ユリノキちゃん 「古代ギリシャ」展 会場に潜入! PART 2
こんにちは、ユリノキちゃんです。
いよいよあさって21日開幕の「古代ギリシャ」展、準備中の展示会場リポートPART2です。
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さて、彫刻展示の現場にやってきました。
ちょうど競技者の像を展示するところにきました。
あ、あの中に、イケメンが……
彫刻をおさめたクレートが、いよいよ展示のため移動です!
動かす時には表面を覆って、お像をひもで固定、門型で少しずつ動かして展示台へ。急に動かさないよう、ゆっくり慎重に運びます。
おお!ついに美しいお姿が
ふー。無事、展示台に落ち着きました。よかったよかった。
ギリシャチームの皆さん
一息ついたところで、ギリシャチームの総括・ベッシーさんにちょっとお話しを。ベッシーさんは、これまでギリシャ国内外で数々の展覧会・美術館の展示を手がけてこられたベテランのミュゼオグラファーです。
こんにちは、ベッシーさん。
「あらユリちゃん、こんにちは」
無事、競技者像の展示が済みました。大きな道具を使って動かすのを見ていると、私も緊張しました。
「そうね、でもあの作品はそれほど展示作業が難しいわけではないのよ」
そうなんですか!?ちなみに、どれが難しいものなんでしょう?
「クーロイね。あれは重いし、大変だったのよ。」
日本初公開のクーロス像
ギリシャでの展示と日本での展示のやり方は違うんですか?
「いいえ、大きく変わったことはないですよ。日本のやり方は効率的で素晴らしいし、皆さんと一緒に仕事ができて楽しんでいるわ。日本もギリシャも地震があるから、慎重に作業を進めて作品の安全を確保することについて特に大切に考えていることは、共通しているわね。」
なるほど、ギリシャも地震がありますね。今回の展覧会は、すべての作品がギリシャから来ています。すごいですよね!
「この展覧会は、海外での古代ギリシャ展でかつてない大規模なもの。これまでアメリカでもギリシャ展を開催したけど、数は多いものの、今回のように大きな彫像も含めて名品を一堂に出したことはなかったわ。だから、今までで一番大きなギリシャ展、って言っているのよ。」
どれもすごい作品ばかりでわくわくしますが、ベッシーさんが特にお勧めなのはどれなんですか?
「そうねえ、キュクラデスのコーナー、そしてミュケナイ文明のコーナーかしら。とにかく、西洋の美術の歴史の始まりで紀元前2100年までさかのぼるものもあって、どれもすごーく古いものばかりだし、いままで国外に出したことのないものがたくさんあるわよ!」
わー楽しみです。ありがとうございます!
「展覧会を楽しんでね!」
ベッシーさんとアルテミス像の前で
では、お勧めのキュクラデス時代のコーナーへも寄り道~
これがキュクラデス時代の女性像かあ。日本の土偶と同じようなものなのかしら。
このコーナーの担当は、キュクラデス博物館のキュレーター・ニコラスさんです。
「この像は、キュクラデスの女性像では大きい方なんだ。こちらの小さい方も見てごらん、よーくみると色がついているんだよ」
へえ、キュクラデスの像って真っ白だと思ってました!もともとは色がついているんですね!
「そうだよ。だんだんと色がおちてしまったけど、今とはだいぶ印象が違っただろうね。」
これは、展示方法が書いてあるんですか?ひとつひとつにマニュアルがあるの?
「全部ってわけではないけど。難しいものには、それぞれどうやって展示するか書いてあるんだよ。今回はギリシャのいろいろなところの作品があるからね。」
それぞれに注意することがありますよね。ありがとうございます!
「ユリちゃん、こっちにいらっしゃい。」
はい、ネクタリアさん。それもキュクラデス時代のものなんですね?
「そうよ。カバーをかけてしまう前に、この細かいところをよく見て。おなかのしわは、多分子どもを生んだあとじゃないかしら」
女性像もいろいろなんですね。ネクタリアさん、教えてくれてありがとうございます。
はあ、見どころいっぱいで、ぼーっとしちゃうわ。火曜日のオープニングが楽しみ楽しみー!
