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1089ブログ

トーハクくん「日本国宝展」の「国宝店」をゆく

トーハクくん登場

ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は「日本国宝展」のグッズショップ、その名も「国宝店」を見に行くほ。
(いやはや、スケールの大きい店名にしたもんだほ。)


ショップ

ほー、たくさんの人でにぎわっているほ!
展覧会の思い出えらび、テンションがあがるほーっ!
どんなお土産があるのか楽しみだほ!


ぬぐるみ
人形 1,800円(税込)
等身大の縄文のビーナスを、ぬいぐるみで再現しました
※トーハクくんは販売しておりません


土偶センパイっ、お疲れっす!だほ(震)!
(はにわであるトーハクくんにとって、土偶は大先輩です。)
土偶とはにわ、夢の2ショット撮影、だほ!


マスキングテープ
マスキングテープ
6種 各380円(税込)
ギフトのラッピングやカードのデコレーションにどうぞ


ああ、ユリノキちゃんに買って来いって言われたのはコレだほ。
「お手紙に貼ったり、メモに使ったり、とっても便利なのよねー」
って、ユリノキちゃんが言ってたほ。どのデザインもかわいいほ。


線香
特別展限定 オリジナルお線香
1,080円(税込)
白檀とフローラルの上品な香りです


「祈り、信じる力」っていうキャッチコピーの展覧会だもんね、
お祈りするときに、この展覧会を思い出せそうだほ。
ほっこりした、いい香りだほー。


カレンダー
カレンダー
1,000円(税込)
2015年を彩るインテリアに最適です


ページをめくるごとに、あの国宝に出会えるんだほ。
なんだか運気が上がりそうなイメージだほ。
2015年のカレンダーはコレで決まりだほ!


バッグ
永井一正「国宝店」トートバッグ
800円(税込)
シンボルアート制作は、日本のグラフィックデザイン界の第一人者、永井一正氏


このシンボルアートは、普賢菩薩像の象がモチーフになっているほ。
Tシャツ(3,000円 税込)、ブックカバー&しおり(500円 税込)などなど、
このモチーフのグッズがたくさんあるんだほ。


ガチャ
土偶ガチャ
5種 1回300円(税込)
国宝の土偶5体。どれが出てくるかはお楽しみ


土偶センパイのなかには、5体も国宝さんが居てかっこいいほ!
みなさんスタイルが良くて、あこがれるほ。
どれが当たるかなー。全部欲しくなっちゃうほ。


ビスケット
土偶ビスケット
650円(税込)
5体の国宝土偶をかたどった、 シンプルな美味しさのビスケット


5体の国宝土偶さんをかたどったビスケット!
大センパイを、いただきます!
どきどき、ちょっと緊張するほ。


はにわクッキー
トーハクくんのはにわクッキー
378円(税込)
当館の人気キャラクター、トーハクくんをかたどったクッキーです。これは日本国宝展のグッズではなく、当館のオリジナルグッズです


トーハクオリジナルのクッキー。こっちの商品もよろしくだほ!
(ああぼく、びんわん広報マンだほ!)


最後はホテルオークラレストラン ゆりの木から、
特別展期間限定のスイーツをご紹介するほ!


ケーキ
マロン&キャラメル
コーヒーまたは紅茶 930円、単品 510円(税込)
栗とナッツを使い、ほろ苦いキャラメルで仕上げたムース


きはーー!つやつやしたチョコの中に、キャラメルのムース!
栗とナッツが絶妙なハーモニーを奏でるほ!
じゅるり。さっそくいただきまーすだほ!
(ところでこのケーキは、日本国宝展とどういう関係があるのだほ…。きっと、おいしさ国宝級ってことだほ!)


ということで、関連グッズと限定メニューをご紹介しましたほ。
どれも魅力的で困っちゃうほ~。
あっ!そういえば、ユリノキちゃんに頼まれてたマスキングテープ買うの忘れてた!

みなさんもお買い忘れのないように、ご来館の思い出をぜひゲットしてほー!
日本国宝展」は12月7日(日)までです。

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2014年10月25日 (土)

 

トーハクくん「日本国宝展」をゆく

トーハクくん登場


ほほーい!ぼくトーハクくん!
今日は「日本国宝展」担当研究員のなかのチーフ、伊藤信二さんといっしょに展覧会を見に行くほ。


伊藤さんとトーハクくん

よく来たねトーハクくん。
人々の「祈り、信じる力」がぎゅっと凝縮して出来た、さまざまな「かたち」を見に行こう。
ちなみに私の名前が「信二」だから、この展覧会のキャッチコピーが「祈り、シンジる力」になったんだ。
なんつってな!

