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懐石のうつわ

本館14室では現在、特別展「茶の湯」の開催に合わせて、関連展示として「懐石のうつわ」(5月21日(日)まで)を特集しています。

懐石とは、茶事における食事のことです。 …ん?「茶事(ちゃじ)」?
お茶のお稽古をしている人はよくご存知でしょうが、そうでない人にはちょっとなじみのない言葉かもしれません。

茶事とは、お茶を飲むことを主目的として、人が茶室に集い、飲食を楽しむ会のことです。
季節やとり行なう時間帯によって茶事にはいくつかの種類があり、それぞれに約束事や特徴が異なります。
炭をおこすところ(炭手前)から、食事(懐石)、抹茶を飲む(濃茶、薄茶)ことまでがおよそ含まれ、この一連の流れを同席した客同士でともに過ごすことになります。(長いものでは、半日がかりにもなります。)
こうした茶事をとりしきる亭主は、客人に心ゆくまで茶を楽しんでもらうために、誠心誠意を込めて準備をし、当日もさまざまな心くばりでもてなしをするのです。

懐石では時季に合った食材選びなど、主役はあくまで料理ですが、そこで用いられるうつわも重要。
料理を引き立てつつ客人の目をも喜ばせる、大切なもてなしの道具なのです。
この特集では、懐石に用いられるうつわについて、館蔵品を中心に一堂に展示しました。


懐石では、はじめ飯椀、汁椀とともに向付(むこうづけ)と呼ばれる陶磁器に入った膾(なます)やお造りが出されます。

漆塗懐石道具、織部開扇向付
漆塗懐石道具 渡辺喜三郎作 昭和時代・20世紀、織部開扇向付 美濃 江戸時代・17世紀
懐石が漆器と陶磁器から構成されることを示しています。二つの椀の向こう側に置かれるので、「向付」です。


今回は、漆器の懐石具を代表する館蔵品として、5代中村宗哲の作品一式を展示しました。
朱に網目の模様が入った本作品は、「紀州侯より加州侯へ進ぜられし候節の好なり」(『茶道筌蹄』)という記録があり、大名家のための懐石道具でした。すべてが漆器でしつらえられ、格が重んじられています。

網絵懐石道具
網絵懐石道具 5代中村宗哲作 江戸時代・享和元年(1801)
表千家六代原叟(げんそう)好みとされています

大きなケース2つには、「桃山様式の懐石具」と「中国への注文の懐石具」を展示しました。
どちらも、安土桃山時代から江戸時代の初めにかけての茶の湯隆盛の時期に、各地の窯でさかんに作られていたもので、個性豊かな表現が見られます。
例えば、美濃の織部焼は、それまでには見られなかった破格の造形が用いられ、唐津の鉄絵の表現は飄々として伸びやかさが感じられます。
中国で明時代の末に日本からの注文で作られた古染付は、中国で注文の主題を解さないままに陶工の解釈で作り出され、もはや何を表現しているのかわからないものもあります。でもそれもまた一興。茶席を和ませます。

織部扇形蓋物
織部扇形蓋物 美濃 江戸時代・17世紀
伝統的な扇形を蓋物に作り上げています。蓋をしても、開けても楽しい作品です

古染付御所車図六角手付鉢
古染付御所車図六角手付鉢 中国・景徳鎮窯 明時代・17世紀 (広田松繁氏寄贈)
まっすぐ進めなさそうな御車に、不思議な烏帽子の人々。どこへ向かうのでしょう…



食事をすすめながら、さまざまな器のかたちや模様を楽しみ、会話を弾ませる。
茶事の懐石という形式のある場でも、同席の人と「ともに楽しむ」心は、日常の食事と変わらないのではないかと思います。

展示室では、多様な器種、文様を楽しんでいただきたく、沢山の懐石具を展示しています。
皆さんもぜひ、展示室でお気に入りのうつわを見つけてみてくださいね。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 横山 梓(保存修復課研究員) at 2017年04月25日 (火)

 

茶の湯ビギナーさんのための「茶の湯」展ガイド

4月11日(火)の開幕から約1週間。
特別展「茶の湯」、もうご覧になりましたか?



