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国宝「観楓図屏風」公開

吹く風がふと冷たくなり、心地よかった秋涼もすっかり肌寒く感じられるようになりました。
深まる秋の景色は厳しい冬へと向かう寂しさを感じさせます。
そのようななか、北から徐々に色づき、山々を紅と黄金に染める紅葉は、私たちの心を晴れやかで明るい気持ちにさせてくれるものです…。

現在、本館2室 国宝室にて展示されている観楓図屏風にはそうした秋の日に、紅葉狩りを楽しむ人々の姿が描かれています。


国宝 観楓図屏風 狩野秀頼筆 室町~安土桃山時代・16世紀 (~2011年12月11日展示)
(注)以下画像はすべて観楓図屏風(部分)

画面右上の雲間にみえる伽藍が神護寺のものとするならば、ここは京の洛北、紅葉で名高い高雄でしょうか…。そうであれば、群青の川の流れは清滝川でしょう。遠く銀雪をたたえた愛宕社が早くも冬の到来を告げています。

この屏風では、寺社や名所を舞台とすることで、神仏への祈りとともに季節の移ろいを描く「四季名所絵」の伝統が踏まえられています。おそらく右隻にあたる「春夏」の一隻がかつて存在したことを思わせます。


愛宕社らしき鳥居…すっかり冬の気配。


これは神護寺の宝塔でしょうか?

 
また、この屏風は「四季名所絵」であるとともに、当時の人々の姿を丹念に描き込んでおり、「野外遊楽図」のもっとも古い作例とも位置づけられています。


車座になり酒宴に興じる男たち…。


鼓を奏でる男は「辻が花」を着ています。衣裳や調度にいたるまで丹念に描かれています。


扇をもって舞う男は、この一行の主人でしょうか?


一服一銭(いっぷくいっせん)の姿も。

「一服一銭」は室町時代(15世紀)から安土桃山時代にかけて、縁日や名所などで抹茶一服を一銭で売っていました。
ここでも「担い茶具」で立て売りする様子が細やかに描かれています。


一服ずつ立てています(立て売り)。


「紅葉を見ながらいただくお茶は、おいしいな…。」


こちらでは女性たちが子供らを伴って、茶や酒を楽しんでいます。


扇を片手に茶を楽しむ尼の姿も。手前の女性の杯を持つ手の描写に注目ください…。


人差し指を少し浮かせ、親指、中指、薬指で杯を支え、小指を反らすこの描写をみても、人物表現はけっして定形化しておらず、この画家(秀頼)の優れた描写力をみてとれます。

この屏風を描いた狩野秀頼の活躍期から、制作年代は永禄年間(1558~70)頃といわれています。
この頃は、応仁の乱(1467~1477)で荒廃した都がやっと復興し、穏やかな平和な時がおとずれた頃だったでしょう…。
そこに描かれた人々は、平和を謳歌し、輝くような魅力を放っています。

 

この屏風をみつめると、川のせせらぎ、人々の歓びの笑い声、橋上の笛の音などが聞こえてくるようです…。
ぜひトーハクの秋の庭園とともに、この「観楓図屏風」もあわせてお楽しみください。
心よりお待ちしております。

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 小野真由美(出版企画室) at 2011年11月17日 (木)

 

特別展「法然と親鸞展」 入場者10万人達成!

特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」は、2011年11月17日(金)午後、10万人目のお客様をお迎えいたしました。
これまでご来場いただいたお客様に、心から感謝申し上げます。

10万人目のお客様は、オーストラリアからお越しのレベッカ・ザネッティさん(21歳)です。
東京国立博物館長 銭谷眞美より、展覧会図録と会場限定販売のベアブリックを贈呈いたしました。

特別展「法然と親鸞展」10万人目 
右から、銭谷眞美館長、レベッカ・ザネッティさん
2011年11月17日(木) 東京国立博物館平成館にて


レベッカさんは学生時代にファッションを勉強されていたそうで、
「普段からアートに興味があります。この展覧会へは、日本美術を知るために来ました」とのこと。
レベッカさん、ありがとうございました。

特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」は、11月13日までの前期展示の作品が終了し15日より後期展示が始まっています。
後期に入って、展示室内の雰囲気が一気に変わりました。前期にご覧いただいた方も是非またお出かけください。
まだお越しいただいていない方、どうぞお見逃しなく。
 

