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1089ブログ

時空を超えて、国宝集結!

トーハクでは「日本国宝展」(10月15日(水)~12月7日(日)平成館)を開催します。
4月4日(金)に報道発表会を行いました。

本展覧会担当研究員(そして広報室長!)・伊藤信二より、展覧会の見どころと各章の解説を、
調査研究課長・田良島哲より「国宝指定制度」についての解説をいたしました。


伊藤さん 田良島さん
(左)伊藤研究員、(右)田良島研究員(小さくてすみません。)


おっ!ひさしぶりの「日本国宝展」かあ!と思われた方。
長年にわたりトーハクを愛してくださって有難うございます。
実は当館では、1990年と2000年にも「日本国宝展」が開催され、合計で約120万人の方々にご来場いただきました。
14年ぶりに開催がかない、研究員も力が入っています。
もちろん、展示作品はすべて国宝!テンション上がりますね!


チラシ2 チラシ1 
「日本国宝展」チラシ。デザインは2パターン。4月下旬より配布開始。


展覧会のテーマは「祈り」。
チラシ(右)の国宝 勢至菩薩坐像(せいしぼさつざぞう)(平安時代・久安4年(1148) 京都・三千院蔵)も、
チラシ(左)の国宝 善財童子立像(ぜんざいどうじりゅうぞう)(鎌倉時代・建仁3年(1203) 奈良・安倍文殊院蔵)も、
合掌してお祈りしています。
このポスターを見るとなんだか癒される、と某広報室員が申しております。

人々の祈り、信じる力が、正しき、善き、美しき「かたち」を造り出しました。
その「かたち」が、長い間大切に継承され、現代になって「国のたから」としての価値を与えられました。
これらの作品から、私たちは何を感じ、何を学ぶのでしょうか。
気になる出品作品の一部をご紹介します。


合掌土偶
国宝 合掌土偶(がっしょうどぐう)
縄文時代(後期)・前2000年~前1000年 青森県八戸市風張1遺跡出土 八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館蔵


祈りの姿そのものとも言えるこの造形から「合掌土偶」と名付けられました。
膝の上でしっかりと手を合わせて、見上げるつぶらな目。キュンときます。
腕や足には補修されたような痕が残っています。人々がこの土偶を大切にしていたという証なのだそう。

現在、国宝の土偶は5件ありますが、そのうちの4件が出品予定!
4件が同時に見られるのは11月21日(金)~12月7日(日)です。メモメモ。


普賢菩薩
国宝 普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう)(部分)
平安時代・12世紀 東京国立博物館蔵
(展示期間:10月15日(水)~11月9日(日))


虚空から花が舞い降る空間に、美しい普賢菩薩が現れる。その瞬間が描かれています。
優美な作品が多い「普賢菩薩像」のなかでも屈指の名品。きっと、時を忘れて見とれてしまうことでしょう。
透き通るような白いきれいな肌にもご注目ください。羨ましいわ…


紅型
国宝 黄色地鳳凰瑞雲霞文様紅型紋紗衣装(きいろじほうおうずいうんかすみもんようびんがたもんしゃいしょう)
(琉球国王尚家関係資料のうち)
第二尚氏時代・18~19世紀 那覇市歴史博物館蔵
(展示期間:11月11日(火)~12月7日(日))


黄色地に、鳳凰、霞、瑞雲などが、紅型特有のあざやかな色彩で染め表されています。
制作には王府の絵師が携わっていて、熟練のわざが光っています。
絵柄の筆致や、染めの技法など、紅型のなかでも名高い衣装です。
黄色は琉球国尚王家のロイヤルカラーとされています。


そして!テンションMAX必須のこの作品が出品決定!


金印
国宝 金印(きんいん)
弥生時代・1世紀 福岡市東区志賀島出土 福岡市博物館蔵
(展示期間:11月18日(火)~11月30日(日))


かの有名な「漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」が印面に刻まれています。
日本史の授業で必ずやりましたよね!テストに出ましたよね!

「金印なら福岡市博物館に行けば見られるじゃないの。」

ああ!それを言っちゃいけません!
日本の国宝のうち、約8分の1が一度に見られるというのですから!わくわくしませんか?
きっと皆様が出会ったことのない国宝にも会えるはず。楽しみにしていてくださいね。

古くは縄文時代から江戸時代の作品まで、日本全国から国宝が集まります。
このほかにも、たくさんのトピックがあるので、今後も1089ブログでご紹介してまいります。

この展覧会を見ずして「日本」は語れません!「日本国宝展」、どうぞお楽しみに!

