このページの本文へ移動

1089ブログ

オンラインで楽しむ蔦重本 「東京国立博物館デジタルライブラリー」のご紹介

はやいもので2025年もあとわずかとなりました。
江戸時代の傑出した出版人・蔦重こと蔦屋重三郎の半生と彼の生きた時代を描いた大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」の完結から2週間、そして特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」の閉幕からも6か月がたとうとしています。
同展は会期中(4月22日~6月15日)に21万人を超えるお客様にご来場いただきましたが、閉幕の時点ではまだドラマに登場していなかったり、正体が明かされていなかった絵師や戯作者も数多くいました。
放送回を重ねるたび、そうした蔦重を取り巻く登場人物の劇中での活躍をご覧になった方から「あの作品を今こそまた見たい」というお声をいただきました。
特別展のような規模で関連作品を一堂に展示することはそう簡単には叶いませんが、年末年始にご自宅で大河ドラマや特別展を思い出しながら、関連する作品をお楽しみいただける方法をご紹介させていただきます。

特別展では全国の美術館や大学図書館などから作品をおかりする一方で、東京国立博物館所蔵の作品も多く展示しました。
それらの作品の一部が、実は「東京国立博物館デジタルライブラリー」というサイトでご覧いただけることをご存知でしょうか。
本サイトでは表紙だけでなく各ページまで、高精細の画像により細部までクッキリと見ることが出来ます。
ここでは展覧会でも人気を集めた作品をいくつかピックアップして見てみましょう。


箱入娘面屋人魚 山東京伝作 寛政3年(1791)正月 の「東京国立博物館デジタルライブラリー」閲覧画面。
展示されていた蔦重の「口上」だけでなく、物語の内容と挿絵もご覧いただくことが出来ます。
 

(1)平賀源内が手掛けた本草学書『物類品隲』
平賀源内が編纂・執筆した本草学の研究書。
「品隲(物を見定める)」という意味の作品名に表されるように、内容からも観察や実験などを重視した源内の研究姿勢がうかがえます。
 
(2)蔦重が出版した漢字の教科書『武家諸法度』 
江戸幕府が大名に向けて制定した「武家諸法度」の内容、文字を庶民が学ぶためのいわば教科書。
すべての漢字に読み仮名が付くだけでなくページ内の行数・行内の文字数が定数化されるなど、読み手のための工夫が随所にみられます。
 
(3)蔦重の「まじめなる口上」が描かれた黄表紙『箱入娘面屋人魚』
裃姿の蔦重が表紙を開いてすぐに「口上」でお出迎え。
前段のあとには浦島太郎と鯉の娘(人魚)を中心にしたなんとも荒唐無稽な物語が幕をあけます。 
 
(4)まさに「狂歌隆盛」の様相・狂歌集『古今狂歌袋』 
ドラマでもおなじみとなった大田南畝が序文、朋誠堂喜三二らが祝辞を寄せ、つづいて古今東西100人の狂歌師の歌と肖像が寄せられます。
それぞれの姿から、ユーモラスで個性的な狂歌を繋がりとした文化人サロンの様子が目にうかびます。 

いかがでしたでしょうか。
展示会場では、作品保護の観点により会場の照明照度を落としている環境でご観覧いただくため、やや暗めに見えることがあるかと思います。また、冊子の作品の場合は、展示できるページに制限があります。
しかしこうしたインターネットでの閲覧は、照度やページ数等の制限がなく、自由に拡大して閲覧することができる点で、よりじっくりと作品と向き合うことが可能です。
展示室で実物のまとう空気を感じた上で、本サイトを活用して熟覧をいただくと、よりそれぞれの作品のもつ魅力にお気づきいただけるかもしれません。
展覧会での思い出や作品との出会いも振り返りつつ、引き続きインターネット上でも蔦重ゆかりの作品の数々を心ゆくまでお楽しみ頂ければ幸いです。
 
なお東京国立博物館デジタルライブラリーの他にも、以下のサイトにて、特別展に出品された当館所蔵作品の画像や情報が掲載されています。

ColBase: 国立文化財機構所蔵品統合検索システム
国立文化財機構の4つの国立博物館(東京国立博物館、京都国立博物館、奈良国立博物館、九州国立博物館)と2つの研究所(東京文化財研究所、奈良文化財研究所)の所蔵品、および皇居三の丸尚蔵館の収蔵品を、横断的に検索できるサービスです。
喜多川歌麿の「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」、東洲斎写楽の重要文化財「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」といった浮世絵の名作や、蔦屋重三郎が出版企画に携わった「青楼美人合姿鏡」などの展覧会でも注目を集めた作品もこのサイトに公開されています。
画像検索では、文化財の写真フィルムをデジタル化した画像およびデジタル撮影により作成された画像のうち、 東京国立博物館が所蔵する文化財の画像(約112,000枚 / 2017年3月現在)を検索することができます。

こうした各サイトに掲載されている特別展の展示作品ページの大半のリンク先を網羅して掲載し、まるで同展を仮想再現したかのようなまとめサイトを作成された個人の方もおられます。
各サイトの利用規約を遵守頂ければ、楽しみ方は無限大。ぜひ色々な形で掲載作品の魅力に触れていただければありがたく存じます。 
 

カテゴリ:「蔦屋重三郎」

| 記事URL |

posted by 広報室 at 2025年12月25日 (木)

 

43年ぶりの再会「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」

特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」は5月20日(火)より後期展示がはじまっています。

前期展示から大幅な展示替えを行ない、新たな装いで皆さまをお迎えしています。
 
さて、ここでは後期展示の目玉作品のひとつをご紹介します。
特別出品「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」です。
 