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特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」 6月21日(火)~9月19日(月・祝) は平成館2階全室を使って開催します。日本のみならず世界的にもかつてない大規模な古代ギリシャ展。一生一度かもしれない貴重な機会をお見逃しなく。
カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん、2016年度の特別展
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posted by ユリノキちゃん at 2016年06月19日 (日)
ユリノキちゃん 「古代ギリシャ」展 会場に潜入! PART 1
こんにちは、ユリノキちゃんです。梅雨入りして、毎日じめじめした天気が続きますね。早くすかっと晴れたお天気にならないかなあ。
さて、トーハクの平成館では、来週21日(火)から開幕の特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」の準備が急ピッチで進んでいます。
ということで、今回は展示作業中の会場に潜入、その様子をお伝えします
まず、会場入り口脇に受付があって、出入りする人をチェックしています。
「こんにちは、ユリノキちゃん。いらっしゃい。」
こんにちは、お邪魔します
では、いざ、会場へ!
今回は作品すべてギリシャからやって来て、日本初公開のものがたくさんあるんだって。ギリシャからは学芸員、保存担当など10名の方々が展示のために来てくれています。今回は、ギリシャの方々とトーハク研究員含む日本側のチームが協力して展示を行っています。
わあここが会場! もうずいぶん展示は進んでいるのね。
作品は箱から出したら展示の前にまず作品の保管・修復を担当するコンサバター、作品データを管理するレジストラー、作品の担当キュレーターなどが1点ずつ状態をチェックします。
ブロンズ像を点検、状態を確認する瀬谷主任研究員とミカさん
点検が終わったら、状態を記録、確認したらギリシャ側と日本側でサインするんですって。
点検調書の束。1点ずつきちんと点検されています
たくさん作品があるからあちこちで同時に作業をしています。みんな忙しそう・・・
「ユリノキちゃん、こんにちは」
瀬谷さん!お忙しいところお邪魔してます。ここは何のコーナーですか?
展示室でギリシャ側スタッフと展示の仕方を話し合う瀬谷主任研究員(写真右)
「ここは『医療』がテーマの展示で、ここにあるのは、おっぱいと耳よ。」
え?体の部分だけ?
「そう。昔、ギリシャの神殿にお祈りして、体の悪いところが治ったら、お礼にその部分の彫刻を神様に捧げたのよ」
へえ、じゃあ、これを納めた人たちは、病気が治ったのね。
「病気が治るように、とか、お乳がよく出るように、とかお祈りしたんじゃないかな」
なるほど!古代ギリシャの人も、神様に健康をお願いしたんですね
あ、特別展室の金井さん、こんにちは。
「ユリノキちゃん、今からかっこいいギリシャの男の人を見に行きましょう」
かっこいい男の人!? 行きます行きますー
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さて、イケメン好きなユリノキちゃんはどんなステキな人に出会うのか!?続きは潜入レポートPART2で!
カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん、2016年度の特別展
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posted by ユリノキちゃん at 2016年06月17日 (金)
ほほーい!ぼくトーハクくん! 今日は特別展「黄金のアフガニスタン―守りぬかれたシルクロードの秘宝―」を見にきたほ。研究員の井上さんと待ち合わせをしているんだほ。
遅いぞ、トーハクくん!
ほ? 約束の時間どおりだほ。
いや、この特別展は6月19日(日)までだ。トーハクくんは危うく見逃すところだったのだ!
そ、それは、こーほー大使のしごとが…(ごにょごにょ)。それにアフガニスタンって言われてもぴんとこないほ。
だったら、なおのことこの展覧会を見る必要があるな。
東西を結ぶシルクロードの要衝にあったアフガニスタンは、「文明の十字路」といわれ、多彩な文化が栄えた場所だ。今日は展覧会の構成にそって、アフガニスタンを代表する遺跡別に、その多彩な文化を紹介していこう。
第1章 テペ・フロール
テペ・フロールは12個体分の金銀器が出土した遺跡だが、詳しい実態はわかっていない。付近から人骨が出土しているから、金銀器はその副葬品だったかもしれないな。
文様が刻まれているほ。
(左)幾何学文脚付杯 (右)杯断片
テペ・フロール出土
前2100~2000年頃
文様には各地域の特徴が表れるから、いい目のつけどころだ。
いや~それほどでも~。
左側の作品の「凸」の字に似た文様は中央アジアでよく見られる文様だが、右側の作品の牡牛像はメソポタミアの影響を受けていると考えられている。
同じ遺跡のものなのに、地域はバラバラなんだほ。
これらは今から約4000年前ものと思われるが、その頃には他地域との交流があったということがうかがえるね。
第2章 アイ・ハヌム
あれ? この顔、どこかで見たような気がするほ?