連日多くのお客様にお越しいただいている一方で、「何だか敷居が高くて…」というお声も耳にします。
そんな茶の湯ビギナーさんのため、本展の楽しみ方をご紹介します。

【茶の湯の名品ずらり】
国宝「曜変天目 稲葉天目」、国宝「油滴天目」、国宝「大井戸茶碗 喜左衛門井戸」、国宝「志野茶碗 銘 卯花墻」。
茶碗だけでなく、水指、茶入、釜、花入、絵画、書など、茶の湯に関わる名品中の名品をご覧いただけます。

 
左:国宝「曜変天目 稲葉天目」静嘉堂文庫美術館蔵 *展示は~5月7日(日)
右:国宝「油滴天目」大阪市立東洋陶磁美術館蔵 

 
左:国宝「大井戸茶碗 喜左衛門井戸」孤篷庵蔵 *展示は4月28日(木)~
右:国宝「志野茶碗 銘 卯花墻」三井記念美術館蔵

茶の湯ビギナーさんもひきつけてしまうのが、名品の「名品」たる所以。
多くの作品が並ぶ展示室ですが、ぐるりと見回したときに自然と目のとまる作品が、きっとあるはずです。

 
左:重文「祥瑞蜜柑水指」湯木美術館蔵
右:国宝「青磁下蕪花入」アルカンシエール美術財団蔵

 
国宝「紅白芙蓉図」東京国立博物館蔵 *展示は5月23日(火)~

研究員いわく「このすべてが、ひとつの会場で見られることがすごい」。トーハクだからこそ叶った、奇跡のラインナップです。
こんな貴重な機会を逃すなんてもったいないと思いませんか?

【あの人の好み】
本展では、茶の湯の歴史を作ってきたさまざまな人物を紹介していますが、それぞれが賞玩した作品の向こう側に、その人の美意識が垣間見えるように思います。

例えば千利休。
第3章では千利休に焦点を当て、利休がとりあげたものと利休が創り出したものを紹介しています。



同じ第3章の後半では、古田織部ら利休の弟子についても紹介していますが、利休ゆかりの作品と比べると、それぞれの好みの違いが見えてきます。

 

会場では映像で千利休の茶室「待庵」と、再現展示で古田織部の茶室「燕庵」も紹介しています。茶室にも2人の好みの違いが反映されています。

歴史に名を残す「あの人」の好みを探りながらご覧いただくのも、オススメの楽しみ方です。

【この「銘」が気になる!】
「破袋」、「ムキ栗」、「虹」、「けつりそこなひ」…さて、何のことでしょう?
これらはみんな展示作品の「銘」です。
トーハクのウェブサイトでは本展の作品リストを公開していますが、リストをつらつら眺めてみると「これは一体?」と思うような銘が目につきます。
「この作品が見たい」というほど茶の湯に詳しくない、という方は、気になる「銘」の作品をお目当てにしてみてはいかがでしょうか。


重文「黒楽茶碗 銘 ムキ栗」文化庁蔵

それぞれが果たしてどんな作品なのか、ぜひご自身の目でお確かめください。

【茶入のための茶室「転合庵」の公開】
今年の春の庭園開放は5月7日(日)まで。いつもより期間が長いと思いませんか?
なぜかというと…


「瀬戸茶入 銘 於大名」東京国立博物館蔵

こちらの茶入は小堀遠州が八条宮から賜ったというもの。そして、これの披露のために建てられた茶室が転合庵です。
庭園に立つ転合庵は、於大名とともに当館に寄贈されました。
特別展「茶の湯」にあわせて、今年は庭園開放を延長するとともに、転合庵の内部も特別に公開しています。


庭園開放と転合庵の公開は5月7日(日)まで。10:00~16:00
*4月30日(日)は転合庵の公開を休止


特別展で於大名をはじめとする遠州ゆかりの作品を見た後は、遠州ゆかりの茶室へ。
これも本展ならではのお楽しみです。


茶の湯というのは「取り合わせ」がポイントなのだそうです。
つまり、客人のためにどういうお道具を選び、どういう空間を作り上げるか、そこにもてなしの気持ちを表現するのだそうです。
そういう意味では、特別展「茶の湯」は、言わばトーハク大茶会。
取り上げている作品、その展示方法、会場のデザイン、関連イベントなど、皆様に「茶の湯」に親しんでいただけるよう、本展関係者がプロデュースした大茶会です。

茶の湯ビギナーさんもご一緒に、さあ、どうぞ一服!


