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講演会「関東大震災からの復興本館ものがたり」のお知らせ

東博デザイン室 木下です。

今日は、今週末(6月18日)に予定している講演会
「関東大震災からの復興本館ものがたり-国産技術に裏付けられた建築デザイン」
のお知らせです。

この講演会は、もともと昨年末に企画したものでした。
その時はまさか3月11日に東日本大震災が起こるとは思いもしませんでした。
圧倒的な自然の力を目にして、しばらく講演会の準備など手がつかない気持ちでした。

いま僕はようやく、東博に残されている『復興本館』の資料を掘り起こしつつ、準備を進めています。

『復興本館』とは、現在の東京国立博物館本館のことです。大正12年の関東大震災(マグニチュード7.9)で損壊した、旧本館の復興事業と位置づけられ、東京帝室博物館・復興本館として建てられました。
優美な瓦屋根がのったSRC造の本館は、当時の耐震構造研究と生産技術に基づいていることが、部材や意匠、計画時の資料からうかがうことができます。

当初は、2004年頃から興味を持って調べてきた復興本館の資料について、その優れたコンセプト・建築計画・設計手法・当時の最新の建設技術について、少しでも多くの方に知っていただきたいという気持ちで講演会を企画しました。

復興本館の建設は東博の歴史の一頁に納まり、その「復興」の意味さえ忘れられつつあります。が、昭和初期に先人が考えた《耐震耐火構造・保存科学・展示手法・自然採光》の技術には、今でも通用する博物館建築のヒントがたくさん隠されているように思えてなりません。

実施設計にあたった宮内省内匠寮(たくみりょう)の1900枚以上の手書き図面は、現在は宮内庁に青図複写が残され、オリジナルは東博が保管・管理していてます。充分に整理されていない状況ですが、今となっては建築史的に大変貴重な図面です。

また、建設にあたった復興翼賛委員会や建設委員会部会の議事録・各種書類、建設現場の記録写真など、一括して保管されている資料は、文化財クラスといっても過言ではありません。

講演会では、当館で展示デザインを担当している私と建築史研究の専門家、加藤雅久氏(居住技術研究所)が、こうした資料を参考に本館のディテールを読み解きながら、帝室博物館建設の意義に迫ります。

ぜひともお運びいただき、この復興本館に秘められた日本人の技術力、空間づくりの発想力を体感していただきたいと思います。


復興本館の模型完成を伝える新聞記事
昭和8年(1933)4月14日付け 東京朝日新聞と時事新報


本館敷地での記念撮影? 背後に見えるのは表慶館。
関東大震災でも表慶館はびくともしませんでした。 
昭和7年(1932)6月27日


鉄骨組立完了の記録写真 
昭和9年(1934)12月26日


正面屋根表側コンクリート打の作業風景 
昭和10年(1935)9月


本館2階側面陳列室。現在の3室でしょうか? 
昭和12年(1937)9月2日

 

◆月例講演会の詳細について

「関東大震災からの復興本館ものがたり-国産技術に裏付けられた建築デザイン」

6月18日(土)13:30~15:00 平成館大講堂

◆館の歴史について

9.関東大震災と博物館 大正から昭和へ
10.復興本館 戦時下の博物館

 

カテゴリ:教育普及

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posted by 木下史青(デザイン室長) at 2011年06月16日 (木)