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今夏開催!特別展「和様の書」の、報道発表会を行いました

春らしい陽気の3月12日(火)、特別展「和様の書」(7月13日(土)~9月8日(日))の報道発表会が行われました。



「和様」は「わよう」と読みます。日本の風土や国民性にあった日本独自の文化をさす言葉です。
日本の文化は、外国の文化の刺激、影響を多く受けて発展してきましたが、
平安時代中期になると、和歌や文芸を中心に「和様」が誕生、発展します。
中国から伝来した漢字も、変化して日本オリジナルの仮名が成立します。
ただ「和様の書」は仮名に限りません。では「和様の書」とは何でしょうか。

そこで今回は、書が専門の島谷弘幸副館長による、書のデモンストレーションが行われました。


左の中国風をさす「唐様(からよう)」に比べて、右の和様の書は柔和な形をしています。


実は筆の持ち方にも違いがあること、漢字から仮名への変遷など
スクリーンに映し出された筆運びとトークによって、実際に「和様の書」を見て、聞いて、感じていただくという趣向です。


その上で、今回の展覧会を担当する高橋裕次博物館情報課長によって、本展覧会の見どころ、出展作品の一部が紹介されました。


目玉のひとつは「和様の書」を創出した3人の能書である「三跡」の書。

小野道風(おののとうふう)

国宝 円珍贈法印大和尚位並智証大師謚号勅書(部分)
(えんちんぞうほういんだいかしょういならびにちしょうだいししごうちょくしょ)
小野道風筆 平安時代・延長5年(927) 東京国立博物館蔵
展示期間:7月13日(土)~9月8日(日)


藤原佐理(ふじわらのさり)

国宝 詩懐紙(しかいし)
藤原佐理筆 平安時代・安和2年(969) 香川県立ミュージアム蔵
展示期間:7月30日(火)~9月8日(日)


藤原行成(ふじわらのこうぜい)

国宝 白氏詩巻(はくししかん)(部分)
藤原行成筆 平安時代・寛仁2年(1018) 東京国立博物館蔵
展示期間:7月13日(土)~9月8日(日)


天下人の筆跡もご覧いただけます。皆さんが抱くイメージ像と比べていかがでしょうか。

織田信長

重要文化財 書状(しょじょう)
織田信長筆 天正5年(1577)10月2日 永青文庫蔵
展示期間:7月13日(土)~8月12日(月)


豊臣秀吉

重要文化財 仮名消息(かなしょうそく)(部分)
豊臣秀吉筆 文禄2年(1593)8月9日 京都・高台寺蔵
展示期間:7月13日(土)~8月12日(月)


徳川家康

重要美術品 書状(しょじょう)
徳川家康筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵
展示期間:7月13日(土)~8月4日(日)


ちなみにポスターの展覧会タイトルロゴ「和様の書」の「の」は秀吉の「仮名消息」より拝借しました。
どの部分にその「の」があるか、見つけられますか?

空間構成や美しい料紙にも日本人の美意識が表れています。


升色紙(ますしきし)「いまはゝや」
伝藤原行成(ふじわらのこうぜい)筆 平安時代・11世紀 東京国立博物館蔵
展示期間:8月6日(火)~9月8日(日)



国宝 本願寺本三十六人家集(順集)
(ほんがんじぼんさんじゅうろくにんかしゅう、したごうしゅう)
藤原定信(ふじわらのさだのぶ)筆 平安時代・12世紀 京都・西本願寺蔵
展示期間:順集 8月13日(火)~9月8日(日) 頁替あり


そして長谷川等伯による絵との豪華コラボレーション作品も。


檜原図屛風(ひばらずびょうぶ)(部分)
書:近衞信尹(このえのぶただ)筆、  画:長谷川等伯(はせがわとうはく)筆
江戸時代・17世紀 京都・禅林寺蔵
展示期間:8月6日(火)~25日(日)


さらに、文字をあしらった調度品や着物など、紹介しきれないほど多彩な出展作品は約150件。
そのうち約80件が国宝・重要文化財という豪華な展覧会です。
「書」を通じて日本人が育んできた「心」「美意識」もまた、見て、感じていただける機会です。
本展覧会を楽しめる知識が満載の研究員によるブログも計画中。
どうぞお楽しみに!
 