茶室「燕庵」の再現展示では、写真が撮れるんだほ

カテゴリ:「茶の湯」

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2017年04月19日 (水)

 

平成29年 新指定 国宝・重要文化財─トーハクの所蔵品も国宝・重文に!─

今年も「新指定展」の季節がやってきました。
開催前からお問合せも多く、皆さんの関心の高さがうかがえます。

平成29(2017)年は、新たに彫刻から3件、書跡・典籍から2件、古文書と考古資料からそれぞれ1件ずつの7件が国宝に、絵画7件、彫刻4件、工芸5件、書跡・典籍3件、古文書4件、考古資料と歴史資料がそれぞれ7件が重要文化財に指定されることとなりました。
特集「平成29年 新指定 国宝・重要文化財」(2017年4月18日(火)~5月7日(日) 本館8室・11室)では、追加指定の2件も合わせた46件(写真パネルのみの展示含む)の作品を展示します。

ここでは代表選手として、国宝に指定された彫刻1件を紹介します。

銅造釈迦如来倚像(東京・深大寺蔵)は、2011年にトーハクで開催された「手塚治虫のブッダ展」 にも登場したので、見覚えのある方もいるかもしれません。

 銅造釈迦如来倚像
国宝 銅造釈迦如来倚像 飛鳥時代・7世紀 東京・深大寺蔵

明るい表情の少年のような顔立ち、流麗な衣文の表現など、白鳳仏の傑作といわれています。
近年、飛鳥時代後期の美術において、大陸文化の受容のありさまや材質技法の特色などの研究が進展したことをふまえ、この時代の代表作の一つとして、国宝に指定されました。




そして、トーハク所蔵品も一挙5件、指定を受けました(国宝1件、重要文化財4件)。

国宝に指定されたのは、奈良県東大寺山古墳出土品(一括)です。


東大寺山古墳出土品
国宝 金錯銘花形飾環頭大刀  古墳時代・4世紀 (刀身=中国製・2世紀)  奈良県天理市 東大寺山古墳出土

東大寺山古墳出土品
金錯銘花形飾環頭大刀「中平」年銘部分

東大寺山古墳出土品
花形飾環頭(左)、家飾環頭(中、右) 奈良県東大寺山古墳出土品より

奈良県天理市にある東大寺山古墳は、古墳時代前期後半に築造された前方後円墳です。
出土品のなかでも、「中平」年銘のある金錯銘花形飾環頭大刀は、古墳時代における金石文(きんせきぶん)の最古かつ代表的遺品として知られています。
また、他に例を見ない花形飾環頭大刀、家形飾環頭大刀をはじめ、鍬形石や車輪石、銅鏃など、多種多量の副葬品があり、この時代を代表する資料群として大変貴重なものです。
近年、再調査や保存修理が行われ、総括報告書が刊行されるなど、再評価が進んでいることにより、国宝に指定されました。



続いて、重要文化財に指定された絵画2件。

特別展「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」(2015年)での出品も記憶に新しい、紙本墨画鳥獣人物戯画甲巻断簡は、京都・高山寺に伝来する国宝「鳥獣人物戯画」四巻のうち、甲巻の第十六紙の前につながる部分です。国宝四巻の解体修理にともなう調査で、もともとは一連のものであったことが明らかになったことにより、重要文化財に指定されました。

紙本墨画鳥獣人物戯画甲巻断簡
重要文化財 紙本墨画鳥獣人物戯画甲巻断簡 平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵


紙本金地著色松図は、トーハクの今年の年間スケジュールパンフレットの表紙にもなったタイミングでの重要文化財指定でした。
中世にさかのぼるやまと絵屏風の代表的作例です。空も土も全て金箔を押す総金地屏風の現存最古の例として注目されています。

紙本金地著色松図
重要文化財 紙本金地著色松図 室町時代・16世紀 東京国立博物館蔵

工芸品からは1件。

白磁蝶牡丹浮文大瓶
重要文化財 白磁蝶牡丹浮文大瓶  三代清風與平作     明治25年(1892)東京国立博物館蔵

明治26年(1893)に開催されたシカゴ・コロンブス万国博覧会の出品作、白磁蝶牡丹浮文大瓶です。作者の三代清風與平は、京焼の近代を代表する名工で、博覧会での高評価により、陶芸家として最初の帝室技芸員となった人物です。欧米輸出用の産業品とは一線を画す作風は、明治20年代の陶芸が目指した方向性が明確に打ち出されている点が貴重です。


