本展も残り期間が少なくなってまいりました。
このブログでは展覧会で取り上げているなかから、見逃せない2つの遺跡をご紹介しましょう。
まずはなんといってもテオティワカンです。
首都メキシコシティから20kmほど北東にある世界遺産にも登録されている遺跡です。
長さ3.3kmの「死者の大通り」と3つのピラミッドをもとに整然とした都市が築かれました。
本展覧会の監修である杉山三郎先生(岡山大学特任教授、アリゾナ州立大学研究教授)が長年調査に携わってこられた遺跡でもあり、今回の特別展では「死のディスク石彫」などメキシコ国立人類学博物館の有名作品をはじめ、杉山先生がピラミッドの発掘調査で発見した遺物を展示しています。
参考画像 2010年に発行された、テオティワカンをモチーフにしたメキシコの切手。切手の博物館、田辺龍太学芸員ご提供(切手の展示はございません)。
右上の「死のディスク石彫」、左下の「マスク」は本展展示作品。
左上の羽毛の蛇ピラミッドの「羽毛の蛇神石彫」は、本展ではピラミッドの別の場所に飾られていたものを展示。
いま、遺跡を訪れても灰色の石の世界が広がっていますが、本来は石に漆喰を塗り、その上を赤く塗っていました。
これは遠く離れたマヤ文明でも同じで、古代メキシコの建物の多くは赤い色をしていたのです。
またこうした建物の壁は色鮮やかな壁画で飾られました。
展覧会場でも、作品を通じてこうした古の遺跡の姿に思いを馳せていただくことができるでしょう。
羽毛の蛇神石彫
テオティワカン文明 200~250年
テオティワカン、羽毛の蛇ピラミッド出土
テオティワカン考古学ゾーン蔵
よく見ると、目のわきや口などにわずかに色が残っているのがわかります。
嵐の神の壁画
テオティワカン文明 350~550年
テオティワカン、サクアラ出土
メキシコ国立人類学博物館蔵
こうした赤色を基調として、様々な壁画が都市を飾っていました。
もうひとつご紹介したいのが、やはり世界遺産となっている、マヤ文明を代表する遺跡であるパレンケです。
パレンケはマヤ文明の都市のなかでは決して大きなものではありませんでしたが、建築や彫刻に傑作が多くマヤ文明の芸術の都とも呼ばれます。
参考画像 2008年に発行された、パレンケをモチーフにしたメキシコの切手。切手の博物館、田辺龍太学芸員ご提供(切手の展示はございません)。
上段右の説明部分の右に、本展覧会では複製を展示している「パカル王とみられる男性頭像」、下段中央の建物が「碑文の神殿」で、その奥には赤の女王墓である13号神殿も描かれています。
上段中央の緑のマスクはパカル王のもの(本展では展示していません)。
この遺跡で見つかったのが、本展覧会の注目作品の一つである「赤の女王」墓の副葬品です。
赤の女王は、パレンケの中興の祖ともいえる偉大な王、パカル王の妃と考えられています。
赤の女王の墓は、パカル王の墓である「碑文の神殿」の隣の建物から見つかりました。
赤の女王の名は、棺の中が辰砂(しんしゃ、水銀朱)で真っ赤だったことに由来します。
参考画像 赤の女王の棺。辰砂の赤い色は血すなわち生命の象徴であり、また遺体を保護する効果もあったと言われます
赤の女王墓の副葬品は、石室に埋葬された状態をイメージした空間に展示しています。
会場には、このほかにも映像などで遺跡を体感できる仕掛けをいろいろと設けています。
展覧会を通じて、古代メキシコの奥深さが皆様に伝わりましたら幸いです。
カテゴリ:「古代メキシコ」
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posted by 山本亮(考古室研究員) at 2023年08月22日 (火)