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鏡の裏でキスしているのは? ―特集陳列「和鏡」―

4月26日(火)から、本館14室で特集陳列「和鏡(わきょう)-鏡に表された文様の雅」が始まりました。

江戸時代以前は、鏡といえば銅製で、鏡面をピカピカに磨いて像を映し、背面にはさまざまな文様を表すのが常でした。東博は古鏡の宝庫。その中から奈良~江戸時代までの日本の銅鏡35点を選りすぐり、ご紹介しています。

文様の中には、真ん中に亀の形の鈕(つまみ)、その周囲に2羽の鳥が飛んでいる形式のものが多くあります。そこで、展示室では鈕と鳥の位置にぜひ注目してください。

平安時代11~12世紀の鏡

2羽の鳳凰が、中央の鈕(つまみ)を挟んで、ほぼ左右対称に配置されています。


室町時代15世紀の鏡

向かい合う2羽の孔雀は、かなり接近しています。

 

 室町時代15世紀の鏡

鈕の亀と2羽の鶴が、クチバシをくっつけています。
「接吻鶴」(せっぷんづる)ともよばれます。

時代が下るにつれてだんだん接近していき、最後にはキスしてしまうのです。これは、鏡の製作年代を判断するポイントの一つでもあります。

7月10日(日)まで。詳細はこちら

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posted by 伊藤信二(教育普及室長) at 2011年05月04日 (水)

 

4年ぶりの見返り美人

切手でもよく知られる菱川師宣(ひしかわもろのぶ)の「見返り美人図」が、現在本館10室で展示されています。
当館での公開は、実に約4年ぶりとなります。

筆者の菱川師宣(?~1694)は、安房(現在の千葉県)に生まれた浮世絵の祖といわれる人物です。
版本挿絵や肉筆画を手がけた師宣ですが、中でも特に有名なのが、この「見返り美人図」でしょう。

後ろ向きの女性がふっと顔を振り向かせるお馴染のポーズ。
この構図により、「玉結び」といわれる髪型や簪(かんざし)、桜や菊を散らした緋色の鮮やかな着物、そして「吉弥(きちや)結び」の帯までを見ることができるのです。
そんな元禄のお洒落なファッションにも、ぜひご注目ください。


元禄文化の風を今に伝える「見返り美人図」の公開は5月22日(日)まで。
この機会をぜひお見逃しなく。

ちなみに、師宣の作品は、特別展「写楽」でも展示中です。
写楽が鮮烈なデビューを果たした寛政6年(1794)は、菱川師宣が亡くなってちょうど百年後。
写楽展と本館10室を合わせて御覧いただくと、美人画や役者絵の流れをよりお楽しみいただけます。
 

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posted by 大橋美織(絵画・彫刻室) at 2011年05月02日 (月)

 

“いやし”と“パワー”の特集陳列

”いやし”と”パワー”の特集陳列「南太平洋の暮らしと祈り」

南太平洋の人々が使っていた伝統的な生活や信仰にかかわる作品を集めた特集陳列(本館2階の特別2室)が、今週日曜24日に最終日を迎えます。

素朴な造形が見るものをなごませたり、生命力あふれる宗教彫刻からパワーを感じたりと、作品によってさまざまな魅力をお楽しみいただけます。

ここでは、そのなかでもとくに注目の作品をご紹介します。 

まず、木をくりぬいて作ったココナッツジュース容器。

 

前足、後足を広げたトカゲの像がふたにへばりついています。愛らしい表情の顔には、貝殻を削って作った目をはめこんでいます。赤茶色に塗られた容器全体にも、トカゲの目と同じ種類の貝殻で作った飾りをちりばめています。

 

ワニの木彫は迫真の出来栄えです。大きな口からのぞいた牙や、見開いた目は、静かに獲物を狙い定めているようです。それでいてどこか愛嬌が漂うのは、全身のウロコを赤や黄色でカラフルに彩色しているためでしょうか。ワニを祖先として崇拝するニューギニア島の部族が、神聖な建物のなかに安置していたものと考えられます。

 

高さ2メートル40センチを超える大型の木彫は、展示ケースの天井に着きそうなほどです。中心の円盤状部分をはさんで黒い鳥が向き合い、その下には白を基調にした女性像、上には黒を基調にした男性像を配置しています。本作は葬儀のときに祈祷所に立てた飾りで、男女の像はそれぞれ先祖あるいは死者の姿を表したものと考えられます。透かし彫りを随所に施しており、その技巧の細かさには驚かされます。

  

特集陳列「南太平洋の暮らしと祈り」の会期は今週末の4月24日(日)まで。

この機会をぜひお見逃しなく。

リーフレットの表紙

会場では無料でリーフレットを配布しています。

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posted by 川村佳男(学芸研究部保存修復課) at 2011年04月22日 (金)