カテゴリ:news2013年度の特別展

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posted by 林素子(広報室) at 2013年03月15日 (金)

 

「円空」展 おすすめ期間限定メニュー

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(本館特別5室、4月7日(日)まで)では、
多彩な円空仏をお楽しみいただけます。

でも、お楽しみいただけるのは展示だけはありません!

レストランゆりの木(東洋館1階)では円空展特別メニューを大変豊富にご用意しています。
今回はその特別メニューをご紹介します。

円空展を記念した期間限定特別メニューはこちら。


鶏ちゃん丼(味噌椀 香の物付)1400円(税込)

「けいちゃん」と読み、鶏肉を使った岐阜の郷土料理のことをいいます。
こちらはゆりの木ふうにアレンジしています。


すっぽん雑煮風(小鉢 香の物付)2200円(税込)

奥飛騨郷の源泉かけ流しで育てたすっぽんを使用しています。
あっさりしてとても食べやすいです。
美と健康に優れた食材のすっぽんはいかがでしょうか。

  
左:飛騨御膳(岩魚塩焼き 飛騨野菜の天婦羅 味噌椀 香の物付)2000円(税込)
右:騨野菜の天婦羅に使用されている「宿儺かぼちゃ

奥飛騨の清涼で育てられた岩魚と飛騨直送の野菜を使用しています。
このかぼちゃの天婦羅は飛騨高山でとれる「宿儺かぼちゃ」を使用しています。


飛騨高山産 奥美濃古地鶏の香草焼き(パンまたはライス デザート コーヒーまたは紅茶付)2200円(税込)

ボリュームたっぷりですが、しつこくなく、ハーブの香りがとても効いています。

このほかにも、「奥美濃古地鶏のチキンカレー(コーヒー付)1500円(税込)」、
「飛騨サーモン親子丼(味噌椀 香の物付)1600円(税込)」、
「飛騨牛 肉うどん又はそば(いなり寿司付)1800円(税込)」をご用意しています。

お酒を飲みたいという方には・・・


飛騨ホワイトビール 850円(税込)

飛騨白川郷で育ったお米のビールです。軽い口あたりでさっぱりしていて飲みやすいです。

このほかにも、「林檎lala850円(税込)」、「純米吟醸 久寿玉850円(税込)」、
「本醸造 熟成古酒 天恩800円(税込)」もご用意しています。

あわせておつまみもいかがでしょうか?


飛騨高山産モッツァレラのカプレーゼ(パン付)950円(税込)

とてもまろやかなモッツァレラチーズでビールにもあいます。
パンはチーズとトマトの2種です。

このほかにも、「飛騨のサーモンのスモーク 飛騨野菜とともに(パン付)1100円(税込)、
「奥美濃古地鶏のソーセージ800円(税込)」もあります。

食後またはご休憩のお茶のおともにデザートもいかがでしょうか。


飛騨の円空展限定デザート ヘーゼルナッツと洋梨のムース(コーヒーまたは紅茶付)850円(税込)

ヘーゼルナッツと洋梨の二層のムースとケーキのまわりには木目をつけたビスキュイで包んでいます。
甘さひかえめでお食事のあとでも食べられてしまいます。
こちらの商品は人気ですのでお早めにどうぞ。

このほかにも、飛騨市にある天空牧場の「ジャージージェラート」もおすすめです。
ピュアミルク、完熟イチゴ、プレミアムバニラ、抹茶と4種類(各400円・税込)。
なめらかな舌触りです。

円空展のご観覧とともに、レストランゆりの木 特別メニューもぜひお楽しみください!

