「こどもたちのアートスタジオ」では、小学生3・4年生から中学生の生徒さんを対象にしたワークショップをおこなっています。
このワークショップは、生涯学習ボランティアの有志の皆さんが集まってガイドツアーなどをおこなう、自主企画グループの活動の一つとしておこなっています。
プログラムは、「勾玉(まがたま)作り」と「根付(ねつけ)作り」の二つ。
今回は「根付作り」(2011年8月7日(日) 開催)の様子をご紹介します!
このプログラムでは、熱を加えると固まるFIMOという粘土を使って、根付のストラップを作ります。
準備はまずこの粘土をやわらかくすることからはじまります。
お湯で温めたり、
手で温めたり(保護者の皆様、ご協力ありがとうございました)。
粘土が少しやわらかくなってきたところで、アートスタジオの開始です。
まずはじめに、「江戸時代のおしゃれ」のレクチャーです。
スライドを使ったおはなしです。
レクチャーで使うオリジナルのワークブック。
実際に浴衣を着て、おしゃれを体験。 赤い矢印のところに根付が。
印籠(いんろう)や煙草(たばこ)入れを下げた時に帯から落ちないようにするための物だったんですね。
拡大してみてみると 矢印の先の黄色い部分が根付です。
蘆亀蒔絵印籠
江戸時代・19世紀
クインシー・A.ショー氏寄贈
2011年10月10日(月・祝)まで本館10室で展示
次に、みんなで本館2階10室に展示されている、さまざまな形の根付を見学します。
単眼鏡で、じっくりと。
じっくり見学した後は、いよいよ制作です。
いろいろな色の粘土で好きな形を作ります。
型で抜いたり、
長く伸ばしたり、
ヘラを使ったり。形も色の組み合わせも十人十色。
形ができました!
ストラップ用の金具をうめ込んで、ホットプレートで焼きます。
120℃で待つこと20分ほど、、、固まったら完成です!
なまずとプリンの根付ができました。
「どこを工夫しましたか?」「できあがった作品のどこが一番好きですか?」
みんなでできあがった作品の報告会をして、根付作りは終了です。
「こどもたちのアートスタジオ 根付作り」では、
展示品をモチーフにしたもの、
身近なものをモチーフにしたもの、
動物をモチーフにしたものなど、 オリジナルの根付ストラップをお作りいただけます。
機会がありましたら、是非ともご参加ください。
アートスタジオは事前申込制(応募者多数の場合は抽選)です。
今後の予定や申込方法などの詳細は、当館ウェブサイトの ワークショップ のページや 博物館ニュースをご覧ください。
カテゴリ:教育普及
| 記事URL |
posted by 田島夕美子(ボランティア室) at 2011年08月11日 (木)
新年度に入り、小・中・高校からのグループ見学も増えてきました。
東京国立博物館では、通常行っている「スクールプログラム」に加えて、
視覚に障がいをもつ児童・生徒のための「盲学校のためのスクールプログラム」を今年度から本格実施しました。
5月20日には、記念すべき第一校目、都立久我山青光学園の小学5~6年生が来館しました。
午前中は、本館の模型とミニチュア作品を使って、博物館や展示室について理解したり、
ボランティアと一緒に「貝合せ」のゲームを楽しみながら、日本の伝統模様を学んだり、
展示室にどんなものがあるのか、先生と対話をしながら展示見学を楽しんだり。
また、午後からは、博物館の職員の仕事について、積極的にインタビューするなど、丸一日、博物館での体験を楽しんでいかれました。
ちなみにここでは、なぜかお掃除のお仕事についての質問が多発。
広い博物館、どうやってきれいに保っているのか、小学生たちには素朴な疑問がわいたようです。
プログラムのあいだ、生徒たちは、さわれる教材に手をふれたり、貝合せゲームに歓声をあげたり。
ボランティアスタッフや研究員との対話に積極的に参加してくれました。
最後に一人の女の子に、「今日は楽しかった?」と声をかけると、ぱっと笑顔が弾けて、「楽しかった!」と手をたたきながら言ってくれて、心の中が暖かくなりました。
「盲学校のためのスクールプログラム」は、一人ひとりの児童生徒の興味やペースに合わせた、対話やハンズオン体験を通した、コミュニケーションを大切にする、きめ細かい対応が特徴のプログラムです。
詳細は、こちら。
お申し込みは、学校の先生からお願いします。
盲学校、あるいは弱視学級の先生方、ぜひ、ご活用ください。
| 記事URL |
posted by 藤田千織(教育普及室) at 2011年06月23日 (木)
東博デザイン室 木下です。
