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1089ブログ

トーハクで建築探訪~東洋館~

トーハクの正門を入って右手にある、シンプルですっきりとしたモダニズム建築。
現在「博物館でアジアの旅」を開催中の東洋館です。
東洋古美術の所蔵品を展示する施設として建設が計画され、1968(昭和43)年に開館しました。
前回紹介した法隆寺宝物館を設計した谷口吉生の父で、東京国立博物館評議員でもあった谷口吉郎の設計によります。

東洋館外観


外観は奈良の正倉院をイメージし、緩やかな勾配の切妻屋根、正面の列柱、周囲にめぐらせた庇を兼ねる大きな広縁など、伝統的な日本建築の要素が盛り込まれています。


広縁(テラス)は休憩スペースになっており、構内を一望できるスポットです。
広縁(テラス)


地下1階VRシアター入口への階段を降りると、そこはサンクンガーデンになっています。
サンクンガーデン


内部は、地下1階、地上5階を半階ずつ上がっていくスキップフロア構造が特徴的です。
2013(平成25)年1月のリニューアルオープン時より、「東洋美術をめぐる旅」をコンセプトにした展示構成となりました。


1室に入ると、巨大な中国の石仏とともに、5階まで吹き抜けの天井に目を奪われます。
(遠景の赤いちょうちんは現在開催中の「博物館でアジアの旅」の装飾です)
東洋館1室


3室はエジプトの神殿をイメージ。中央にはミイラが眠ります。
3室

大きく弧を描く青銅器の展示ケースが圧巻の5室。
5室


リニューアルの際には、建築家への敬意を忘れず、壁のタイルや、壁や柱に付けられた照明器具についてもその意匠を継承しています。

タイル
よく見ると、横に3本のスジが入っているタイル。既存のものと色や形が合うものを新たに製作するのはなかなか困難でした。
その製作の様子は「生まれ変わった東洋館!~タイル編~ (2012年6月の記事)」をご覧ください。


照明
壁や柱の照明器具も建築当時のものをそのまま使用。内部をクリーニングし、光源をLED化しました。



外観に派手さはありませんが、一歩、足を踏み入れると崇高な建築空間が広がります。
ゆったりと旅行気分で、アジアの悠久の美に思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。
 

 吹き抜け
最上階から眺めると、神殿のようにも見えてきます

 

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 奥田 緑(広報室) at 2016年09月09日 (金)

 

青銅器にほら夏の君―上海博物館との競演より―

8月が終わり、町は少しずつ秋支度。夏好きの僕にとって、9月というのは夏への未練が残るつらい時期でもあるのです。

夏の主役はなんといっても蝉でしょう。彼らの鳴き声は夏の扉を開き、彼らが町からいなくなるとき、僕の夏も終わりを告げるのです。夏、夏、夏。行かないで夏。そんな思いが通じて、というわけでは絶対ありませんが、このたび上海博物館から蝉がやってきました。

いま、東洋館では上海博物館との競演を各部屋で実施しています。質量ともに世界屈指の呼び声高い、青銅器コレクションもお目見えです。今回お借りしたのは10件。そのなかのひとつ、こちらの扁足鼎(へんそくてい、図1)に蝉がいたのです。胴部を拡大してみましょう(図2)。横向きに連なっている虫がそれです。
 
扁足鼎
図1.扁足鼎 西周時代・前11~前10世紀     上海博物館蔵
   

扁足鼎の胴部
図2.扁足鼎の胴部


「おいおい、これのどこが蝉なんだい?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。僕自身も蝉と断言してよいものか迷います。なにより羽がありません。これは致命的です。

しかし、全体的な体のつくりはたしかに蝉です。くびれ部分のひし形もようは胸背の隆起か模様を表し 大きな2つの丸印は複眼を思わせます。先端のハート形は頭と口吻でしょうか。また羽がないことを考えると、羽化直前の蝉とも解釈できます。

