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特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」開幕!

1月16日(水)、特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」がついに開幕しました!



2013年に開催した特別展「書聖 王羲之」では書が芸術に達した東晋時代に焦点を当てましたが、本展では書法が最高潮に達した唐時代に焦点を当てます

本展は、現代の明朝体に通ずる筆法を創出した顔真卿[がんしんけい]の作品を中心に、唐時代の書が果たした役割を検証するものです。国内外から名品がずらりと集まっています。
ぜひこの機会に、有名な書の名品を画像や写真ではなく、「実物」をご覧いただきたいと思います。

なぜ「実物」と強調するかと言いますと、書の作品は写真や画像で見ると筆の流れは止まってしまっていますが、実際の作品では筆の流れが生きていて、その筆の流れに込められた感情を追体験できるからです。また、実物を視ることで、作品に込められた筆者の魂や、形を超えたオーラを感じ取っていただけるかもしれません。

それではこの展覧会の見どころを紹介していきます。

みどころその1 
楷書[かいしょ]の美しさに触れる

唐時代に、楷書の美しさが法則化されました。唐時代の楷書は美しく、また、自分にはこんな美しい文字は書けないと思い知らされるような作品ばかりです。



篆書[てんしょ]から隷書[れいしょ]、隷書から楷書へと進化を遂げた過程を踏まえ、楷書の作品をご覧いただきます



九成宮醴泉銘[きゅうせいきゅうれいせんめい] 欧陽詢[おうようじゅん]筆 唐時代・貞観6年(632) 台東区立書道博物館蔵

こちらは楷書の最高傑作として知られている作品の拓本です。例えば1行目、上から3文字目の「宮」の字の「口」をご覧ください。口の1画目と2画目、何も考えないで書いたら1画目と2画目をくっつけてしまうと思いますが、こちらでは1画目と2画目が絶妙に離れています。この絶妙の離れ具合で「口」の風通しがよくなり、「宮」の字全体の美しさが際立ってくるように思います。このように極めて緻密に組み立てられた文字に要注目です。

見どころその2 
拓本を見比べる

本展では拓本の作品を数多く展示しています。拓本は石碑などに刻んである文字を写し取ったものですが、碑面は時間とともに次第に摩滅、損傷していき、写し取った時期によって、同じ作品の拓本でも文字の様子が変わってきます。その違いを見比べて、時の流れを感じることもおすすめです。



先ほど紹介した九成宮醴泉銘の拓本数件展示しています。ぜひ違いを見比べてください


見どころその3
情感の発露に触れる

美しく整った楷書もおすすめですが、筆者の感情がほとばしる書もおすすめです。



重要文化財 行書李白仙詩巻[ぎょうしょりはくせんしかん](部分) 蘇軾[そしょく]筆 北宋時代・元祐8年(1093)大阪市立美術館蔵

蘇軾は宋時代を代表する文人士大夫ですが、顔真卿の書をよく学びました。正直言って、楷書と比べると読みづらいとは思います。しかしながら、独特の右肩上がりの書風は筆力に富み、躍動感が溢れていて、筆者は何を思いながらこの作品を書いていたのかな、筆者はどんな人なのかなと、思いを馳せることで、何が書いてあるか正確に読めなくても作品を楽しめると思います。

見どころその4
天下の劇跡、祭姪文稿[さいてつぶんこう]!



祭姪文稿 顔真卿筆 唐時代・乾元元年(758) 台北 國立故宮博物院蔵 展示風景

そしてなんといっても本展の最大の見どころは、台北の國立故宮博物院から初来日の祭姪文稿です。昨年7月に行った報道発表会でもこの作品について紹介しましたが、思いの揺れを示す生々しい推敲の跡、悲痛と義憤に満ちた情感が溢れた紙面から顔真卿の思いが感じられるかのようです。祭姪文稿の現代語訳は展覧会公式ウェブサイトからご覧いただけますので、祭姪文稿の物語を知ってから、実際の作品をご覧になることもおすすめいたします。

特別展「顔真卿 王羲之を超えた名筆」の会期は2月24日(日)までです。
平成最後の「顔真卿」、ぜひお見逃しなく!

カテゴリ:2018年度の特別展

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posted by 柳澤想(広報室) at 2019年01月22日 (火)

 

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