今年のゴールデンウィークはお天気に恵まれ、上野公園もトーハクもにぎやかでした。
そんなトーハクで、ちびっこ探検隊が活躍していたのをご存知でしょうか?
探検隊は5月3日と4日、東洋館に集結しました。
その任務は、東洋館にいる動物を探すこと。今日は彼らの活躍をご紹介します。
探検隊とは、子どもツアー「トーハク探検 アジアの動物??編」に参加した子どもたち。
隊員たちは4歳から11歳。東洋館エントランスからはりきって出発です。
ピチャヴァイ(礼拝用掛布)クリシュナ図金更紗 インド・マチリパトナム 18世紀 (2013年6月9日(日)まで東洋館13室で展示)
作品にかじりつくように見ている隊員たち
まずはクリシュナという神様の描かれた、インドの大きな布のなかに動物を発見!
さかな! ワニ! ウシ! カメ! 孔雀!
みつけた動物の名前を言いながら隊員たちは満足気。
トーハクの動物は、作品をじっくり見ないと見つからなかったり、実は神様だったりするので注意深く探さなければいけないことも実感し、早速ひとつめのミッションへ。
「東洋館の地下1階にいるゾウを全て探せ!」制限時間は5分。
隊員たちは東洋館地下1階をめぐり、ゾウやゾウらしきものを捜索してきました。
その後それぞれどんなものなのか、アフリカゾウでなくアジアゾウの特徴を持っているゾウが表されていることなどを学びます。
そしてほかの動物の写真をみせ、「この動物があらわされた作品みつけた?」と聞くと「あれかな?」「あれだ!」と隊員みんなで探し、ヘビやサルの神様じっくり見て、しっかり覚えました。
「見つけたよ!でも体が人間だった」「あれはゾウ?」 報告や質問が多く飛び交うにぎやかなワークショップでした。
好奇心旺盛なちびっこ探検隊はヘビの神様ナーガもじっくり鑑賞しました。
つづいてエレベーターで2階へ。
次のミッションは上級編「写真の動物を探せ!」制限時間は10分。
隊員には西アジアやエジプト、西域などの展示のなかにひそむ15の動物の写真を渡し、その作品を探してもらいました。
最後にみんなで確認し、解説を聞きます。
自分では見つけられたかったものを見つけたら「あ~、これかぁ」とメモをする隊員たち。
質問も飛び交います。最後まで気合も集中力も元気も十分。
捜索中の隊員、解説を聞く隊員。真剣です。
ここで今日の探検は終了!
・・・のはずでしたが、東洋館のエントランスへ帰る途中に1室の中国の彫刻でも足を止め動物を探す隊員たち。
最後には、動物の頭を持つ神様がいるなんて知らなかった、同じ石でできた像でも色が違うという言葉から、ちびっこ探検隊がいろんな発見をしてきたことがわかりました。
疲れたけど楽しかった、もっと見たいという言葉も。博物館を楽しんでくれたようです。
そしていつのまにか隊員同士、小さな隊員をサポートしたり、友達になったりしていました。
こんな成長や出会いもワークショップならでは、なのかもしれません。
博物館にはまだまだたくさんの発見があります。
次回はどんな探検をしましょうか。元気な隊員たちの参加をお待ちしています。
カテゴリ:教育普及
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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年05月07日 (火)
特別展「和様の書」を楽しむために─入門編1 和様ってなんだろう
今年の夏、特別展「和様(わよう)の書」(2013年7月13日(土)~9月8日(日)、平成館)が開催されます。この和様というのは、日本の風土や国民性に適合した日本独自の文化をさす言葉です。平安時代も中期になると日本人ならではの美意識や価値観によって、文化は和風化に向かって舵が切られていきました。書の世界も、平安時代の中期に三跡(さんせき)の登場とともに日本的な和様の書へと変貌していきます。
この和様の書とは、中国風な書である唐様(からよう)に対して、日本風の書を指しています。
誤解される人もいるかもしれないので、あえて注記しますが、和様の書とは日本人が書いた書のすべてを指すものではありません。日本でも、奈良時代や平安時代の初めは大半の人々が中国風の書体を目指していました。その後も、中国風の書を学び、これをもとに自らの書を表現する人も表われています。和様の書とは、中国風とは異なる日本独自のスタイルの書のことです。