カテゴリ:研究員のイチオシnews2014年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2014年04月10日 (木)

 

建仁寺11代住職、蘭渓道隆の顔

特別展「栄西と建仁寺」(2014年3月25日(火)~5月18日(日))では、鎌倉時代から南北朝時代(13~14世紀)の禅僧の肖像彫刻を7体展示しています。すべて建仁寺の住職を務めた人です。個性的な顔はおそらく本人の風貌を写しているのでしょうが、実際のところは確かめようもありません。
ただし、同じ人物の像をまったく別々に造って、その両者がよく似ていたら、それは本人の容姿をかなり正確に写している可能性が高いと言えるでしょう。2体の像が似ていても、先行する1体を写して2体目が造られた場合と、同じものを写して造られた2体なら似ているのはあたりまえで、本人に似ているかどうかは不明です。ですから、似ている2体が別々に造られたものでなければなりません。

さて、今回の展覧会の事前調査で注目すべき発見がありました。
建仁寺境内にある西来院の蘭渓道隆坐像の像内に古い肖像彫刻の頭部が納入されていたのです。
 
蘭渓道隆坐像 延宝4年(1676) 康乗作 京都・西来院蔵
蘭渓道隆坐像 江戸時代・延宝4年(1676) 康乗作 京都・西来院蔵(会期中展示)

蘭渓道隆(1213-78)は中国から渡来した禅僧で、鎌倉・建長寺の開山、建仁寺の11代住職を歴任しました。中国式の禅を日本に植え付けた人です。


 
(左)蘭渓道隆坐像像内納入品 京都・西来院
(右)重要文化財  蘭渓道隆坐像(部分) 鎌倉時代・13世紀 鎌倉・建長寺

京都の建仁寺西来院で今回発見された頭部と、鎌倉の建長寺に伝わる蘭渓道隆像の顔を比べて見てください。(左)は目が大きく見えますが、本当は(右)と同じように落ち窪んでいた部分が破損して穴が広がってしまったのです。両者とも目が窪んで、頬骨が出て、頬はこけ、鼻の下が長く、顎がとがっています。左の顔は仮面のように頭部の前方部分しか残っていないので、耳の比較はできません。
側面から見てみましょう。


(左)蘭渓道隆坐像像内納入品 京都・西来院
(右)重要文化財  蘭渓道隆坐像(部分) 鎌倉時代・13世紀 鎌倉・建長寺

この2つの顔で特徴的なのは口です。下唇の方が前に出た受け口です。建長寺の像の方が大きく出ていますが。
 
 
(上)蘭渓道隆坐像像内納入品 京都・西来院
(下)重要文化財  蘭渓道隆坐像(部分) 鎌倉時代・13世紀 鎌倉・建長寺

上唇の端が少し上がっている点が特に個性的で、両者共通しています。
個性的な部分が共通するので、西来院の蘭渓道隆坐像に納入されていた顔(以下、西来院像とする)は蘭渓道隆のものと見ていいでしょう。

ではこの2つが原本と模写のような関係ではない証拠はどこにあるでしょう。
第一に、頭の形が違います。西来院像は角張っていて、建長寺像は尖っています。これはどちらかが正確に写していないということになります。
次に、技法的な差です。
 

蘭渓道隆坐像像内納入品 京都・西来院

西来院像の目は内側を刳って、目を貫通させてレンズ状の水晶を当てていたと考えられます。
裏面を見ると、刳っている様子がわかります。これが一般的な玉眼の技法です。


重要文化財  蘭渓道隆坐像(部分) 鎌倉時代・13世紀 鎌倉・建長寺

建長寺像は、瞳の部分にだけコンタクトレンズのように表から水晶を貼っています。中国の仏像が瞳にだけ黒い石やガラス玉を嵌めるのに似ています。
水晶を使うのは日本独自の手法なので、これは日本と中国の手法を折衷したものと言えるでしょう。

こうした違いは、恐らく西来院像は京都で、建長寺像は鎌倉で別々に造られたため生じたと考えることができます。蘭渓道隆の顔をかなり正確に写したから両者は似ているのでしょう。
建仁寺西来院の今回発見された頭部は、700年を超える歳月の中、戦乱や火災を潜り抜けて残ったもので、後頭部や体はいつの頃か失われてしまったのです。
像は、おそらく蘭渓道隆の没後あまり時を経ないうちに造られたと考えられます。
建仁寺には当初から建仁寺にあったことが明確な鎌倉時代の彫刻はこれまで知られていませんでした。その唯一の遺品として、今回あらたに建仁寺の宝物に加わると同時に、京都にある禅僧の肖像彫刻の最も古い作例の一つとしても注目に値します。

