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ザ・アール・サーニ・コレクションの名品を見るほ!(自然編)



東洋館3室で開催中の特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」
本展は「人」、「神」、「自然」の3つの展示テーマで構成されています。
「人」編「神」編と紹介してきましたが、
今回は最後のテーマ「自然」の作品をトーハクくんとユリノキちゃんが紹介します。


最後のテーマ「自然」の作品を紹介するほ!
自然がテーマだから動物をモチーフとした作品がたくさんあるわ。

鹿がたくさんいるほ!

左から:
リュトン 銀 中央アジア 前7~前6世紀
碗 金 中央アジア 前2300~前1800年頃
碗 金、ラピスラズリ、カーネリアンほか メソポタミア 前3300~前3000年頃または前1200~前1000年頃
リュトン 銀鍍金、ガーネット 西アジア 前1~後1世紀
リュトン 銀鍍金 中央アジア 5~6世紀
杯 金 イラン北西部 前11~前10世紀頃
リュトン ガラス 西アジア 前5~前4世紀頃
リュトン 銀 西アジア 前2~前1世紀頃


リュトンはワインなどの飲み物を注ぐための容器なの。リュトンはギリシア語の動詞「流れる」(rhien)に由来するわ。このお碗も豪華な素材が使われていてとても綺麗ね。
お碗や杯には羊やヤギ、猫みたいな動物がいるほ!
動物を模した器は、エリート層の宴会で好まれて使われたのよ。



あっ、ユリちゃん、また鹿がいるほ。

リュトン 金、カーネリアン、石 アナトリア半島 前2千年紀前半

これもリュトンなの。口から出た管が内側にもつながっていて、それが底まで伸びているのよ。
ストローみたいだほ。
もしくは点滴のような機能をもっていたとも考えられるらしいわ。
それにしてもリュトンがたくさんだほ。「自然」ではなくて「リュトン」がテーマみたいだほ。
いいじゃない。ほらリュトン以外もあるわよ。

あっ、後ろに大きい鹿みたいな動物がいるほ!

アイベックス 青銅 アラビア半島南部 前1先年紀後半


鹿じゃないの、ヤギ科の動物アイベックスの銅像よ。大きさにびっくりるすけど、保存状態もとてもよいものなのよ。
なるほどほー。動物じゃない作品はないのかほ?
ほら、あの作品はどうかな?

お酒を飲んでいる人?

サテュロス像 銀、金 アナトリア半島または中央アジア 前2世紀頃
人じゃないわ。ワインを飲んでいる精霊サテュロス像よ。
なんで「自然」のテーマに展示しているほ?「神」のテーマで展示したほうがいいほ!
右手に持っているものをよく見て。ほら、リュトンよ。
また、リュトンだほ。
いいじゃない。ほら、あの作品を見てみましょうよ。

小さい動物がたくさんいるほ!

水差し 銀 西アジア 前7~前6世紀頃

そうね。それぞれの塔にアイベックスが立っていて、その塔の柱をライオンが支えているわ。
百獣の王のライオンが支える側になるなんて、とても面白い発想だほ!

この水差しも動物がたくさんいるわ。

水差し 銀、金 西アジア 前7~前6世紀頃

なんだかこれは船みたいに見えるほ。

こっちを見て、アクセサリーがあるわよ。

腕輪 金、瑪瑙 アナトリア半島 前5世紀

僕でもわかるほ、これは腕輪だほ。これは何の動物がいるんだほ?
ヤギだわ。2頭のヤギが頭突きをしようとしているように見えるわね。

ネコさんがいるほ!

ネコ 青銅、金 エジプト 前6~前5世紀頃

ネコの青銅像は古代エジプトの小規模な彫像の中で、最もよく見られたもの1つなのよ。
なんだか実際のネコよりもネコらしさを感じるほ、とても可愛いほ。

「自然」編の作品紹介はこれでおしまいよ。どうだったトーハクくん?
ぼくは、途中から「人」を見ているのか、「神」を見ているのか、「自然」を見ているのかわからなくなりそうだったほ。
どれも密接に関係しているから、見る人それぞれの解釈次第かもしれないわね。
なるほどだほ。それじゃー締めの挨拶するほ!

