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自由研究応援イベント「見て、知って、歩いて、伊能図を体感しよう!」

トーハクのTNM&TOPPANミュージアムシアターでは、よりわかりやすく文化財に親しめるよう、ナビゲーターの案内によるバーチャルリアリティー(VR)映像の上演を行っています。通常は入館料とシアター観覧料は別なのですが、夏休み期間(7月16日~8月31日)は小・中学生料金を無料としています。ぜひこの機会に足を運んでください。


期間中の上演作品は「DOGU 縄文人が込めたメッセージ」と「伊能忠敬の日本図」。どちらもお子様が楽しめる内容となっていますが、「伊能忠敬の日本図」では、さらに自由研究応援として「見て、知って、歩いて、伊能図を体感しよう!」と題した親子向けのイベントを用意。楽しみながら学べるので、夏休みの自由研究にぴったりです。
ぜひ皆さんにも体験していただいきたいので、実際の様子を交えて紹介したいと思います。


VR作品「伊能忠敬の日本図」
2014年7月1日(火)~2014年8月31日(日)
伊能図は江戸時代後期に伊能忠敬が全国を歩き回って作り上げた、当時としては世界的にも精度の高い地図でした。
ミュージアムシアターでは、伊能図の全体像や背景と同時に、実際の伊能忠敬の測量方法を、ナビゲーターの実演を交えてわかりやすく解説。測量の際に目印として使用した梵天も登場します。

シアター上演作品より
シアターではおなじみのキャラクターも登場!

インタラクティブ映像展示「不思議なライトで伊能図を見てみよう!」
2014年7月16日(火)~ 2014年8月31日(日)
ミュージアムシアター前では伊能忠敬による重要文化財「日本沿海輿地図(中図)」をスクリーンに投影しています。
そこに懐中電灯型のライトを当てると、あら不思議!現代の地図がうかびあがり、伊能図の精度の高さを実感することができます。

インタラクティブ映像展示
 光をあてると何が見えるかな?


伊能忠敬 歩測ワークショップ「めざせ伊能忠敬!トーハクをはかろう!」

2014年8月1日(金)~3日(日)2014年8月15日(金)~17日(日)
伊能忠敬が主に用いた測量法は歩いて測る「歩測」です。そのため、忠敬はいつでも同じ歩幅で歩けるよう日々訓練していたそうです。
歩測ワークショップでは、実際に自分の歩幅を測ってから歩く「歩測」を体験し、伊能忠敬の偉業を実感することができます。

歩測ワークショップ   歩測ワークショップ
一歩は何センチかな?   実際に歩いてみよう!


特集「伊能忠敬の日本図」
平成館 企画展示室   2014年6月24日(火)~ 2014年8月17日(日)
歩測を体験したあとは、実際の作品を見てみましょう。平成館1階企画展示室では、伊能忠敬が作成した地図の実物が見られます。

特集「伊能忠敬の日本図」
実物を見ると忠敬の苦労がわかるかも


伊能忠敬は日本全国を歩いて正確な日本地図を作りました。それは気が遠くなるような途方もない作業だったと思います。
今回のイベントを通して、忠敬が成し遂げた日本地図作成を親子で楽しみながら、少しでも関心を持っていただけばと考えています。また、夏休みの自由研究のヒントになればうれしいです。

 
 

カテゴリ:news教育普及催し物

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posted by 関谷泰弘(総務課) at 2014年07月30日 (水)

 

本日スタート! 趙之謙の書画と北魏の書-悲盦没後130年-

本日より、東京国立博物館と台東区立書道博物館との連携企画、特集「趙之謙の書画と北魏の書-悲盦没後130年-」が東洋館8室で始まりました。これに先立ち、7月28日(月)には報道内覧会を開催し、多くの報道関係者にお越しいただきました。

趙之謙(ちょうしけん)は、清時代の中期、新しい書風を確立し、日本にもファンの多い書家の1人です。
裕福な家庭に生まれるものの10代には貧困を余儀なくされ、その後勉学に励みながら結婚するも、荒れた時代を背景に妻子をなくし絶望を味わうことになります。
ここで趙家の復興を誓い、高級官僚になるべく何度も試験に挑戦しますが、落第を繰り返すばかり。
やがては地方官として赴任しますが、それまでの過労がたたり56歳で生涯の幕を閉じるという、まさに波乱万丈の人生を送った人でした。