(注:西来院の蘭渓道隆坐像像内に納入された頭部は像から取り出せないため、展覧会では写真パネルで紹介しています。また、建長寺の蘭渓道隆坐像は出品していません。)

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 浅見龍介(京都国立博物館学芸部列品管理室長) at 2014年04月09日 (水)

 

友の会、パスポートなど会員制度が一部改定されます

東京国立博物館では、4月1日より皆様に今まで以上にトーハクに親しんでいただくために、友の会、パスポートなどの会員制度の一部を改めることにしました。
詳細は「会員制度、寄附・寄贈」のページに掲載されていますが、今回はこの中から特に大きな変更点を取り上げて説明いたします。

(1)ベーシック会員制度の新設
総合文化展を何度でも観覧いただける「ベーシック」を新たに設けました。年3回以上総合文化展に来館いただいているお客様にお得な会員です。
「博物館に初もうで」や「博物館でお花見を」、「博物館でアジアの旅」など季節ごとの企画展も含め、総合文化展はすべて無料で観覧いただけます。

ベーシック見本
新設されるベーシック会員証の見本

(2)パスポート、ベーシック 29歳以下割引制度の創設

若いトーハクファンにお気軽に来館いただけるように、パスポートとベーシックに29歳以下の割引制度を設けました。
パスポート、ベーシックについて、サービス内容はそのままに、29歳以下は30%割引になります。
4,100円→3,000円
1,500円→1,100円
なお、学生の方には引き続き、学割制度を設けています。

(3)友の会会員、賛助会員の皆様へ 総合文化展招待券をプレゼント
友の会会員・賛助会員に新規ご加入いただいた皆様に、トーハクの魅力をご家族、ご友人にも紹介いただきたく、総合文化展の招待券を差し上げることにしました。


他にも賛助会の拡充や友の会継続割引の導入など、様々な面でサービスの拡充を図っております。
ご不明点は、ウェブサイトや館内配布のパンフレットをご覧いただくか、会員制度担当までお気軽にご相談ください。

4月15日の正門プラザの開館と同時に、正門前に会員専用窓口が開設され、同日にインターネットでの電子決済による申し込みも開始されます。
賛助会を含め、すべての会員への申し込みが可能となりますので、ぜひご活用ください。

今後とも東京国立博物館をよろしくお願いいたします。


 

カテゴリ:news

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posted by 関谷泰弘(総務課) at 2014年03月31日 (月)

 

桜に思いをこめて、桜ワークショップ

毎年恒例の「博物館でお花見を」が始まりました。
もう少しすれば、博物館の庭園で、ソメイヨシノだけではない、多くの種類の桜を見ることができます。
花の咲く時期はもちろん、形、色合いもことなります。
トーハクのお花見はこれだけではありません。
この時期になると、本館の展示室には桜を表した作品が多く展示され、様ざまなイベントが開催されます。
まさに日本美術の殿堂・トーハクならではの世界一贅沢なお花見です。

本館では、時代を越えて、作品のジャンルを越えて桜が表された作品が作られ伝えられてきたことに驚きます。


桜の種類も描き方も全く違う!
(左) 色絵桜樹図皿  鍋島 江戸時代・18世紀(本館13室にて5月25日(日)まで展示)
(右) 八重桜  歌川広重筆  江戸時代・19世紀(本館10室にて4月20日(日)まで展示)


それをみて思うのは、日本人は本当に桜が好きなんだなぁ、ということ。
蕾が膨らむと本格的な春の訪れに心が躍り、満開の桜の下でお花見を楽しみ、散り行く姿に儚さを覚え、地に積もる花びらに雪を思い出し、葉桜にはやってくる夏を感じる。
日本人は様ざまな桜の姿を愛でてきたのでしょう。
そしてその姿を作品に表しました。


桜にどんな思いをこめて表したのか、どんな色や描き方であらわしたのかに注目し、自分だったらどう描いたかを想像するのも作品を楽しむためのポイントでしょう。
そこで今回、「桜ワークショップ ぬり絵 日本のデザイン、色づかい」を開催します。
3月29日(土)、30日(日)、4月5日(土)、6日(日)の4日間、11時~15時限定の企画(平成館ラウンジ)です。
展示作品をもとに、オリジナルぬり絵ポストカード4種類をつくりました。