ぜひ、世界各地の様々な古代の豪華な工芸品を自由にご覧いただき楽しんでくださいほ!ね!

※作品は全て、ザ・アール・サーニ・コレクション所蔵
会期は2020年2月9日(日)まで

 

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」

東洋館 3室
2019年11月6日(水) ~ 2020年2月9日(日)

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2019年度の特別展

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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2020年01月10日 (金)

 

ザ・アール・サーニ・コレクションの名品を見るほ!(神編)



東洋館3室で開催中の特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」
本展は「人」、「神」、「自然」の3つの展示テーマで構成されています。
前回のブログでは「人」のテーマの作品を紹介しました。
今回は「神」のテーマの作品をトーハクくんとユリノキちゃんが紹介します。

皆様おまちかね「神」のテーマの作品を紹介するほ!
トーハクくんはどれを見るのが楽しみだった?
これだほ、入り口の看板にも使われているこの作品!

女性像「スターゲイザー」 大理石ほか アナトリア半島西部 前3300~前2500年頃

とても上品な小像だね。小さいけど存在感がすごいわ。
見上げているけど、何か見ているんだほ?
空を見上げるような姿から現代では「スターゲイザー(星を見る人)」の愛称が使われているのよ。
ほー。宇宙人みたいにも見えるほ。いったい何を表しているほ?
実は、人間を表現したのか、神を表現したのか、あるいは両者をあわせた何かを表現したのか、よくわかっていないの。
何を表現したのかわからないところも魅力の一つかもしれないほ、もしかしたら神様かもしれないほ。

続いてこちらの瓶よ。

瓶 瑪瑙 地中海地域 150年頃

ほー、なんだか硬そうな瓶だほ。
そうよ、硬いわ。古代ギリシアや古代ローマでは、浮彫の像が彫られた硬質石材製の容器は、最も貴重な製品の一つだったわ。
あっ、瓶の外側に人がいるほ!
これは英雄ヘラクレスが若いサテュロスに1杯のワインを勧められている様子なの。英雄ってなんだか神様に近い存在に感じるわね。

あっ、髭のおじさんがいるほ!

精霊像 銅合金、骨 ザクロス山脈または中央アジア 前3千年紀


よくみて!角もあるわ。呪術的な修行の準備として動物の一部を纏った人間、呪術師を表したのかもしれないらしいわよ。
呪術の修行?神様を呼ぼうとしたほ?
わからないわ。あるいは、呪術を修行することで神様に近づこうとしたのかもしれないわ。色々想像できるわね。

銀の容器があるほ!

容器 銀 アラビア半島南部 2~3世紀

この容器は、古代ギリシア・ローマでとても人気があった、オリンポスを責め立てた巨人族と神々との戦いの様子が装飾されているの。
銀自体もきれいだけど、装飾も豪華でとてもきれいな容器だほ。今度は小さくてかわいらしい像があるほ。

左:人形容器 金 コロンビア 5~6世紀
右:石斧 翡翠 メキシコ 前9~前5世紀


左の人はなんだほ?スクワットでもしているほ?
よく見てごらん、椅子の上に座っているのよ。
そうだっだほか。よく見ると穏やかな表情だほ。お祈りしているみたいだほ。
この作品と似ているものはほかにもあるの。その一部には、人間の遺灰が入っていたらしいわ。
なんで入れていたほ?
死者の力と権威を伝えるための儀式に使用されていたかららしいわ。

右のもなんだほ?石に人の顔が描かれているほ!
トウモロコシの神様らしいわ。
なんでトウモロコシの神様が描かれているほ?
まず、メキシコではかつてトウモロコシが食糧以上の存在で、人間はトウモロコシから創造されたと考えられていたらしいわ。
次に、斧だけど、材料に貴重な翡翠が使われいて、皮をむいていないトウモロコシの形に似ているのよ。やがて、翡翠製の斧が豊かさなどの象徴になっていったのよ。
トウモロコシと斧が密接に関係しているほか?
そうよ、神様みたいなトウモロコシと斧の関係は深かったのよ。だから、斧にトウモロコシの神様を描いたのかもしれないわね。

「神」のテーマの作品紹介はこれで終わりだほ!
最後の「自然」編に続くわよ!

