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ザ・アール・サーニ・コレクションの名品は見どころ満載

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」が11月6日(水)より開幕しました。
会場は東洋館3室で、2020年2月9日(日)までの会期です。

本展はカタール国の王族であるシェイク・ハマド・ビン・アブドラ・アール・サーニ殿下が収集されたザ・アール・サーニ・コレクションの中から、世界各地の古代文化が生み出した工芸品117件を厳選してご紹介するものです。
「世界各地の古代文化」とは喧伝ではなく、地中海地域、アジア、アフリカ、中南米といった様々な時代の各地の古代文化に由来する工芸品をご覧いただけます。
しかも、約5000年前から約1000年前までと様々な時代の作品を展示しています。

時間旅行、世界旅行気分を味わえるかもしれません。
それでは、アジアを超えた旅を少しだけご紹介します。


東洋館正面玄関


会場入口

本展は「人」、「神」、「自然」の3章で構成されています。

第1章の「人」では支配者たちを表現した彫像や、権威の象徴であった品々に注目します。
人間の姿に対する様々な解釈を背景につくられた人物像や支配者に好まれた色とりどりの品々をご覧ください。

まずはこちら、暗い展示室に浮かぶ印象的な赤色が特徴の「王像頭部」

王像頭部 赤碧玉 エジプト 前1473~前1292年頃

こちらは、エジプトの王を表している像です。
誰を表しているのかははっきり特定できないのですが、保存状態が良好かつ芸術性が高いため、きわめて重要な作品です。
一目見たら忘れられないインパクトを感じませんか。

こちらは様々な人の形を表した作品の展示風景です。

中央:飾り板 金、カーネリン、瑪瑙 中央アジア 前2千年中期頃

その中でも真ん中の「飾り板」がとても面白い造形をしています。
こちらは豪華に着飾った二人の人物が抱き合っている姿を表したものと考えられます。
また、抱き合っているのも、あいさつではなく、畏敬または敬愛の念を表す仕草であり、外側の腕を頭上に上げた姿をしています。
こちらの作品は現存するものと比べてもはるかに大きく、贅沢な造作だそうです。


次は権威の象徴を表した作品です。

左:飾り板 金、ラピスラズリほか 中央アジア 前4世紀頃
中:ペンダント 翡翠輝石 メキシコ 前10~前7世紀(銘文:前1~後2世紀)
右:戦車兵像 青銅、エレクトラム、鉄 西アジア 前6世紀頃

戦車は主に移動、狩猟、戦闘のために用いられましたが、最も重要な用途は権威の誇示のためだそうです。
そして、中央のペンダントは素材に注目で、支配者の権力を示すために大きなの翡翠輝石を加工したものです。
最後に左の飾り板は、選りすぐりの素材を優れた技術で加工していることはさることながら、構図に注目です。
宮殿などの大規模建築を飾ったレリーフ彫刻にみられるような王と従者が描かれています。
王の権力を後世に伝えるための装飾だったのでしょうか。
こうして、様々な素材やモチーフ、構図、そして貴重な素材を惜しげもなく高い技術で加工し、有力者や権威の象徴が表されています。
時代や地域が違えど、権力に共通する何かが見えてくるような気がします。


次に第2章の「神」です。「神」と聞くと、皆さまそれぞれの「神」をイメージされると思います。
本章では、各地の古代文化が生み出した神像や精霊像、聖なる儀式に関連する作品を紹介します。

まず目玉はこちら、本展の展示作品の中でも最も古い作品です。

女性像「スターゲイザー」 大理石ほか アナトリア半島西部 前3300~前2500年頃

第2章の「神」で紹介しておりますが、実はこちらは生身の女性なのか、祖先や神々のような時を超えた存在なのか、あるいは人と神をあわせて表現したものなのかはわかっていません。
ですが、まるで星を眺めているように顔をあげている様子、上品な造形からは神々しさを感じませんか。

また、古代の人々は人間の領域と神の領域をつなぐ方法を模索しました。その方法の一つとして「英雄」があげられます。

英雄像 銀、金 西アジア 前7~前6世紀

こちらは英雄が怪物を退治する場面を表しています。
際立った功績をあげて「英雄」となることが、神に認められる一つの手段だったのかもしれません。
こちらの造形で興味深いのは、両者は同じ顔の特徴、同じ形の顎ひげを示しているところです。
怪物も一歩間違えば英雄になりえたのでしょうか。

そのほか、儀式において音楽が重要であったことを裏付ける「タンバリン奏者」やメキシコの人々が神としてとらえていたトウモロコシの穂の形をした「石斧」など、様々な神にまつわる作品を展示しています。


最後は第3章「自然」です。人々が自然界をどのように認識してきたのかというテーマに着目し、は主に動物の形を模した工芸品を紹介します。

最初は、液体が口から出るユニークな器です。

リュトン 金、カーネリアン、石 アナトリア半島 前2千年紀前半

「リュトン」とは、古代ギリシア語の「流れる」を意味するそうです。
こちらはワインなどの飲み物を注ぎ、口の管から液体がでます。
こうした、動物を模して形成された酒器はエリート層の饗宴に好んで用いられました。
このほかにも様々な「リュトン」を展示していますが、ほとんどの「リュトン」は底が平らになっていないため、中身を飲み干してから逆さまにしておく必要があります。
高知県のおみやげ物屋さんでみかける「可杯」(べくはい)と似ていますね。

また、古代の装飾品のモチーフにも動物が多く使われていました。

左:首飾り 金 イラン 前6世紀後半~前5世紀
中:鼻飾り 金、ラピスラズリまたはソーダ石ほか ペルー 2~4世紀
右:首飾り 金 中央アジア 2~7世紀頃


左から、ヤギ、ネコ科の動物、竜に似た生き物がモチーフとなっています。
金などの重要な素材でその動物の重要性や畏敬の念を表したかったのでしょうか。

ほかには動物を愛でていたと思われる可愛らしい作品もございます。

クマ 金銅 前漢 前206~後25年

こちらはクマの像ですが、大型動物でさえもペットを愛でるような視点から表されていて、とても可愛らしいです。


ほかにも作品があり、本展は幅広い時代と地域の工芸品を一度に東洋館3室という1部屋でコンパクトに見ることのできるとても貴重な機会です。
しかも、総合文化展料金でご観覧いただけます。
会期は2020年2月9日(日)までです、ぜひお見逃しなく!

※作品は全て、ザ・アール・サーニ・コレクション所蔵

 

特別展「人、神、自然-ザ・アール・サーニ・コレクションの名品が語る古代世界-」

東洋館 3室
2019年11月6日(水) ~ 2020年2月9日(日)

 

カテゴリ:工芸2019年度の特別展

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posted by 柳澤想(広報室) at 2019年11月13日 (水)