このような生涯を送った趙之謙は、多くの書の名作を残しました。
彼は受験のため北京に滞在しますが、滞在中に北魏時代の書に心酔し、後に「北魏書」と呼ばれる独特で新しい表現の確立に至るのです。
これこそが、その後の書家に多大な影響を与え、みなの心を虜にし、趙之謙の名を現在にも残すことになった理由です。

自身が特に気に入ったという肖像画から始まり、中には50年ぶりに展示が叶ったもの、同じ題材ながら所蔵の違う2件が並べられるなど、それはそれは見ごたえのある北魏の書の空間になっています。



後ろに見える作品はどちらも「四時花卉図四屏」といい、趙之謙が42歳(1870年)のときの作品です。右の4幅はトーハクが所蔵し、左の4幅は大阪市立美術館が所蔵しています。

同じ期間中、台東区立書道博物館でも同名の展覧会が開催されています。
皆さんもぜひ、両館を通して彼の生涯とその魅力をご堪能ください。

特集「趙之謙の書画と北魏の書-悲盦没後130年-
東洋館 8室 2014年7月29日(火) ~ 2014年9月28日(日)
(前期:7月29日~8月24日、後期:8月26日~9月28日)

台東区立書道博物館 特別展「趙之謙の書画と北魏の書-悲盦没後130年-
中村不折記念館 2014年7月29日(火) ~ 9月28日(日)
(前期:7月29日~8月24日、後期:8月26日~9月28日)

 

カテゴリ:news中国の絵画・書跡

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posted by 宇野裕喜(広報室) at 2014年07月29日 (火)

 

「翠玉白菜」への道

特別展「台北 國立故宮博物院ー神品至宝ー」の目玉のひとつ「翠玉白菜」(以下、白菜)は7月7日(月)で展示を終了しました。現在、白菜は展示されていませんが、作品をさらにじっくりとご鑑賞いただけるようになった今こそ、実は白菜の魅力をより深く知っていただくチャンスなのです。


中国で愛されつづけた玉の「ツヤ」

白菜の最大の魅力のひとつは、なんといっても「色」です。翡翠(ひすい)という石の緑の部分と白の部分を巧みに彫り分けて、一切着色することなく、白菜を本物そっくりに表現しています。


翠玉白菜(すいぎょくはくさい) 翡翠 清時代・18-19世紀 國立故宮博物院蔵 
※展示は終了いたしました

中国では、古来、「玉(ぎょく)」という美しい石をさまざまな形に彫り上げる工芸が発達しました。玉器工芸でいちばん重要だったのは、白菜のような「色」ではなく、「ツヤ」でした。
会場の前半部分に展示した玉器は、おもに宋時代(960-1279)のもの。これらの作品は、玉器の「ツヤ」が本来どのようなものであったのかをよく示しています。


鳳柄玉洗(ほうへいぎょくせん) 軟玉 南宋-元時代・12-14世紀 國立故宮博物院蔵
展示台の下に鏡を仕込んで底裏を見せています。


同 鏡に映った底部

鉱石でありながら、水気を含んでいるかのような温和な光沢。ゼラチンにも似た柔らかい透明感。光を当てるとわかるこの「ツヤ」こそ、中国の人々が愛しつづけた玉器の「生命」ともいえる質感だったのです。


龍文玉盤(りゅうもんぎょくばん) 軟玉 北宋または遼時代・10-11世紀 國立故宮博物院蔵


同 部分


中国での玉の愛好は約8千年前の新石器時代にまで遡ります。会場の後半部分では、新石器時代のものを含む太古の玉器もご覧いただけます。


会場後半にある玉器の展示

黄緑・緑・白など色はそれぞれ異なっていて、しかも、単色のものばかりですが、どの玉器も例の「ツヤ」をたたえています。


「ツヤ」から「色」へ

それでは、色よりツヤのほうが重要だった玉器に、どうして翠玉白菜のようなツートンカラーのものが出てくるのでしょうか。
今日、中国で玉と呼ばれる石材は、大きくふたつのグループに分けることができます。ひとつは「軟玉」。もうひとつは「硬玉」で、白菜の石材・翡翠も硬玉です。中国でもともと採れたのは軟玉で、潤いをたたえたあの神秘的なツヤに特徴があります。ところが、18世紀に清朝の版図が拡大すると、新しい玉材が中国にもたらされるようになりました。硬玉(翡翠)は、今日のミャンマーから運ばれてきました。鮮やかな色彩や、時おり複数の色をそなえた翡翠は、中国の人々をまたたく間に魅了しました。