青銅器の文様には、さまざまな生き物が登場します。それらは大きく2つの系統にわけて考えることができます。ひとつは様々な生き物の要素が混在した創造性の高い生き物。もうひとつは、意匠化しているとはいえ、他の生き物の要素が乏しいかまったくないものです。
今日ご紹介している蝉は後者です。古代の人々は、蝉の生態そのものにある種の特別な意味を見出していたのでしょう。だからこそ、その意匠は他の生き物と混在することがなかったのかもしれません。

青銅器の鑑賞は、知らない土地へ旅行する楽しみに似ています。そこにはまったく知らない世界がひろがっているので不安も少々。そんなとき、一人でも知り合いがいると旅に安心感が生まれるものです。悠久の器物に宿る蝉は、まさにそうした存在。未知の世界で僕たちを出迎えてくれる、よき友人ともいえるでしょう。


展示情報・関連イベント

特集「上海博物館との競演-中国青銅器-」
2016年8月30日(火) ~ 2017年2月26日(日) 東洋館 5室
スペシャルツアー 中国美術をめぐる旅―添乗員はトーハク研究員― 「悠久の青銅器と神獣ウォッチング」
2016年9月29日(木)11:00 ~ 12:00 (11:00に東洋館1階エントランスホールに集合)

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開博物館でアジアの旅

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posted by 市元 塁(特別展室主任研究員) at 2016年09月06日 (火)

 

トーハクくん、特別展「古代ギリシャ」特設ショップに行く!

ほほーい!ぼく、トーハクくん。



今日は特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」のグッズを紹介しにきたほ。
どんなものがあるのか楽しみだほー。

まずは特別展に来たらこれを買わなければ。


特別展「古代ギリシャ―時空を超えた旅―」公式図録 2,800円(税込)
2016年発行、404ページ、A4変形判、図版ページカラー
全出品作品325件のカラー写真を掲載。各作品の解説も充実。


おー、とっても分厚いほ!さすがに404ページだと重さもなかなかだほ…。こういうときは定番のトートバッグも買うんだほ!持ち手も長くって肩からもかけられるので図録と一緒に買うのがお薦めだほ。


トートバッグ 2,500円(税込)

お次はこちらも定番のミニ付箋。


ミニ付箋 400円(税込)

作品の顔にふきだしがあるんだほ。



なになに…、「ぼくたちが、しゃべってるみたいに書いてね」。なるほー、書く内容によって使い分けるのも面白そうだほ。

さて、ほかに変わったものはないかな…。
お、これは!


湯かげんエーゲー 380円

これは入浴剤だほ。しかも商品名がダジャレになっているほ…。
ダジャレマスターのぼくがこのダジャレを採点……、60点だほ!その理由は、「えーげー」と「えーでー」の、「で」と「げ」が合ってないのでちょっと分かりづらい、と思って少し辛めに採点したほ。でもパッケージはかわいいし、中身はエーゲ海のきれいなブルーをイメージしたひんやりクールタイプということで心惹かれるほ。ただぼくは諸事情あってお風呂は苦手なんだほ…、でもキレイ好きのユリノキちゃんはきっと喜ぶほ!

お次はキーリング。なんだか「目玉のおやじ」みたいだほ?


キーリング(栓抜き付き) 750円(税込)

これは「イーブルアイ」といって古代ギリシャを起源とする目玉のモチーフなんだほ。邪視や災難をはね返す「魔除け」として現在のギリシャでも広く信じられているんだほ。なのでお守り代わりに使うのも良さげだほ。
さらにこのキーリング、アイデア商品で裏側が栓抜きになっているんだほ。



これがあれば銭湯に行ったとき、風呂あがりに瓶のコーラをマイ栓抜き(キーリング)をでポンっと開けられるときっと銭湯通~って思われるほ(諸事情あってぼくはお風呂は苦手なんだほ)。


さて、今回はオリジナルグッズ以外にもギリシャの名産品も販売しているんだほ。まずはこちら。1979年ギリシャにて創業のスキンケア・ボディケア・ヘアケアブランド、アピヴィーダの品々。


アピヴィーダ ハンドクリーム 1,620円(税込)

ぼく、こう見えて実はとっても乾燥肌なのでこれからの季節に備えて買っておくんだほ。ユリノキちゃんも欲しがるかな…?