※作品は全て、ザ・アール・サーニ・コレクション所蔵
会期は2020年2月9日(日)まで

 

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」

東洋館 3室
2019年11月6日(水) ~ 2020年2月9日(日)

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2019年度の特別展

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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2020年01月07日 (火)

 

ザ・アール・サーニ・コレクションの名品を見るほ!(人編)



ほほーい、ぼくトーハクくん。今日は、東洋館3室で開催中の特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」を見に行くほ!
トーハクくん、これはカタール国の王族のシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アール・サーニ殿下が収集した、ザ・アール・サーニ・コレクションの名品を紹介している展覧会よ!
「人」、「神」、「自然」の3つの展示テーマで構成されています!
どれもテーマが壮大だほ!
テーマに負けず、豪華で綺麗な作品、造形が興味深い作品などがたくさんあるわ!早速見にいきましょう!

まずは「人」がテーマの作品だほ、これは人の頭かほ?

男性像頭部 珪岩 メソポタミア 前2050年頃

そうね、人の頭ね。使用されている石がメソポタミアでは採れないものだから、遠い場所から輸入する必要があったみたい。
わざわざ遠くから手に入れたんだほ。作らせた人は偉い人かもしれないほ。
うん、統治者の権力を思わせるわね。


見てみてトーハクくん、また人の頭があるわよ。

王像頭部 赤碧玉 エジプト 前1473~前1292年頃

また人の頭だほ、色は違うけど、何が違うんだほ?
さっきはメソポタミア地域のものだけど、これはエジプト地域のものなのよ。
エジプトといえば、ピラミッドだほ。もしかしてエジプトの王様の頭ほ?
そうね、古代エジプトの君主「ファラオ」を表しているみたい。
ふーん。それにしても綺麗な赤色だほ!

また人の頭だほ。DJみたいだほ。

男性像頭部 粘土 ナイジェリア 前5~後5世紀

これはナイジェリアのノク文化に関連する作品よ。鼻と口が特徴的で興味深いわね。

おっ、人の頭以外もあったほ、一番右の作品はなんだほ?〝百人乗っても大丈夫!”って聞こえてきそうだほ。

左:飾り板 金、ラピスラズリほか 中央アジア 前4世紀頃
中:ペンダント 翡翠輝石 メキシコ 前10~前7世紀(銘文:前1~後2世紀)
右:戦車兵像 青銅、エレクトラム、鉄 西アジア 前6世紀頃


これは4頭の馬が横一列に並ぶ戦車兵像っていうの。戦車は移動や狩猟、戦闘のために使用したけど、最も重要なのは権威を誇示することだったらしいわ。
戦車を持っているようなところとは戦いたくないほ。


こっちにはツボがたくさんだほ! ツボったほ!

左から
渦巻型クラテル 陶器 イタリア南部 前330~前300年頃
アンフォラ 陶器 イタリア南部 前350~前300年頃
ルトロフォロス 陶器 イタリア南部 前350~前330年頃
渦巻型クラテル 陶器 イタリア南部 前340~前320年頃
萼型クラテル 陶器 イタリア南部 前330~前300年頃
渦巻型クラテル 陶器 イタリア南部 前330~前300年頃


そうね、たくさんね。これらの陶器はワインを保存したり、あるいは宴会の際にワインと水を混ぜるのに使用したりしたものらしいの。
こんなに大きな陶器でほ!?古代ギリシアの人達は宴会好きだったほ?
古代ギリシアでは来世でも宴会が永遠に続くと考えられていたから、こういった陶器がお墓に納められていたのよ。
大きさもびっくりするけど、陶器に描かれた様々な絵もぜひ見てほしいわね。

今度は仮面がいっぱいあるほ! 舞踏会でも始まるほか?

仮面 翡翠、貝 グアテマラ 3~6世紀


仮面展示コーナー


そんなの始まらないわよ。この仮面は埋葬用の仮面よ。翡翠が使われている仮面が多いわね。
とっても豪華だほ!

