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特別展「法然と親鸞」 阿弥陀三尊坐像 集荷の様子

いよいよ特別展「法然と親鸞 ゆかりの名宝」(10月25日(火)~12月4日(日))開催が間近に迫りました。
先日のブログではしおりの紹介をしましたが、今回はこの特別展の目玉の一つである
浄光明寺所蔵の阿弥陀三尊坐像の集荷の様子を紹介します。

浄光明寺は、神奈川県鎌倉市扇ガ谷、鎌倉駅より徒歩約15分のところにあります。
鎌倉のにぎやかな通りから少し離れた閑静なところで、トンビの鳴き声が響く静かで落ちつくお寺です。
鎌倉幕府第6代執権 北条長時が建長3年(1251)に創建しました。


浄光明寺 本堂

こちらが本尊の阿弥陀三尊坐像です。本堂の裏、階段を上がったところにあるお堂に安置されています。
通常公開日は木・土・日・祝祭日の10時から12時、13時から16時です。


重要文化財 阿弥陀三尊坐像 鎌倉時代 (中尊)正安元年(1299)、(両脇侍)13世紀
この写真は鎌倉国宝館で撮影したものです。

10月17日午後1時から集荷を開始しました。
始めに作業員が手際よく床を養生し、出入りの際に傷つけないよう作品の下方足元部分を保護するための薄い布団を巻きます。

準備が整いました。
まずは右脇侍、勢至菩薩坐像からです。
手に持っている蓮華を外し、問題ないか点検をします。梱包の前に作品の状態を確認し、そして調書に書き込みます。

そして光背を取りはずして梱包しますが、放射状に輝いていることを表す光線が全て木でできているので
箱にその一本一本があたらないよう細心の注意を払い作業します。
光背だけで終了までなんと1時間!

その後、像本体、台座も梱包を進めました。

2日目は左脇侍、観音菩薩坐像を同じ手順で行います。

勢至菩薩坐像と観音菩薩坐像は一見同じように見えますが、勢至菩薩坐像は
衣のひだがゆらゆらと揺れるように表現されており、顔は少し丸く表情も明るく見えます。
会場にお越しの際はぜひ2つのお像の違いを見比べてください。

そして、いよいよ中尊の作業です!

このお像は台座が非常に高く床から光背の一番上までは約4メートルあります。
そのままでは作業ができないため、まず足場を組むところから始めます。

まずは光背をはずして梱包します。
光背は高さ204センチメートル、幅174センチメートルもあるのでおろすだけでも大変な作業です。
周りの空気が緊張感に包まれます。

無事におろしました。

収納する箱が大きいので別の広い部屋まで作業員2人がかりで運びます。

畳と比較すれば光背の大きさがおわかりいただけるでしょう。
光背の釘打ちがきちんとされているか等、研究員が点検します。

2日目は光背の梱包までで終了。

さあ、3日目今回の作業のメインであるお像の梱包です。

像の高さが140センチメートル。
持ち上げられないので、像と台座の隙間を少しずつ広げて丈夫な板にテフロンをのせてはさみます。
板はレールの役目を果たし、テフロンを引っ張れば像が前に出てきます。
台座と同じ高さに置いていた木の台に像が乗ったら、台に像を固定します。

作業員、総動員で台を水平に保って無事に下ろすことできました。
ホッとした瞬間です。

このお像の衣の装飾には「土紋(どもん)」と呼ばれる土でできた花や法具などの紋様が 施されています。
他の地域では見られない鎌倉特有の技法です。

この土紋を傷つけないよう梱包します。
頭と手の保護をしっかりしてからお像の周りに薄くてやわらかい紙を丸めたものを当てます。
次に、このやわらかい紙で綿を包んだ布団を当て、像を固定する木が当たる部分をさらしで巻きます。

そして、木箱に固定してお像も無事に梱包が終わりました。

しかし、ここからも難関続きです・・・
お像は大きく重さがある上に、がんじょうな木の枠に入れているのでさらに重くなっています。
また、阿弥陀三尊坐像が納められているところは境内の高い場所にあるため狭い階段を下りなくてはなりません。

皆で声を掛け合い無理をせず、少しずつ降ろします。
今回一番緊張した場面でした。
心の中で「あと少し、がんばれー!」と応援していました。

その後台座それぞれ分解できたのですが、こちらの最後の部分、
作業員曰く100キログラムはあるとのこと。

そして、これも梱包し無事に終わりました。

ここにはその後、普段公開をしていない、不動明王像・愛染明王像を別のお堂から運んで展示しました。

今回の特別展でこの阿弥陀三尊坐像は初めて鎌倉を出て公開されます。
ご住職をはじめ、お寺の方々のご協力の下、この貴重なお像を展示できることに深く感謝します。

今回の作業は、お寺の外の道幅が狭く、当館まで運ぶために使う4トントラックが入ることができず、
2トントラックにある程度乗せた後、別の駐車場で待機している4トントラックに積み換えるという厳しい条件の下での作業でした。

このような大掛かりな作業ができたのも、取り扱い、梱包に熟練した作業員のみなさんのお陰です。
今回の集荷のチームのリーダーはこの道25年の大ベテランです。
前回の「空海と密教美術展」でもお世話になりました。

このように多くの方々のお力添えのもとで展覧会を開催することができるのです。

展示室は天井が高いので、阿弥陀三尊坐像はひときわ目立っています。
ほかにも見ごたえのある多くの貴重な作品が出品されていますので
遠方の方もぜひお越しいただければと思います。

カテゴリ:2011年度の特別展

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posted by 江原 香(広報室) at 2011年10月24日 (月)