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1089ブログ

2013お正月 トーハクキャンペーンの顔は?

今年も残すところあとわずか。
博物館に初もうでのポスター、来年は誰かな? と楽しみにしてくださっている方もいるのではないでしょうか。

トーハクでは2011年から年末年始にタレントさんを起用したキャンペーンを行っています。

2011年  トーハク?キャンペーン。
女優の貫地谷しほりさんにご出演いただき、「博物館の楽しみ方」をテーマに館内のさまざまなシーンを撮影。
ナチュラルで感性豊かな貫地谷しほりさんを等身大のモデルとして、まだ博物館に一度も来たことのない方が
「行ってみたい!」という気持ちになってくれたら。そんな思いをこめたポスターでした。
「トーハク」という愛称を前面に打ち出した最初の広報展開でした。
貫地谷しほりさんポスター


2012年  140周年キャンペーン。
女優の中谷美紀さんにご出演いただき、140年の歴史と、それを支えてきた多くの人々への感謝の思いを表現しました。
本館大階段で、見返り美人をイメージした赤いドレスの中谷美紀さんが振り向く姿は息をのむほどの美しさ。
140年を迎えたトーハクの、非日常的な美しい空間をアピールし、大きな話題になったポスターです。
このデザインで制作した新聞広告では、毎日広告デザイン賞の部門賞もいただきました。

中谷美紀さんポスター


そして2013年。来年のトーハクの顔は俳優の井浦新さんです。
大河ドラマ「平清盛」での崇徳上皇役の熱演が記憶に新しいところ。
実は井浦さんは、大の美術ファン。展覧会でのトークショーや、音声ガイドのナレーション、さらには美術をテーマにした
雑誌連載など、美術に関わるお仕事の幅を広げておられます。
私がはじめて井浦さんにお会いしたのは、2012年春。テレビ番組の収録で特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」に
ご来場いただいたときです。
撮影の待ち時間もひたすら熱心に作品を見ている井浦さん。インタビューでは、言葉をひとつひとつ選んで誠実に
答える井浦さん。
その様子から、日本美術への思い、そしてたいへんうれしいことに、トーハクへの愛がひしひしと伝わってきました。

そこで、2013年のキャンペーンは、ぜひ井浦さんの目線で、「美術に出会う感動」を表現していただこうと思いました。

井浦新さんポスター

成熟したおとなが、新しい出会いにどきどきしたり、美しいものと過ごす時間にしみじみ幸せを感じたり。
そんなトーハクならではの感動を皆様にお伝えできればと思っています。
 

 

カテゴリ:news

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posted by 小林牧(広報室長) at 2012年12月14日 (金)

 

生まれ変わった東洋館─中国漆工・犀皮(さいひ)と屈輪(ぐり)

漆の樹液を器に塗る工芸技法を漆工といいます。漆工というと、和食器の黒光りする塗色や、細かい金粉で描かれた蒔絵を想い起こされる向きも多いかと思います。
しかしながら漆工は日本ばかりでなく、中国・韓国・タイ・ミャンマーなどアジア各地で行なわれた工芸であり、それぞれの土地で工夫された技法や好まれたデザインがあったため、一口に漆工といっても、その表情はさまざまです。

ここでは中国漆工の紹介として、犀皮(さいひ)という技法と屈輪(ぐり)という文様を紹介します。
中国の漆工は、塗料のように塗るばかりでなく、薄い漆を何層にも塗り重ねて厚みをつくり、これを彫刻するという立体的な表現も広く行なわれました。この塗り重ねる漆の色を層ごとに変えて、文様を斜めに彫り出すと、幻惑的な色層が現われます。この技法は犀皮(さいひ)とよばれ、宋時代を中心に行なわれました。

また中国工芸では唐草文様のデザイン化が進んで、ハート形や渦巻きのような抽象的な文様が現われました。こうした中国漆器は中世の日本にもたらされて、唐物(からもの)といって珍重されました。日本では、彫漆で表わされた渦巻きを「クリクリ」とよび、それが転じて屈輪(ぐり)とよぶようになりました。音感が文様名になったわけです。


犀皮輪花天目台 南宋時代・13世紀
2013年6月11日(火) ~ 9月1日(日) 東洋館9室にて展示予定



犀皮盆 南宋時代・12~13世紀
2013年6月11日(火) ~ 9月1日(日) 東洋館9室にて展示予定


こうして見ると、中国から伝わった唐物が、どのように日本人の美意識や生活のなかで受け入れられたのかということが興味深く思われてきます。


(注)画像の作品は、いずれも2013年6月11日(火) ~ 9月1日(日)の展示となります。
1月2日(水)のリニューアルオープン時には展示されておりませんのでご注意ください。

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 猪熊兼樹(貸与特別観覧室主任研究員) at 2012年12月12日 (水)

 