おわりに 「翠玉白菜」への道

翠玉白菜の誕生には、中国における約8千年もの玉器愛好の歴史、そして250年前に起きたある変化が関わっていました。それは玉器に「ツヤ」ではなく、「色」を求めるという価値観の一大変革でした。
「神品至宝」展の会場では、新石器時代の玉器から翠玉白菜に代表される清代の玉器までの道のりを辿ることができます。白菜をご覧になった方もそうでない方も、玉器本来の神髄である柔和な光沢をその目でぜひお確かめください。白菜のはるかなる淵源に思いをめぐらせていただければ、あの緑と白の色彩が心の中でいっそう鮮明に映えることでしょう。



おまけ

それでも白菜が恋しいという方は、会場の最後に展示した「人と熊」にご注目ください。


人と熊 軟玉 清時代・18-19世紀 國立故宮博物院蔵

玉材の白い部分を人物、黒い部分を熊に彫り分けています。玉材がもつ天然の「色」を造形に活かした技法は翠玉白菜とまったく同じ。突き出たお尻と表情は愛らしく、見るものの心を癒します。


同 (別角度)

故宮での人気も上昇中で、白菜や肉形石につづく「次世代アイドル」として注目を集めています。

さらに、東洋館5階「清時代の工芸」に展示した「瑪瑙石榴(めのうざくろ)」もまた翠玉白菜と同じ技法によるものです。


瑪瑙石榴 瑪瑙 清時代・18-19世紀 東京国立博物館蔵

石榴の割れ口からのぞいた赤い果肉の一粒一粒まで本物そっくり。その迫真ぶりは決して白菜に引けを取りません。「故宮に白菜あれば、トーハクに石榴あり!」特別展のチケットで、東洋館を含む総合文化展も自由にご観覧いただけます。いまのうちにぜひトーハクの「次世代アイドル」(?)もチェックしてみてはいかがでしょうか。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 川村佳男(平常展調整室主任研究員) at 2014年07月28日 (月)

 

特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」20万人達成!!

特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」(6月24日(火)~9月15日(月・祝))は、
7月25日(金)午前に20万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただきましたこと、心より御礼申し上げます。

20万人目のお客様は、目黒区よりお越しの小学6年生 辻仁志君です。
仁志君は、お母さんの智子さん、妹の祐里佳さんとご来場されました。
辻さん親子には、東京国立博物館長 銭谷眞美より、特別展図録と記念品を贈呈しました。


20万人セレモニー
特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」20万人セレモニー
辻さん親子と館長の銭谷眞美(右)
7月25日(金)東京国立博物館 平成館エントランスにて



お母さんの智子さんからは、
「びっくりしました。今日は、NHKで放送されていた特番を見て、本物を見たいと思って来ました。
 藍地描金粉彩游魚文回転瓶(らんじびょうきんふんさいゆうぎょもんかいてんへい)などをとくに楽しみにしています。」と、お話いただきました。
 

8月3日(日)で前期展示が終了し、8月5日(火)からは、書の目玉作品、蘇軾(そしょく)筆「行書黄州寒食詩巻(ぎょうしょこうしゅうかんしょくしかん)」が展示されます。
この作品は東京国立博物館のみの展示となりますので、お見逃しのないよう、ご来館をお待ちしています。

 

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 田村淳朗(広報室) at 2014年07月25日 (金)

 

記念シンポジウム「中国皇帝コレクションの意味-書画における復古と革新-」が開かれました

歴史的大展覧会・特別展「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」の開催を記念して、国際シンポジウム「中国皇帝コレクションの意味」-書画における復古と革新-」が、7月5日から6日の2日間にわたって開催されました。
 


まず、銭谷眞美 東京国立博物館長からご挨拶を申し上げたあと、馮明珠 國立故宮博物院院長からのメッセージが代読され、基調講演が行われました。



何傳馨氏(國立故宮博物院副院長)「國立故宮博物院書画コレクションの淵源」 


草書書譜巻(そうしょしょふかん)(部分) 孫過庭筆 唐時代・垂拱3年(687)  
~8月3日(日) 東京国立博物館のみで展示

最新の光学的調査の結果を踏まえながら、故宮コレクションの歴史が、書画に捺されている収蔵印と、貴重な画像から解き明かされていきました。書法史を中心としたひろく中国文化史を研究する何副院長のご講演は、書画の伝来を通じて中国の歴史や思想にまで及ぶ、広範な内容を扱うもので、現在の故宮コレクションがどのような意味を持っているのかを、何先生独自の典雅な口調で教えていただきました。
セッション1は「唐から宋へ、中国から日本へ」と題して、日本と中国の文化交流に焦点をあてた内容です。



