平成館企画展示室で開催中の親と子のギャラリー「トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―」(6月4日(日)まで)。
この展示は、「国際博物館の日」にちなんで、上野動物園、国立科学博物館、東京国立博物館で行う、国際博物館の日記念ツアー「上野の山で動物めぐり」関連企画です。毎年一つの動物に焦点をあて、「生きている動物」、「標本・骨格の動物」、「美術の中の動物」をテーマに各施設をめぐります。
今年のテーマはキジ。
5月14日(日)、「上野の山でキジめぐり」に、小学校5年生から大人まで、大勢の参加者が上野動物園に集まりました。
まずは動物園からスタート。
動物解説委員の小泉祐里さんと一緒に「生きたキジ類の観察」です。
ひとことで「キジ類」といってもたくさんの種類。大きさや特徴もさまざまですが、どれも華やかなのはオスばかり。それぞれの色や模様を見ながら、どのように美しいかをじっくり観察していきます。
キジの仲間には、クジャクやセイラン、ニワトリも含まれています。
クジャクの羽(左)、セイランの羽(中央)は夏に生え変わります
どのオスも間近で見るととにかく鮮やか…メスのことはすっかり忘れて、続いて国立科学博物館へと向かいます。
科学博物館では、動物研究部の濱尾章二さんから「オスだけが派手な理由」をテーマに、オスとメスの標本を見ながら、それぞれの特徴やちがいの理由を伺いました。
キジの標本を前に、オスとメスをじっくりと観察。
標本だけでなく、キジの鳴き声や子育て、行動の様子を映像で見ながら、ちがいの秘密に迫ります。
休憩のあとは最後のトーハクへ。
「親と子のギャラリー トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―」展示室で、博物館教育課の神辺知加さんと作品の中の鳥たちを観察です。
動物園や博物館で見た特徴をヒントに、作品に隠れているキジの仲間をさがします。
美しい羽の模様を丁寧に表現している作品もあれば、デザインとして表しているものも。中でもひときわ美しい羽を持つクジャクは、屏風や着物などさまざまな作品のモチーフになっています。
唐織 紅白段牡丹若松孔雀羽模様 絹製 江戸時代・18世紀
刺繍孔雀図屏風 絹製、刺繍 明治26年(1893)
小泉さんと濱尾さんも交えてあらためて作品の中の鳥たちを観察し、作品の見方がまた広がりました。
上野ならではのこのツアー。来年のテーマは、鋭意計画中です。
どうぞお楽しみに。
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posted by 長谷川暢子(教育講座室) at 2017年05月18日 (木)
3月11日(土)、12日(日)にトーハク初のアイデアソンが開催されました。
未来のトーハクで実現したいアイデアを創出する熱い2日間の報告です!
今回のアイデアソンのテーマは、海外からのお客様がますます増えることが予想されるトーハクの未来を見すえて
「訪日外国人の記憶に残る日本文化体験-ICTは博物館で何ができるか?-」でした。
日本の文化に初めて接する海外からのお客様のニーズを探りつつ、彼らが日本文化を理解し、とっておきの思い出を持ち帰るためのアイデアの創出を目指しました。
参加いただいたのは、64名のエントリーから選抜された29名。プランナー、エンジニア、デザイナー、学生、そして日本の文化が大好きな外国人など、実にさまざまな方が集まりました。
◇ 初日はオリエンとグループワーク
土曜日の午前中は、トーハクの現状や課題、今回のアイデアソンのコンセプトなどを理解いただくために、オリエンテーションと本館のツアーを行いました。座学のオリエンはなるべくコンパクトに、館内ツアーはできるだけゆっくり楽しんで、を心掛けながら、トーハクの今を知っていただきます。
左:まずはオリエンテーション 右:研究員による本館ツアー
午後からは、いよいよグループワーク。「等伯」、「永徳」、「光琳」、「乾山」、「大雅」の5つのチームに分かれてアイデアを創りました。初めて顔を合わせたメンバーなのに、15分後にはどのチームも熱を帯びた議論が始まっていました。それぞれのチームに用意されたホワイトボードはあっという間に、色とりどりの付箋で埋まりました。ファシリテーターの佐藤尚之(さとなお)さんのアドバイスを参考に、そこで生まれたアイデアの種をチームで一つの企画へと成長させていきます。
左:アイデアを出す 右:ファシリテーターの佐藤尚之さんも加わって議論
途中の議論や、付箋に書かれたメモにもおいしい種がたくさん落ちていそうで、私たちトーハク職員も会場にくぎ付け。そっと議論に耳を傾け、キーワードは自分の手帳にしっかりメモします。
土曜のディスカッションは夕方6時まで続き、いったん解散しました。が、プレゼン資料の締め切りは日曜の正午です。解散後もラインやメールのやり取りが続いた模様です。
お子様を連れて参加したメンバーも
◇ 2日目はプレゼンと審査
日曜も、開館と同時にメンバーが続々と集まってきました。
ところが、会場はとても静かです。昨日の熱い議論から打って変わって、多くのメンバーが黙々と作業に入っています。どうやら大半のチームが、昨晩のうちに方向性をまとめ、プレゼン資料の作成分担も済ませている様子です。
約束通り正午にスタッフが各チームをまわり、プレゼン資料データを回収していきます。
さあ、いよいよプレゼンの舞台、平成館の大講堂に移動です!