最後に、考古資料より1件。

東京都野毛大塚古墳出土品
重要文化財 東京都野毛大塚古墳出土品 古墳時代中期 東京国立博物館蔵

東京都世田谷区にある野毛大塚古墳から出土した、東京都野毛大塚古墳出土品(一括)です。
この時代に特徴的な石製模造品が中心ですが、特に、導水祭祀施設の一部を表現したと見られる「槽(そう)」は、国内に例がなく、奈良県明日香村にある酒船石にも形状が似ていることが知られています。古墳時代における、水を介した祭祀を考える上で重要な資料です。



このように、国宝や重要文化財に指定された文化財(作品)には、それぞれが持つ歴史や希少性が、日々の研究で明らかになって評価されたものばかりです。

わたしたち国民の新たな宝を、ぜひ、間近にご覧ください。

カテゴリ:news特集・特別公開

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2017年04月17日 (月)

 

保存と修理バックヤードツアーに潜入!

トーハクくんほほーい! ぼく、トーハクくん。
今日は、バックヤードツアーに連れて行ってもらえるんだほ。とっても楽しみなんだほ~。


トーハクくんとユリノキちゃん


ユリノキちゃん今日は文化財の保存と修理の現場を見学させてもらえるのよ。
繊細な作業をしている現場なんだから、急に踊りだしたりしないでね。



トーハクくんほーい…。

 


ユリノキちゃんほら、ガイダンスが始まるわよ。
まずは高橋保存修復課長より、トーハクにおける文化財の保存と修理についてのレクチャーがありました。

レクチャー


文化財の保存と公開を両立するためには、よりよい良い環境を保つことが大事です。
トーハクでは、文化財を守り、伝えるために、次の3点に日々、取り組んでいます。

1. 文化財の損傷、劣化を遠ざけるための、予防。

2. 安全な取り扱いができるか、輸送に堪えうるかなどを検討する、診断。

3. 劣化を遅らせるための処置、安定化をはかるための修理。


研究員が文化財の異変に気づいたら、顕微鏡やCTスキャンなどで“健康診断”を行い、カルテを作成します。
修理には2種類あり、解体するなど大掛かりな「本格修理」と、必要最小限に手を入れる、「対症修理」があります。
トーハクでは、本格修理は年に20~100件、対症修理はなんと、年に700件くらい行われています。
とくに、高度な技術を要する対症修理を行っているのは、世界の美術館・博物館でもトーハクだけなのです。



トーハクくんいよいよ出発だほ!



ユリノキちゃん今回は500名以上の応募から抽選で選ばれた60名の参加者が4つの班に分かれて巡ります。
最初に訪れるのは、実験室。入口の扉は二重になっていて、専用のマットで靴の汚れを落としてから入ります。


修理道具
ほー、いろんな修理の道具があるほ。



ショウロンポウ
はっ、おいしそうなショウロンポウだほー!


ユリノキちゃんトーハクくん、それは作業のときに紙を押さえておく「重し」よ。
課長さんもショウロンポウって言っていたけど…。


ユリノキちゃんここでは、外れてしまった本の背表紙や、破れてしまった掛軸の軸を直したりする対症修理や、
浮世絵を保存するための中性紙のマットや、巻物の保存に適した太い軸や、作品の素材や大きさに合わせた保存用の箱などをつくっているのよ。



浮世絵保存用のマット
マットがクッションとなり、作品への負荷を減らしてくれます



トーハクくんまるで病院の手術室みたいだほ。
ここで働くみなさんは、文化財のお医者さんだほ!


ユリノキちゃん続いては、絵画の修理室。
修理が終わったばかりのきれいな屏風がありました。
ここでは修理技術者の下田アソシエイトフェローによる解説がありました。


屛風


ユリノキちゃんこの作品は、2年前から修理に入りました。
当初は、蝶番(ちょうつがい)の外れ、絵の具の剥落、画面の汚れ、亀裂などがありました。


トーハクくんかなりの重症だほ!!



ユリノキちゃん絵画では、「損傷地図」というものを作ります。
たとえば、穴あきは緑、亀裂は青、しわは紫などと、損傷部分を色分けして示した修理の設計図を作り、修理前の状態を記録しておきます。
また、エックス線写真で木の枠組みの状態を調べたり、絵の裏から光てて撮った写真で、絵の具の重ね具合を見たりなど、修理前に入るまでの調査は、数ヶ月にもおよぶそうです。


トーハクくん手術前の検査は大事だほー。



ユリノキちゃん修理に使う接着剤は、100年、200年後に修理をするときにも簡単に剥がせるようなものを使います。
でんぷんのり、ふのり、にかわなど、自然由来のものですね。


トーハクくんエコでロハスなんだほ~。




ユリノキちゃん次は、エックス線CT室です。



トーハクくんなんだか秘密基地みたいだほ。
あっ、大きな扉があいたほ!