丸山猶計(九州国立博物館)「王羲之と小野道風」



定武蘭亭序巻(ていぶらんていじょかん) 王羲之筆 原本:東晋時代 永和九年(353) 
10月7日(火)~11月30日(日) 九州国立博物館のみ展示


王羲之書法の特質である流麗な筆法は古くから日本でも愛された過程について、細かな文献的な例証と実例をもとに述べられました。王羲之の書法が、先般おこなわれて大好評を博した「和様の書」の源流でもあったなんて、日本と中国の深い縁を感じますね。



塚本麿充(東京国立博物館)
「皇帝コレクションにおける模写・模造事業―乾隆帝の書画コレクションと狩野派―」



桃花図頁(とうかずけつ) 南宋時代・13世紀 
全期間 東京国立博物館のみ展示


杏花図頁(きょうかずけつ) 馬遠筆 南宋時代・13世紀 
全期間 東京国立博物館のみ展示


18世紀における清朝宮廷と狩野派の模写事業のそれぞれの特質が明らかにされ、この展覧会を機会に同じアジアの博物館としての東博と故宮のコレクション比較研究が進展していくことへの希望が述べられました。



畑靖紀(九州国立博物館)「徽宗と義満―日本における皇帝コレクションの意味―」


子穌鐘(しそしょう) 春秋時代・前7~前6世紀 
全期間 東京国立博物館・九州国立博物館で展示



楷書牡丹詩帖頁(かいしょぼたんしちょうけつ) 徽宗 北宋時代・12世紀 
~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみ展示


足利将軍家のコレクションである東山御物の成立と、北宋の徽宗コレクションが密接な関係をもっていることが述べられました。日本でも国宝になっている多くの中国書画ですが、そのコレクションの淵源は北宋にあったんですね。今後、ますます研究の進展が期待されます。



弓野隆之氏(大阪市立美術館)
「蘇軾「寒食帖」と米芾「草聖帖」―台北と大阪を結ぶ縁」



行書黄州寒食詩巻(ぎょうしょこうしゅうかんしょくしかん) 蘇軾筆 北宋時代・11~12世紀 
8月5日(火)~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみ展示



草書論書帖頁(草聖帖)(そうしょろんじょじょうけつ(そうせいじょう)) 米芾筆 北宋時代・11~12世紀 
~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみ展示


本展覧会の後期の目玉作品である「寒食帖」がもとは日本にあったこと、それを仲介したのが同じ原田悟朗という人物であったこと、そして、米芾「草聖帖」が現在、台北と大阪市立美術館に分蔵された経緯についての研究発表でした。この時期に成立した阿部コレクションを所蔵する大阪市立美術館の学芸員としての説得力あるお話しに、聞き入ってしまいました。作品の伝来には必ずそれを伝えようとした人々の歴史があることも、あらためて認識させられました。


二日目はセッション2「元代書画の世界」からはじまりました。



湊信幸(東京国立博物館客員研究員)「元末四大家―文人画の確立―」


漁父図軸 呉鎮(ごちん)筆 元時代・至正2年(1342) 
~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみ展示


  
具区林屋図軸(ぐくりんずじく) 王蒙(おうもう)筆 元時代・14世紀 
8月5日(火)~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみ展示


今回その代表作が一挙に来日している元四家の山水画について、日本にはほとんど伝来していない最も中国絵画らしい中国絵画であること、そしてその美的特質が語られました。東博の中国絵画担当として本展の開催にも長年努力されてきた湊氏の研究発表は、ようやくこの日を迎えることの出来た喜びを感じさせるものでした。湊氏がはじめて台湾に行かれたのはまだ大学院生であった1973年のことだったそうです。その日から今日の日が来ることを心待ちにしていたという言葉は、私たちの心を打つものでした。