展示の舞台裏の話~額縁修理の巻~

みなさま、本館特別1室の「グラスゴーから来た西洋画―博物館草創期の国際交流1 」(2012年11月13日(火) ~ 12月24日(月・休) )、ご覧いただけましたでしょうか。
あれ?西洋美術館に来ちゃったかしら?と思われるような、当館ではちょっと異質な空間です。2次元の平面に3次元世界を展開する油絵の技法は、明治時代の日本ではとても珍しいモノでした。美しい装飾の額も目を引いたに違いありません。

さて、これらの作品はグラスゴーからの長旅に耐え、当館では130年以上も保存されてきました。今回この作品たちにスポットライトをあてるべく、展示計画を中心的に行なった遠藤楽子研究員はいろいろな情報を集めるために奔走しましたが、いざ展示となると、すべての作品の額が劣化して壊れていたり、作品が額の中でずれていたり、画面には汚れが・・・。

でも、大丈夫、トーハクには文化財の救急隊が常駐している保存修復課があります!
意外に思われるかもしれませんが、スタッフの中には、油彩画の修復を専門とする職員がいます。さっそく展示室という晴れ舞台に立たせるべく、ありったけの知恵と技術を総動員させて、作業を展開しました。
今回は、館内の募金箱からの御芳志もいただき、外部からの援軍参加もあり、無事オープンに間に合いました。
掲載の画像はすべて処置前と処置中の様子です。処置後の様子は直接展示室でご覧ください!



左は「橋の風景」(原本=クロード・ロラン筆 18~19世紀 グラスゴー博物館寄贈)、
右は「海の風景」(筆者不詳 18~19世紀 グラスゴー博物館寄贈)の処置前。
白い部分は石膏の装飾が破損してしまった部分。
材料が経年劣化してもろくなります。展示のすべての作品の額にこのような傷がみられました。
また、画面も汚れのベールに覆われていました。

 

 
表面をクリーニング中。上にあるサイコロは天然ゴムのスポンジ。明るい部分が処置済みの箇所です。「クリーニングの窓」と呼んでいます。   額のクリーニング途中。金が油性メッキされていたので、綿棒を濾過水でしめらせて、表面の汚れを除去しました。

 

 
これ、綿棒や脱脂綿についた汚れです。
100年来のすす汚れ…?!
  シリコンゴムで型をとって、石膏やエポキシ樹脂をつかって欠損部分を復元しました。こんなにたくさん!

 

左の画像は、欠損していた部分に新たに作ったパーツを接着したところ。
右の画像は、白い石膏地に下塗りをしたところ。ここに金箔を貼って、水彩絵具等で古色付けをします。

 
「チャールズ王子」(ロナルド・ロバート・マクイアン筆 19世紀 グラスゴー博物館寄贈)処置前。右上の昔の修理跡の様子。変色して、空の表現部分になんだか違和感のあるシミが目立っていました。   「チャールズ王子」処置中。変色した昔の修理跡の上に、補彩用の絵具を用いて目立たないように色を重ねました。本格的に修理をする際には、作品を傷めることなく除去できる絵具です。




展示直前の修理室。さながら額工場。
芸大の油画保存修復研究室の西川竜司研究助手も応援に駆けつけてくださいました。



これ、展示当日の壁付ケースの中。なんと、展示中に白い石膏露出部分発見。
その場で水彩絵具を用いて目立たないように補彩(汗)。


関連事業

東京国立博物館140周年月例講演会「博物館草創期の国際交流」
2012年12月15日(土) 13:30 ~ 15:00 平成館大講堂
聴講無料(ただし当日の入館料は必要)

 

 

カテゴリ:研究員のイチオシ

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posted by 土屋裕子(保存修復課主任研究員) at 2012年12月08日 (土)

 

生まれ変わった東洋館―陶磁器を観る

「やきものってどう観たらいいんでしょうか?」という質問をいただくことがあります。
陶磁器の見方がわからない。それはごく当たり前の感想だと思います。そもそも陶磁器は眺めるためではなく、
使うために作られたものだからです。

でも、最近はプラスチックの器のほうが手軽で便利なため、陶磁器を使うことがない、という人が増えているそうです。
陶磁器の魅力をお伝えするために、できることならば、ぜひ手にとってみていただきたい、というのが私たち研究員の本音です。
なぜなら、重さや触感のように手でさわって得られる情報は、時に真贋に関わるほど、とても大切なものだからです。

 
(左)白釉黒地白花牡丹文枕 磁州窯 北宋時代・12世紀 横河民輔氏寄贈
(右)青花龍涛文壺 景徳鎮窯 元時代・14世紀
(2013年1月2日(水)~5月6日(月・休) 東洋館5室にて展示)


新しい東洋館の展示では、世界に誇る中国の陶磁器コレクションをまるで「手にとるように」感じていただけるよう、
あちらこちらに工夫を凝らしました。
低い大きなケースでは、作品を上から覗いてみることができます。器の内側や裏側はもちろん、文様の細部までよく見えるようになりました。きっと、一点一点の作品に向き合って、ゆっくりご覧いただくことができると思います。