お次はギリシャワイン。ギリシャでは古代からワインが作られていて、今も国際的コンクールでの受賞も多く世界的に注目されているんだほ。


ギリシャワイン 赤・白 各2種類 1,458円~2,376円(税込)

このワインに合わせるのは同じくギリシャ直輸輸入のラスクにオリーブをトッピングしたものなんていかがだほ?ぼくは5歳なので実際には試せなかったけどきっと合うような気がするほ。


ギリシャ直輸入のオリーブ・ラスク 各種あり

ん!?これは!!




オリジナルクッキー「古代ギリシャの神々」 780円(税込)

クッキーだほ!
ぼくの大好物のはにわクッキーに似ているほ!これは買わなければ!大量にストックしておくほ!


あー、とっても充実した品揃えで満足満足だほ。
みんなも特別展を見た後は是非グッズショップへ行ってほしいほ!きっとお気に入りの品が見つかるほ!

カテゴリ:トーハクくん&ユリノキちゃん2016年度の特別展

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posted by トーハクくん at 2016年09月05日 (月)

 

藤原行成の書

藤原行成(ふじわらのこうぜい、972~1027)は、平安時代の「三跡」の一人とされる能書(のうしょ、書の巧みな人)で、日本風の書である和様の書を大成させた人として、また平安から鎌倉時代に流行する書流・世尊寺流の祖としても尊敬されてきました。日本の書の歴史にとって、とても重要な人物である藤原行成。その書を本館特別1室で特集しています。(特集「藤原行成の書 その流行と伝称」2016年8月23日(火)~10月2日(日))

国宝 白氏詩巻
国宝 白氏詩巻 藤原行成筆 平安時代・寛仁2年(1018)

これは、藤原行成の代表作とも言える「白氏詩巻」。これまでにもご紹介してきましたが、何度見てもいいです!筆を少し傾けた筆法のため丸みを帯びた文字になっており、それなのに堂々として迫力もあり、さらに楷書と行書の使い分けに趣向が凝らされていて、圧巻です。

藤原定信筆 跋語
跋語国宝「白氏詩巻」巻末 画像左半分)藤原定信筆 平安時代・保延6年(1140)

行成の「白氏詩巻」の巻末には、このような跋語(ばつご)が付いています。藤原行成の玄孫である藤原定信(ふじわらのさだのぶ、1088~1154~?)が、この行成の書を物売りの女から購入したことを記しています。手に入れた喜びから書いたのでしょうか?

重要文化財 書状
重要文化財  書状 藤原行成筆 平安時代・寛仁4年(1020) 個人蔵

次は行成の唯一の書状です。書状というのは、とても個人的なもののはずですが、この書状は、墨の濃淡や楷書、行書、草書の配置が絶妙で、芸術品とも言える仕上がりになっています!

重要文化財  添状
重要文化財  添状(藤原行成筆書状附属)尊円親王筆 鎌倉時代・建武元年(1334) 個人蔵

行成の書状にも、このような添状が付いています。行成の書を褒め称える内容です。しかも、この添状を書いたのは、江戸時代に大流行する御家流の祖ともいえる尊円親王(そんえんしんのう、1298~1356)です。尊円親王も行成を尊敬していたのですね。

安宅切
安宅切 伝藤原行成筆 平安時代・12世紀

これは、伝称筆者を藤原行成とする「安宅切」です。今回の特集では、伝藤原行成筆の「升色紙」や「大字和漢朗詠集切」などの古筆切もご紹介します。この「安宅切」の書は、行成の一系である世尊寺流の書風とよく似ているため、行成の書とされたのでしょうか。