カテゴリ:2013年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2013年03月14日 (木)

 

書を楽しむ 第33回「松花堂昭乗「長恨歌」」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第33回です。


松花堂昭乗(しょうかどう・しょうじょう、1584~1639)。

江戸時代初期の能書(のうしょ、書の上手い人)で、
「松花堂弁当」の器の語源となっている人です。
松花堂昭乗の絵具入れ(パレット)のかたちを
参照して作ったのが、松花堂弁当です。

その松花堂昭乗の「長恨歌」(ちょうごんか)を
現在、本館8室に展示しています。

長恨歌(巻頭)
長恨歌(巻頭) 松花堂昭乗筆 江戸時代・17世紀 (本館8室にて4月7日(日)まで展示)

「長恨歌」は、
中国・唐時代に白楽天(はくらくてん、または白居易)が作った詩です。
楊貴妃(ようきひ)と死別した玄宗皇帝(げんそうこうてい)を題材にしています。

このブログ「書を楽しむ」第9回でも触れましたが、
平安時代に白楽天の詩集『白氏文集』を書写することが流行しました。
白楽天の詩は、江戸時代にも好まれたようですね。


展示ではそこまで開いてませんが、
巻末の写真をご紹介します。

長恨歌(巻末)
長恨歌(巻末)

巻末の奥書(おくがき)に、
近衞信尋(このえ・のぶひろ、1599~1649)に頼まれて書いたとあります。
五摂家の筆頭である近衞家とは、
松花堂昭乗は親しく交流していたそうです。


ほかに、こんな写真も。

国宝竹生島経_巻末
国宝 法華経 方便品 (竹生島経)巻末 平安時代・11世紀(特別展「和様の書」(2013年7月13日(土)~9月8日(日))で展示予定)

当館で所蔵する国宝「竹生島経」の巻末です。
違う紙を継ぎ足して、松花堂昭乗が跋文を書いています。
この竹生島経の筆者が、源俊房であると、
松花堂昭乗は述べています。

松花堂昭乗は、平安時代などの古い書を
よく勉強していました。
だから、鑑定のようなこともできたのでしょう。

「長恨歌」を書いたのも、
平安時代に好まれた白楽天の詩だから、かもしれません。

いろいろと連想しながら、
「長恨歌」を、お楽しみください。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2013年03月13日 (水)

 

ワークショップ「円空にちかづく」を開催しました!

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(~4月7日(日)、本館特別5室)もにぎわう暖かな日曜日、ワークショップ「円空にちかづく」をこども向け、おとな向けの計2回開催しました。

円空仏には、その前に立つ者を微笑ませる独特の雰囲気がある一方、彫るときのスピード感、力強さも感じられます。これをつくった円空への興味は尽きません。
円空と同じ体験をすれば、円空にちかづき、展覧会をより深く楽しんでいただけるはず。
円空と同じ体験… それは木を割ることです。

はじめて見る鑿(のみ)に興味深々
はじめて見る鑿(のみ)に興味深々

仏師・明珍素也さんのお話を聞き、デモンストレーションを見ていると、なんだかできそうな気がしてきたようです。早速挑戦!
直径12cm、高さ20cmほどの杉の材を、鑿(のみ)、楔(くさび)、かなづちで割ります。
慣れない手つきで鑿とかなづちを手に取り、木を打つ音が響きます。
でもすぐに、「あれっ」「できない!」という声がして木を打つ音が止まってしまいました。
一瞬心配しましたが大丈夫。明珍さんのアドバイスの声のあと、木を打つ音が聞こえてきました。

木を割る体験。おとなも子どもも真剣そのもの
木を割る体験。おとなも子どもも真剣そのもの

気づくと初対面の参加者同士が協力し合い、笑い声まで聞こえてきます。
「割れた!」という明るい声、「あと少し!」という励ましの声が増え、木を打つ音が完全に消えたとき、自然と拍手がおこりました。

割れた断面。そっくりな部分を円空仏に発見!
割れた断面。そっくりな部分を円空仏に発見!
右:三十三観音立像(部分)  円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵

続いて円空仏のかたちにした小さな材に顔を彫ってみます。
こちらも簡単にはいかなかったようですが、できた仏像の笑顔と同じくらい、参加者の皆さんもいい笑顔でした。


みんなが小刀で彫った顔。つくった人の性格があらわれているような…

割った木の断面や彫った顔を見せ合いながら、「コツをつかむまでは円空も大変だったでしょうね」「年をとっても円空は自分で割ったのかな」「これだけ思い切りよく鑿をいれられる円空は細かいことにはこだわらない性格だったのかも」「できたての円空仏ってきっといい木の香りがしたんでしょうね」などと会話がはずみます。