特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」は、2011年12月4日(日)まで開催しています。

カテゴリ:news2011年度の特別展

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posted by 広報室員 at 2011年11月17日 (木)

 

板谷家豆発見

こんにちは、平常展調整室の瀬谷です。

今日は、特集陳列「板谷家の絵画とその下絵」(~2011年12月4日(日))をご紹介します。

10月25日(火)から始まっていますが、あっという間に3週間。
あともう3週間しかありませんが、まだ展示をご覧になっていない方に、
豆発見(?)を耳打ちいたしましょう。

本館2階の特別2室入口
会場は、本館2階の特別2室です。
エレベーターのすぐとなりですから、
1階インフォメーションや、地下のミュージアムショップからもアクセスしやすいのです。

パンフレット画像
会場を入ると、すぐ右手に展覧会概要のパネルがありますが、
その右下のテーブルには、パンフレットが置いてあります。

こちらのパンフレット、
会場内にはない解説なども盛り込んだ、豪華8ページオールカラー。
なんと無料です!
みなさん、ぜひお手にとってお持ち帰りください。

肖像が展示の様子
さて、
最初のケースには肖像画を展示しています。

右の3人の肖像画のうち、一番左の方の顔をみてみましょう。

板谷広当像
(左)板谷広当像 住吉広尚筆 江戸時代・18世紀 清野長太郎氏寄贈、(右)(左)画像の拡大

板谷家初代、板谷広当(いたや・ひろまさ、1730~97)です。
大きく力強い目に、高い鼻、大きな耳。
当館所蔵の「住吉広守・住吉広行・板谷広当像」のうちのひとつです。

では、この左にある「板谷家伝来資料」の板谷広当像をクローズアップしてみましょう。

板谷広当像
(左)板谷広当像 板谷家伝来 江戸時代・18~19世紀 板谷廣起氏寄贈、(右)(左)画像の拡大

やはり鋭い目に、高い鼻、大きな耳。

それと・・・?
左目の下にしみのようなものが・・・!?
どちらにもある!

着色像だけみていたときは、ただの汚れかと思っていましたが、
こうして比べてみますと、これは広当の顔にあったシミをわざわざ描きこんでいるのだとわかりました。

ひとつだけみていてもわからないことが、
いくつもの資料が出会うことによって、
新しい発見につながります。


先日、この「板谷家伝来資料」をご寄贈くださいました板谷廣起さん(8代目、1907-2008)の奥様がご来館されました。
いろいろお話をさせていただくなかで、こんなことをうかがいました。

「ほんとうに不思議なことですけれども、この顔は主人にそっくりなんです。
鼻が高くて、耳が大きくて。
目は、主人のほうがもう少し穏やかな目をしていましたけれども。
目の下にもシミがありました。
何代たっても、やはり血がつながっているというか。
この絵をみるとそのことを思い出します。」


200年の時を超えてつながる板谷家。
絵画と下絵とともに、ぜひこの機会にご覧ください。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 瀬谷愛(平常展調整室) at 2011年11月16日 (水)

 

まぼろしの国宝、ニッポンに帰る

少々気が早いようですが、2012年3月20日(火・祝)から始まる、特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」のお知らせです。

本日、プレス関係者向けに「報道発表会」を行い、約90名の方にご参加いただきました。

東洋美術の殿堂と称されるアメリカのボストン美術館には、10万点を超える日本の美術品が収蔵され、その量と質において世界有数の地位を誇っています。
ボストン美術館草創期に在職したアーネスト・フェノロサや岡倉天心以来、収集が続けられてきました。それにしても10万点ってすごい数ですね。

ボストン美術館 外観
ボストン美術館 外観


ボストン美術館は、作品保護の観点から展示期間を厳しく制限しており、本展開催にあたり、出品作品のほとんどを5年間にわたって公開を控えて準備をしてきました。
と、一口に言いますがこれは大変なことです。
「この展覧会に出品したいので、それまでの5年間は展示しないでいてくださいね!」ということです。
未公開作品を含む日本美術コレクションの名品92点が、ようやく眠りから開放され、一気に東京で展示されます。


なかでも、これらのスターたちは必見です!