よく勉強しているじゃないか! えらいぞ、トーハクくん。
この人は、マケドニア王国のアレクサンドロス大王だ。アレクサンドロスはギリシア全土を掌握した後に東方遠征も行ったため、中央アジアにもギリシア、マケドニアの影響が及んだのだ。
アイ・ハヌムはそういった時代に建設されたギリシア都市のひとつなんだよ。
ギリシアといえば、夏に特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」が平成館で開催されるほ。ここでもアレクサンドロス大王のマケドニアの紹介があるって聞いたほ。
トーハクくんも広報大使らしくなったじゃないか。
ふふん♪
よし、キミのその心意気をかって、とっておきの作品を紹介しよう。
キュベーレ女神円盤
アイ・ハヌム出土
前3世紀
わわ、人がいろいろ。どれが女神さまだほ?
車に乗った一番左に表されているのがキュベーレ女神だ。キュベーレはトルコの大地の女神で、ヘレニズム世界では都市や国家の守護神でもある。その隣に立つのはギリシアの勝利の女神、ニケ。空に浮かんでいるのはギリシアの太陽神・ヘリオス。右側の壇上に立つ人物と左側の車の下に立つ人物は神官だが、西アジア風の衣装を身に着けている。
会場には詳しい解説パネルをご用意しています
ギリシアと西アジアのまざったものがアフガニスタンで見つかるなんて、どらまちっくだほ!!
「文明の十字路」たるアフガニスタンらしい出土品だと思わないかい?
ほー!
第3章 ティリヤ・テペ
さあ、この章がこの展覧会のハイライト、ティリヤ・テペだ。
ほほー! 展示室がキラッキラしているんだほ。
靴底
ティリヤ・テペ 3号墓出土
1世紀第2四半期
(左)牡羊像 (右)メダイヨン付腰帯
ティリヤ・テペ 4号墓出土
1世紀第2四半期
ハート形耳飾
ティリヤ・テペ 5号墓出土
1世紀第2四半期
ティリヤ・テペとは「黄金の丘」という意味だよ。展覧会では6基の墓から出土した黄金製品を展示しているんだ。
1号墓出土品の展示。埋葬時をイメージした展示です
2000年近く前のものなのに、キレイなんだほ~。黄金に酔いそう…。
酔っている場合ではないよ、トーハクくん。私のオススメ作品を見ずしてどうする!
まずは、このドラゴン人物文ペンダントだ。
ドラゴン人物文ペンダント
ティリヤ・テペ 2号墓出土
1世紀第2四半期
ペンダントと言っても首飾ではなく、両側頭部につけた垂れ飾の一種だったと考えられる。
頭が重たそうだほ。
試してみるかい?
こういうものはユリノキちゃんにプレゼントするほ!
この墓の被葬者も女性だし、ユリノキちゃんは喜ぶかもしれないな。はめ込まれた石も、トルコ石、ラピスラズリ、ガーネットなどさまざまで、とても美しい。
さあ、中央の人物をよく見てみるんだ。額を見て、気がつくことがあるだろう?
あ、おでこに丸いものが付いているほ!
インドのビンディみたいだろう? ここにも、古代の交流の片鱗が垣間見える。
なるほー。
もうひとつのおすすめがこれだ。
冠
ティリヤ・テペ 6号墓出土
1世紀第2四半期
ほほー。ゴージャスな冠だほ!!!
見てのとおり木がデザインされているんだが、これは生命樹といって、この地域ではよく見られるモチーフだ。
さて、トーハクくんに問題だ。この冠には、ある動物もデザインされているんだが、わかるかい?
……?
冠を裏側から見るとわかりやすいよ。
あった、鳥だほ!
そのとおり。生命樹と鳥を組合せた冠は他の遺跡から出土しているんだが、それは、日本にもあるんだ。
!!!
奈良県にある藤ノ木古墳という6世紀後半に築造された円墳だ。
古墳~~~!!!
