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書を楽しむ 第26回 「世尊寺」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第26回です。

本館3室(宮廷の美術)(2012年11月20日(火) ~12月24日(月・休))に、世尊寺家(せそんじけ)が大集合します!

せそんじ、
日本の書の歴史、とくに「和様の書」(わようのしょ)にとって、
世尊寺は重要です。
覚えて欲しい!!

世尊寺家については、書を楽しむ11回でも少し触れました。
藤原行成(ふじわらのこうぜい、972~1027)を祖とする
能書(書の上手い人)の家系です。

藤原行成は、
三跡(平安時代中期を代表する三人の能書、小野道風・藤原佐理・藤原行成)の一人で、
日本独自の書「和様の書」を確立しました。
書を楽しむ第9回で紹介した、
国宝「白氏詩巻」は行成の筆跡です。

世尊寺家から、次の作品を御覧ください。

(左)藍紙本万葉集切、(右)巻子本古今和歌集切
(左)藍紙本万葉集切 藤原伊房筆 平安時代・11世紀
(右)巻子本古今和歌集切 藤原定実筆 平安時代・12世紀 植村和堂氏寄贈


左は、三代目・藤原伊房(これふさ、1030~69)、
右は、四代目・藤原定実(さだざね、?-1077~1119-?)です。

この二人、親子ですが、書風を比べてみてください。
まずは、全体を見た感じはいかがですか?

次に、字の拡大を比較してみました。


左から:伊房「あ」、定実「あ」、伊房「も」、定実「も」

「あ」は、よく似てますよね。
「も」は、縦線の曲がり具合が違いますが、点を打つ位置が似ています。


左から:伊房「て」、定実「て」、伊房「を」、定実「を」

「て」は、すこし形が違って見えますが、
どちらも、横線のあと、一瞬はなれて縦線を書いています。
「を」はいかがでしょうか?

全体で見た雰囲気が違っていても、
一字一字を取り出してみると似ています。

伊房、定実、定信 三代の字
定信、定実、伊房 三代の字

これは、当館の島谷副館長が作った画像です。
右から、三代・伊房、四代・定実、五代・定信の筆跡です。
島谷は、「骨格は類似しているけれど、筋肉のつき方が違う」
と言っています。
伝統を受け継ぐ書ですが、
それぞれの創意工夫で、
新たな創造ができるのです。

今回、展示室には、
三代、四代、五代、六代・藤原伊行(これゆき、?~1149~68-)まで
並べてご紹介します。

能書の家系・世尊寺家、
代々の字を比較してみてください。
そして、
それぞれの書の個性的な魅力を楽しんでください。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年11月19日 (月)

 

生まれ変わった東洋館─クメール彫刻

みなさんこの写真、どこで撮影したものかわかりますか?

 クメールの彫刻展示室

カンボジアです。トーハクの中の。
2013年1月2日(水)にリニューアルオープンする東洋館にはこれまでなかった展示室や稀にしか展示しなかった作品のコーナーを新設し、充実をはかりました。彫刻を担当する私の一押しは地下の11室、クメール彫刻18点を展示するこの部屋です。クメール人は古くから現在のカンボジアの地に住み、9世紀から15世紀までアンコール王朝を繁栄させました。その代表的な遺産にアンコール・ワットがあります。ここではアンコール・ワットと同じ頃造られた石造の仏像、神像、精緻な浮彫りがほどこされた建築部材を展示します。

クメールの彫刻展示室
手前は獅子、奥に象の頭に人間のからだのガネーシャ。
カンボジアの獅子は中腰のようなふしぎな姿勢。


クメールの彫刻展示室
建築部材(砂岩)にほどこされたみごとな浮彫り。象の頭の上に乗るのはインドラ神。

残念ながら日本からの直行便がないため、カンボジアを巡る日本の観光客はあまり多くないようです。しかしアンコール・ワットのあるシェムリアップには欧米、中国、韓国の観光客が多く、町は整備され清潔で、快適なホテル、レストランが並んでいます。
みどころはとても多く、少なくとも2泊はして、ゆっくり見て回ることをお勧めします。
 
バンテアイ・スレイ
アンコール・ワットと並ぶ必見の遺跡バンテアイ・スレイ。
東洋のモナリザと呼ばれる女神像がある。


どうも個々の人間と同じようにそれぞれの民族にも得意分野があって、カンボジアは世界でも屈指の彫刻家揃いだったようです。東南アジアでは第一位でしょう。まずはこの部屋でじっくりその造形の美しさをご覧ください。そして興味をもたれたら、ぜひ現地を旅してみてください。
 

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 浅見龍介(東洋室長) at 2012年11月18日 (日)

 

特別展「出雲-聖地の至宝-」10万人達成!

特別展「出雲-聖地の至宝-」(2012年10月10日(水)~11月25日(日))は、
2012年11月17日(土)午前、10万人目のお客様をお迎えしました。
多くのお客様にご来場いただき、心より御礼申し上げます。

10万人目のお客様は、文京区よりお越しの田村 美保子さんです。
記念品として、島根県立古代出雲歴史博物館長 玉串和代より島根県の物産品と交換できるギフト券と出雲歴博の招待券、ミュージアムショップのグッズを、
東京国立博物館長 銭谷眞美より本展図録を贈呈いたしました。
そして、今日はしまねっこが来ていることから、しまねっこからも「しまねっこグッズ」のプレゼントがありました。


左から、銭谷眞美館長、田村美保子さん、しまねっこ、玉串和代館長
2012年11月17日(土) 東京国立博物館本館にて


田村さんは10月に「神話博しまね」(2012年7月21日(土)~11月11日(日))も行かれたとのこと。
そのとき、「宇豆柱」を見ることができなかったのでこれから見るのを楽しみにしているとお話くださいました。

特別展「出雲-聖地の至宝-」は、会期終了まで本日ふくめ残り8日となりました。
まだご覧いただいていない方、ご来館を心よりお待ちしております。

カテゴリ:2012年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年11月17日 (土)

 

しまねっこがトーハクに!