和様の書の特徴の一つは、筆がやや右に傾くような筆使いで、転折の部分は比較的軽く曲線的で、柔和で優美な書風です。
和様の書 報道発表会でのデモンストレーションの様子
中国風の書は筆をたてて書きます こちらは筆がやや右に傾く和様の書き方
同じ和でも趣が違いますね
ここに、藤原行成の白氏詩巻(国宝・東京国立博物館蔵)の「書」という文字を掲げて見ました。
この優しい筆使い、美しい字形で雅な雰囲気を持つのが、いわゆる和様の書の完成した姿です。
国宝 白氏詩巻(部分) 藤原行成筆 平安時代・11世紀 東京国立博物館蔵
眺めていると、なんだかゆったりした雅な気持ちになったでしょう。
書を鑑賞する際、文字が読めてその内容がわかればより深い理解ができます。ただ、意外に思われるかもしれませんが、たとえ読めなくても、理解できなくても、全体の調和、筆の線の美しさなどは楽しめるものです。
この展覧会は、日本人の感性を基盤にした平安時代から江戸時代までの日本風の書について、その特徴や魅力をご覧にいれます。
この機会に、書を楽しんでみてはいかがでしょう。
カテゴリ:2013年度の特別展
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posted by 島谷弘幸(副館長) at 2013年05月02日 (木)
ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は池田上席研究員に「国宝 大神社展」を解説してもらうほ。
池田さん、よろしくお願いしますほ。
よろしくお願いします。ではさっそく展示を見ていきましょう。
装束に手箱、本当にきれいな宝物がならんでいるほ~!
そうだね、きらびやかだね。たくさんの「古神宝」が展示されていますね。
コシンポー?そりゃなんだほ?
ではまず、「神宝」とは何かをご説明しましょう。
神社には、神が祀ってありますよね。そこで、神々(祭神)がお使いになるものとして、特別に作られた装束や調度品、武具などがそろえられました。
これが「神宝」です。
国宝 表着 萌黄地小葵浮線綾模様二陪織物(うわぎ もえぎじこあおいふせんりょうもようふたえおりもの)
南北朝時代・14世紀 和歌山・熊野速玉大社蔵(5月6日(月・休)まで展示)
ほうほう。ってことは、「古神宝」は『古い神宝』ってことだ!
どうりで古い時代のものばかりだほ。
いやいや、単に「古い」という意味じゃないんです。
今年は伊勢神宮で式年遷宮が行われますね。
こんな風に、社殿や神宝が一定の期間を経て古くなると、それまでと同様の社殿や神宝を新たに製作する「式年造替」が行われる神社があります。
その際、前に納められていた神宝は取り下げられます。この取り下げた神宝を「古神宝」といいます。
そうか!お役目を終えた神宝のことなんだね!
そのとおりです。
古神宝は祭神が使われたものですので、神聖なものとされ、その清浄さを保つために、人目に触れないように焼却あるいは埋納されてきました。
ただ神社によっては再度社殿に納められたり、宝庫などに伝えられてきたのです。
そんな貴重なものがトーハクで一気に見られるなんてすごいほ!
そうなんです。
装束の織文や漆工の文様などをじっくり見てみてください。平安から室町時代の日本の典型的な意匠や美意識がよくわかります。
国宝 橘蒔絵手箱(たちばなまきえてばこ)
南北朝時代・明徳元年(1390) 和歌山・熊野速玉大社蔵(5月6日(月・休)まで展示)
ほぉ~。模様が細かくて色もきれいで、ぼくが見てもかっこいいなと思うデザインだほ。
そうですよね。武具の文様もとても美しく、見ていて惚れ惚れします。
神宝はね、その時代の染織・漆工・金工など最高の工芸技術を使って製作されたんですよ。だって、祭神がお使いになるものですからね。
人の目に触れないとしても、祭神のために技術の限りを尽くしてつくられた神宝。それを見ると、当時の人々の謙虚な思いが伝わってきますね。
神さまのために一生懸命つくった気持ちが、ぼくのハートに響いてくるほ!ぐっと来るほ!
現在は春日大社と熊野速玉大社の古神宝で、5月6日(月・休)まで展示します。
5月8日(水)からは厳島神社、鶴岡八幡宮、熱田神宮の古神宝に展示替えになりますよ。
うほー、すごいところから集まってくるね!後期も見逃せないほ!
池田さん、どうも有難うございました!
