国宝土偶 縄文の女神の展示ケース
3月23日(水)から始まった特別公開「国宝土偶 縄文の女神」。
この展示で使われているケースは山形県で製作されたものです。
ミュージアムの展示ケースについて一番大事なことは「モノがよく見えること」です。
モノはいろいろ、例えば美術・工芸品だったり考古遺物・歴史資料だったりします。
思い返せば、このプロジェクトが始まったのは、2014年8月でした。
山形県産の有機EL照明を使って、よく見せるためのケースを開発したい、という強い意志を持った山形県の方々とお会いし、まずは当館の展示室で展示ケースや照明のいろいろをご案内したのを覚えています。
こうして「山形県産の有機EL照明を活かした次世代展示ケース開発プロジェクト」はスタートしました。
まずは、そのケースにいったい何を展示するべきか、の検討から。
本末転倒のようですが、新しい技術が生まれる時は往々にしてそんなものです。
まずは有機EL照明を様々な場所で使用しているという山形県へ行ってみよう! ということで(公財)山形県産業技術振興機構にお願いして、見に行くことにしました。
各施設を見て回るなか、ピン! と閃いたのは、山形県立博物館で国宝附(つけたり)に指定された47点の土偶残欠を見た時でした。
もうケースにかじり付くように「残欠」の魅力に惹き付けられたのです。
山形県立博物館での「縄文の女神」の展示。
有機EL照明を使用した展示ですが「女神」よりもやや照明が目立ちます
国宝附 土偶残欠(山形県立博物館蔵)
展示するモノ=「縄文の女神」を開発予定の展示ケースに輝くように展示し、女神が「残欠」を仲間として引き連れてくるように東博の歴史的展示ケースに・・・という会場デザインを頭の中にイメージしたのです。
高円宮コレクション室で使用されている歴史的展示ケース
昭和初期の「歴史的展示ケース」は、数台が捨てられずに、リフォームしつつ、今も特別展や根付 高円宮コレクションの展示などで使われています。
さらに、会場全体をを山形の有機EL照明のみで照らしてみよう、と閃きました。
有機EL照明は「薄くてぺらぺら」なので、従来の照明よりも展示デザインの幅が広がります。
2015年8月21日 模造による照明実験
結果、展示会場では大小合わせて153枚の有機EL照明が使われています。
次世代ケース:20枚
歴史的展示ケース:33枚
窓際の間接照明:80枚
解説パネル:20枚
展示会場(本館特別4室)
「杉圧密加工」(天童木工製)の手すりにもたれて「縄文の女神」をご覧いただけます
間接照明として1ヵ所あたり20枚の有機ELパネルが並んでいます
有機EL照明は、その開発当初よりも年々明るさを増しているので、直接光源を見ると眩しく、多くの枚数を使う場合は光をコントロールする必要があります。
そうなると、有機EL照明の「ペラペラな薄さ・軽さ」の魅力が半減してしまいます。
そこで、あえて展示の解説用には、「ペラペラ」なまま有機EL照明パネルを吊ってみました。
うーむ。いずれ自宅用にこんな照明器具をデザインしてみたいなぁ。。。
※すでに有機ELのテレビやスマートフォンのバックパネルでは実用です。
展示終了後、「縄文の女神」と「残欠」は、山形県立博物館へ戻ります。
ぜひ、みなさま山形県へもお運びくださいませ。
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posted by 木下史青(デザイン室長) at 2016年04月01日 (金)