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日本国宝展の見方~トーハクくん、土偶せんぱいに会いにいく~

ほほーい! ぼくトーハクくん!
今日は、「日本国宝展」で大人気の5体の土偶せんぱいに会いに来たんだほ。
(古墳時代の埴輪よりも何千年も古い縄文時代の土偶は、トーハクくんにとって大先輩なのです)



土偶せんぱーい!
こんにちは、トーハクくん。
あ、品川さん! 品川さんは「日本国宝展」の考古資料の担当なんだほ。
だから、土偶せんぱいとも、とっても仲良しなんだほ。
今回の展覧会で出品されている土偶は、思い入れのあるものばかりだから、
今日はぼくが案内しようか?
(さすが、土偶せんぱいのおともだち、親切なんだほ。)品川さん、よろしくお願いしますほ!

早速だけど、ぼくたちが今立っている場所、ここがぼくのおすすめの立ち位置なんだ。
あ! 土偶5体に囲まれているほ!!


第1会場の土偶コーナー。奥に3体、手前に2体の土偶が
展示されています


そう、そうなんだよ! 縄文人の「祈り」が形となったのが土偶。
そんな土偶5体に囲まれた、ここは日本国宝展の会場に生まれたパワースポットなんだ!!
(な、何だかすごく興奮しているんだほ…。)
こうやって見比べてみると、いろんな土偶があるんだほ。

実際は、たくさんのお客様でぐるりと見回すことは難しいけど、
そのかわり1体ずつじっくりと見て、その違いにぜひ注目して欲しいんだ。
品川さんは土偶せんぱいが大好きなんだほ。
「仮面の女神」はいいよね。ぼくが学生の時、「考古学者として生きていくんだ!」って
決意した頃に見つかったのがこの土偶。
今回の展覧会で「昔の馴染みに久しぶりに会ったな」って感じがするんだ。
品川さんの「青春の土偶」なんだほ~!


国宝 土偶(仮面の女神)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年
長野県茅野市中ッ原遺跡出土
茅野市蔵 尖石縄文考古館保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)


造形も気に入っていて、顔のかわいさに、ぜひ多くの人に気がついて欲しい!
頭の後ろの仮面を結んだような表現も、丁寧に作っているなって感じがして好きだなぁ。


 
頭の後ろにも注目です。展示ケースの横からどうぞ

(いきなり土偶愛が止まらないほ…)
それに、土偶の表面のフレッシュさと言ったら! 他の土偶ほど表面が荒れていなくて、
まるで、ついさっき土の中から掘り出したかのようなみずみずしさなんだ。
(さすがにお腹いっぱいだほ…)
それからね…
(カットイン)あー! あそこに「縄文のビーナス」せんぱいがいるほ!



国宝 土偶(縄文のビーナス)
縄文時代(中期)・前3000~前2000年
長野県茅野市棚畑遺跡出土
茅野市蔵 尖石縄文考古館保管


おっ「縄文のビーナス」かぁ。この土偶は、縄文時代のもので初めて国宝に指定されたものなんだ。
「『縄文のビーナス』が国宝への扉を開いてくれたおかげで、多くの人が縄文時代に関心を持ってもらえた」って、
ぼくは感謝しているんだよ!
あれ? お腹がぽっこりしているほ…?
これは妊娠した女性を表現しているんだよ。土偶には、安産や豊穣の祈りが
込められていたんだろうね。そしてこっちが「合掌土偶」。



国宝 土偶(合掌土偶)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年
青森県八戸市風張1遺跡出土
八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館蔵


まさに祈りの姿って感じがするでしょう? しかも、この土偶には補修の痕があるんだよ。
壊れた土偶をわざわざ直したってこと?
そう、縄文時代の人たちはこの土偶を大切にしていたんだ。
「縄文のビーナス」や「合掌土偶」からは、土偶に込められた祈りの気持ちがよく伝わってくるね。
「合掌土偶」せんぱいも女のひとって聞いたけど…本当なんだほ?
「縄文のビーナス」せんぱいと比べると、かなり違って見えるほ。
トーハクくん、いいところに気がついたね。じゃあ、この「縄文の女神」を見てごらん。


 
(左)国宝 土偶(縄文の女神)
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 山形県舟形町西ノ前遺跡出土
山形県蔵 山形県立博物館保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)
(右)横から見るとスレンダーさがわかります


わ、”すれんだー”なせんぱいだほ!「縄文のビーナス」せんぱいとはまったく違うんだほ。
でも、「縄文のビーナス」と「縄文の女神」は、ほぼ同時期のものなんだ。だけど、こんなに違う。
なんでかな…???
ポイントは土偶の出身地。オーバーなほどに女性らしさを強調する「縄文のビーナス」に比べると、
あまり女性っぽくない「合掌土偶」や「縄文の女神」は、東北の土偶なんだ。
実はね、東北の土偶はもっと古い時期のものから一貫して、女性っぽい表現は控えめなんだよ。
なるほー! 控えめなのは、東北地方の土偶の特徴なんだほ!
そうそう。東北の人は、はにかみ屋さんなんだ。
(ちなみに品川研究員は東北の出身です。)

それにしても、「縄文の女神」せんぱいは、とってもシンプルにできているんだほー。
「縄文の女神」は削ぎ落とされた美しさ。それに対して、「中空土偶」はとっても凝っているんだ。

 
(左)国宝 土偶(中空土偶)
縄文時代(後期)・前2000~前1000年 北海道函館市著保内野遺跡出土
函館市蔵 函館市縄文文化交流センター保管
展示期間:11月21日(金)~12月7日(日)
(右)頭部の破損箇所をのぞいてみてください。その薄さがわかります


いろんな文様があるほー!
この文様の緻密さ! 文様のあるところと無いところのバランス!
ちゃんと考えて、計画的に作られたと思うんだ。
それに、中が空洞でありながらこの薄さ! 技の粋が詰まっているよね。
土偶って見どころがいっぱいだほ。奥が深いんだほ。
そうだね。ぼくたち考古学者は、目の前の資料だけを見るんじゃなくて、
その背景にあるもののことも考えているんだ。
土偶を見るときも、「これはあの土偶に似ているな」、「同じ時期の土器はこれだな」、
「出土した遺跡はこんな場所だったな」というように、
その土偶に関係のありそうな、たくさんのことを考えながら見るようにしているんだよ。
そんなにたくさん考えているんだほ…!
だから、ぜひ、この5体の土偶たちのふるさとを訪ねてみて欲しいな。
どんなところで、この土偶たちが作られたのか見てきてください。
そうしたら、土偶の魅力が伝わってきて、ますますおもしろくなります。
いつかぼくも見に行くほー! 品川さん、今日はありがほーございました。


もっと活躍して、土偶せんぱいのように品川さんから
熱く語ってもらえるようになりたいと思った、
トーハクくんなのでした


日本国宝展」の会期は残り1週間をきりました。
現在、国宝に指定されている土偶5体すべてを一度にご覧いただける貴重な機会です。
ぜひ、お見逃しなく!

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2014年12月01日 (月)