「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」 喜多川歌麿筆 寛政4~5年(1792~93)頃
 
美人画の名手、喜多川歌麿の代表作として、教科書や切手で目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
ポッピンというビードロ(ガラス)細工のおもちゃで遊ぶ若い町娘が、ふいに声をかけられたのか、勢いよく身体を振り向けた瞬間が描かれています。
版元・蔦屋重三郎のプロデュースにより寛政4~5年(1792~93)頃に制作され、歌麿が一躍人気絵師となるきっかけともなった重要な作品です。
 
実はこの作品、当初の展示予定には入っていませんでした。
現在の所蔵者のご厚意により情報提供いただき、急遽、後期展示から特別出品できる運びとなったのです。
 
展覧会を準備していると、思いがけないところから作品や資料の情報が寄せられ、研究が進むことがある…などと言われることがありますが、今回はまさにそれを体感した出来事でした。
 
では、この作品の注目ポイントを3つご紹介しましょう。
 
(1)タイトルに注目!世界的にも稀少な一枚
 
「あれ、この作品、前期にも展示されていたのでは?」とお気づきの方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに前期にも「ポッピンを吹く娘」が展示されていましたが、それはこちらの作品です。
 
 
「婦女人相十品 ポッピンを吹く娘」 喜多川歌麿筆 寛政4~5年(1792~93)頃 東京国立博物館蔵
(注)現在は展示されておりません 
 
右上のタイトルにご注目いただくと、こちらには「婦女人相十品」とあります。
 
実は、このシリーズには不思議な出版の経緯があり、タイトルの意味からして本来は10人の女性の姿を描いた10図揃を目指していたと考えられています。
しかし、「婦人相学十躰」という名称で「浮気之相」「面白キ相」「団扇を持つ娘」「指折り数える女」「ポッピンを吹く娘」の5図が出版された段階で、何らかの事情により、シリーズ名が「婦女人相十品」へと変更されたとみなされています。
 
 
「婦人相学十躰 面白キ相」 喜多川歌麿筆 寛政4~5年(1792~93)頃 東京国立博物館蔵
 
そして、「婦女人相十品」として4図(「ポッピンを吹く娘」「文読む女」「煙草の煙を吹く女」「日傘をさす娘」)が刊行された時点で制作が中断されたようです。
 
つまり、「ポッピンを吹く娘」は、両方のシリーズ名で出版されたことが確認されている非常に珍しい作品なのです。
 
浮世絵は版画のため、制作当時には何百枚、何千枚と摺られたものもありますが、現代にまで残っているのはごく一部です。
なかでも、「婦人相学十躰」のタイトルをもつ「ポッピンを吹く娘」は、世界的にもきわめて稀で、今回出品されたものが確認されるまでは、ホノルル美術館が所蔵する1点のみが知られていました。
一方、「婦女人相十品」は、東京国立博物館やメトロポリタン美術館などに所蔵されていますが、それでも確認されているのは数点程度に過ぎません。
 
つまり本展は、前期で「婦女人相十品」、後期で「婦人相学十躰」の「ポッピンを吹く娘」がご覧いただける、またとない貴重な機会となりました。
 
(2)色彩の美しさに注目
 
浮世絵版画に使われている色材は光にとても弱く、現在に伝わる過程でどうしても退色は免れません。
しかし本作品は、当時の色彩がしっかりと残っている点が見どころです。
とくに、女性の着物や髷に使われている紫色などは非常に美しく、鮮やかに残っています。
おそらく代々、大切に保管され、日光などに当たらないよう丁寧に扱われてきたのでしょう。
200年以上前の制作当時、蔦重と歌麿が力を合わせて作り上げた当時の色彩を、今に伝えてくれる一枚です。
 
(3)約43年ぶりに確認された作品
 
作品の裏面にある印から、本作品がエルンスト・ル・ヴェールの旧蔵品であることがわかりました。
エルンスト・ル・ヴェールは、1895年にパリのセーヌ通りに画廊を開いた人物で、当時ヨーロッパで広がったジャポニスムの影響のもと、浮世絵を愛好していました。
明治時代には何度か日本を訪れたとされ、数百枚にのぼる浮世絵を収集したと伝えられています。
今回、本作が再び確認されたのは、1981年に展示されて以来、およそ43年ぶりのことです。
 
どうぞこの貴重な機会に、「ポッピンを吹く娘」の魅力をじっくりとお楽しみください。
特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」は2025年6月15日(日)まで開催しております。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ絵画「蔦屋重三郎」

| 記事URL |

posted by 村瀬 可奈(日本絵画) at 2025年05月29日 (木)

 

特別展「蔦屋重三郎」10万人達成!

平成館特別展示室で開催中の、特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」(6月15日(日)まで)は、来場者10万人を達成しました。

これを記念し、東京都からお越しの須貝さんご夫婦に、当館館長藤原誠より記念品と図録を贈呈いたしました。

 

記念品贈呈の様子。須貝さんご夫妻(左)と藤原館長(右)

 

お二人とも大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(NHK)を毎週ご覧になっていて、上野公園のポスターを見て本展覧会を知り、ご来館いただいたとのことです。

また、特別展をきっかけに初めて東博にお越しくださったとのことで、あわせて東博コレクション展も楽しんでいただけたようです。

江戸の街の様相とともに、蔦重こと蔦屋重三郎の出版活動を約250作品を通して紹介する本展。今週からは後期展示もはじまりました。
後期展示では、蔦重がプロデュースした喜多川歌麿作品の中でも、大変貴重な初期のシリーズ作品「婦人相学十躰 ポッピンを吹く娘」が特別公開されています。
この機会をどうぞお見逃しなく!

 

カテゴリ:news絵画「蔦屋重三郎」

| 記事URL |

posted by 田中 未来(広報室) at 2025年05月23日 (金)

 

1