会期終了まで2週間をきった特別展「出雲-聖地の至宝-」(2012年10月10日(水)~11月25日(日))。
これまでご来館いただきました皆様、誠にありがとうございます。

今週末、展覧会を応援するために、なんと「しまねっこ」がトーハクにやってきます!
しまねっことは島根県の観光キャラクターです。
ご覧になったことがある方もいるのではないでしょうか。

出雲大社の本殿の屋根を頭にかぶり、首にはしめ縄を結んでいます。
先日まで開催されていた「神話博しまね」(2012年7月21日(土)~11月11日(日))では、
大人気、大忙しの毎日だったそうです。

トーハクにしまねっこがくるのは、11月17日(土)、18日(日)です。
両日ともに、11:00~・13:00~・15:00~ 各回30分、
本館の前庭付近で「しまねっこダンス」をご披露。「記念写真撮影」もできます。

しまねっこダンスはとてもかわいいダンスとうたです。
このうたを聞くとしまねっこのことをいろいろ知ることもできてしまいます。

しまねっこの公式サイトしまねっこの部屋では、しまねっこのうたとダンスを動画で見ることができるので、
ご来館前にご覧いただき当日ぜひ一緒に踊ってみてはいかがでしょうか。

お子様から大人まで愛されるしまねっこにぜひ会いにきてください。
お待ちしております。

*しまねっこの部屋の登場スケジュールにも17日(土)18日(日)は「東京国立博物館に行ってくるにゃ!」と書いてあります。

カテゴリ:2012年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2012年11月16日 (金)

 

特別展「中国 王朝の至宝」-俑(よう)-

現在開催中の特別展「中国 王朝の至宝」(2012年10月10日(水)~12月24日(月・休)、平成館)には中国のさまざまな地域、さまざまな時代の作品が出品されていますが、この中から今回は俑(よう)に注目してみましょう。
俑とは墳墓に副葬するために作られた人形のことです。木製のものや、布製の服を着せたものもありますが、多くはやきもので作られます。中国で俑が製作され副葬されるようになったのは春秋戦国時代のことです。殉葬の代わりに死者のために働くものとされ、兵士や官吏、舞人や楽人など、その内容は多彩です。

一級文物 跪射俑(きしゃよう)
一級文物 跪射俑(きしゃよう)
秦時代・前3世紀 陝西省西安市臨潼区始皇帝陵兵馬俑2号坑出土 秦始皇帝陵博物院蔵
ご存じ、秦の始皇帝(在位前247~前210)が作らせた兵士の俑です。等身大に作られ、一体一体顔つきが異なっています。当初は彩色が施されていました。

跪射俑(きしゃよう) 靴底
なんと、靴底まで精密に写されています。徹底した写実から生まれる迫力は、説明の必要がないほどです。


一級文物 人物・鼎付霊鳥(ていつきれいちょう)
一級文物 人物・鼎付霊鳥(ていつきれいちょう)
前漢時代・前2世紀 山東省済南市無影山11号墓出土 済南市博物館蔵

こちらは、前漢時代に作られたもので、山東地方独特の文化が色濃く反映されています。たくましい脚をもった大きな鳥の上に、人物や鼎が乗ったユニークな造形です。


一級文物 女性俑(じょせいよう)
一級文物 女性俑(じょせいよう)
前漢時代・前2世紀 陝西省咸陽市陽陵陪葬墓園130号墓出土 漢陽陵博物館蔵

同じく前漢時代の中原で作られた女性の俑。髪型や衣服が忠実に表現されている一方で、秦時代の俑に見られる徹底した写実は影をひそめ、軽快な印象になっています。

一級文物 弾琴俑(だんきんよう)
一級文物 弾琴俑(だんきんよう)
三国(呉)時代・3世紀 江蘇省南京市江寧区上坊鎮1号墓出土 南京市博物館蔵

三国時代の呉から西晋時代にかけて、南京一帯の墳墓には青磁の俑が納められるようになります。青磁は写実的な描写にはあまり向いていないと思われるのですが、死者に仕える俑には青磁がふさわしいと考えられていたのでしょうか。

胡服女性俑
胡服女性俑(こふくじょせいよう)
唐時代・8世紀 陝西省西安市長安区出土     西安博物院蔵

異民族衣装をまとった女性の俑です。頭にはフェルト製の大きな帽子を被っています。唐時代の華麗で国際色豊かな文化がよくあらわれています。ふくよかな顔立ちは唐時代の美人の典型です。

俑は彫刻とは異なり、製作技法や用途が限定され、また量産されたものですが、それぞれの時代や地域における生と死、そして人間に対するまなざしが投影されています。それぞれを比較しながらご覧いただくと、また楽しさが増すのではないかと思います。

 

カテゴリ:研究員のイチオシ2012年度の特別展

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posted by 今井敦(博物館教育課長) at 2012年11月15日 (木)