みなさん、「人」のテーマの作品紹介はここまでです。2020年にはぜひ見に来てくださいね。
次回の「神」編に続くほ!

※作品は全て、ザ・アール・サーニ・コレクション所蔵
会期は2020年2月9日(日)まで

 

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」

東洋館 3室
2019年11月6日(水) ~ 2020年2月9日(日)

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2019年度の特別展

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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2019年12月26日 (木)

 

ザ・アール・サーニ・コレクションの名品は見どころ満載

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」が11月6日(水)より開幕しました。
会場は東洋館3室で、2020年2月9日(日)までの会期です。

本展はカタール国の王族であるシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アール・サーニ殿下が収集されたザ・アール・サーニ・コレクションの中から、世界各地の古代文化が生み出した工芸品117件を厳選してご紹介するものです。
「世界各地の古代文化」とは喧伝ではなく、地中海地域、アジア、アフリカ、中南米といった様々な時代の各地の古代文化に由来する工芸品をご覧いただけます。
しかも、約5000年前から約1000年前までと様々な時代の作品を展示しています。

時間旅行、世界旅行気分を味わえるかもしれません。
それでは、アジアを超えた旅を少しだけご紹介します。


東洋館正面玄関


会場入口

本展は「人」、「神」、「自然」の3章で構成されています。

第1章の「人」では支配者たちを表現した彫像や、権威の象徴であった品々に注目します。
人間の姿に対する様々な解釈を背景につくられた人物像や支配者に好まれた色とりどりの品々をご覧ください。

まずはこちら、暗い展示室に浮かぶ印象的な赤色が特徴の「王像頭部」

王像頭部 赤碧玉 エジプト 前1473~前1292年頃

こちらは、エジプトの王を表している像です。
誰を表しているのかははっきり特定できないのですが、保存状態が良好かつ芸術性が高いため、きわめて重要な作品です。
一目見たら忘れられないインパクトを感じませんか。

こちらは様々な人の形を表した作品の展示風景です。

中央:飾り板 金、カーネリン、瑪瑙 中央アジア 前2千年中期頃

その中でも真ん中の「飾り板」がとても面白い造形をしています。
こちらは豪華に着飾った二人の人物が抱き合っている姿を表したものと考えられます。
また、抱き合っているのも、あいさつではなく、畏敬または敬愛の念を表す仕草であり、外側の腕を頭上に上げた姿をしています。
こちらの作品は現存するものと比べてもはるかに大きく、贅沢な造作だそうです。


次は権威の象徴を表した作品です。

左:飾り板 金、ラピスラズリほか 中央アジア 前4世紀頃
中:ペンダント 翡翠輝石 メキシコ 前10~前7世紀(銘文:前1~後2世紀)
右:戦車兵像 青銅、エレクトラム、鉄 西アジア 前6世紀頃

戦車は主に移動、狩猟、戦闘のために用いられましたが、最も重要な用途は権威の誇示のためだそうです。
そして、中央のペンダントは素材に注目で、支配者の権力を示すために大きなの翡翠輝石を加工したものです。
最後に左の飾り板は、選りすぐりの素材を優れた技術で加工していることはさることながら、構図に注目です。
宮殿などの大規模建築を飾ったレリーフ彫刻にみられるような王と従者が描かれています。
王の権力を後世に伝えるための装飾だったのでしょうか。
こうして、様々な素材やモチーフ、構図、そして貴重な素材を惜しげもなく高い技術で加工し、有力者や権威の象徴が表されています。
時代や地域が違えど、権力に共通する何かが見えてくるような気がします。


次に第2章の「神」です。「神」と聞くと、皆さまそれぞれの「神」をイメージされると思います。
本章では、各地の古代文化が生み出した神像や精霊像、聖なる儀式に関連する作品を紹介します。

まず目玉はこちら、本展の展示作品の中でも最も古い作品です。

女性像「スターゲイザー」 大理石ほか アナトリア半島西部 前3300~前2500年頃

第2章の「神」で紹介しておりますが、実はこちらは生身の女性なのか、祖先や神々のような時を超えた存在なのか、あるいは人と神をあわせて表現したものなのかはわかっていません。
ですが、まるで星を眺めているように顔をあげている様子、上品な造形からは神々しさを感じませんか。