◇ 最優秀賞は逆転の発想!?
平成館の大講堂には、一般のお客様も多数集まりました。審査員は、サッシャ氏(ラジオDJ、フリーアナウンサー)、橋本麻里氏(ライター、エディター、永青文庫副館長)、暦本純一氏(東京大学情報学環教授)、松本伸之(東京国立博物館副館長)の4名。最前列で、真剣にプレゼンに耳を傾けます。
どのチームも、かわいいイラストによる図解あり、メンバーによる寸劇ありの楽しく、かつ真剣なプレゼンでした。
審査員による最優秀賞に輝いたのは、「等伯」チームでした。
最優秀賞の「トーハク」チームによるプレゼンテーション
ほかの4チームが、展示室にMR(複合現実)、AR(拡張現実)、プロジェクションマッピングなどのICTを持ち込んだのに対して、等伯チームはICTのにおいを消した企画で勝負。作品を「見るときは集中し、感じて」ほしいという思いをかたちにしたユニークな企画でした。「自分の直感で惹かれた作品について、あとから深堀りできたらいいのでは」ということで、タイトルは「あとから博」。
鑑賞者は、スマートフォン端末をポケットに入れて展示室を歩くだけ。展示ケースに設置されたビーコンとスマホの通信記録により、「思わず心掴まれた・・・惹かれて立ち止まってしまった」作品が記録されます。つまり、鑑賞の軌跡がヒートマップとしてスマホに生成される仕組みです。「今日見た作品についてもっと知りたいな」と思ったら、「あとから」解説や画像をスマホで確認することができます。結果として、鑑賞体験が「心にも、記憶にも、記録にも残る」というコンセプトです。さらに、気になる有名人の軌跡をネット上でたどることも可能。
多くの来館者の鑑賞の軌跡を蓄積すれば、よりよい展示の開発にもつながるという、博物館にとってもオイシイ企画です。
そして、会場のみなさんの投票による特別賞は、光琳チームによる「EDO ―Education Driven from Original Japan」に決定しました。
洛中洛外図屛風(舟木本)のプロジェクションマッピングの中に自分の顔の登場人物が現れます。鑑賞者は、作品に描かれた時代や社会、文化に興味をもち、そこから鑑賞体験が深まります。「見る」事しかできなかった博物館を、「作品になれる博物館」に進化させようという企画です。
最優秀賞と会場投票による特別賞の表彰
5つのチームの企画はいずれも、実現するためにはクリアしなければいけない課題がありました。が、どの企画にも、今までのトーハクにはなかった新しい視点がありました。
表彰のあとは、ファシリテーターと4人の審査員が未来のトーハクの展示と鑑賞体験をどうデザインしていくのかを語るトークショーを開催しました。
表彰のあとも、トーハクの未来について熱いトークが繰り広げられました
今回のアイデアがどのように生かされるのか、今後のトーハクにぜひご注目ください。
そして、多くのみなさんと一緒に、トーハクの未来について考える機会をぜひまた持ちたいと思います。
参加いただいた29名のみなさまに
あらためて心から御礼を申し上げます。
参加者全員で記念撮影
※ トーハク×アイデアソンの詳細記録は、改めてウェブサイトで公開する予定です。
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posted by 小林 牧(博物館教育課長) at 2017年03月17日 (金)
あす3月14日(火)より、春の恒例企画「博物館でお花見を」(~4月9日(日))、「春の庭園開放」(~5月7日(日))が始まります。
今年の東京の桜は、3月22日(水)頃の開花、満開は3月31日(金)頃との開花予想が出ています。
会期中の3月21日(火)以外は開館し、3月31日(金)、4月1日(土)、4月7日(金)、4月8日(土)は庭園ライトアップ(19時30分まで)を行います。
満開の時期に庭園の桜をゆっくりとお楽しみいただけそうですね。
昨年の庭園ライトアップの様子
また、4月11日(火)から開催の特別展「茶の湯」に関連し、庭園開放期間を5月7日(日)まで延長!