トーハクくん ……。おすすめの展示を教えてほ。

伊藤さん あ、うん。やっぱりココだなあ!


元興寺五重小塔
国宝 元興寺極楽坊五重小塔(がんごうじごくらくぼうごじゅうのしょうとう)
奈良時代・8世紀 奈良・元興寺蔵
奥側に見えているのは、
国宝
観音菩薩坐像、勢至菩薩坐像(かんのんぼさつざぞう せいしぼさつざぞう)
平安時代・久安4年(1148) 京都・三千院蔵



トーハクくん うほーーー!!こりゃすごい迫力だほ!!

伊藤さん 高さは5メートル50センチ。もちろん、東京にやってくるのは初めてだよ。
この展覧会で唯一、「美術工芸品」ではなく「建造物」として国宝に指定されているんだ。

トーハクくん 建物を、いったいどうやって展示室まで持ってきたんだほ?

伊藤さん それは語るとちょっと長くなるから、別のブログで紹介するとして、
今日はこの塔の見どころを紹介するね。



『全国の五重塔のモデル?!』



トーハクくん 「五重塔」ってお寺でよく見るけど、何のためのものだほ?上に登って景色を見るのかなあ。

伊藤さん いやいや、あの中には階段があるわけじゃないし、そもそも登るためのものじゃないんだよ。
五重塔とは、仏舎利(お釈迦様の遺骨)を安置するための機能をもった建物のこと。
大事な仏舎利を荘厳するためのものだよ。

トーハクくん ショーゴンって?

伊藤さん 美しく飾る、っていう意味。
通常は、容器の中に入れた仏舎利を礎石の中に埋めて、その上に五重塔を建てるんだ。
大きな構えで仏舎利を守って善美を尽くすことで、信仰の篤さや想いの深さを表したんだよ。

日本書紀の記述のなかに、「仏の舎利を以て、法興寺の刹の柱の礎の中に置く」という一文がある。
ちょうど今、その一文が書かれた国宝 日本書記(巻第二十二 平安時代・10~11世紀 京都国立博物館蔵 11月9日(日)まで展示)が展示されているから、あわせて見てみてね。

トーハクくん そうか、五重塔は仏舎利を守ってくれているんだね!
そしたら、この五重小塔の下にも仏舎利があったの?

伊藤さん いや。この五重小塔の役割は、普通の五重塔とはちょっと違うかもしれないんだ。
これは比較的簡単に解体できて、内部の構造を見ることが出来るので、
「当時各地に建立された国分寺などのお寺の塔の本様(ためし、と読む。雛形のこと)だったのでは」というのが、現在最も有力な説だ。

トーハクくん ふぉー!
この塔がモデルになって、全国の五重塔が作られたかもしれないってことだほ!すごいほー!



『当時の様式を、今に伝える』



伊藤さん トーハクくん、この辺から屋根裏を見てみて。
屋根の垂木を支えてる桁(けた、横方向の部材)が見えるでしょう?

屋根を見る

丸桁


この柱は「丸桁(がぎょう)」と言うんだ。丸く削られた桁っていう意味。
この塔が作られた奈良時代には、こんな風に断面が丸い桁がスタンダードだったんだけど、時代が下るにつれて、桁は四角くなっていく。
それでも丸桁という名称だけは残るんだよ。

トーハクくん 奈良時代の建築の特ちょうが残ってるんだね。

伊藤さん そう。特徴はまだまだあるぞ!
ちょっと離れた場所から見てみよう。
1番上の屋根の勾配が緩やかなのが分かるかな?


