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特集「平成27年度新収品展II」のみどころ

みなさまのご協力により、昨年度もトーハクにたくさんの新収品を迎えることができました。今回はそのうち購入した作品の中から特集「平成27年度新収品展II」(2016年5月31日(火)~7月10日(日)、平成館企画展示室)の展示を開催します。

住吉物語絵巻断簡
住吉物語絵巻断簡 紙本着色 鎌倉時代・13世紀

こういった作品を迎えるにあたって、トーハクでは必ず会議を行って検討します。私は書を研究しているので、絵画には詳しくないのですが、会議では担当の研究員がみどころを解説しますので、とても勉強になります。このブログでは、担当研究員の解説に、プラスして私なりにお勧めするポイントをお知らせしたいと思います。

住吉物語絵巻断簡 拡大
住吉物語絵巻断簡 拡大

展示ケースに入ってしまうと、なかなか細部を見られないので、まずは拡大をご覧ください。衣裳の文様まで細かく描かれていますよね…。これは、『住吉物語』を描いた絵巻のうち、現存する一番古いものだそうです。この作品に連続する場面がアメリカ・メトロポリタン美術館(バーク財団寄贈)に所蔵されるほか、トーハクにも巻子本(重要文化財、本館3室にて、6月19日(日)まで展示中)、掛幅本(重要美術品)もあります。とても貴重な絵巻の一枚、茶の湯の席などで掛けられて鑑賞されてきたのでしょうか。

玄圃瑤華
玄圃瑤華 伊藤若冲自画自刻 江戸時代・明和5年(1768)

最近、おとなり東京都美術館の展覧会で大人気だった、若冲の作品です。なんと、若冲が自ら版木を彫って作ったもので、これ以外に現存するのは3件のみだそうです。「玄圃瑤華」(げんぽようか)という名称には、「玄圃」は仙人の居どころ、「瑤華」は玉のように美しい花という意味があり、凝った名前ですよね。モノクロの画面で若冲独特の表現がされていて、担当研究員も「ミュージアムグッズにしたい」と言ってましたが、私も、この図のハンカチが欲しいです。

吉野宮蒔絵書棚
吉野宮蒔絵書棚 江戸時代・18世紀

吉野宮蒔絵書棚 拡大
吉野宮蒔絵書棚 拡大

こちらも拡大画像で。「秋津」の文字が見えますか?この装飾は書にも関係の深い「葦手」(あしで)です。「葦手」は、もとは仮名の書体のひとつで、水や岩などの絵の中に文字を隠して表したものです。この書棚では、『万葉集』巻一で、持統天皇が吉野へ行幸した際に柿本人麻呂が詠んだ和歌を表現しており、金銀、珊瑚象嵌を使った図柄に書が溶け込んでいて、絢爛たる風景となっています。この蒔絵の技法は、徳川綱吉の時代に流行したものだそうです。

展示ではほかの作品もご紹介しますが、どれも、貴重な作品ばかりです。縁あってトーハクに迎えることができましたので、展示でご覧いただきながら調査研究を進め、今後の100年も1000年も伝えられるように、大切にしていきます。みなさま、引き続きのご理解とご協力を、よろしくお願い申し上げます。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 恵美千鶴子(150年史編纂室主任研究員) at 2016年05月31日 (火)

 

「黄金のアフガニスタン展」10万人達成!

特別展「黄金のアフガニスタン-守りぬかれたシルクロードの秘宝-」(4月12日(火)~6月19日(日)、表慶館)は本日10万人目のお客様をお迎えしました。
ご来場いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
10万人目のお客様は、神奈川県からお越しの石原草紀子(いしはら さきこ)さんと井戸陽子(いど ようこ)さんのお2人連れ。お2人は1ヶ月も前からこちらの展覧会に行こうとお約束されていたとのことでした。ありがたいことです。
お2人には10万人突破のお祝いに駆けつけた映画コメンテーターのLiLiCoさんと、東京国立博物館長 銭谷眞美より、特別展図録や純金箔入り羊羹などの記念品を贈呈しました。
石原さんは、「10万人目ということでびっくりしました。これだけの人が展覧会に興味を持っているということは、それだけ奇跡的な秘宝なのだなと感じました」と、井戸さんは「これから変わらぬ美しさの宝物を見るのが楽しみです。」とお話くださいました。
また、記念撮影には当館広報大使のトーハクくんも登場、LiLiCoさんとともにセレモニーに華を添えました。

 
「アフガニスタン展」10万人セレモニー
左から、トーハクくん、石原草紀子さん、井戸陽子さん、LiLiCoさん、館長の銭谷眞美
5月31日(火)東京国立博物館 表慶館前にて


本展は紀元前2100年頃から紀元後3世紀までに古代アフガニスタンで栄えた文化を、4つの遺跡から出土した名宝によって紹介しています。中でも、アフガニスタン北部のティリヤ・テペから出土したきらびやかな黄金製品の数々は日本初公開!
会期終了まで残り3週間を切りました。約250件の奇跡の秘宝が一堂に会する本展をどうぞお見逃しなく!
 