CT室
こちらでは荒木調査分析室長による解説がありました。
トーハクには、文化財用の大型CTスキャナー(垂直型、水平型)、微小部観察用エックス線CTスキャナーの3台があります。


垂直型
垂直型は仏像など、横に寝かせられない立体の文化財を立たせたまま撮影ができます。

水平型
水平型は、病院でもおなじみ?の寝かせて撮影ができるものです。


微小部観察用
微小部観察用エックス線CTスキャナーは、細かい部分の撮影が可能です。



ミイラのCT画像

こちらは東洋館で展示中のミイラのCT画像。
いままでのエックス線撮影では不鮮明でわからなかったお腹の塊の部分が、何かが詰められているものだということがわかりました。

仏像CT
仏像の像内に納められているものも鮮明にわかります。
 

トーハクくんもしぼくがケガをしたら、ここでCTを撮ってもらうんだほ。




ユリノキちゃん最後は、特集「東京国立博物館コレクションの保存と修理」の展示室へ。
ここでは、修理を終えた作品が、その修理方法とともに紹介されています。

展示室
瀬谷主任研究員による、絵画の修理のお話をききました

修理後の公開は、半年から一年、作品の状態が安定するまで様子をみてから行います。


トーハクくん手術のあとはしばらく安静にするんだほ。



ユリノキちゃんここでは、絵画担当の瀬谷主任研究員と、工芸(日本陶磁)担当の横山研究員による、展示作品の修理についてのお話がありました。
各分野の担当研究員と修理技術者が検討を重ね、文化財が元来持っている情報を損なわずに、また、修理したところが後になってもわかるように修理をするのがトーハクの方針です。
大切な文化財を、100年、200年、もっと先へと伝えるため、トーハクのバックヤードでは日々、このように努力されているのね…。


トーハクくんぼくも1400年以上のあいだ、健康で長生きできているのもみなさんのおかげだほー。



ユリノキちゃんこれからは展示室での作品の見方も変わるわね!
みなさんもぜひ、特集「東京国立博物館コレクションの保存と修理」(~2017年4月16日(日)、平成館企画展示室)へお立ち寄りください!

 

 

 

カテゴリ:保存と修理特集・特別公開トーハクくん&ユリノキちゃん

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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2017年03月29日 (水)

 

【トーハク考古ファン】埴輪になったニワトリ

弥生時代のマツリの道具、銅鐸。銅鐸界のスターはシカでした。
古墳時代にもシカは登場します。なかでも古墳の上や周囲には、シカの埴輪を見かけることがあります。

どうしてシカを埴輪にしたのでしょうか。
それは古墳に葬られた王にとって、狩猟が大切だったから、という説があります。
たとえば、こんなシカの埴輪があります。

埴輪 鹿
古墳時代・6世紀 茨城県つくば市下横場字塚原出土
※展示予定はありません。


困り顔ですね。なぜかというと…


矢が刺さっているんです!(印をつけた部分。矢柄部分は折れてしまっています)
矢を射かけられているシカを描いた銅鐸がありましたが、古墳時代になってもシカは狩りの獲物でした。

このようなシカの埴輪のほかに、イノシシとイヌがセットとなって出土することもあります。
このセットも、狩猟を再現しているとされています。
 
左:重要文化財 埴輪 猪
右:埴輪 犬
いずれも、古墳時代・6世紀 群馬県伊勢崎市大字境上武士字天神山出土
通年展示/平成館考古展示室


イヌをよく見てください。首輪をしていますね。人に飼われている証拠です。


また、耳をピンとたて、口を開け、舌を出しています。いまにも王の命令をうけ、イノシシに襲いかかりそうな様子です。
一方でイノシシは、タテガミを立て興奮している様子。でも、なんだか悲しそうです。