貴重な奈良時代の仏画、「法華堂根本曼荼羅図(ほっけどうこんぽんまんだらず)」。
法華堂根本曼荼羅図
法華堂根本曼荼羅図 奈良時代・8世紀

在外二大絵巻、
ユーモラスな「吉備大臣入唐絵巻(きびだいじんにっとうえまき)」と、ドラマティックな「平治物語絵巻(へいじものがたりえまき)」。

吉備大臣入唐絵巻(部分) 平安時代・12世紀後半

平治物語絵巻
平治物語絵巻 三条殿夜討巻(さんじょうどのようちのまき)(部分) 鎌倉時代・13世紀後半


そして修復後、世界初公開!
ポスターのメインビジュアルにもなっている曽我蕭白(そがしょうはく)「雲龍図(うんりゅうず)」どーん!
雲龍図
雲龍図(部分) 曽我蕭白筆 江戸時代・宝暦13年(1763)

これだけではとても語り尽くせないので、これから展覧会の魅力をもっとお伝えしていきたいと思っています。
まさにボストン美術館の史上最大規模の日本美術展は、2012年3月20日(火・祝)から6月10日(日)までの開催です。

そして本日より、前売券が発売開始されました!とってもお得な「早割ペア券」(2枚セット・2,000円)は、2012年2月14日(火)まで販売します。詳細は展覧会公式ホームページをご覧ください。

来春、絶対に見逃せない展覧会です。どうぞお楽しみに!
 

All photographs © 2012 Museum of Fine Arts, Boston.

カテゴリ:news2012年度の特別展

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posted by 小島佳(広報室) at 2011年11月15日 (火)

 

秋の庭園でほっとひといき…のあとは展示室で紅葉狩を

10月29日(土)より、秋の庭園開放が始まりました。

東京では11月に入っても暖かい日が続き、庭園内の木々もまだまだ冬支度が整っていない様子…。
それでも、普段はなかなか観る機会のない庭園や茶室を多くの方にお楽しみいただいております。



毎度好評のカフェ「MOTOYA EXPRESS」も出店しています。
有機ホットコーヒー(350円)や有機グリーンティー(400円)などの飲み物14種のほか、特製ホットドッグ(400円)や、
無添加クッキー(200円~)、無添加マフィン(300円)など、軽食もご用意しています。




有機ホットコーヒー(350円)と無添加バナナマフィン(300円)


九条館では雨戸を開放していますので、茶室の中を外からご覧いただくことができます。
(注意:茶室の中には入れません。また、茶室利用中は間近でご覧いただけないことがあります。)


九条館

コーヒー片手に読書など、ベンチでのんびりとくつろいでいる方、茶室を興味深げに見てまわる外国からのお客様など、
秋の庭園で思い思いに過ごされています。



一方、展示室内では、庭園より一足早く色づいた紅葉をお楽しみいただくことができます。

本館2階の国宝室では、国宝「観楓図屏風」(狩野秀頼筆)が、11月15日(火)から展示されます。
京都・高雄の清滝川のほとりで紅葉狩を楽しむ人々がいきいきと描かれています。


国宝 観楓図屏風(部分) 狩野秀頼筆 室町~安土桃山時代・16世紀
(2011年11月15日(火)~12月11日(日) 本館2階国宝室にて展示)



本館8室・暮らしの調度では、紅葉や秋の草花をあしらった調度品が数多く展示されています。
往時の人々の季節感を大切にした暮らしぶりが目に浮かびます。
現代から考えると、ちょっと贅沢な気もしますね。


草花漆絵食籠 谷田忠兵衛作 江戸時代・18世紀 伊藤甲子之助氏寄贈
2011年12月11日(日)まで本館8室にて展示)


ウェブコンテンツ「おすすめコース」では、これらの作品を盛り込んだ
庭園開放とあわせて楽しむ秋の作品コース」をご用意しました。
展示室でも紅葉狩をお楽しみいただければ幸いです。


上野の山の紅葉の見頃予想は11月下旬から12月上旬だそうです。
秋の庭園開放は12月11日(日)まで、 時間は10:00 ~ 16:00、入館料のみでご覧いただけます。



秋の行楽はぜひ、トーハクの庭園と展示室での紅葉狩をお楽しみください。

カテゴリ:newsウェブおすすめコンテンツ

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posted by 広報室Web担当 at 2011年11月13日 (日)