トーハクで建築探訪~東洋館~
トーハクの正門を入って右手にある、シンプルですっきりとしたモダニズム建築。
現在「博物館でアジアの旅」を開催中の東洋館です。
東洋古美術の所蔵品を展示する施設として建設が計画され、1968(昭和43)年に開館しました。
前回紹介した法隆寺宝物館を設計した谷口吉生の父で、東京国立博物館評議員でもあった谷口吉郎の設計によります。
外観は奈良の正倉院をイメージし、緩やかな勾配の切妻屋根、正面の列柱、周囲にめぐらせた庇を兼ねる大きな広縁など、伝統的な日本建築の要素が盛り込まれています。
広縁(テラス)は休憩スペースになっており、構内を一望できるスポットです。
地下1階VRシアター入口への階段を降りると、そこはサンクンガーデンになっています。
内部は、地下1階、地上5階を半階ずつ上がっていくスキップフロア構造が特徴的です。
2013(平成25)年1月のリニューアルオープン時より、「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトにした展示構成となりました。
1室に入ると、巨大な中国の石仏とともに、5階まで吹き抜けの天井に目を奪われます。
(遠景の赤いちょうちんは現在開催中の「博物館でアジアの旅」の装飾です)
3室はエジプトの神殿をイメージ。中央にはミイラが眠ります。
大きく弧を描く青銅器の展示ケースが圧巻の5室。
リニューアルの際には、建築家への敬意を忘れず、壁のタイルや、壁や柱に付けられた照明器具についてもその意匠を継承しています。
よく見ると、横に3本のスジが入っているタイル。既存のものと色や形が合うものを新たに製作するのはなかなか困難でした。
その製作の様子は「生まれ変わった東洋館!~タイル編~ (2012年6月の記事)」をご覧ください。
壁や柱の照明器具も建築当時のものをそのまま使用。内部をクリーニングし、光源をLED化しました。
外観に派手さはありませんが、一歩、足を踏み入れると崇高な建築空間が広がります。
ゆったりと旅行気分で、アジアの悠久の美に思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。
最上階から眺めると、神殿のようにも見えてきます
カテゴリ:展示環境・たてもの
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posted by 奥田 緑(広報室) at 2016年09月09日 (金)