国宝 桐文蒔絵平胡簶(きりもんまきえのひらやなぐい)・金銅鏑矢(こんどうかぶらや)・金銅矢、国宝 朱漆弓(しゅうるしのゆみ)
南北朝時代・明徳元年(1390) いずれも和歌山・熊野速玉大社蔵(5月6日(月・休)まで展示)の前にて。
池田宏上席研究員と、トーハクくん(本名:東博・あずまひろし)。ダブルひろしでお送りしました。
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、2013年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2013年04月26日 (金)
5年ほど前、「茶人好みのデザイン~彦根更紗と景徳鎮」という特集陳列を企画して、講演をさせていただいたことがあります。たしかその時だったと記憶しておりますが、講演が終わって館内を歩いていると、「次回は花生で企画してくださいね」とお客様から声をかけていただきました。以来ずっと、花生の特集陳列をやってみたいという思いが心にありました。ずいぶん時間が経ってしまいましたが、そのあいだに博物館には頼もしい日本陶磁の研究員が新たに加わりました。そして今年、ようやく花咲く季節に特集陳列「花生」(2013年3月19日(火) ~6月2日(日)、本館14室 )を開催することができたのです。
今回は備前(写真1)、伊賀、丹波といった日本のやきもの、青磁、青花、五彩の中国のやきもののほか、竹(写真2)や瓢、古銅など、さまざまの材質の器を集めました。季節や目的によって花生は四季折々の植物を生かし、空間に色を添えるのです。時代が変わっても、わたしたち日本人の心の基層には、花を活け、そして愛でるという尊くこまやかな楽しみがあることを誇りに思います。
左(写真1):旅枕花生 備前 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵(広田松繁氏寄贈)
右(写真2):竹花生 伝金森宗和作 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵(広田松繁氏寄贈)
そして、みなさま展示をご覧になって、お気づきでしょうか。総出品数22点のうち、半数が広田松繁(不孤斎(ふっこさい)、1897~1973)のコレクションによるものです。
中国陶磁のすぐれた蒐集家として名高い不孤斎ですが、こうして花生に焦点をあててみると、そのコレクションには備前や竹、瓢といった和物の花生や、唐物の代表格である青磁のほか、古染付・呉州手(写真3)の花生など、多彩な顔がそろっています。いかにも茶の湯を愛した不孤斎の好みらしい、気品あふれる作品ばかりです。
(写真3):呉州赤絵龍文双耳花生 漳州窯・中国 明時代・17世紀 東京国立博物館蔵(広田松繁氏寄贈)
風があたたかく、気持ちの良い季節になりました。初々しい花々が匂う博物館へ、そして14室「花生」へ、ぜひお運びください。
桜がおわり、新緑あふれる博物館の庭ではつつじが見頃です。
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posted by 三笠景子(保存修復室研究員) at 2013年04月25日 (木)
あの「七支刀(しちしとう)」が、展示期間が延長され、5月12日(日)まで観られるようになった!!
国宝 七支刀
古墳時代・4世紀 奈良・石上神宮蔵
[展示期間:5月12日(日)まで]
当初は5月6日(月・休)までの展示予定だったが、奈良・石上神宮の森正光宮司の格別なるご配慮により実現したのだ。
この刀剣がどれほど貴重なものか説明しよう。
教科書でもお馴染みの「七支刀」。
この名は忘れても、その独特の形を示せば、多くの方が「ああ、あれか!」と、ピンとくるはずだろう。それほど有名な刀剣だ。
しかし、実物が展示されることはほとんどない。それは、この刀剣がご神体にも匹敵するものだからなのだ。
この刀剣には、表裏合わせて61文字が金象嵌されている(彫った文字の上に金がのせられている)。
その銘文の解釈には諸説あるが、大意はざっと以下のとおりだ。
「泰和(太和に通じる)4年の吉日に上質の鉄で七支刀を造った。
この刀は多くの敵兵を退ける力があり、侯王にふさわしい。未だこのような刀は百済にはなかった。
百済王・・・(中略)・・・倭王のために造り、後世に伝えられるように。」
これにより、この刀剣が中国・東晋の太和4年(369)に制作され、百済王から倭王に贈られたことが推測される。
「七支刀」は、日本の古代史のみならず当時の東アジア情勢を考えるうえでもきわめて貴重な史料なのだ。
この機会を見逃すなかれ!
並み居る敵を退ける七支刀のパワーを、あなたももらいに来ないか!!
「七支刀」は、第五章 伝世の名品の中盤に展示されている。
カテゴリ:研究員のイチオシ、news、考古、2013年度の特別展
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posted by 井上洋一(学芸企画課長) at 2013年04月23日 (火)