安宅切 安宅切
左:安宅切(見返し)冷泉為恭の書き込み(中央)と下絵
右:冷泉為恭の書き込み部分拡大


「安宅切」には、この図版のように冷泉為恭(1823~64)の書き込みがあります。「安宅切」を冷泉為恭が所蔵して、装丁し、その台紙に下絵を描きました。復古大和絵派の絵師として有名な冷泉為恭も、行成の書を大切にしていたといえるでしょう。

さまざまな人が尊敬し、大切に伝えてきた藤原行成の書。行成の直筆の書とともに、行成の書風をよく真似ている作品や、伝藤原行成筆の古筆切をたくさんご紹介いたします。平安時代に一世風靡した行成の書をぜひご覧ください。

関連事業
ギャラリートーク「三跡・藤原行成の尊重」2016年8月30日(火) 14:00 ~ 本館特別1室
 
 

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡特集・特別公開

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posted by 恵美千鶴子(150年史編纂室主任研究員) at 2016年08月26日 (金)

 

夏休みの宿題応援企画!

ユリノキちゃんこんにちは ユリノキちゃんです。
聞いて! 聞いて! 今日は、夏休みの宿題応援企画のお知らせです。

自由研究やレポートは苦手。じつは、まだテーマも決まってない。
そんなみなさんは、ぜひトーハクに来てね。

まずは、中・高校生のために~
その場でレポートができる! 「学校版トーハクなび」

 トーハクなび


ユリノキちゃん8月30日(火)は、中・高校生を対象にしたアプリ「学校版トーハクなび」を、無料でお貸出します。
「学校版トーハクなび」(タブレット端末用)は、本館2階「日本美術の流れ」について、展示室ごとのテーマとオススメ作品の解説を聞くことができる鑑賞ガイドアプリです。
アプリには、レポート作成機能があって、その場で撮った画像や感想を入力すれば、いつの間にかさくさくレポートが出来ちゃいます! 完成したレポートはその場でプリントできるのよ。
いつもは、学校団体で来館された学生さんにのみお貸出していますが、夏休みの宿題応援企画として、1日だけの特別貸出サービスをすることになりました。

夏休みの宿題応援企画「学校版トーハクなび」で見学レポートをつくろう

日時:8月30日(火) 10:00~16:00
貸出場所:本館玄関

トーハクなびとレポート トーハクなびとレポート


つぎは、小学生のみなさんのために~
自由研究は、「美術のうら側探検報告書」でばっちり!

美術のうら側探検

ユリノキちゃん現在開催中の親と子のギャラリー「美術のうら側探検隊」(8月28日(日)まで 本館特別2室)では、普段は絶対にみることのできない作品のうら側を大胆公開。
みなさんに、研究員になったつもりで、うら側に隠された秘密を探っていただこうという企画です。
たとえば・・・


埴輪埴輪




仏像仏像



ユリノキちゃんなどなど、大発見が続々!
展示室ではワークシート「美術のうら側探検報告書」を配布しています。
自分の目で見て発見したことを書き込んでくださいね。これで自由研究の課題もクリア!

さらに、美術のうら側探検報告書コンテスト も開催中。

応募期間:2016年7月5日(火)~8月28日(日)
応募資格:小学生
応募方法:メールで応募してください。メールタイトルを「美術のうら側探検報告書コンテスト」とし、本文に(1)氏名(よみがな)、(2)学年を明記し、完成したワークシート「美術のうら側探検報告書」の写真(5MBまで)を添付のうえ、edu@tnm.jpまでお送りください。

みなさんのエントリーをお待ちしています!
 

カテゴリ:news教育普及

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posted by ユリノキちゃん at 2016年08月25日 (木)