また、古代の人々は人間の領域と神の領域をつなぐ方法を模索しました。その方法の一つとして「英雄」があげられます。

英雄像 銀、金 西アジア 前7~前6世紀

こちらは英雄が怪物を退治する場面を表しています。
際立った功績をあげて「英雄」となることが、神に認められる一つの手段だったのかもしれません。
こちらの造形で興味深いのは、両者は同じ顔の特徴、同じ形の顎ひげを示しているところです。
怪物も一歩間違えば英雄になりえたのでしょうか。

そのほか、儀式において音楽が重要であったことを裏付ける「タンバリン奏者」やメキシコの人々が神としてとらえていたトウモロコシの穂の形をした「石斧」など、様々な神にまつわる作品を展示しています。


最後は第3章「自然」です。人々が自然界をどのように認識してきたのかというテーマに着目し、は主に動物の形を模した工芸品を紹介します。

最初は、液体が口から出るユニークな器です。

リュトン 金、カーネリアン、石 アナトリア半島 前2千年紀前半

「リュトン」とは、古代ギリシア語の「流れる」を意味するそうです。
こちらはワインなどの飲み物を注ぎ、口の管から液体がでます。
こうした、動物を模して形成された酒器はエリート層の饗宴に好んで用いられました。
このほかにも様々な「リュトン」を展示していますが、ほとんどの「リュトン」は底が平らになっていないため、中身を飲み干してから逆さまにしておく必要があります。
高知県のおみやげ物屋さんでみかける「可杯」(べくはい)と似ていますね。

また、古代の装飾品のモチーフにも動物が多く使われていました。

左:首飾り 金 イラン 前6世紀後半~前5世紀
中:鼻飾り 金、ラピスラズリまたはソーダ石ほか ペルー 2~4世紀
右:首飾り 金 中央アジア 2~7世紀頃


左から、ヤギ、ネコ科の動物、竜に似た生き物がモチーフとなっています。
金などの重要な素材でその動物の重要性や畏敬の念を表したかったのでしょうか。

ほかには動物を愛でていたと思われる可愛らしい作品もございます。

クマ 金銅 前漢 前206~後25年

こちらはクマの像ですが、大型動物でさえもペットを愛でるような視点から表されていて、とても可愛らしいです。


ほかにも作品があり、本展は幅広い時代と地域の工芸品を一度に東洋館3室という1部屋でコンパクトに見ることのできるとても貴重な機会です。
しかも、総合文化展料金でご観覧いただけます。
会期は2020年2月9日(日)までです、ぜひお見逃しなく!

※作品は全て、ザ・アール・サーニ・コレクション所蔵

 

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」

東洋館 3室
2019年11月6日(水) ~ 2020年2月9日(日)

 

カテゴリ:工芸2019年度の特別展

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posted by 柳澤想(広報室) at 2019年11月13日 (水)

 

「正倉院の世界」展、後期の見どころ(後編)

こんにちは、今回の特別展を担当させて頂きました工芸室の三田です。
前編では「正倉院の世界」展後期展示、第1会場の見どころをご紹介いたしましたが、今回は第2会場の見どころをご紹介します。

まず、「作品No.71紫檀木画槽琵琶」です。こちらは正倉院に5面伝わる四絃琵琶の一つ。

正倉院宝物 紫檀木画槽琵琶 唐または奈良時代・8世紀

古代ペルシアに起源をもつ楽器で、胴部の捍撥には馬に乗って狩りをする人物や酒宴の様子など、エキゾチックな絵画が表わされています。
現在では黒ずんで見えにくいのですが、今回は正倉院事務所が制作された復元模写図を併せて展示します。
ところで、この琵琶の本当の見どころは背面なのです。
象牙や緑色に染めたシカの角を組み合わせて、蓮の花や舞飛ぶオシドリの姿が表わされています。
実際に演奏する時には見えなくなってしまう背面に、よくぞここまでの装飾を施したと感心しきりの逸品です。