作品とぬり絵シート。同じものが描かれているのに色がないだけで印象が違う!
(左)袱紗 萌黄繻子地桜樹孔雀模様 江戸時代・19世紀(本館10室にて4月20日(日)まで展示)

皆さんだったら、展示作品をどのような色で描くでしょうか。
もちろん、本館で桜スタンプラリーを楽しみながらの作品鑑賞や庭園散策の前でも後でも結構です。
ぜひ、作者が桜にこめた思いや表現方法を考えながら、皆さんも思いをこめてぬり絵に挑戦してください。

※ワークショップ詳細はこちら。各日とも、お一人様1枚限り、ぬり絵シートがなくなり次第終了となりますのでご注意下さい。
 

カテゴリ:教育普及博物館でお花見を

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2014年03月28日 (金)

 

特別展「栄西と建仁寺」開幕!

開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展「栄西と建仁寺」が開幕しました!

3月24日には、 一般公開に先立って報道内覧会と開会式が行われ、
ご来賓の方々をはじめ1300人を超すお客様においでいただきました。



いよいよ開幕したこの春注目の展覧会。
せっかくの機会ですので、会場の中を少しだけご紹介しましょう。

まず展覧会入り口で、皆様をお出迎えしてくださるのは…


明庵栄西(みんなんようさい)坐像 鎌倉時代・13~14世紀 神奈川・寿福寺蔵

栄西さんの坐像です。
展覧会広報においては、"風神雷神"が大活躍していますが、本展は栄西禅師800年遠忌の展覧会。
展覧会前半では、まず栄西さんのひととなりに触れることができます。

さてこのお像、注目すべきは、大きく、四角く、てっぺんが平らという特徴的な頭。
厳しい修行の末、一度見たものは忘れない超記憶法(?)を修めていたといわれる栄西さん。
大きな頭はその象徴。きっと知恵がいっぱいに詰まっていたに違いありません。
あれこれ仕事に追い回されて、七転び八起きを繰り返す私なぞ、もう思わず拝んでしまいます。
本当に…本当に…あやかりたいものです。

そのまま第1室を進むと見えてくるのは、展示室の中に再現された建仁寺の方丈。


四頭茶会茶道具 中国 明時代・16~17世紀/江戸時代・17~18世紀 京都・建仁寺蔵

日本に喫茶法を広めた「茶祖」としても知られる栄西。
この展示は、その栄西の誕生を祝して毎年4月20日に建仁寺で行われる四頭茶会の様子を
道具や設えをそのまま使って再現した、本展の見どころのひとつです。


また、展覧会の事前調査で、像内部に納入物が見つかった「蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)坐像」も本展注目の作品。


蘭渓道隆坐像 康乗作 江戸時代・延宝4年(1676) 京都・西来院蔵

納入物の古い肖像彫刻の残欠は残念ながら取り出してみることはできませんが、パネルでの解説を行っています。
(本ブログでも、今回の新発見の内容をご紹介予定。乞うご期待!)


さらに進んで、展覧会後半には今回の目玉となる、


重文 雲龍図(左4福) 海北友松(かいほうゆうしょう)筆 安土桃山時代・慶長4年(1599)京都・建仁寺


国宝 風神雷神図屏風 俵屋宗達筆 江戸時代・17世紀 京都・建仁寺蔵

などなど見どころが目白押しですが、私がオススメしたいのは、この小野篁立像。


小野篁・冥官・獄卒立像 院達作 江戸時代・17世紀 京都・六道珍皇寺蔵

両側に冥官と獄卒を従えた、2mを超える堂々としたお像です。
恐る恐る顔を下から見上げると、玉眼がギラリと光った気がして、なにやら背筋がピンとなりました。
昼は朝廷に仕えながら、夜は閻魔大王の副官をしていたとの逸話も残る篁。
ふと、「さて、何か篁さんに怒られるようなことはしていなかったかな」と、
ここ数日のわが身を振り返ったところ、
ギラリと光る上司の目が思い出されて、再度、なにやら背筋がピンとなりました。

さて、今回は広報室員の個人的な感想も含めた展覧会場のご案内でしたが、
今後、当ブログでは特別展「栄西と建仁寺」の見どころについて研究員がご紹介していく予定です。

皆様におかれましてはぜひ、実際の展示とあわせてお楽しみいただければ幸いです。

 

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 田村淳朗(広報室) at 2014年03月26日 (水)