特別展「みちのくの仏像」と特別展「3.11大津波と文化財の再生」が、いよいよ本日開幕しました!
それに先立ち、昨日は開会式・内覧会が行われました。
寒空のもとたくさんのお客様にご来館いただき、2015年最初の特別展も幸先の良いスタートとなりました。
特別展「みちのくの仏像」は、本館1階特別5室で開催されています。
東北各地から集められた仏像が、ひとつの空間に勢ぞろいした姿は、まさに圧巻!
東北の三大薬師といわれる黒石寺(岩手県)・勝常寺(福島県)・双林寺(宮城県)の薬師如来坐像も、
展示室奥にそろって展示されています。
重要文化財 伝吉祥天立像 平安時代・9世紀
岩手・成島毘沙門堂蔵 (左画像の提供:東北歴史博物館)
本展の魅力は、写真では伝わりづらい、木のお像の圧倒的な存在感と木目の美しさ。
例えば写真の吉祥天立像は、厚みのある体が大きく前傾しており、正面から見ると、こちらに迫ってくるような
迫力があります。
会場では、女優の薬師丸ひろ子さんによる音声ガイドの貸出を行っています(400円)。
薬師丸さんの包み込むようなナレーションで、特別展「みちのくの仏像」をさらにご堪能ください!
続いて、特別展「3.11大津波と文化財の再生」(本館特別2室・特別4室)の開会式も行われました。
展示室では、当館が被災地の博物館等と協力して取り組んできた、被災文化財の安定化処理や
修理の現状をご紹介しています。
リードオルガン 三省堂機械標本部製造
明治時代末期~大正時代初期・20世紀 岩手・陸前高田市立博物館蔵
本館大階段踊り場には、修復されたリードオルガンが展示されています。
こちらは「昆虫類ドイツ標本箱(昭和時代・20世紀 岩手・陸前高田市立博物館蔵)」です。
右隣に被災当時の状態を保存した標本箱が並べられていて、 修復前と修復後の状態を比べることができます。
資料によっては過度な修復は行わず、破損箇所を「歴史をくぐり抜けた証」として残しています。
本館1階特別4室では、「文化財再生のみちのり」を、パネル展示で分かりやすく説明していますので、
こちらもご覧ください。
上野で触れるみちのくの文化。
ぜひ、あわせてご鑑賞ください!
カテゴリ:news、2014年度の特別展、2015年度の特別展
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posted by 宮尾美奈子(広報室) at 2015年01月14日 (水)
新年あけましておめでとうございます。
昨年5月より、東洋館5室では建築家横河民輔(よこがわたみすけ 1864~1945)によって寄贈された中国陶磁コレクションの展示を行なっています。
正月から始まった新しいテーマは「『甌香譜(おうこうふ)』の世界」です。
『甌香譜』とは、昭和6年(1931)に工政会出版部より刊行された横河コレクション名品図録です。編集にあたったのは装丁家であり、稀代の目利きとして知られる青山二郎(1901~1979)。厖大なコレクションのなかから60点を選び抜きました。
コロタイプによる200冊限定の豪華図録です(出典:『甌香譜』工政会出版部、昭和6年)
いま展示室にはそのうちの34件がならんでいます。多くが現在も高く評価されている作品であり、企画の時点ではまだ20代であったという青山二郎の圧倒的な目の高さに驚かされます。
重要文化財 白磁鳳首瓶 唐時代・7世紀
昭和7年(1932)9月 横河民輔氏寄贈(第1回)
昭和24年2月18日 重要文化財指定
三彩壺 唐~五代・9~10世紀
昭和7年(1932)9月 横河民輔氏寄贈(第1回)
『甌香譜』「三十一 三彩蓮座壺」
五彩龍鳳文面盆 明時代・万暦年間(1572~1620)
昭和7年(1932)9月 横河民輔氏寄贈(第1回)
『甌香譜』「二十 明万暦赤絵六角平鉢」
五彩群馬図皿 明時代・17世紀
昭和7年(1932)9月 横河民輔氏寄贈(第1回)
じつは『甌香譜』に掲載されている群馬図皿は、当館所蔵品の2枚とは異なるものです。
このほかに虎を描いた皿も、当館所蔵品とは異なるものがみられます。
横河は古染付や天啓赤絵を大量に所蔵していたと伝わっています。とりわけ好んでいたのかもしれません。
『甌香譜』「二十五 明天啓赤絵群馬中皿」
これまで、「青山二郎の眼」を評価する一つとして語られることが多かった『甌香譜』ですが、ここでは横河コレクション、横河民輔の功績という面からお話してみたいと思います。
横河民輔が収集を始めたのは大正の初めころといわれています。それからわずか10数年で、新石器時代から清時代に至るさまざまな種類の土器・陶磁器を集め、質・量ともに世界最大規模のコレクションをつくりあげました。その背景には、前回のブログ(「横河コレクション―宋・元のやきもの」)でもお伝えしたように、欧米における最新の研究動向がありました。横河の眼は日本国内ではなく、海外の研究に向けられていたのです。