そして、今回の特別展では、正倉院宝物と法隆寺献納宝物を同時に展示していますが、その目玉が「作品No.82 漆胡瓶」(正倉院宝物)と「作品No.83竜首水瓶」(法隆寺献納宝物)です。
   
正倉院宝物 漆胡瓶 唐または奈良時代・8世紀               


国宝 竜首水瓶 飛鳥時代・7世紀 東京国立博物館蔵(法隆寺献納宝物)

丸い胴体に細長い頸、片側に把手のついた水瓶は、「胡瓶」と呼ばれ、ササン朝ペルシアを中心とした古代西アジアに由来するものです。
正倉院のものはおそらく中国製と考えられ、漆の表面に銀の薄板を貼り付けて文様が表わされています。
その銀のパーツの細かいこと!可憐な草花や鳥、シカの文様が実に丁寧な仕事で表現されています。
一方の竜首水瓶は法隆寺献納宝物を代表する名品。
胴体にはギリシア・ローマ神話に登場する翼のある馬、天馬が足取りも軽やかに刻まれています。
この作品は文様表現や製作技法から飛鳥時代の日本で作られたものと考えられます。
西アジアを起源としたスタイルの器に、天馬の姿、そして注ぎ口は竜の頭という風に、まさにシルクロード各地の意匠を詰め込んだ、記念碑的な作品です。
現存する二つの「胡瓶」が出会う、歴史的な展示を是非ご覧ください。

そしてそして、忘れてならないとっておきが、「作品No.93白瑠璃碗」(正倉院宝物)と「作品No. 94白瑠璃碗」(トーハク蔵)も同時に展示していることです。

正倉院宝物 白瑠璃碗 ササン朝ペルシア・6世紀頃


重要文化財 白瑠璃碗 ササン朝ペルシア・6世紀頃 大阪府羽曳野市 伝安閑天皇陵古墳出土 東京国立博物館蔵 

トーハク所蔵のものは、江戸時代の半ばに大阪府羽曳野市の伝安閑天皇陵古墳から出土したものです。
どちらも6世紀頃にササン朝ペルシアの領域で作られたカットグラスです。
両者は昔から「兄弟」として親しまれてきましたが、実際に二つ並べて展示されるのは、これが史上初なのです!
「すいぶん懐かしいねー」とお話しているでしょうか。
実際に同じ工房で作られたかどうかは不明ですが、かなり近い環境で制作されたことは間違いないでしょう。
そっくりなようで、カットのデザインがやや異なる二つの白瑠璃碗。この機会にじっくりと見比べてみてください。

最後の最後ですが、後期の展示では「作品No.81 模造 伎楽面 迦楼羅」にもご注目ください。

模造 伎楽面 迦楼羅 令和元年(2019) 東京国立博物館蔵

去年の秋から、本特別展に間に合わせるべく、制作された復元模造作品です。
モデルとなったのは「作品No.79 伎楽面 迦楼羅」法隆寺献納宝物に伝来した、伝世作品としては世界最古の仮面の一つです。
トーハクと文化財活用センターの共同事業として、京都にある松久宗琳佛所に制作をお願いしたもので、私は監修にあたりました。

重要文化財 伎楽面 迦楼羅 飛鳥時代・7世紀 東京国立博物館蔵(法隆寺献納宝物)

今回が初公開でして、こんなにも飛鳥時代の色彩世界は鮮やかであったのかと、驚いていただければ幸いです。
なお、この伎楽面の詳しい制作手順などは『MUSEUM』 682号、および文化財活用センターウェブサイトから、ぶんかつブログ「よみがえった飛鳥の伎楽面!!」をご覧ください。

以上、長々とお話してきましたが、とても語り尽くせないほど、後期展示は魅力がいっぱいです。
是非とも足をお運び頂き、わが国が世界に誇る「正倉院の世界」に出合いに来てください。
新しい時代の始まりに際し、遠く古代の日本が国際社会の中で素晴らしい文化を取り入れて発展し、美の極致ともいうべき宝物群を未来に残してくれた、その類稀なセンスと努力を感じて頂ければと思います。
 

カテゴリ:2019年度の特別展

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posted by 三田覚之(工芸室) at 2019年11月12日 (火)