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美術解剖学のことば 第5回「久米桂一郎先生にご挨拶とご報告」

トーハクには、1890年(明治23年)に久米桂一郎が描いた油彩画の習作「裸婦」が所蔵されています。 
久米の油彩画は トーハクではこの1点のみですが、
今回の特集陳列では、残念ながら調整がつかず展示することがかないませんでした。
次回の展示機会には、久米の最高傑作の1点を、どうぞお見逃しなく!

裸婦 久米桂一郎筆  明治23年(1890)
裸婦 久米桂一郎筆  明治23年(1890) (展示は未定)

その代わりというわけではありませんが、「裸婦立像(習作)」(1889(明治22)年)を、
久米美術館(久米桂一郎コーナーもご参照ください)からお借りし、
黒田清輝の裸婦・裸体の油彩画と対置して展示することで、
本展の意図することが達成できましたことを、この場であらためて感謝申し上げます。 

裸婦立像 久米桂一郎筆  明治22年(1889) 東京・久米美術館蔵
裸婦立像 久米桂一郎筆  明治22年(1889) 東京・久米美術館蔵
(特集陳列「美術解剖学―人のかたちの学び」にて展示中)

というわけで、トーハクから徒歩5分の東京藝術大学・美術学部構内に居らっしゃる、
久米桂一郎先生にご挨拶と、ようやく公開スタートできたことの報告をしてきました。
といってもご存命ではない久米先生の《胸像》にご挨拶です。(学食・大浦食堂近くです)

久米桂一郎胸像
久米桂一郎 胸像(東京藝術大学・美術学部構内)


久米先生への僕の感謝のことばを「美術解剖学のことば」としてもいいのですが、
今回は久米桂一郎の美術解剖学分野とのかかわりを、とても豊富な画像・情報と、
深く、読み応えのあるテキストで紹介している、3冊の書籍を紹介します。

◆1冊目は、今回の特集陳列に際し、最も参考とさせていただいた、
『美術解剖学の流れ 森鷗外・久米桂一郎から現代まで 美の内景』 展 図録
(1998(平成10)年7月11日~9月15日 久米美術館発行)

◆2冊目は、今回出品されている「裸婦・裸体素描」を含む、久米の作品を全て掲載している
『久米桂一郎作品目録』 (2000(平成12)年 久米美術館発行) です。

◆3冊は、『方眼美術論』 (久米桂一郎著 1983(昭和59)年 中央公論美術出版)です。
「亡友黒田清輝とフランスに居た頃」の項から抜粋します。

モン・ルウジュの大市場に近い淋しい町に、アンスチテユウシヨン・ミルマンを尋ねて行って、
始めて黒田に逢った時は、丸々とした元気の好いおとなしい少年であった。
(中略)
八七年(1887年)の秋頃ポール・ロワヤルの市場の隣家に住むことになり、
小さな台所も附いているから、近所に居る友達が集まって、
牛鍋で日本飯を会食することも度々あった。
それ以来場処は二三変わったけれど、いつも黒田と合同生活をして、
一八九三年に帰朝するまで、巴里に居るときは最後まで一緒に暮らした。


本展に展示している「裸婦・裸体習作」を稽古した1887年の巴里で、
友達と集まって、「牛鍋で日本飯を会食」とは、
久米と黒田の何とハイカラな青春時代の一幕ではないですか!

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 木下史青(デザイン室長) at 2012年07月21日 (土)