小堀遠州ゆかりの茶室「転合庵」を特別に公開。茶室に入ることはできませんが、外からご覧いただけます。
いつもより長い期間の庭園開放となりますので、例年はご覧いただくチャンスがなかった遅咲きのカンザンやケンロクエンキクザクラもお楽しみいただけることでしょう。
庭園入口で配布しているマップを見ながら、ぜひ探してみてください。
左:カンザン 右:ケンロクエンキクザクラ
「博物館でお花見を」では、桜をモチーフにした作品の展示のほか、鑑賞ガイドやギャラリートーク、ぬりえワークショップ、コンサートなど、当日参加可能なイベントをご用意しています。
国宝 花下遊楽図屛風(部分) 狩野長信筆 江戸時代・17世紀
2017年3月14日(火)~4月9日(日)、本館2室(国宝室)にて展示
その他の作品は、本館桜めぐりのページでご紹介しています。
桜ワークショップ「春らんまん 桜ぬりえ」
2017年3月23日(木) ~ 2017年3月26日(日)
11:00 ~ 16:00 本館2階ラウンジ
桜の街の音楽会 チェロ・ソロ 林はるか(チェロ)
2017年3月31日(金) 13:00 ~ 13:20
本館大階段
昨年のヴァイオリンコンサートより
桜の街の音楽会 ヴァイオリンとヴィオラのデュオ 佐藤恵梨奈(ヴァイオリン)& 樹神有紀(ヴィオラ)
2017年4月3日(月) 13:00 ~ 13:20
法隆寺宝物館エントランス
その他のイベントは、イベントカレンダーをご覧ください。
もちろん、恒例のスタンプラリー(チラシ見開きページの右端がスタンプラリーの台紙)も実施します!
今年もトーハクくんの限定デザインバッジが登場! 隠れたコレクターズアイテムとして人気のバッジをぜひゲットしてください。
※お好きな方をお選びいただけますが、限定デザインバッジが一日の配布予定数に達すると、「花よりだんご」バージョンのみになります。
トーハクくんとユリノキちゃんも、4月1日(土)に登場します。
登場予定時間は、11時~、13時~、15時~、いずれも本館前、各30分程度です。
このほかにも、気まぐれに登場するかもしれません。トーハクのTwitter、Facebookでお知らせしますので、随時チェックしてください。
ぜひ、ふたりと一緒に満開の桜をお楽しみください。
今年も多くの皆様のご来館をお待ちしています!
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posted by 奥田 緑(広報室) at 2017年03月13日 (月)
博物館教育課の小林です。
この週末に開催されるトーハク初のアイデアソンを担当しております。
今日は、そもそも
「アイデアソンってなんだ?」
という方のために、本ブログにて事前に説明させていただきます。
アイデアソン(Ideathon)とは、アイデアIdea と マラソンMarathon を合わせた造語です。
ある特定のテーマについて、さまざまな分野から興味のある人が集まり、グループごとにディスカッションをしてアイデアを出し合い、それをかたちにしていくイベントです。
できたアイデアはグループごとに発表を行い、そのなかから最も優れたものを選びます。
アイデアだけではなく実際にプログラム作成やシステム開発まで行うハッカソン(Hackathon)(ハックHackとマラソンMarathonの造語)と並んで、2000年前後あたりからICT関連の企業で盛んに行われるようになったイベントですが、最近はさまざまなジャンルで、また企業だけでなく自治体や大学などの教育機関でも開催されるようになりました。
ここまでえらそうに説明をしてきましたが、かくいう私も実は「アイデアソン」というコトバをつい最近知ったばかり。
そんな私が、トーハクでもぜひやってみたいと思ったのは、さまざまな立場の人々の価値観や、私たちはまだまだ知らない技術に触れる貴重な機会になると思ったから。
また、何より自分たちだけではとうてい思いつかないような新しいアイデアが生まれかもしれないと、ワクワクしてしまったからです。
テーマは、トーハクにとって目下最大の課題
外国からのお客さまをどうもてなすか?
新しい技術や手法をどう取り入れるか?
