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1089ブログ

霊雲寺開基 浄厳の思想

こんにちは、保存修復室の瀬谷愛です。

特集「幕府祈願所 霊雲寺の名宝」(本館特別2室、~6月4日(日))は、中日の展示替えを経て、残すところあと2週間となりました。



リーフレット
リーフレットを作りましたよ!

この、小規模ながらも史上初の一大企画のために、がんばって8ページ、オールカラーのリーフレットを作成しました。
しかも、無料です!
会場に見本がありますので、ぜひ本館インフォメーションでお受け取りください。

さて。

今回、霊雲寺さんの展示をするためにいろいろと新しいことを知りましたが、最も興味深かったのは、やはり浄厳和尚のことでした。


梵書阿字
梵書阿字 浄厳筆 江戸時代・17世紀 1幅 紙本墨書 東京・霊雲寺蔵
一番大事な梵字です。


浄厳は、高野山で修行を始めた若いうちから、梵字研究をとても大切だと考えていました。
梵字は、ただの文字ではなく、この一字一字のなかに、仏とその教えが詰まっている。
形と意義、その力、すべてを理解したうえで真言陀羅尼を唱えなければならないといいます。

なかでも、この梵字。
読みは「ア」、漢字では「阿」と書きます。
「阿(ア)」は、すべての音声、文字、教えの根本となる梵字です。


悉曇三密鈔
悉曇三密鈔  浄厳編  江戸時代・天和2年(1682) 3冊 東京国立博物館蔵
浄厳が梵字の発音や文法、仕組みや意味などについて解説したこの本にも、一番初めに「ア」が。


梵字をマスターした浄厳直筆の梵書。
その霊験は計り知れないと、多くの人が求めたことでしょう。

でも、浄厳は自らの梵書を「無料」では配布しませんでした。
さて、代わりに何を求めたでしょうか??

銭? いいえ。
米? いいえ。

答えは、

「光明真言1日300回念誦すること!」

 
梵書胎蔵界大日如来真言
梵書胎蔵界大日如来真言 浄厳筆 江戸時代・17世紀 1幅 絹本墨書 東京・霊雲寺蔵
皆様ご存知の「ア・ビ・ラ・ウン・ケン」も、浄厳に始まる流派では、五字目に根本の「ア」を混交することで「ア・ビ・ラ・ウン・キャン」と読みます。


こちらの梵書を求める人には、陀羅尼を1日500回課されたそうです。

これはミーハーな気持ちでは達成できませんね。
お金やお米を一度きりで払ったほうがよほど安いような気がします。

しかし、これには浄厳の深い深い想いが詰まっています。

浄厳は常々、次のように語っていたそうです。
「私の恩に報おうとするならば、常に戒律を守って、正しく真言を持誦するように。私の恩のみならず、三世の仏恩、三国の祖師の恩に報いなさい」
と。

そして、真言宗の祖、弘法大師空海も、釈迦が「梵字に通じて自由自在となり、他の者のために解説して、名誉や財をむさぼらなければ、功徳を得るだろう」と言っているので、初心者のために「梵字悉曇字母幷釈義」を著したそうです。

自らが会得したものを、他者に伝え、自らのための見返りは求めない。
というわけです。


幕府祈願所 霊雲寺の名宝」。
リーフレット、無料です。
名誉も財も、求めません。
ぜひ、霊雲寺と浄厳についてご理解を深めていただけましたら幸いです!


ちなみに、
大阪出身・浄厳ゆかりの文化財が下記展覧会に展示されます。あわせてご覧ください。
1) 「木×仏像 飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年」 
4月8日(土)~6月4日(日) 大阪市立美術館
2) 「創建1250年記念 奈良 西大寺展 叡尊と一門の名宝
7月29日(土)~9月24日(日) あべのハルカス美術館
(浄厳関連文化財は大阪会場のみの展示となりますが、本展は、三井記念美術館〔4月15日(土)~6月11日(日)〕、山口県立美術館〔10月20日(金)~12月10日(日)〕を巡回します。)
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 瀬谷 愛(保存修復室主任研究員) at 2017年05月25日 (木)

 

上野の山でバードウォッチング

平成館企画展示室で開催中の親と子のギャラリー「トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―」(6月4日(日)まで)。

展示風景

この展示は、「国際博物館の日」にちなんで、上野動物園、国立科学博物館、東京国立博物館で行う、国際博物館の日記念ツアー「上野の山で動物めぐり」関連企画です。毎年一つの動物に焦点をあて、「生きている動物」、「標本・骨格の動物」、「美術の中の動物」をテーマに各施設をめぐります。

今年のテーマはキジ。
5月14日(日)、「上野の山でキジめぐり」に、小学校5年生から大人まで、大勢の参加者が上野動物園に集まりました。

まずは動物園からスタート。
動物解説委員の小泉祐里さんと一緒に「生きたキジ類の観察」です。

小泉祐里さん 動物園

ひとことで「キジ類」といってもたくさんの種類。大きさや特徴もさまざまですが、どれも華やかなのはオスばかり。それぞれの色や模様を見ながら、どのように美しいかをじっくり観察していきます。