なかでも横河を語るうえで外すことができないのが、イギリスの収集家ジョージ・ユーモルフォプロス(George Eumorfopoulos 1863-1939)です。英国東洋陶磁学会の初代会長をつとめた人物で、当時最前線にあったイギリスの中国陶磁研究を中心となって支えました。1920年代後半には、彼のコレクションは分野ごとにカタログにまとめられ、その質と量で世界中を驚かせます。コレクションの主軸であった陶磁器は全6冊にもおよびます。
横河が『甌香譜』を刊行し、翌年帝室博物館(現・東京国立博物館)の表慶館にて寄贈記念特別展が開催されると、人々は横河を世界のユーモルフォプロスに比肩すると称賛しました。きっと横河自身、この同世代のコレクターを強く意識していたに違いありません。
しかし、横河とユーモルフォプロスの収集活動には決定的な違いがあります。ユーモルフォプロスのコレクションは彼の没後、売りに出され、大英博物館とヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に分割して収められました。いっぽう、横河は亡くなる直前の昭和18年(1943)まで収集を行ない、博物館に寄贈を続け、博物館のコレクションを充実させることに心血を注ぎます。『甌香譜』刊行の時点で、すでにコレクションは質・量ともに世界レベルのものであったことだけでも大変な功績と言えますが、横河コレクションの真価は第1回の寄贈後に追加された作品たちにあると言ってもよいかもしれません。
もし横河民輔がいまも存命であったら、この60年のあいだにいったいどんな作品がコレクションに加わっていたでしょう。日本における中国陶磁コレクションの礎である横河コレクション―『甌香譜』の世界に浸りながら、そんな想像に胸をふくらませるのも楽しみの一つです。
カテゴリ:研究員のイチオシ
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posted by 三笠景子(保存修復室研究員) at 2015年01月07日 (水)
皆様、明けましておめでとうございます。
平成27年、2015年の新年を皆様とともに寿ぎたいと思います。
今年は羊年です。
羊は古来より人類にとって身近な動物のひとつであり、神への最適な捧げものとして考えられていたため、やがて「よきもの」の意を備えました。
「美」「善」「祥」といった漢字にも羊の字が使われています。
恒例の干支の展示も1月2日(金)からの「博物館に初もうで~ひつじと吉祥~」で12回目を迎え、一巡いたしました。
また、黒田記念館も2年間の耐震工事を終え、1月2日(金)からリニューアルオープンいたします。
新たに設けられた特別室では、年3回、2週間ずつ、「湖畔」など、黒田の名作をご覧いただけます。
1月14日(水)からの「みちのくの仏像」「3.11大津波と文化財の再生」をはじめ、春の恒例「博物館でお花見を」(3月17日(火)~4月12日(日))など様々な企画を用意しております。
皆様にとって、日本の文化や伝統、美術に親しみ、楽しんでいただける博物館となるべく、努力してまいります。
今年もトーハクをよろしくお願いします。
前庭の羊とともに 館長 銭谷眞美
カテゴリ:news
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posted by 銭谷眞美(館長) at 2015年01月01日 (木)
2014年もいよいよ大晦日。
今年もトーハクの一年を振り返ってみましょう。
新年は1月2日から「博物館に初もうで」。
獅子舞や和太鼓で、お正月気分満喫だったほ!
年明け1月15日からは、2つの特別展がはじまりました。
「クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美」は、アメリカの美術館にもたくさん素晴らしいの日本美術コレクションがあるなんてびっくり。「人間国宝展―生み出された美、伝えゆくわざ―」では、現代の人間国宝の作品と、トーハク所蔵の古典の名宝が一緒に展示されて、その伝統の流れを知ることができました。
2月は「支倉常長像と南蛮美術―400年前の日欧交流―」があったほ。
ヨーロッパの人が描いた日本の武士の姿は、とっても大きな絵だったほー。
春は恒例の「博物館でお花見を」。最近では、トーハクの庭園は隠れたお花見スポットとして話題になっているそうよ。
4月は、「キトラ古墳壁画」も始まりました。約1ヶ月ほどの展覧会でしたが、壁画を間近で見られる最後の機会ということで、たくさんのみなさまにご来場いただきました。
ぼくも古墳生まれ古墳育ちだけど、一度にこんなにたくさんの人に見られたことないほ…。
トーハクくんはいつでもみんなに会えるからね。
そして夏の展覧会は、「台北 國立故宮博物院-神品至宝-」。門外不出の「翠玉白菜」が2週間限定で公開されました。1089ブログでも担当研究員のみなさんが、台北 國立故宮博物院の貴重な作品について、熱く語ってくださいました。
でも、トンポーローのほうがおいしそうだったほ…。
えーと。次いきます。
秋は記憶にも新しい「日本国宝展」がありました。
ちょっと!
ぼくがポスターのモデルになった「アジアフェス in トーハク」も忘れないでほー!!