陳韻如氏(國立故宮博物院書画処)「公主の雅集:モンゴル皇室と書画鑑蔵活動」


羅漢図 劉松年(りゅうしょうねん)筆 南宋時代・13世紀 
10月7日(火)~11月30日(日) 九州国立博物館のみ展示



雲横秀嶺図軸(うんおうしゅうれいずじく) 高克恭(こうこくきょう)筆 元時代・14世紀  
~8月3日(日) 東京国立博物館のみ展示


いままで文化的暗黒時代と考えられていた元時代でしたが、実は活発な書画鑑賞活動が行われていたことを、皇帝の姉であった祥哥刺吉(センゲラギ)のコレクション活動から述べるものでした。湊氏の発表された文人画の成立とともに、北京でも書画が鑑賞され、それらのうちの何点かがいま日本でも展観されようとしているとは、驚きです。



竹浪遠氏(黒川古文化研究所)「乾隆帝が見た江南山水画―伝巨然「蕭翼賺蘭亭図」を中心に―」


蕭翼賺蘭亭図軸(しょうよくたんらんていず)    巨然(きょねん)筆 南唐時代・10世紀 
~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみで展示



明皇幸蜀図軸(めいこうこうしょくずじく) 唐時代・10世紀  
~8月3日(日) 東京国立博物館のみ展示


「江南山水」とは中国の江南地方に源を発する山水画で、文人画の基礎ともなったものです。黒川古文化研究所に所蔵される董源「寒林重汀図」とともに、今回展示されている巨然「蕭翼賺蘭亭図」について、その清宮における受容史にまでおよぶ内容でした。実際に故宮で調査された詳細なデータをもとにした緻密な考証は、さすがとうならされました。
つづいて、セッション3「乾隆帝の書画コレクション」です。



炎泉氏(國立故宮博物院書画処)「乾隆帝と澄心堂紙」


行書澄心堂帖頁(ぎょうしょちょうしんどうじょうけつ)     蔡襄(さいのう)筆    北宋時代・嘉祐8年(1063) 
~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみで展示



行書千字文冊 高宗筆 南宋時代・紹興23年(1153) 
~9月15日(月・祝) 東京国立博物館のみで展示   


伝説に覆われた名紙「澄心堂紙」について、出品作である蔡襄「行書澄心堂帖頁」がまさにその名紙にふさわしいこと、そしてその名紙が清時代にも模倣されて作られていくことが、具体的な作例から示されました。故宮で日々作品に接しているからこそ出来る緻密な材質研究に、すぐに展示場に駆け込んで各々の紙質を見比べた気持ちにさせられました。


富田淳(東京国立博物館)「徽宗の7璽と乾隆帝の8璽について」


草書遠宦帖巻(そうしょえんかんじょうかん) 王羲之筆 (原本)東晋時代・4世紀     ~8月3日(日) 東京国立博物館のみで展示


紫檀多宝格 清時代・乾隆年間(1736~1795) 全期間 東京国立博物館・九州国立博物館で展示


「古稀天子之宝」「八徴耄念之宝」玉璽 清時代・乾隆45年・55年(1780・1790) 全期間 東京国立博物館・九州国立博物館で展示

研究発表の最後は、今回の展覧会のワーキングチーフでもある富田からの革新的な学説です。徽宗と乾隆帝の鑑蔵印の押方が、それぞれの歴史性を意図していること、そして天円地方という伝統的な中国の世界観を反映しているのではないかという説でした。「神品至宝」展でも多宝格をかたどった会場構成になっていますが、まさに展覧会の構成やその意味を総括する研究発表でした。


続いて、総合討論が行われました。


何傳馨 副院長と富田による司会で、「皇帝コレクションの意味」について活発な議論が行われました。何氏は皇帝コレクションが単なる美術コレクションではなく、中国の歴史、文化、思想そのものであると述べられ、弓野氏からは、皇帝コレクションを今こうして見ることのできる時代になったことを喜びたいとの発言がありました。また湊氏からは、これから全アジア的な視点から日本や故宮コレクションの研究が進んでいくことへの期待が述べられました。

  

最後に、島谷弘幸 東京国立博物館副館長から閉会の辞があり、二日間にわたる書画シンポジウムは無事に終了しました。
最後に、ここにつどった内外の研究者、そして聴衆の方々には一つの共通点があります。それは皆が、故宮コレクションに感動し、それによって育てられ、そしてこれからも守り伝えて行こうとしている人々だということです。この素晴らしい二日間を提供いただきました皆様に、そして、ご参加いただいた皆様に心よりお礼を申し上げます。まことにありがとうございました。


記念シンポジウムは、九州国立博物館でも「中国皇帝コレクションの意味―工芸における復古と革新―」と題して、10月25日(土)に開催予定です。

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 広報室 at 2014年07月24日 (木)