展示風景


トーハクくん うん、なだらかだほ。
ボクの五重塔のイメージは、もっと三角の屋根だほ。

伊藤さん そうだよね!これも時代の特色のひとつ。
もし瓦屋根にして実際の大きさ(約50m)で屋外に建てたら、瓦の重みでだんだんと歪んできてしまう。
屋外に立てられた五重塔は、改修する際に勾配を急にして対処しているから、トーハクくんがイメージした三角屋根の五重塔は改修後のものなんだ。
でもこの塔は、緩いカーブを保っているね。制作当初のままってことだ。
これは、室町時代後期以降、屋内で設置されていたから、瓦や雨雪による重みの心配をしなくて済んだのかも知れないね。

トーハクくん そっかあ。
この塔は、奈良時代の建築スタイルを、今に伝えてくれているんだほ!
奈良時代の人たちって、複雑な組み方が出来て、とっても頭いいほー。

伊藤さん そうだね。あと、相輪が大きく作られているのも見どころだね。
この比率のまま実際のサイズにしたら、相輪はものすごい大きさになる。

トーハクくん でも、この五重小塔にはこのサイズがベストだと思うほ。
かっこいいからオーケーなのだほ。

伊藤さん そうだよね、私もそう思うよ!
これはこれで、バランスがとれてるよね!

トーハクくん 伊藤さん、見どころをたくさん教えてくれて、どうも有難うございました!


展示風景
(手前)国宝 善財童子立像 (ぜんざいどうじりゅうぞう)
鎌倉時代・建仁3年(1203)~承久2年(1220) 奈良・安倍文殊院蔵




『正倉院宝物、特別出品!』



伊藤さん トーハクくん、いま勝手に終えようとしたでしょ(怒)。
11月3日まで特別出品されている正倉院宝物を忘れちゃいかんよ!

トーハクくん おおお!期間限定の正倉院宝物出品を見逃すところだったほ!危なかったほー。
伊藤さん、特に紹介したいのはどの宝物だほ?

伊藤さん 教科書でもお馴染みの、この宝物です。


鳥毛立女屏風
鳥毛立女屏風 第3扇 (とりげりつじょのびょうぶ) (北倉44) (部分)
奈良時代・8世紀 正倉院宝物 11月3日(月・祝)まで展示



伊藤さん トーハクくん、中国の俑(よう)でこういう作品を見たことないかな?

トーハクくん どっかで見たほ、どっかで…、あっ!思い出した!
特別展「東アジアの華 陶磁名品展」で展示されているのを見たほ!

伊藤さん そう!それ!
ふっくらとボリュームのある体型で、ぽってりした唇の唐風美人が描かれているね。
当時の唐ではこういう女性が「美女」とされていたんだ。
唐文化を積極的に取り入れていた奈良でも、もちろんこれがトップモードのスタイル、理想の姿とされていた。

トーハクくん 今で言う「ぽっちゃり美人」さんだね。ボクの好みだほ。
伊藤さんさっき「教科書でおなじみ」って言ってたけど、この宝物はどうして教科書に載っているほ?
きっと何か理由があるのだほ。

伊藤さん それは、8世紀の絵画自体が希少で貴重だからだよ。
トーハクくんは特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」に出品されていた「法華堂根本曼荼羅図(ほっけどうこんぽんまんだらず)」を覚えているかな?

トーハクくん うん!塚本研究員がブログで紹介してたほ!

伊藤さん そうだね。
奈良時代の本格的な絵画だと、「法華堂根本曼荼羅図(ボストン美術館蔵)」、「吉祥天像(薬師寺蔵)」、そしてこの「鳥毛立女屏風(正倉院蔵)」くらいしかないんだ。


正倉院宝物を見る


トーハクくん そんなに少ないんだ!
この宝物も、奈良時代の人々のスタイルを今に伝えてくれているんだね!
そんな貴重な宝物がこうして目の前で見られるなんて…、なんだかグッと来るほ!

伊藤さん そうね。本当にそう。ぅぅっ…

トーハクくん 伊藤さん、どうしたほ?

伊藤さん男泣き 感動して、泣きそうですっ!!

トーハクくん ええっ!

伊藤さん男泣き 昔から、人々は何かに向かって手を合わせて、祈り、信仰してきた。
今を生きる私たちは、作品を通してその想いを受け取るわけです。
これだけたくさんの想いが詰まった展覧会、なんて贅沢なんだー(泣)!

トーハクくん うんうん、たしかにだほ!