こどもの回はお天気がよかったので、木を見に庭園へいきました。
「台風などで枝が折れてしまうと傷ができるよね。その傷を治そうとしてできるかさぶたが、この丸いところなんだよ」という説明に「大きい円空の背中!」という声が。
そう、展示されている仁王像にもこうした跡がありましたよね。


庭園の木と仁王像の背中
右:金剛力士(仁王)立像 吽形 円空作 江戸時代・17世紀 岐阜・千光寺蔵

いろいろな木を見たあと、庭園で解散。みなさんもう一度、円空仏を見にいくと本館へ向かいました。

円空や円空仏にまつわる想像が膨らんだり、会話がはずんだりするのは、円空のすがた、見たもの、感じたものに一歩ちかづいた証拠。
きっと今までよりも円空仏を楽しんでいただけますよね。
もう少しすると、庭園には桜が咲き誇ります。
季節の移ろいを感じれば、また違う感覚で円空仏を見てもらえるのかもしれません。
ワークショップで感じたことが、円空にちかづき、仏像を楽しむきっかけになりますように。願いをこめて見送りました。

カテゴリ:教育普及2013年度の特別展

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2013年03月12日 (火)

 

私のイチオシ! 円空仏 「柿本人麿坐像」

特別展「飛騨の円空-千光寺とその周辺の足跡-」(2013年1月12日(土)~4月7日(日)本館特別5室)は会期終了まで残すところ1ヶ月をきりました。
これまでお越しいただきました皆様、誠にありがとうございます。
100体ご覧いただきますと、心に残った円空仏があるのではないでしょうか。

このブログでは、「私のイチオシ!円空仏」と題し、円空展担当者によるイチオシの円空仏をリレー形式でご紹介します。

私のイチオシは「柿本人麿坐像(かきのもとのひとまろざぞう)」です。


柿本人麿坐像 円空作 江戸時代・17世紀 総高50.2cm 岐阜・東山神明神社蔵

この像は会場の右奥に展示しています。

展覧会に向けてプレスリリース、チラシを作成時している時からずっと気になっており、早く実物を見たいと思っていました。
いざ展示されると、会場内の雰囲気と照明によって陰影がはっきりし、さらに引き込まれました。

私がこの像を見るときは、まず正面に立ち全体を見ます。
柿本人麿は左肘を脇息にもたれた姿勢で表現されることが中世には定型となっていました。
この像も少し姿勢をくずしているせいか、見るこちら側の緊張をとり安堵感を与えてくれます。
全体を見た後は、像の視線と同じ高さになるよう少し中腰になり真正面から顔を見ます。



この柔和な表情は見れば見るほど心が穏やかになり優しい気持ちになります。
また、まるで私にほほえみかけてくれているような気持ちにさえなってしまいます。

表情も見どころですが、横からもご覧ください。



正面から見ただけでは想像できないぐらい薄く、また平たいことがわかります。
円空は木を鉈で割り仏像を彫りました。
背面はこのように割ったままのものが多く、木を大事に使ったからか、薄い材を用いていることも多いです。

衣の表現も見てください。



このように薄い材でもしっかり彫りこんでいるので見応えたっぷりです。

お越しの際は、「柿本人麿坐像」の表情とともに、造形力に満ち溢れているところもご覧いただければと思います。

円空仏を見ていると「円空はどんな人だっただろうか?どんな思いで彫っていたのだろうか?」といろいろな思いがめぐります。
円空に関わる資料がほとんどないため、まだわかっていないこともたくさんありますが、
円空仏は見るものに様々なことを想像させ、訴えかける力を持っているのだと思います。
それが円空その人自身、そして円空仏の魅力的なところでもあると思います。

皆様のイチオシはどの円空仏でしょうか?

次回は特別展室高木よりご紹介します。どうぞお楽しみに。

カテゴリ:研究員のイチオシ彫刻2013年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2013年03月11日 (月)