はたしてこの器は、どんな人がどんな道具で作ったのだろうか、そして誰のために作ったのだろうか。
長い時間のあいだに、どんな人たちがどんなふうに使ってきたのだろうか。


五彩金襴手花卉文水滴 景徳鎮窯 若州酒井家伝来 明時代・16世紀 広田松繁氏寄贈
(2013年1月2日(水)~5月6日(月・休) 東洋館5室にて展示)


よい器というのは、観ているうちにこうした疑問が自然に心に湧いてきて、次から次に想像をふくらませずにはいられない、そういうものではないでしょうか。

生まれ変わった東洋館5室にお運びいただいて、すばらしい器の数々と一緒に楽しい時間を過ごしてみてください。

カテゴリ:展示環境・たてもの

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posted by 三笠景子(保存修復室研究員) at 2012年12月05日 (水)

 

書を楽しむ 第27回 「絵の中の書」

書を見るのは楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第27回です。

書、以外の分野でも、書はあります。
今回は、絵画の中にある書をさがして、
久しぶりにデジタルカメラを持って、展示室をまわってみました!
(デジカメの撮影なので、画像が暗くなってしまい、ごめんなさい。
東博では、「撮影禁止」マークのない作品は撮影できますが、 
フラッシュ撮影はできません。)

まずは、本館3室(仏教の美術)
国宝の「十六羅漢像」の中にありました。

国宝 十六羅漢像
国宝  十六羅漢像  平安時代・11世紀 
2012年11月20日(火) ~ 2012年12月24日(月・休) 本館3室(仏教の美術)にて展示

右の上の方の白い枠の中(色紙形・しきしがた)に書かれています。
とてもしっかりした書で、
平等院鳳凰堂にある色紙形の書(源兼行筆)にも似ています。

3室(宮廷の美術)では、
重要文化財「後三年合戦絵巻」の詞書(ことばがき)がありました。


重要文化財 後三年合戦絵巻 巻上  飛騨守惟久筆 南北朝時代・貞和3年(1347)
2012年11月20日(火) ~ 2012年12月24日(月・休) 本館3室(宮廷の美術)にて展示

絵巻の詞書も、能書(のうしょ、書の上手な人)が書いている場合が多いです。

3室(禅と水墨画)では、
絵の上の方に、賛(さん、絵などを褒めたたえる詩文)がありました。


(左)白衣観音図  鎌倉~南北朝時代・14世紀
(右)重要文化財  蘭蕙同芳図 玉畹梵芳筆 南北朝時代・14世紀

2012年11月20日(火) ~ 2012年12月24日(月・休) 本館3室(禅と水墨画)にて展示

禅僧が書いたものが多く、
とても味わいのある書です。

さて、
本館7室、8室では、
署名を加えているものが多いです。


(左)紅白梅図屏風 山田抱玉筆 江戸時代・19世紀 長谷川巳之吉氏寄贈
2012年11月27日(火) ~ 2013年1月14日(月) 本館7室(屏風と襖絵)にて展示
(右)梅鴛鴦若松春草図  田中抱二筆 江戸時代・19世紀
2012年11月27日(火) ~ 2013年1月14日(月) 本館8室(書画の展開)にて展示


左は「抱玉筆」、右は「抱二筆」です。
どちらも、酒井抱一(さかいほういつ、1761~1829)の弟子なので、
名前に「抱」という字を使っていますが、
「抱」の書き方が似ていると思いませんか?
二人とも、
師匠の抱一の署名を真似ているようです。

右の画像の、赤いまるい印章の字も、
筆の字のような雰囲気で、素敵です。
これも、師匠の抱一が押していたものと似ています。

さいごの本館10室です。

9室から入ると、
絵ではありませんが、振袖の中に、書がありました!


振袖 白絖地楓竹矢来文字模様 江戸時代・18世紀
2012年10月23日(火) ~ 2012年12月24日(月・休) 本館10室(衣装)にて展示


左上は「若」、右下に「紫」が見えます。
源氏物語の「若紫」をモチーフにした文様です。
工芸品の中にも、書があるんですよね。
浮世絵の中はどうでしょうか?


(左)假名手本忠臣蔵・五段目 葛飾北斎筆 江戸時代・19世紀   
(右)高名美人見たて忠臣蔵・六だんめ 喜多川歌麿筆 江戸時代・18世紀
2012年11月27日(火) ~ 2012年12月24日(月・休) 本館10室(浮世絵)にて展示


女性が持っている巻き物には、なにが書かれているのでしょうか?


今回、酒井抱一の絵は展示されていませんでしたが、
抱一の絵の繊細さが好きです。
その弟子が、師匠の署名まで真似ているのがわかって
面白かったです!

好きな画家、好きな絵があったら、
その画家がどんな字を書いていたのか、
確かめてみませんか?
その人の字を見ると、
その人に近づいたような気がしてきます。

カテゴリ:研究員のイチオシ書跡

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2012年12月02日 (日)