カテゴリ:news2016年度の特別展

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posted by 武田卓(広報室) at 2016年05月31日 (火)

 

驚きの黄金製品

アフガニスタン展もいよいよ終盤ですね~。この特別展では企画担当グループ(ワーキング)として参加し、特に展示作業ではティリヤ・テペという遺跡から出土した黄金製品を担当しました。「ティリヤ・テペ」とはウズベク語で「黄金の丘」を意味します。その名の通り、この遺跡で発掘された6つのお墓からは、大量の黄金製品が出土しました。この特別展はその全貌を日本で初公開するものでもあります。
黄金だから価値がある!という考えで調査や研究をやっているわけでは決してないのですが、それにしてもやっぱり金ってすごいな~と、展示をしながら感動した次第です。まばゆく、そして柔らかくもある輝きと存在感!黄金の工芸品には展示空間を支配する「力」が備わっています。おかげさまで連日多くの皆様にお越しいただいており、本物がもたらす感動を持ち帰っていただけたら幸いです。
さて、今回はそんな担当者から、作業中に驚いたお話をしたいと思います。まずはこちらの金製品。ティリヤ・テペ1号墓から出土した「イルカをかつぐ人物文飾板」(作品№36)。



マフラーのように首にまいているのが「イルカ」なんです。ベトベトしそうですね・・・。さて、この作品のうら側ですが、ひっくり返すと形にあわせて凹んでいるのがわかります。



つまり型の上からうすい金板をあて、叩いて打ち出したということですね。法隆寺宝物館で展示している押出仏も同じ作り方をしています。
ところがこちら、「靴留金具」(作品№106 ティリヤ・テペ4号墓出土)は違うんです。



この作品、打ち出しているのではなく、黄金を鋳造しているんです。つまり金無垢!靴につけるにしてはずいぶん豪華な金具ですね~。面白いのは裏側に織物の痕跡がみえていること。それも後からくっついたものではなく、痕跡ごと鋳造されているんです。



どうしてこんなことになったのか?ちょっとイメージするのが難しいですが、次のような手順が想像できます。

1. 平らにのばした粘土の上に織物を敷く(これは型が粘土から外しやすいようにするため)。
2. 布のうえから型を押し当て、金具背面の鋳型を形作る。
3. 布をはがし、凹みに融けた蝋を流して、細かな造形を作る。
4. 上から粘土を被せて熱し、中の蝋を流してしまう。
5. 蝋が流れでた後の空間に金を流し込む。

こうすると、金具の背面に織物の痕が残りますよね?実際にどう作ったのかは分かりませんが、うら側を見ると作り方も想像できて楽しいです。
次に驚いたのが「戦士像留金具」(作品№79 ティリヤ・テペ3号墓出土)の精巧な出来栄えです。



今回展示している作品のなかで、最も細密な出来栄えと感じている作品です。鎧をまとい、槍と楯をもった戦士の姿で、その顔は側面から捉えられています。薄い打出しの作品なので、当然この顔も片面のみと思いきや!実は正面からはパッと見えない反対側の顔まで表現されているんです。



ちょっと見えにくいですが、みなさんも会場で覗き込んでみてください(特にこの作品は見えやすいように、ケース前面に展示しました)。本当にこんな素晴らしい作品に出会えて感動しました。
短いブログではまだまだ話しきれませんが、この特別展には古代アフガニスタンにおける工芸美術の素晴らしさが溢れています。会期終了まであと3週間あまり!残された黄金の機会をお見逃しなく!!
 

カテゴリ:研究員のイチオシ2016年度の特別展

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posted by 三田覚之(教育普及室・工芸室研究員) at 2016年05月27日 (金)

 

新知見! 伊東マンショの肖像に隠されたドラマ

こんにちは、保存修復室の瀬谷愛です。

5月17日(火)の公開以来、多くの皆様がマンショ君に会いに来てくださっています。ありがとうございます!

 
本館バナー
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展示風景
本館7室は、いつもとちがう雰囲気です。

マンショ君。皆様のイメージどおりでしたでしょうか。
それとも、意外とイケメン? 平たい顔族じゃない? 画家のフィルターがかかっている?
色々なご意見があると思います。

歴史上の人物たちはどんな顔をしていたのか?
写真のない時代について、肖像画はその問いに答えてくれます。
ですが、肖像画を発注できる人は高位の人物だけ。
経済的な問題だけでなく、その肖像を残すだけの地位、価値、意味がないといけません。
伊東マンショも、もし使節としてヨーロッパに行かなければ、その姿が描かれることはなかったでしょう。