(※トーハクくんのモデルとなった「埴輪 踊る人々」は6世紀の古墳から出土した埴輪です。ただし、トーハクくんは永遠の5歳です。)
思わぬご縁にトーハクくんは大興奮!
ティリヤ・テペと藤ノ木古墳、両者に直接的関係があるわけではないが、地理的にも時代的にも遠く離れた2つの冠が同じモチーフを採用していることは非常に興味深いね。
壮大な話で、感動しちゃったほ。今日はスケールの大きな夢がみられそうだほ。
第4章 ベグラム
最後に紹介する遺跡がべグラム。クシャーン朝の夏の都として栄えた場所だ。
井上さんイチオシの、象牙彫刻のキレイなお姉さんもいるんだほ。
マカラの上に立つ女性像
べグラム 第10室出土
1世紀
象牙ではないが、この作品は大変興味深い。
魚装飾付円形盤
べグラム 第10室出土
1世紀
んー?
黄金製品ではないからといって、いきなり興味をなくさないように! この作品には仕掛けがあるんだ。下を見てごらん。
何かぶら下がっているほ。
おもりだよ、トーハクくん。おもりは、円盤の表面に立体的に表された魚のヒレとつながっているんだ。
何が何だかさっぱりだほ。
安心しなさい、このレプリカで疑問は解決するぞ。
円盤をゆすると、表面の魚のヒレが動きます
ヒレを動かしているのはおもり。その様子もご覧いただけます
魚が泳いだ! おもしろいんだほ~!!
よしよし、ようやくテンションが戻ったな。
この作品の用途はわからないが、ぜひ本物をご覧いただき、レプリカで体験してみて欲しい。
第5章 アフガニスタン流出文化財
さて、最後の第5章は、今回の展覧会の開催趣旨とも深く関わっているんだ。
なんでだほ?
アフガニスタンは内戦などで都市が破壊され、首都カブールにある国立博物館も甚大な被害を受けた。これまで見てきた作品は、すべてアフガニスタン国立博物館のコレクションであり、本展覧会はアフガニスタンの文化遺産復興を支援する意味もあるんだ。
第5章の作品も?
いや、最後の展示室にあるのは流出文化財。戦争による混乱の最中、不法に国外に持ち出された文化財だ。
ゼウス神像左足断片
アイ・ハヌム出土
前3世紀
サンダルに雷霆(らいてい、稲妻のこと)が表されていることから、この作品がゼウス神像であることがわかります。
雷霆はゼウスの武器。ギリシア都市、アイ・ハヌム(第2章)らしい出土品です
日本では平山郁夫氏が音頭をとって、こうした流出文化財の保護活動を行ってきた。今回の展覧会を機に、日本で保管してきた流出文化財102件が、本国アフガニスタンに返還されたんだよ。
「自らの文化が生き続ける限り、その国は生きながらえる」
これは、アフガニスタン国立博物館に掲げられた言葉だが、本展覧会はこの信念のもとに開催された展覧会でもあるんだ。
古代のアフガニスタンだけじゃなく、現代のアフガニスタンにも関わる展覧会だったほ。
井上さん、今日はありがほーございました。
アフガニスタンの衣装がよく似合う井上さんに、感心しきりのトーハクくんなのでした
カテゴリ:研究員のイチオシ、2016年度の特別展
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posted by トーハクくん at 2016年06月13日 (月)
特別展「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」(4月12日(火)~6月19日(日)、表慶館)は本日10万人目のお客様をお迎えしました。
ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
10万人目のお客様は、神奈川県からお越しの石原草紀子(いしはら さきこ)さんと井戸陽子(いど ようこ)さんのお2人連れ。お2人は1ヶ月も前からこちらの展覧会に行こうとお約束されていたとのことでした。ありがたいことです。
お2人には10万人突破のお祝いに駆けつけた映画コメンテーターのLiLiCoさんと、東京国立博物館長 銭谷眞美より、特別展図録や純金箔入り羊羹などの記念品を贈呈しました。
石原さんは、「10万人目ということでびっくりしました。これだけの人が展覧会に興味を持っているということは、それだけ奇跡的な秘宝なのだなと感じました」と、井戸さんは「これから変わらぬ美しさの宝物を見るのが楽しみです。」とお話くださいました。
また、記念撮影には当館広報大使のトーハクくんも登場、LiLiCoさんとともにセレモニーに華を添えました。
「アフガニスタン展」10万人セレモニー
左から、トーハクくん、石原草紀子さん、井戸陽子さん、LiLiCoさん、館長の銭谷眞美
5月31日(火)東京国立博物館 表慶館前にて
本展は紀元前2100年頃から紀元後3世紀までに古代アフガニスタンで栄えた文化を、4つの遺跡から出土した名宝によって紹介しています。中でも、アフガニスタン北部のティリヤ・テペから出土したきらびやかな黄金製品の数々は日本初公開!