伊藤さん男泣き 「国宝だから素晴らしい」のではなく、「信仰の所産として素晴らしいから国宝になった」のです。
そのことを、一人でも多くの方に知っていただき、作品をご覧いただきたいと心から思います。

トーハクくん おおお!伊藤さんが、男泣きしているほ!
この感動を、ぜひ「日本国宝展」の会場で皆さんも体験してくださいだほ!



伊藤さん
伊藤信二(広報室長)専門は金工です。

日本国宝展」は12月7日(日)まで開催しています。会期中、展示替えがありますので、お目当ての作品をお見逃しのないよう、ウェブサイトでチェックしてみてください!

カテゴリ:研究員のイチオシnews2014年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2014年10月21日 (火)

 

日本国宝展、開幕!

平成館入口


本日、「日本国宝展」が開幕しました!
それに先立ち、昨日は開会式・内覧会が行われました。
ご参加いただいたお客様の数は、午前中に行われた報道内覧会とあわせて約1700名!
心配されていた台風も過ぎ、皆様の大きな期待を受けて好発進となりました。


レセプションの様子


展示室に入ってすぐ、お客様からも「おおっ!」と声が上がった国宝 玉虫厨子(たまむしのずし)(飛鳥時代・7世紀 奈良・法隆寺蔵)が展示されています。
この迫力はウェブサイトではご紹介できないので、ぜひ会場でご覧ください。   
よーく見ると、美しい玉虫の羽根がちらりとご覧いただけます。感激!


その次に広がるのは、特別出品「正倉院宝物」のコーナーです!


正倉院


「鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ) 第1扇 第3扇(北倉44)」など、
教科書で見た、あの有名な作品が目の前に!胸が高鳴ります!
お客様も、ガラスに顔を近づけてじっくりご覧になっていました。

正倉院宝物特別出品は11月3日(月・祝)までの期間限定です。お見逃しのないように!
 

仏画のコーナー


今回注目の展示は、仏画のコーナーです。
「こんなに作品に近づいてご覧いただけるのは滅多にないこと!」と仏画の研究員が熱っぽく語っていました。
平安仏画ならではの美しい場面描写や、繊細で透明感のあるお肌のツヤ、截金(きりかね)の技法など、
今まで見えなかった表現が見えてくるかもしれません。


本展覧会は、展示替えがとても多いです。
うっかりしていると見逃してしまいそう…
ということで、早々に展示期間が終了してしまう作品をご紹介します。

国宝 当麻曼荼羅縁起絵巻(たいままんだらえんぎえまき)
鎌倉時代・13世紀 神奈川・光明寺蔵 10月26日(日)までと、10月28日(火)~11月9日(日)で1巻ずつ展示替え

国宝 沖ノ島祭祀遺跡出土品のうち 金銅製龍頭(こんどうせいりゅうとう)
古墳時代・6世紀 福岡・宗像大社蔵 10月26日(日)まで

国宝 源氏物語絵巻 柏木(げんじものがたりえまき かしわぎ)(二)
平安時代・12世紀  愛知・徳川美術館蔵 10月26日(日)まで

国宝 信貴山縁起絵巻 尼公巻(しぎさんえんぎえまき あまぎみのまき)
平安時代・12世紀 奈良・朝護孫子寺蔵 10月26日(日)まで

国宝 後鳥羽天皇像(ごとばてんのうぞう)
伝藤原信実筆 鎌倉時代・13世紀 大阪・水無瀬神宮蔵 10月26日(日)まで

国宝 周茂叔愛蓮図(しゅうもしゅくあいれんず)
狩野正信筆  室町時代・15世紀 九州国立博物館蔵 10月26日(日)まで


これから、「日本国宝展」の魅力をどんどんお伝えするべく、
このブログで研究員が見どころを解説していきますので、ぜひ楽しみにしていてください!


展示風景

芸術の秋は、「日本国宝展」で決まりです!