この2つをあわせて
訪日外国人の記憶に残る日本文化体験-ICTは博物館で何ができるか?-
としました。
アイデアソンの参加者を募ったところ、なんと64名もの方にご応募いただきました。
学生、エンジニア、デザイナー、日本文化が大好きな外国人などさまざまな方にエントリーいただきました。書類選考のうえ、当日参加いただくのは、30名のみなさんです。3月11日(土)~12日(日) の午前中まで、5チームに分かれてアイデアを練っていただきます。
そして12日(日) の午後は、各チームの発表、表彰、審査員によるトークショーを平成館大講堂で行います。
大講堂で開催される部分については、どなたでもご参加いただけます。会場のみなさんの投票で決める特別賞も設けています。
3月12日(日)
トーハク×アイデアソン プレゼンテーションとトークショー
12:30~14:15 アイデアソン プレゼンテーション
14:15~14:45 休憩
14:45~14:50 表彰
14:50~16:20 トークショー 「世界にシェアしたくなるトーハク × ニッポン体験」
登壇者
ファシリテーター
佐藤尚之(さとなお)氏(コミュニケーション・ディレクター)
審査員
サッシャ氏(ラジオDJ、フリーアナウンサー)
橋本麻里氏(ライター、エディター、永青文庫副館長)
暦本純一氏(東京大学情報学環教授)
松本伸之(東京国立博物館副館長)
明日のトーハクを変えるようなアイデア、ぜひ聞きにきてください。
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posted by 小林 牧(博物館教育課長) at 2017年03月08日 (水)
2017年のお正月で14回目を迎える「博物館に初もうで」(2017年1月2日(月・休)~29日(日))。
すっかり上野の新春の風物詩となりました。
チラシのメインビジュアルは、鈴木春信筆「鶏に餌をやる男女」です
1月2日(月・休)、3日(火)は、獅子舞、和太鼓、曲独楽に落語、コンサートなど イベントも盛りだくさん。お正月気分を盛り上げます。
2日(月・休)、3日(火)は、お年玉・プレゼント企画 も!
1.ミュージアムショップでは2,000円以上お買い上げのお客様、先着600名様にミュージアムグッズをプレゼント。美術図書バーゲンセールも同時開催。
2.TNM&TOPPANミュージアムシアターでは、VR作品「江戸城の天守」を無料上演。
3.レストランゆりの木では、ご利用のお客様先着150名様に伊予の水引の箸置きをプレゼント。
4.寛永寺との連携事業
根本中堂、徳川歴代将軍の肖像画(油画)、四天王像(江戸時代・元和6年(1620) 台東区登録文化財)、十二神将像(江戸時代・元禄15年(1702))を特別公開する寛永寺では、当館観覧券の半券(当日分)の提示で散華をいただくことができます。
新春特別公開では、国宝「松林図屏風」(本館2室、1月2日(月・休)~15日(日))のほか、国宝「古今和歌集(元永本) 上帖」、国宝「扇面法華経冊子」」(いずれも本館3室、1月2日(月・休)~15日(日))、国宝「舟橋蒔絵硯箱」(本館12室、1月2日(月・休)~3月20日(月・祝))、重要文化財「西湖春景・銭塘観潮図屏風」(本館7室、1月2日(月・休)~2月5日(日))などお正月を彩る華やかな名品をご覧いただけます。
国宝 松林図屏風 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀
本館2室(国宝室)にて2017年1月2日(月・休)~15日(日)まで展示
恒例の干支の展示は「博物館に初もうで 新年を寿ぐ鳥たち」(本館特別1室・特別2室、1月2日(月・休)~29(日))。と題し、「暁の鳥」としての鶏を、「祝の鳥」として幸運をよぶ鳥をモチーフにした作品をご覧いただけます。
また、本WEBサイトでは、ひとあし先に「トーハクの鳥ベスト12」の人気投票が始まっています。お気に入りの鳥を見つけたら、ぜひ一票を!
そして、1月2日(月・休)、3日(火)の2日間は、特集「博物館に初もうで 新年を寿ぐ鳥たち」を楽しむためのワークシートを先着3000名様にお配りします。(本館1室前にて、11:00~16:00 ※なくなり次第終了)
ワークシートの裏面は伊藤若冲筆「松梅群鶏図屏風」のカレンダーです。
今回は書き初めもお楽しみいただけるようになっています。
そのほか、本館では松竹梅や鶴など吉祥モチーフの作品もたくさん展示しています。展示室をめぐって探してみてください。
1月9日(月・祝)まで会期延長となった特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」も大好評開催中です。
1月17日(火)からは、特別展「春日大社 千年の至宝」も始まります。
新しい年のスタートは、トーハクから。
ぜひ、ご来館ください。
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posted by 奥田 緑(広報室) at 2016年12月26日 (月)