衣装体験や伝統芸能、そして、アジアン屋台で美味しいアジアンフードをたらふく食べんだほ~。
そうそう、「東アジアの華 陶磁名品展」もこのアジアフェスの一環でした。
日本、中国、韓国の国立博物館が誇る陶磁の名品が一堂に揃い、見ごたえのある展覧会でした。
この時期、初の野外シネマイベントも開催されたわね。
そして「日本国宝展」では、国宝の土偶せんぱいが集結したんだほー!
ぼくもあいさつにいったほ。
グッズショップ国宝店では、はにわクッキーならぬ、土偶ビスケットなんていうのも売っていたほ!
「日本国宝展」は正倉院宝物や「金印」も期間限定で展示されました。
ポスターでおなじみの善財童子像や、想像よりも大きかった五重小塔などが印象的でした。
さて、トーハクくん、来年の予定は?
1月2日(金)から黒田記念館がリニューアルオープン!こちらは入館無料だほー。
平成館はリニューアル工事で休館だほ。考古展示室ともしばらくお別れだほ…。
お正月は1月2日(金)から開館します。
「博物館に初もうで」や、リニューアルした黒田記念館でお楽しみください。
もちろん、国宝「松林図屏風」も展示されますよ。
考古作品は、少しずつですが、しばらくは本館2階1室にて展示されます。
埴輪「踊る人々」は2015年2月3日(火)~4月5日(日)の展示だほ!
今年も一年、お世話になりました。
2015年も、トーハクをよろしくお願いいたします!
カテゴリ:news
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posted by トーハクくん&ユリノキちゃん at 2014年12月31日 (水)
年の瀬も押し迫ってまいりました。この時期、みなさん共通の懸案事項といえば、そう、年賀状です!2015年は未(ひつじ)年ですが、みなさんどんなデザインをご用意されていますでしょうか?
さて、今のわたしたちが思い浮かべるヒツジは、ふわふわ、もこもこした豊かな毛で全身を覆われた、かわいらしい姿ではないかと思います。では、そのイメージはいつから来たのでしょうか?お正月のトーハクでは、「博物館に初もうで~ひつじと吉祥~」(1月2日(金)~12日(月・祝))と題して、地中海から東アジアまでの遺物を通じてヒツジ(羊)とお正月にふさわしいおめでたい作品の数々をご紹介いたします。
展示風景
紀元前より人類にとって最も身近な動物のひとつだった羊。宗派や東洋、西洋の別を超え、神への最適な捧げものとして考えられてきました。古代メソポタミア文明ではすでに紀元前7,000年ごろから羊を家畜化していた跡がありますし、古代中国ではそれ以前から羊とともに暮らしていた痕跡もあるといわれています。肉や乳、脂肪は人々の大事な栄養源になりましたし、皮や毛は衣類だけでなく羊皮紙などにも加工され、人類発展の歴史においてなくてはならない存在でした。
羊頭部形垂飾 地中海東岸又はカルタゴ出土 紀元前7~ 6世紀 個人蔵
やがて「よきもの」の意を備えるようになり、このうち古代中国では、青銅器などに羊文が表わされたほか、「美」「善」「祥」といった言葉にも羊の字が使われるようになります。
饕餮文鼎(とうてつもんてい) 中国 殷時代・前13~前11世紀 東京国立博物館蔵
青玉筆洗 中国 清時代・19世紀 東京国立博物館蔵(神谷傳兵衛氏寄贈)
羊に対する吉祥イメージはアジア全域に広がり、日本でも『日本書紀』によれば推古天皇7年(599)、百済より「駱駝一疋驢一疋羊二頭白雉一(ラクダ1匹、ロバ1匹、ヒツジ2頭、白キジ1匹の意)」が贈られたとあるのをはじめとして、『百練抄』ほか、異国からの献上品としての記載が散見できます。正倉院宝物にも、羊文を表わした白綾や、羊を描いた臈纈(ろうけち)屏風が存在しています。
一方、羊の生息しない日本では、薬師如来の眷属で時を司る十二支のひとつとして、もしくは異国の動物として認識されていました。しかし羊自体を吉祥図様として扱うことは定着しなかったようで、現代人がその姿をみるとまるで山羊! 明治時代に本格的に羊が飼育されるようになるまで、日本人は羊と山羊の区別はついておらず、いずれも半ば想像上の動物に近い存在として表現されていたことがうかがえます。
十二支図 渡辺南岳筆 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵
右:羊部分拡大
今回の「博物館に初もうで」では、I「アジアの羊」、II「十二支」、III「日本人と羊」、IV「吉祥模様」という4つの切り口から、地中海から東アジアまでの遺物を通じて、羊と人との関係を探ります。また、1月2日(金)~1月12日(月・祝)には、トーハク内のあちこちに展示されている羊を訪ね歩く「羊めぐり~羊が何匹?」という企画も行っております。このほか、お正月にふさわしい作品の数々をご紹介いたしますので、新年はぜひ上野のお山へお越しください。
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posted by 金井裕子(特別展室研究員) at 2014年12月26日 (金)