キジ

キジの仲間には、クジャクやセイラン、ニワトリも含まれています。

クジャク セイラン
クジャクの羽(左)、セイランの羽(中央)は夏に生え変わります

ニワトリ


どのオスも間近で見るととにかく鮮やか…メスのことはすっかり忘れて、続いて国立科学博物館へと向かいます。

科学博物館では、動物研究部の濱尾章二さんから「オスだけが派手な理由」をテーマに、オスとメスの標本を見ながら、それぞれの特徴やちがいの理由を伺いました。

濱尾章二さん

キジの標本を前に、オスとメスをじっくりと観察。

キジ観察 キジ観察


標本だけでなく、キジの鳴き声や子育て、行動の様子を映像で見ながら、ちがいの秘密に迫ります。

休憩のあとは最後のトーハクへ。
「親と子のギャラリー トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―」展示室で、博物館教育課の神辺知加さんと作品の中の鳥たちを観察です。

神辺知加研究員

動物園や博物館で見た特徴をヒントに、作品に隠れているキジの仲間をさがします。

展示室で見学 展示室の見学


美しい羽の模様を丁寧に表現している作品もあれば、デザインとして表しているものも。中でもひときわ美しい羽を持つクジャクは、屏風や着物などさまざまな作品のモチーフになっています。

唐織 紅白段牡丹若松孔雀羽模様
唐織 紅白段牡丹若松孔雀羽模様 絹製 江戸時代・18世紀



刺繍孔雀図屏風 絹製、刺繍 明治26年(1893)


小泉さんと濱尾さんも交えてあらためて作品の中の鳥たちを観察し、作品の見方がまた広がりました。


上野ならではのこのツアー。来年のテーマは、鋭意計画中です。
どうぞお楽しみに。

 

カテゴリ:催し物特集・特別公開

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posted by 長谷川暢子(教育講座室) at 2017年05月18日 (木)

 

トーハクでバードウォッチング

こんにちは。博物館教育課の神辺知加です。

季節が春から初夏に移り変わるこの時期、野外では春の訪れを告げる鳥と夏の渡り鳥を見ることができます。上野公園でもメジロ、ヒバリ、ツバメの姿を見かけますし、ゴールデンウィーク明けには森や山でオオルリ、キビタキの美しいさえずりを聞くこともできるでしょう。
そして・・・
ここトーハクではなんとキジ科の鳥がシーズンを迎えています!

さっそくウォッチングできる鳥をご紹介します。
キジ科の鳥の代表、日本の国鳥でもあるキジはつがいで見ることができます。キジ科の鳥であるニワトリ、ウズラ、ライチョウも時間帯、天候に関係なく100%の確率で出会うことができます。

つがいのキジ

つがいのキジ 五代清水六兵衛作 陶製 昭和時代・20世紀

そしてキジ科の中でもっとも美しい鳥クジャクは、アーティストや職人の制作魂を揺さぶるらしくクジャクをモチーフとした美術品は数多く作られています。トーハクの所蔵品にも「孔雀」と名のつく作品は100件以上あります。そのためキジ科の鳥とは分けてクジャクのコーナーを設けて展示しました。クジャクコーナーでは仏さまを描いた絵の中に、仏教の法要でつかう楽器に、刺繍の屏風にといろいろなクジャクを見ることができます。こちらも100%の確率でご覧いただけますし、さらに運がよければベストポジションをキープして観賞することもできます。

クジャクに乗った仏さま
クジャクに乗った仏さま 横山大観模写 紙本着色 明治時代・19世紀

シルクロードを通って伝えられたクジャクの模様
シルクロードを通って伝えられたクジャクの模様 中国・ホータン ストゥッコ・彩色 6~7世紀

さて野外のバードウォッチングでは決して出会うことのない、トーハクならではの鳥をご紹介しましょう。その鳥とは「鳳凰」です。きれいな湧き水しか飲まず、数十年に一度しか実らない竹の実を食し、桐の木にしか宿らないというこだわりの鳥、鳳凰。孔子が論語の中で優れた指導者が現れる時しかその姿を現さない鳥と謳った、鳳凰。その鳳凰が今、台東区上野公園東京国立博物館平成館企画展示室に10羽(単位が羽で良いのかわかりませんが)以上も並んでいます。ぜひお見逃しなく。