カテゴリ:news2014年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2014年10月15日 (水)

 

研究員のイチオシ作品! ~東アジアの華 陶磁名品展・中国編~

日本・中国・韓国のやきものの名品が集結した
2014年日中韓国立博物館合同企画特別展「東アジアの華 陶磁名品展」
今回は、中国・北京にある中国国家博物館からやってきた、イチオシの作品について紹介します。


中国国家博物館

中国国家博物館は、1912年に設立された「中国歴史博物館」と、
1950年に設立された「中国革命博物館」が2003年に合併してできた歴史ある博物館です。
2007年から改築および拡張工事が行なわれ、地上5階・地下2階、
建築総面積20万平方メートルにおよぶ世界最大級の広さとなりました。
収蔵作品数は古代から近代までおよそ120万点、
これは東京国立博物館の10倍以上の数です。
北京には中国国家博物館のほかに、故宮博物院や首都博物館など
大規模な博物館がまだまだあることを考えると…さすが中国、規模が違いますね。


さて、本展覧会のテーマは「陶磁器」。
中国国家博物館には、おもに古代の遺跡や貴人墓から出土した土器や陶器が数多く収蔵されています。
展覧会には灰陶や唐三彩など名品15点が出品されていますが、
なかでも私のイチオシは「秘色(ひしょく)」青磁碗です。


2級文物 青磁碗
唐時代・9世紀
陝西省扶風県法門寺塔地宮出土
本作品は紙に包まれ、漆塗りの容器に収められていました。
外側には女性の姿を描いた包み紙が付着しています


これは陝西省の古刹、法門寺から見つかったもので、
唐(618~907)の皇帝のために特別につくられた、江南・越窯の最高級品です。

この碗の最大の魅力は、まるで古都杭州の湿潤な空気、
キラキラと光る西湖の水面を思わせるつややかな淡緑色の釉です。
また、金属器のように薄く挽きあげられた軽やかな形(実際にとても軽い!)にも、
新しい時代の到来を予感させる洗練された趣を感じることができます。

唐時代の末より、穏やかな気候と豊かな自然に恵まれた江南の沿岸部には、
のちに呉越国(907~978)としてこの地を率いる銭氏一族が権勢を誇っていました。
始祖の銭鏐(せんりゅう)(852~932)は文武にすぐれ、
鎮海節度使を任じられた人物。
もともとここは北部の越窯を中心に青磁生産で名のとおった地域でしたが、
この時期に豊かな資源と洗練された文化にもとづいた
最高級の器がつくられるに至ったのです。
それは唐王朝において「秘色」と称され、呉越国が北宋に降り、
越窯が廃窯となった後も名器として後世まで語り継がれるところとなります。

文献に語られてきた「秘色」。
「秘」は秘密の「秘」か?  「色」は色合いの意味か? 具体的に何を指すのか?
永いあいだ、この言葉の意味について議論が行なわれてきました。
しかし南宋時代には「呉越国王が使用を禁じた特別の器」という
俗説が生まれたように、早い段階ですでに唐時代に生まれた本来の語義は
わからなくなっていたようです。

法門寺の塔が大雨によって倒壊し、地下宮殿(地宮)の存在が
明らかになったのは、1987年のこと。
発掘調査が行なわれた結果、金銀、ガラスの器のほか、
すぐれた青磁も見つかりました。
その隧道にあった石碑『衣物帳』(献納品の目録のようなもの)の記述から、
これらは874年(咸通15)に唐の懿宗(いそう)(在位859~873)
・僖宗(きそう)(在位873~888)ら皇族をはじめ上流階級者が寄進した宝物であり、
すでに幻の存在であった「秘色」青磁そのものであることがわかったのです。

じつはこの法門寺出土の「秘色」青磁のなかには、
2点の「金銀平脱団花文碗(きんぎんへいだつだんかもんわん)」、
つまり碗の外側に黒漆を塗り、平脱技法で金銀の双鳥唐草文をあらわした、
一風変わった青磁も含まれていました。これも「秘色」…?

東洋陶磁研究にたずさわる長谷部楽爾氏(東京国立博物館名誉館員)は、
「秘色」の意味について次のような解釈を示しています。

「秘」の文字の源義は、『説文解字』にあるように「神秘」のこと、人知を越えた世界のものごとをさす。
これがやがて神にも比せられる至上の天子にかかわる事象を与えられ、
秘府・秘閣・秘籍などの語が生まれる。
秘色もそれらと同じく、天子のために技術を尽くして製作され
最高の作品ということであろう。
そしてここにいう「色」は、いろどり、色合の色ではなく、
様相・格式を意味する文字ではないか。
そのようにみると、秘色はのちの官窯、あるいは官様といった語とほとんど同様の意味となる。
それはあくまで天子、皇帝にかかわる用語であり、
その用途は限定されたものとなるはずである。
(「秘色拾収」『常盤山文庫中国陶磁研究会会報1 米色青磁』2008年)