シカ、イノシシとイヌは、王による狩猟を示すために埴輪になりました。
このほかサルやムササビといった、めずらしい埴輪もあります。

重要文化財 埴輪 猿
古墳時代・6世紀 伝茨城県行方市沖洲 大日塚古墳出土
~7月17日(月・祝)/本館1室


このサルの埴輪は、背中に子ザルの痕跡が残っています。そのため、子ザルを背負うお母さんのサルとわかります。
どうして、親子のサルが埴輪になったのか。実はまだよくわかっていません。

鳥の埴輪もあります。
ガンやカモといった水鳥の埴輪や、ニワトリの埴輪です。

埴輪 水鳥
古墳時代・5世紀 大阪府羽曳野市 伝応神陵古墳出土
通年展示/平成館考古展示室


なかでも、ひときわ注目されるのがニワトリの埴輪です。
今年の干支でもあるニワトリ。このニワトリがスゴイのです。

埴輪 鶏
古墳時代・6世紀 栃木県真岡市 鶏塚古墳出土
通年展示/平成館考古展示室


ニワトリのスゴイところ1→量
現在、発掘されてみつかったニワトリは、およそ400体。ガン・カモが150体、ウが20体、サギが10体ほどですので、ニワトリは鳥形埴輪のなかで圧倒的に多く作られました。

ニワトリのスゴイところ2→出現時期
ニワトリの埴輪の出現時期は、動物埴輪のなかで最も早い4世紀。そして、6世紀まで長く作られ続けられます。
古墳の埋葬施設に最も近く置かれ、埴輪のなかでもその中心となるのが写真のような家形埴輪です。

重要文化財 埴輪 入母屋造家
古墳時代・5世紀 奈良県桜井市外山出土
~7月2日(日)/平成館考古展示室
7月19日(水)~12月25日(月)/本館1室


その家形埴輪の近くにニワトリがいることが多く、ニワトリは他の埴輪と比べて、重要な埴輪といえます。

どうしてニワトリが埴輪になったのでしょうか?
その謎を解くには、ニワトリの埴輪をじっくり観察する必要があります。
栃木県鶏塚古墳のニワトリは、高い円筒のうえにいます。ほかにも、古い時期のニワトリの埴輪は、止まり木に乗っていることが多く、どうやら高い場所にいるニワトリを表現しているようです。

もうひとつ、別のニワトリの埴輪を見てみましょう。

埴輪 鶏
古墳時代・5世紀 群馬県伊勢崎市 赤堀茶臼山古墳出土
※展示予定はありません。


側面の丸いもの。これは目のヨコにある耳羽(耳の孔を覆う羽)を強調した表現だと考えられています。

高いところにいるニワトリ。耳羽を強調したニワトリ。
一体何を意味しているのでしょうか?

ニワトリは夜中、高いところで寝る習性があります。地面に寝ていたら、イタチなど小動物に襲われるかもしれません。そのため、襲ってくる動物がいないか、耳をすまして高いところにとどまり、注意をしつつ寝ているのです。
このことから、ニワトリの埴輪は、夜のニワトリを表現しているとする説があります。

では、どうして夜なのでしょう。
夜明けになるとニワトリは「コケコッコー」といいます。
そのため、古墳時代の人々は、太陽を導く鳥として、ニワトリを神聖視していたようです。いまのように、卵や肉を食べていたわけではありません。

夜は邪悪なものが暗躍していたとされています。
古墳に邪悪なものが寄り付かないよう、光を導き、邪を払うニワトリが、埴輪となり重要な役割を担ったのでしょう。

しかしながら、この説に反対する研究者もいます。
ニワトリの埴輪には、オスとメスそれぞれいますが、メスは「コケコッコー」とは鳴きません。それゆえに、邪を払うことはできません。
この場合は、生命の再生を願うため、多産を象徴するメスのニワトリが埴輪として選ばれたと考えられます。

もしかしたら、埴輪をつくるよう注文した人それぞれで、異なる意味づけをニワトリに与えたのかもしれません。
皆様は、どのような思いを込められて作られたと考えますか?

今回、紹介した埴輪の多くは現在、平成館考古展示室本館1室にて展示中です。ぜひ実物を目の前にして、埴輪にこめられた思いを想像しながらご覧ください。

埴輪オンステージ!(平成館考古展示室)
ぼくのおともだちに会いにきてほ~


※Instagramで、トーハクの埴輪をアップしています。
「#1089考古ファン」で検索してみてください。

カテゴリ:研究員のイチオシ考古

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posted by 河野正訓(考古室研究員) at 2017年03月28日 (火)

 

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