今日は、今週末(6月18日)に予定している講演会
「関東大震災からの復興本館ものがたり-国産技術に裏付けられた建築デザイン」
のお知らせです。
この講演会は、もともと昨年末に企画したものでした。
その時はまさか3月11日に東日本大震災が起こるとは思いもしませんでした。
圧倒的な自然の力を目にして、しばらく講演会の準備など手がつかない気持ちでした。
いま僕はようやく、東博に残されている『復興本館』の資料を掘り起こしつつ、準備を進めています。
『復興本館』とは、現在の東京国立博物館本館のことです。大正12年の関東大震災(マグニチュード7.9)で損壊した、旧本館の復興事業と位置づけられ、東京帝室博物館・復興本館として建てられました。
優美な瓦屋根がのったSRC造の本館は、当時の耐震構造研究と生産技術に基づいていることが、部材や意匠、計画時の資料からうかがうことができます。
当初は、2004年頃から興味を持って調べてきた復興本館の資料について、その優れたコンセプト・建築計画・設計手法・当時の最新の建設技術について、少しでも多くの方に知っていただきたいという気持ちで講演会を企画しました。
復興本館の建設は東博の歴史の一頁に納まり、その「復興」の意味さえ忘れられつつあります。が、昭和初期に先人が考えた《耐震耐火構造・保存科学・展示手法・自然採光》の技術には、今でも通用する博物館建築のヒントがたくさん隠されているように思えてなりません。
実施設計にあたった宮内省内匠寮(たくみりょう)の1900枚以上の手書き図面は、現在は宮内庁に青図複写が残され、オリジナルは東博が保管・管理していてます。充分に整理されていない状況ですが、今となっては建築史的に大変貴重な図面です。
また、建設にあたった復興翼賛委員会や建設委員会部会の議事録・各種書類、建設現場の記録写真など、一括して保管されている資料は、文化財クラスといっても過言ではありません。
講演会では、当館で展示デザインを担当している私と建築史研究の専門家、加藤雅久氏(居住技術研究所)が、こうした資料を参考に本館のディテールを読み解きながら、帝室博物館建設の意義に迫ります。
ぜひともお運びいただき、この復興本館に秘められた日本人の技術力、空間づくりの発想力を体感していただきたいと思います。
復興本館の模型完成を伝える新聞記事
昭和8年(1933)4月14日付け 東京朝日新聞と時事新報
本館敷地での記念撮影? 背後に見えるのは表慶館。
関東大震災でも表慶館はびくともしませんでした。
昭和7年(1932)6月27日
鉄骨組立完了の記録写真
昭和9年(1934)12月26日
正面屋根表側コンクリート打の作業風景
昭和10年(1935)9月
本館2階側面陳列室。現在の3室でしょうか?
昭和12年(1937)9月2日
◆月例講演会の詳細について
「関東大震災からの復興本館ものがたり-国産技術に裏付けられた建築デザイン」
6月18日(土)13:30~15:00 平成館大講堂
◆館の歴史について
9.関東大震災と博物館 大正から昭和へ
10.復興本館 戦時下の博物館
カテゴリ:教育普及
| 記事URL |
posted by 木下史青(デザイン室長) at 2011年06月16日 (木)
本館20室に新しい本館案内図(注 参照)が登場しました。(現在は19室で公開しています)
この本館案内図は、半立体になっているため触感も楽しんでもらうことができます。
視覚に障がいを持つ方や盲学校の先生たちに意見を伺い、デザイナーさんや東京芸術大学の学生さん、職人さんの協力を得て、何度も試作を重ねて完成しました。
本館をB1、1階、2階に分け、各展示室には、各展示室を象徴するデザインのピースがはめ込まれています。
日本美術を歴史順にたどる2階は、うずまき文様からスタートです。
うずまきは縄文土器によく見られる文様です。
仏教の興隆は仏頭の螺髪のイメージ、2室「国宝室」は絵巻をモチーフにしたデザインです。
特に注目は5・6室「武士の装い」のピースです。
刀の柄と鎧の札のミニチュアで、かなりの出来栄えに日本美術ファンである常連のお客様からも好評です。
分野別展示の1階では、それぞれ展示作品を象徴する素材を使ったピースが並んでいます。
ケースの中に展示してある美術品には触れられませんので、まずこちらで感触をお楽しみください。
毎日、午前10時半から午後4時過ぎまでは生涯学習ボランティアさんと一緒に案内図を見ることができます。
ユニークなデザインが多いため、ついついボランティアさんとお話が弾んでしまいます。
お待ちしてま~す。
しかし!
