ボストンでは、その昔、ラム酒の交易が盛んだったらしいの。
そのことにちなんで、ラム酒の効いた洋菓子が特別展期間限定メニューに登場したのよ。
この大人の味はトーハクくんにはまだ早いかも。
どうかしら?
『おいしいほー!ボリューム満点だほー!
疲れも吹きとぶほー!』
よかった。満足してくれたみたいね。
ボストンポップオーバーは、館内にあるもう一つのレストラン、ホテルオークラ ガーデンテラスでも食べられるんですって。
次は、甘いものが苦手な方にもおすすめの「ボストンクラムチャウダー(350円)」 よ。
ボストン美術館のある街は港町なの。
そのため、たくさんの貝を使って作られるスープ、クラムチャウダーは、ボストンの昔からの名物料理なの。
ボストンといえばクラムチャウダーを思い出す人も少なくないんじゃないかしら。
今回おすすめの、ボストンクラムチャウダーもアサリが入っているの。
アサリが出す貝のうまみと、じっくり煮込んだ野菜の優しい甘さが疲れを癒してくれるわ。
皆様、ゴールデンウィークは、ぜひ、トーハクにお越しください。
4月29日(日・祝)~5月6日(日)は開館します。
30日(月)も開館いたします。
お待ちしております。
カテゴリ:news、2012年度の特別展
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posted by ユリノキちゃん at 2012年04月26日 (木)
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」 入場者10万人達成!
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」は、2012年4月11日(水)午後、10万人目のお客様をお迎えいたしました。
これまでご来場いただいたお客様に、心から感謝申し上げます。
10万人目のお客様は、東京都よりお越しの石居達也さん(20歳)です。
東京国立博物館長 銭谷眞美より、展覧会図録と公式グッズのカレンダーを贈呈いたしました。
左から、石居さん、銭谷眞美館長
2012年4月11日(水) 東京国立博物館平成館にて
石居さんは「国宝 阿修羅展」がきっかけで仏像を好きになったとのこと。
今回も「仏像を見るのが楽しみです」とお話くださいました。
快慶作 弥勒菩薩立像など、名品をお楽しみください。
石居さん、有難うございました。
日本に残っていれば国宝や重要文化財の指定を受けてしかるべき作品の数々。
作品保護の観点から、今後5年間は公開されませんので、大変貴重な機会です。
本展覧会は2012年6月10日(日)まで開催中です。
ゴールデンウィークは混雑が予想されますので、どうぞお早めにご来館ください。
カテゴリ:news、2012年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2012年04月11日 (水)
染織作品が美しく華をそえる展覧会後半。こんなに絢爛できらびやかなキモノを実際にまとっていたかと思うと、なんだかうっとりします。
『至宝とボストンと私』第2回目は、工芸室主任研究員の小山弓弦葉(おやまゆづるは)さんと、染織のコーナーを見てみましょう。
特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」展示室の様子
『お江戸女子も流行にビンカン』
広報(以下K):どの作品も本当に素敵ですね…。この中で、小山さんのイチオシの作品はどれですか?
小山(以下O):この作品です。
小袖 白綸子地松葉梅唐草竹輪模様 (こそで しろりんずじまつばうめからくさたけわもよう)
江戸時代・18世紀
K:どうしてこの作品を選んだのですか?
O:デザインがとてもユニークなんです。
小袖は自分の体に直接まとうものですので、自分の身を守る意味もあって、伝統的に吉祥模様(鶴や亀、松竹梅などのおめでたいモチーフ)が多く用いられます。
こうした技法をこらし、贅を尽くした総模様のキモノは、元は特権階級のだけのものでしたが、江戸の泰平の世になり、町人が経済力をつけてきたことで、お金持ちの商家のご婦人も着飾ることが出来るようになってきました。
現代にもファッションの流行があるのと同じように、時代の流れとともに、デザインはどんどん変化してゆきます。
K:現代に生きる私たちが見ても、斬新なデザインですね。
O:ええ、江戸時代前期のある時期から、大胆に変化しました。これにはあるきっかけがあります。
一説によれば、寛永に大きな火事があり、江戸の大半を焼くという大変な事態に見舞われてキモノが焼けてしまい、大量につくる必要が出てきました。細かい模様はそれだけ時間がかかりますから、大振りの模様のキモノがたくさんつくられたといわれています。
そう言われてもおかしくないくらい、大きな変化があったのです。
K:思わぬところからデザインが発展したのですね…。
しかしデザインが大振りとはいえ、一つ一つの技法はとても複雑で手が込んでいます。何がデザインされているのですか?
O:これも松竹梅が描かれていますが、デザインが面白くてただの吉祥模様とはひと味違いますね。
竹は普通まっすぐに描かれますが、この作品では輪っかのように描かれ、まるでダンスしているかのようにリズミカルに配置されています。
輪と対比させるように、直線的な雁木模様(雁の列のようなぎざぎざの模様)が配され、その上に丸い梅と唐草を組み合わせた模様が散っています。
K:竹と梅ですね。松はどこに描かれているのですか?
O:雁木模様の鋭角の先端に注目してください。
松葉の付け根部分がデザインされているのがわかりますか?雁木の縁部分が松葉になっているのです。
K:あっ、本当ですね!すごい!言われなかったら気付かなかったかも知れません。お友達に自慢します!
ところで、竹が輪っかになっているのは、なにか意味があるのですか?
O:特に意味はなく、竹をデザイン化したのだと思います。梅も丸っこく描かれていてかわいらしいです。日本人は角がない、ということで丸を好むようですね。
遠くから見てもインパクトのある模様、色使い。江戸時代の方も、現代の若い方たちと同じように流行に敏感で、ファッショナブルだったのです。
『女性の人生を映すキモノ』
K:お恥ずかしい質問ですが、このキモノは誰かが着ていたものなんですよね?
O:もちろんです。
K:こんなにきらびやかで美しいキモノを普段から着られる人って、いったいどこのお嬢様だったのだろうと羨ましく思います。
O:これは、「お嬢様」のキモノではないんです。留袖になっていますので「奥様」のキモノです。
K:わあぁ(恥)!
O:女性は結婚すると、振袖の長い袂を切り、脇も詰めます。「留袖」とは、「袖を留めた」キモノという意味なのです。
江戸時代では、既婚女性が脇を留めていないキモノを着ることは恥ずかしいこととされました。
K:そうだったのですね!そんなことも知らず申し訳ありません!
O:いえ、意外とご存知でない方も多くいらっしゃると思います。
袖に注目してみてください。
模様が途中で途切れているでしょう?これは以前に振袖だったものを、所有者が結婚して袖を詰めたものと考えられます。
なんだか女性の人生が見えてくるようですね。
K:デザインだけでなく形にも注目してみると、キモノへの理解がより深まりますね。
模様にも意味があり、形にも物語がある。そういう目で鑑賞すると、キモノにぐっと近づける気がしました。
小山さん、どうも有難うございました!
専門:染織 所属部署:工芸室
次回のテーマは「刀剣」です。どうぞおたのしみに。
All photographs © 2012 Museum of Fine Arts, Boston.
カテゴリ:研究員のイチオシ、2012年度の特別展
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posted by 小島佳(広報室) at 2012年04月03日 (火)