会期終了まで残り3週間を切りました。約250件の奇跡の秘宝が一堂に会する本展をどうぞお見逃しなく!
カテゴリ:news、2016年度の特別展
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posted by 武田卓(広報室) at 2016年05月31日 (火)
アフガニスタン展もいよいよ終盤ですね~。この特別展では企画担当グループ(ワーキング)として参加し、特に展示作業ではティリヤ・テペという遺跡から出土した黄金製品を担当しました。「ティリヤ・テペ」とはウズベク語で「黄金の丘」を意味します。その名の通り、この遺跡で発掘された6つのお墓からは、大量の黄金製品が出土しました。この特別展はその全貌を日本で初公開するものでもあります。
黄金だから価値がある!という考えで調査や研究をやっているわけでは決してないのですが、それにしてもやっぱり金ってすごいな~と、展示をしながら感動した次第です。まばゆく、そして柔らかくもある輝きと存在感!黄金の工芸品には展示空間を支配する「力」が備わっています。おかげさまで連日多くの皆様にお越しいただいており、本物がもたらす感動を持ち帰っていただけたら幸いです。
さて、今回はそんな担当者から、作業中に驚いたお話をしたいと思います。まずはこちらの金製品。ティリヤ・テペ1号墓から出土した「イルカをかつぐ人物文飾板」(作品№36)。
マフラーのように首にまいているのが「イルカ」なんです。ベトベトしそうですね・・・。さて、この作品のうら側ですが、ひっくり返すと形にあわせて凹んでいるのがわかります。
つまり型の上からうすい金板をあて、叩いて打ち出したということですね。法隆寺宝物館で展示している押出仏も同じ作り方をしています。
ところがこちら、「靴留金具」(作品№106 ティリヤ・テペ4号墓出土)は違うんです。
この作品、打ち出しているのではなく、黄金を鋳造しているんです。つまり金無垢!靴につけるにしてはずいぶん豪華な金具ですね~。面白いのは裏側に織物の痕跡がみえていること。それも後からくっついたものではなく、痕跡ごと鋳造されているんです。
どうしてこんなことになったのか?ちょっとイメージするのが難しいですが、次のような手順が想像できます。
1. 平らにのばした粘土の上に織物を敷く(これは型が粘土から外しやすいようにするため)。
2. 布のうえから型を押し当て、金具背面の鋳型を形作る。
3. 布をはがし、凹みに融けた蝋を流して、細かな造形を作る。
4. 上から粘土を被せて熱し、中の蝋を流してしまう。
5. 蝋が流れでた後の空間に金を流し込む。
こうすると、金具の背面に織物の痕が残りますよね?実際にどう作ったのかは分かりませんが、うら側を見ると作り方も想像できて楽しいです。
次に驚いたのが「戦士像留金具」(作品№79 ティリヤ・テペ3号墓出土)の精巧な出来栄えです。
今回展示している作品のなかで、最も細密な出来栄えと感じている作品です。鎧をまとい、槍と楯をもった戦士の姿で、その顔は側面から捉えられています。薄い打出しの作品なので、当然この顔も片面のみと思いきや!実は正面からはパッと見えない反対側の顔まで表現されているんです。
ちょっと見えにくいですが、みなさんも会場で覗き込んでみてください(特にこの作品は見えやすいように、ケース前面に展示しました)。本当にこんな素晴らしい作品に出会えて感動しました。
短いブログではまだまだ話しきれませんが、この特別展には古代アフガニスタンにおける工芸美術の素晴らしさが溢れています。会期終了まであと3週間あまり!残された黄金の機会をお見逃しなく!!
カテゴリ:研究員のイチオシ、2016年度の特別展
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posted by 三田覚之(教育普及室・工芸室研究員) at 2016年05月27日 (金)