こちらはあくまでも案内図です。うっかり長居して展示室をめぐる時間がなくなってしまわないようご注意を。
(注)平成22年度 美術館・博物館基盤整備支援事業「東京国立博物館 博物館をみんなのものに~視覚障害児童・生徒へのスクールプログラムーハンズオンとワークショップを中心に」の一環として制作したものです。
| 記事URL |
posted by 神辺知加(教育講座室) at 2011年05月30日 (月)
5月15日(日) 国際博物館の日記念、三館園連携事業「上野の山でネズミめぐり」が開催されました。
動物をテーマに、恩賜上野動物園と国立科学博物館と東京国立博物館とが合同で行う「上野の山で○○めぐり」も今年で5回目。三館園それぞれの持ち味を生かした上野の山ならではの大人気イベントです。
朝9時、参加者、動物園に集合。薫風そよぐ澄んだ青空。完璧なネズミめぐり日和です。台東区ケーブルテレビさんの取材も入っています。私はトーハクでの解説を担当することになり、朝からずっと緊張していました。
参加者は、中学生から60代までかなり幅広い年齢層。ネズミ、老若男女を問わず人気のようです。
出発進行!まずは生きたネズミの観察。
大人気のパンダ舎には目もくれず、プレーリードッグを目指します。
解説は上野動物園の動物解説員 小泉祐里さん。
いつもながらおもしろく丁寧な解説。ネズミへのまなざしに愛を感じます。
穴に暮らすネズミ、オグロプレーリードッグ。ドッグという名前は泣き声が犬に似ているから。
でも、れっきとした齧歯目(げっしもく)リス科で、ネズミの仲間です。小さな前足でハムハムと草を食べる姿・・・癒されます。
木の上にカナダヤマアラシ発見!!
アップにしてみると・・・
こんなふう。ヤマアラシもネズミの仲間なのだそうです。
いよいよ実際にハツカネズミに触ってみます。
細い枝、太い枝、そして表面を加工した木材の上でどんなふうに動くのか、じっくり観察しました。
小さいのにかなりの握力。強い生命力を感じます。
次はかはくへ。解説は、動物研究部の川田伸一郎さんです。
ネズミ類の形と生態についてのお話です。「モグラ博士」として知られる川田さんですが、初めはネズミの研究をしていたそうです。
世の中の哺乳類およそ5500種のうち2300種がネズミの仲間だそう。は、半分も!?
ネズミの剥製。
川田さんが昔飼っていたネズミもあるとか・・・
かはくでのお話が終わると、楽しいランチタイム。
お弁当は上野のれん会さんに用意していただきました。ご協力に心から感謝申し上げます。
さて、いよいよ、トーハクです!
縄文時代から江戸時代までの日本美術の展示をめぐりながら日本人とネズミの関係を探します。
伝えたいことがちゃんと話せるか、みんな楽しんでくれるか、不安と緊張でかなりテンパってました。
ネズミと大根を描いた染付の大皿。ネズミと大根はセットで描かれることが多いのですが、そのわけは?
渾身のダジャレ「大黒鼠、ダイコクネズミ、ダイコンネズミ」・・・
染付大根鼠図大皿 江戸時代・19世紀 本館8室 暮らしの調度 で展示中(7月3日まで)
不発です。。。
気を取り直し、今回のメイン作品「鼠草子」の絵巻へ。
あらすじ説明に力が入ります。
鼠草子 江戸時代・18世紀 本館8室 書画の展開 で展示中(5月29日まで)
何か言うたびに語尾に「チュッ」とつける亭主のことを、なんだかへんだなあと思っていたお嫁さん。
はたして、亭主の正体は?
奇想天外なお話にお客さんも大笑い。
2時半、すべて終了しほっと一息。
参加者の方から、「トーハクに初めて来たけど面白かった」と言っていただけて本当に嬉しかったです!
動物園とかはくのスタッフの皆さん、来年はどの動物にします?
カテゴリ:教育普及
| 記事URL |
posted by 神辺知加(教育講座室主任研究員) at 2011年05月17日 (火)