唐の皇帝のために特別につくられた「秘色」青磁。
そして皇帝にまつわると考えられる北宋時代(960~1127)の
「汝窯(じょよう)」(特別展「台北 國立故宮博物院―神品至宝―」)、
南宋時代(1127~1279)の「官窯(かんよう)」青磁(「日本人が愛した官窯青磁」)。
今年は、それぞれの時代を象徴する白眉というべき中国青磁を
存分に味わっていただけるまたとない年になりました。
どうぞごゆっくりお楽しみください。

カテゴリ:研究員のイチオシ2014年度の特別展

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posted by 三笠景子(保存修復室研究員) at 2014年10月10日 (金)

 

開幕! 特別展「東アジアの華 陶磁名品展」

陶磁器といえば、東アジアを代表する工芸品です。
「やきもの大好き!」というお客様も多くいらっしゃることと思いますが、
そんな陶磁器好きの皆様必見の展覧会がついに開幕しました。
2014年日中韓国立博物館合同企画特別展「東アジアの華 陶磁名品展」(9月20日(土)~11月24日(月・休))です。
開幕に先立ち、9月19日(金)には開会式および内覧会が行われました。


開会式には多くのお客様にご出席いただきました

本展覧会は、日本・中国・韓国の国立博物館が初めて合同で行う企画展です。
開会式では、主催者として当館館長・銭谷眞美、中国国家博物館副館長・黄振春、
韓国国立中央博物館長・金英那よりご挨拶申し上げました。

展示作品は各館の魅力が伝わるよう、それぞれのコレクションの特徴をふまえて、厳選しています。
会場入り口を入ってすぐの展示にご注目ください。ここに、本展覧会を象徴する3作品が並んでいます。


手前から、中国国家博物館の2級文物「三彩馬」、
韓国国立中央博物館の国宝96号「青磁
亀形水注」、
東京国立博物館の「火焰型土器」


北京の中国国家博物館には、中国の古代から近代まで120万点を超える作品が収蔵されています。
今回は、同館収蔵の陶磁器を代表して、唐三彩を中心に貴人墓や重要遺跡から出土した陶磁器を、
主に展示しています。


2級文物 三彩馬
陝西省西安市鮮于庭誨墓出土 唐時代・開元11年(723)葬
中国国家博物館蔵


2級文物「三彩馬」もそのひとつ。
白色の体に映える、障泥(あおり)の緑釉やたてがみの黄釉など、
その鮮やかな色彩は、会場内でも独特の存在感を放っています。


ソウルの韓国国立中央博物館が誇るコレクションのひとつが高麗青磁(こうらいせいじ)。
本展覧会でも、高麗青磁を中心に展示作品を選んでいます。


国宝96号 青磁亀形水注
黄海北道開城付近出土 高麗時代・12世紀
韓国国立中央博物館蔵


国宝96号「青磁亀形水注」は、高麗青磁の全盛期を代表する優品です。
その翡色は思わずため息ものの美しさ!
亀の体と龍の頭を持つ想像上の生き物をかたどった水注で、
鱗や足の爪などの造形や、把手に施された黒点の象嵌(ぞうがん)など、細部まで丁寧に作られています。


日本の展示は、縄文時代から江戸時代まで、日本の陶磁器の歴史を
ダイジェストでご覧いただける構成になっています。


火焰型土器
伝新潟県長岡市馬高出土
縄文時代(中期)・前3000~前2000年
東京国立博物館蔵


日本の陶磁史の栄えあるスタートを飾るのが縄文土器。
新潟県を中心に見られる火焰型土器は、縄文時代中期を代表する深鉢形の土器です。
この力強い造形が、今から約5000年も前のものだというのだから驚きです。


本展覧会には、各館から15件ずつ、計45件の陶磁器が集結しました。
1歩会場に足を踏み入れたなら、ズラリと並ぶ作品の数々に、やきもの好きならずとも
ドキドキと気持ちが高まるはず!


この秋、東京国立博物館はやきものの「聖地」となります

皆様のご来館をお待ちしております。
 

カテゴリ:news博物館でアジアの旅2014年度の特別展

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posted by 高桑那々美(広報室) at 2014年09月25日 (木)