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特集陳列「花生」─花を活け、愛でる楽しみ─

5年ほど前、「茶人好みのデザイン~彦根更紗と景徳鎮」という特集陳列を企画して、講演をさせていただいたことがあります。たしかその時だったと記憶しておりますが、講演が終わって館内を歩いていると、「次回は花生で企画してくださいね」とお客様から声をかけていただきました。以来ずっと、花生の特集陳列をやってみたいという思いが心にありました。ずいぶん時間が経ってしまいましたが、そのあいだに博物館には頼もしい日本陶磁の研究員が新たに加わりました。そして今年、ようやく花咲く季節に特集陳列「花生」(2013年3月19日(火) ~6月2日(日)、本館14室 )を開催することができたのです。


今回は備前(写真1)、伊賀、丹波といった日本のやきもの、青磁、青花、五彩の中国のやきもののほか、竹(写真2)や瓢、古銅など、さまざまの材質の器を集めました。季節や目的によって花生は四季折々の植物を生かし、空間に色を添えるのです。時代が変わっても、わたしたち日本人の心の基層には、花を活け、そして愛でるという尊くこまやかな楽しみがあることを誇りに思います。

 
左(写真1):旅枕花生 備前  江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵(広田松繁氏寄贈)
右(写真2):竹花生 伝金森宗和作 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵(広田松繁氏寄贈)


そして、みなさま展示をご覧になって、お気づきでしょうか。総出品数22点のうち、半数が広田松繁(不孤斎(ふっこさい)、1897~1973)のコレクションによるものです。

中国陶磁のすぐれた蒐集家として名高い不孤斎ですが、こうして花生に焦点をあててみると、そのコレクションには備前や竹、瓢といった和物の花生や、唐物の代表格である青磁のほか、古染付・呉州手(写真3)の花生など、多彩な顔がそろっています。いかにも茶の湯を愛した不孤斎の好みらしい、気品あふれる作品ばかりです。


(写真3):呉州赤絵龍文双耳花生 漳州窯・中国 明時代・17世紀  東京国立博物館蔵(広田松繁氏寄贈)

風があたたかく、気持ちの良い季節になりました。初々しい花々が匂う博物館へ、そして14室「花生」へ、ぜひお運びください。

つつじ
桜がおわり、新緑あふれる博物館の庭ではつつじが見頃です。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ博物館でお花見を

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posted by 三笠景子(保存修復室研究員) at 2013年04月25日 (木)