本館 特別1室
2016年8月23日(火) ~ 2016年10月2日(日)
藤原行成(ふじわらのこうぜい、972~1027)は平安時代中期の貴族で、能書(のうしょ)として知られ、小野道風、藤原佐理とともに「三跡」と称されています。中国から伝わった書をもとに発展した日本風の書である和様(わよう)の書は、行成の活躍した時期に完成しました。その後、鳥羽天皇(1103~56)の時代まで、みな行成に倣って書いていたと言われるほど、行成の書風は流行しました。また、行成の子孫は代々、宮廷の書役として活躍し、平安時代から鎌倉時代の和様の書の中心的役割を担っていました。後に世尊寺(せそんじ)流と呼ばれるその一系の書流の祖としても、行成は尊重されてきました。
今回の特集では、まず、藤原行成の真跡(しんせき/真筆(しんぴつ)、直筆(じきひつ))をご堪能いただきます。国宝「白氏詩巻(はくししかん)」には、行成の子孫である藤原定信(1088~1154~?)がこれを行成の書と鑑定した跋語(ばつご)があり、確実な、そして代表的な作品です。また、重要文化財「書状」(個人蔵)には、尊円親王(そんえんしんのう)が行成の書を褒め称える添状(そえじょう)が附属しており、行成の書が愛好されてきた歴史がうかがえます。
次に、行成の書風をよく真似ている作品をご覧いただきます。国宝「延喜式(えんぎしき)」は、平安時代に行成の書がいかに人気を博したかを物語るものです。そして、「升色紙(ますしきし)」などの古筆切(こひつぎれ)は、その流麗な仮名が「行成の書であってほしい」という望みをこめて行成筆と伝称されてきました。
藤原行成の書がどれほど流行し、尊重されてきたのかを、数々の作品からご紹介します。