特別展「和様の書」を楽しむために─入門編2 三跡とは?
特別展「和様の書」(2013年7月13日(土)~9月8日(日)、平成館)の開催に向けて、
いま、いろいろと準備しているところです。
和様の書、といえば、
まずは、三跡(さんせき)です。
和様の書は、三跡(さんせき)の時期に成立しました。
三跡とは、
小野道風(おののとうふう、894~966)
藤原佐理(ふじわらのさり、944~98)
藤原行成(ふじわらのこうぜい、972~1027)
の三人です。
小野道風は、
中国・王羲之の書を学び、そこから和様の書の基礎を築きました。
能書として活躍し、生存中から「王羲之の生まれかわり」と言われたほどです。
藤原佐理は、道風と同時代を生きて、
王羲之も学び、道風の書の影響も見られます。
そして、藤原行成。
行成は、道風の没後に生れていますが、とても道風にあこがれていました。
行成の日記『権記』に、
「此夜夢逢野道風、示云、可授書法、言談雑事、」とあります。
これは、夢で道風に逢った。道風から書法を授けると言われて、雑談をした、
と言っています。
行成にとって道風は、夢に見るほどの存在だったのです。
行成は、道風の書を学び、和様の書を確立させました。
行成の子孫が、世尊寺家という能書の家系として、
平安時代の和様の書を担っていくことになります。
この三跡の書が、
特別展「和様の書」に大集結することになっています!
国宝 円珍贈法印大和尚位並智証大師謚号勅書 小野道風筆 平安時代・延長5年(927) 東京国立博物館蔵
[展示期間:2013年7月13日(土)~9月8日(日)]
道風は、
当館所蔵の国宝「円珍贈法印大和尚位並智証大師謚号勅書」はもちろん、
唯一の楷書である、あの作品や、
『白氏文集』(はくしもんじゅう)が揮毫された、あの作品など。
書状(国申文帖) 藤原佐理筆 平安時代・天元5年(982) 春敬記念書道文庫蔵
[展示期間:2013年7月13日(土)~7月28日(日)]
佐理は、
最古の詩懐紙として有名な、国宝「詩懐紙」(香川県立ミュージアム所蔵)や
書状が、勢ぞろいします!
佐理の書状は、わびる内容のものが多いですが、
おわびされた人も、あまりの書の美しさに、許したでしょうか?
国宝 白氏詩巻 藤原行成筆 平安時代・寛仁2年(1018) 東京国立博物館蔵
[展示期間:2013年7月13日(土)~9月8日(日)]
そして、行成。
当館自慢の国宝「白氏詩巻」はもちろんゆっくりご堪能いただけます。
ほかにも、展覧会初公開のあの文書や
行成の花押(かおう)の入った「書状」(重要文化財、個人蔵)も。
行成のあこがれた道風、
おわびする書状が大切に残された佐理、
三人とも、後世の我々にとっては、また、和様の書にとっては、
かけがえのない存在です。
三跡の貴重な書は、展示期間の制限もありますので、
途中で展示替のものばかりです。
全部、見て欲しい。
こんなに集まるのは二度とないかもしれません。
カテゴリ:2013年度の特別展
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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2013年06月03日 (月)