さらに、伊東マンショの肖像については、
5月18日(水)九段下のイタリア文化会館で開かれたシンポジウム「イタリアと日本、初めての出会い」で発表された、ヴェネツィア・カ・フォスカリ大学セルジオ・マリネッリ教授のお話によれば、

「1577年、ヴェネツィア元老院の大部分が大火災によって焼失し、会議室を飾る絵画を補う必要があった。とくに、ヴェネツィア共和国の威容を誇示するような、海外使節団の絵画を。」

ということなのです。

感動しました・・・マリネッリ先生のお話が始まって、たった3分で。

例えば、ドゥカーレ宮殿に伝わる、ヴェロネーゼによる「ニュルンベルグからの使節団の絵」や、同じくヴェロネーゼ工房による「ペルシャ使節団の絵」などと同様に、多くの国との交流を表す、象徴的な絵画が必要だったというわけです。

そこへ、地球の裏側から、日本人がやって来る、ヤア、ヤア、ヤア!
描かないわけには参りませんよね。

 
伊東マンショの肖像 
伊東マンショの肖像 
ドメニコ・ティントレット筆 1585年
ミラノ、トリヴルツィオ財団 Fondazione Trivulzio - Milano


では、この肖像は、肖像画制作のどの段階にあるものなのでしょうか?

その問いには、次のような結論でした。

「ドメニコ・ティントレットの肖像画の描き方というものがある。大きな肖像画を描く際、まず、個別に「下絵」を作り、集団肖像画に転写した。像主を前にしてほぼ下書き無しでサッと描かれて、フレッシュな印象になる。そして、大きな肖像画に転写するのは、工房の画家の仕事であるから、クオリティは低下する。伊東マンショの肖像は、大きな絵から切り取ったものではなく、ドメニコ自身による、この「下絵」の肖像画であろう。完成した絵であるとともに、より大きな絵の「下絵」ともいえるものだ」

感動しました・・・最初の感動から7分後。
まさに、これぞ、美術史講義の醍醐味です。


「ティントレットが描いた」と聞けば、美術好きの方はたいへん驚かれるでしょう。
そして、「息子のドメニコ」と聞くと、「なんだ、息子か」と。

しかし、いわゆるティントレットは、16世紀ヴェネツィアで非常に大きな工房を構えており、受注した絵画は工房で制作していました。先生によれば、「父の陰に隠れがちであるが、ドメニコは非常に優れた肖像画家だった」そうです。
伊東マンショが描かれた1585年、父ヤコポは69歳になっており、この頃には息子のドメニコ(25歳)が多くを製作していたと考えられています。

16歳のマンショと25歳のドメニコ。
東西の若者の結晶が、ここにあるのです。


最後に、立派な集団肖像画になるはずのものが、なぜ完成しなかったのか?

「1598年、ローマ教皇庁がフェラーラ公国を教皇領とし、ヴェネツィア共和国の自治も終わらせようとした。これにより教皇庁とヴェネツィア共和国の対立が深まり、1602年、イエズス会は以後40年間にわたってヴェネツィアから追放された。イエズス会の象徴でもあった天正遣欧少年使節の肖像画は、これにより注文が取り消されたのだろう」

ということでした。

こうして、ティントレット工房に残された伊東マンショの肖像は、17世紀初頭のファッションに描き変えられ、やがて売却された、というわけです。

このたいへん壮大なドラマを知った後でマンショ君を見ると、「苦労したね・・・」とまた嘆息がもれます。
一度ご覧になった方も、以上をふまえましてもう一度、ご覧いただけますと幸いです。


展示情報

特別公開「新発見!天正遣欧少年使節 伊東マンショの肖像」(2016年5月17日(火)~7月10日(日)、本館7室)

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 瀬谷 愛(保存修復室主任研究員) at 2016年05月26日 (木)

 

トーハクくんがゆく!「 トーハクのお客様にいっぱい会ったほ!」

ほほーい!ぼくトーハクくん!
5月18日は「国際博物館の日」、その日はトーハクの総合文化展がタダで見れたんだほ、トーハクは太っ腹だほー。
いっぱいお客さまがくると思って、ぼくとユリノキちゃんはみんなに会いにいったんだほ。



この前の黒田清輝展10万人セレモニーに出たり京都にトラりんに会いにいったりはしてたんだけど、トーハクのお客さまとはちゃんとご挨拶できてなかったんだほ。ユリノキちゃんと2人でお客さまに会うのも初めてだったんだほ。



その日は天気もとってもよくて気持ちよかったほ。たくさんのお客さまからも可愛いって言われたし、写真もいっぱい撮ってもらったんだほ。やっぱり直接お客さまと触れ合うのは楽しいほー。

 

実は「ゆるキャラ(R)グランプリ2016」にユリノキちゃんと一緒にエントリーしたんだほ。18日はけっこうチヤホヤされたしちょっと調子にのってきたほ、みんなも応援よろしくだほ!

 

カテゴリ:news催し物

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posted by トーハクくん at 2016年05月21日 (土)