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「正倉院の世界」展、後期の見どころ(後編)

こんにちは、今回の特別展を担当させて頂きました工芸室の三田です。
前編では「正倉院の世界」展後期展示、第1会場の見どころをご紹介いたしましたが、今回は第2会場の見どころをご紹介します。

まず、「作品No.71紫檀木画槽琵琶」です。こちらは正倉院に5面伝わる四絃琵琶の一つ。

正倉院宝物 紫檀木画槽琵琶 唐または奈良時代・8世紀

古代ペルシアに起源をもつ楽器で、胴部の捍撥には馬に乗って狩りをする人物や酒宴の様子など、エキゾチックな絵画が表わされています。
現在では黒ずんで見えにくいのですが、今回は正倉院事務所が制作された復元模写図を併せて展示します。
ところで、この琵琶の本当の見どころは背面なのです。
象牙や緑色に染めたシカの角を組み合わせて、蓮の花や舞飛ぶオシドリの姿が表わされています。
実際に演奏する時には見えなくなってしまう背面に、よくぞここまでの装飾を施したと感心しきりの逸品です。

そして、今回の特別展では、正倉院宝物と法隆寺献納宝物を同時に展示していますが、その目玉が「作品No.82 漆胡瓶」(正倉院宝物)と「作品No.83竜首水瓶」(法隆寺献納宝物)です。
   
正倉院宝物 漆胡瓶 唐または奈良時代・8世紀               


国宝 竜首水瓶 飛鳥時代・7世紀 東京国立博物館蔵(法隆寺献納宝物)

丸い胴体に細長い頸、片側に把手のついた水瓶は、「胡瓶」と呼ばれ、ササン朝ペルシアを中心とした古代西アジアに由来するものです。
正倉院のものはおそらく中国製と考えられ、漆の表面に銀の薄板を貼り付けて文様が表わされています。
その銀のパーツの細かいこと!可憐な草花や鳥、シカの文様が実に丁寧な仕事で表現されています。
一方の竜首水瓶は法隆寺献納宝物を代表する名品。
胴体にはギリシア・ローマ神話に登場する翼のある馬、天馬が足取りも軽やかに刻まれています。
この作品は文様表現や製作技法から飛鳥時代の日本で作られたものと考えられます。
西アジアを起源としたスタイルの器に、天馬の姿、そして注ぎ口は竜の頭という風に、まさにシルクロード各地の意匠を詰め込んだ、記念碑的な作品です。
現存する二つの「胡瓶」が出会う、歴史的な展示を是非ご覧ください。

そしてそして、忘れてならないとっておきが、「作品No.93白瑠璃碗」(正倉院宝物)と「作品No. 94白瑠璃碗」(トーハク蔵)も同時に展示していることです。

正倉院宝物 白瑠璃碗 ササン朝ペルシア・6世紀頃


重要文化財 白瑠璃碗 ササン朝ペルシア・6世紀頃 大阪府羽曳野市 伝安閑天皇陵古墳出土 東京国立博物館蔵 

トーハク所蔵のものは、江戸時代の半ばに大阪府羽曳野市の伝安閑天皇陵古墳から出土したものです。
どちらも6世紀頃にササン朝ペルシアの領域で作られたカットグラスです。
両者は昔から「兄弟」として親しまれてきましたが、実際に二つ並べて展示されるのは、これが史上初なのです!
「すいぶん懐かしいねー」とお話しているでしょうか。
実際に同じ工房で作られたかどうかは不明ですが、かなり近い環境で制作されたことは間違いないでしょう。
そっくりなようで、カットのデザインがやや異なる二つの白瑠璃碗。この機会にじっくりと見比べてみてください。

最後の最後ですが、後期の展示では「作品No.81 模造 伎楽面 迦楼羅」にもご注目ください。

模造 伎楽面 迦楼羅 令和元年(2019) 東京国立博物館蔵

去年の秋から、本特別展に間に合わせるべく、制作された復元模造作品です。
モデルとなったのは「作品No.79 伎楽面 迦楼羅」法隆寺献納宝物に伝来した、伝世作品としては世界最古の仮面の一つです。
トーハクと文化財活用センターの共同事業として、京都にある松久宗琳佛所に制作をお願いしたもので、私は監修にあたりました。

重要文化財 伎楽面 迦楼羅 飛鳥時代・7世紀 東京国立博物館蔵(法隆寺献納宝物)

今回が初公開でして、こんなにも飛鳥時代の色彩世界は鮮やかであったのかと、驚いていただければ幸いです。
なお、この伎楽面の詳しい制作手順などは『MUSEUM』 682号、および文化財活用センターウェブサイトから、ぶんかつブログ「よみがえった飛鳥の伎楽面!!」をご覧ください。

以上、長々とお話してきましたが、とても語り尽くせないほど、後期展示は魅力がいっぱいです。
是非とも足をお運び頂き、わが国が世界に誇る「正倉院の世界」に出合いに来てください。
新しい時代の始まりに際し、遠く古代の日本が国際社会の中で素晴らしい文化を取り入れて発展し、美の極致ともいうべき宝物群を未来に残してくれた、その類稀なセンスと努力を感じて頂ければと思います。
 

カテゴリ:「正倉院の世界-皇室がまもり伝えた美-」

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posted by 三田覚之(工芸室) at 2019年11月12日 (火)

 

 

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