仏さまの世界の鳳凰
仏さまの世界の鳳凰 絹製・刺繍 中国・初唐または飛鳥~奈良時代・7~8世紀

布団の図柄になった鳳凰と桐
布団の図柄になった鳳凰と桐 絹製、友禅染 江戸時代・19世紀

また今回の親と子のギャラリーでは、鳥たちをより身近にウォッチングしていただくためいくつかの工夫をいたしました。

工夫その1:親しみやすい作品名
「小学校高学年や日本美術になじみのない方にもわかる」を意識して作品名をつけました。


工夫その2:単眼鏡
バードウォッチングに必需である双眼鏡の代わりに、「美術鑑賞におススメ」が売り文句の単眼鏡を用意しました。細部までしっかりご覧いただけます。

単眼鏡


工夫その3:のぞきケース
小さな作品をぐっと近くでご覧いただけます。

のぞきケース3


工夫その4:キジとクジャクの鳴き声と動画

作品のキジやクジャクの鑑賞の参考にしていただくためご用意しました。動画は上野動物園にご協力いただきました。

キジとクジャクの鳴き声と動画


工夫その5:露出展示

ガラス越しではなく直にご覧いただける鳳凰も2点あります。そのうち1点は触ることもできます。
この鳳凰についてはあえてここには写真を掲載いたしません。ぜひ鳳凰に会いに会場までお越しください。


おまけ

入口の看板は黄色いシールの上に立つと鳥たちに囲まれた写真を撮ることができます。掌に孔雀を乗せたり、肩にキジを乗せるなど楽しんで撮影していただければ幸いです。

フォトスポット

 
 

展示情報
親と子のギャラリー「トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―
平成館企画展示室 2017年4月25日(火)~6月4日(日)


関連事業

月例講演会「親と子のギャラリー『トーハクでバードウォッチング―キジやクジャク、鳳凰が勢ぞろい―』の見方と特集展示ができるまで
平成館大講堂  2017年5月27日(土) 13:30~15:00 開場は13:00を予定 
先着380名、聴講無料(ただし当日の入館料は必要)
 

カテゴリ:研究員のイチオシ教育普及特集・特別公開

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posted by 神辺知加 (ボランティア室主任研究員) at 2017年04月29日 (土)

 

幕府祈願所 霊雲寺の名宝

こんにちは、保存修復室の瀬谷愛です。


特集「幕府祈願所 霊雲寺の名宝」が始まりました!


展示風景
THE仏画!

会場は、本館2階、西側の特別2室。
ひと部屋だけですが、濃密な空間になっています。

当館の特集は、基本的に館蔵品と寄託品とで構成するのですが、今回は霊雲寺様のご厚意により、多くの寺宝を拝借することができました。
そのため、はじめに企画したときの私のイメージより、何倍も充実しています。
この機会にぜひ、たくさんの方にご覧いただきたい展示です。


霊雲寺
春が来たなァ~

ご宝物を拝借に伺ったのは、4月3日。
今年は少し遅めだった桜の花が咲き始めたころでした。

博物館から車で10分(距離は近いのですが、とにかく上野の駅前は混んでいる!)。
美術品輸送の作業員さんたちと、しばし春の訪れを味わうことができました。

霊雲寺は、文京区湯島の湯島小学校のとなりに建つ、真言宗のお寺です。
江戸時代の元禄4年(1679)5代将軍徳川綱吉の帰依を受けた、覚彦浄厳(かくげんじょうごん)が幕府祈願所として開きました。

「幕府祈願所」というのは、幕府が建立した、国家安泰や病気平癒などのための祈祷を行なう寺院のことをいいます。
浄厳は、定期的な祈禱のほかに、将軍綱吉の息女鶴姫や大名たちのために祈禱を行なったり、綱吉に経典の講説を行なうなど、多忙な日々を行なっていたことが記録からわかっています。


不動明王像
徳川綱吉筆 不動明王像 江戸時代・元禄8年(1695) 絹本墨画
将軍綱吉からは、こんなご寄進が!


綱吉は、江戸両国の回向院で法隆寺出開帳が行われた翌年の元禄8年(1695)浄厳に自筆の不動明王像を寄進しています。
同じ年には、正月・5月・9月に行なう鎮護国家の祈禱の本尊として「大元帥明王像」も寄進しましたが、こちらは関東大震災で焼失してしまいました。


両界曼荼羅図 両界曼荼羅図
両界曼荼羅図 江戸時代・17世紀 紙本着色
今回の展示のハイライトは、浄厳オリジナル両界曼荼羅です。


さて、一方で、江戸の庶民にも真言を広めようと考えた浄厳は、霊雲寺で「結縁灌頂(けちえんかんじょう)」を盛んに行ないました。
これは、目隠しをして、床に敷いた曼荼羅(壁に掛ける曼荼羅ではなく、床に敷く「敷曼荼羅」)に華(菊)を投げ、華が落ちたところに描かれる仏菩薩と結縁する儀式です。

元禄8年(1695)9月、浄厳が霊雲寺で灌頂壇を開いたところ、
30日間の結縁入壇者数は、34,442人!
毎日1,000人以上が訪れた計算になります。

そして、2年後の開壇では、21日間に89,967人が入壇したといいます。
このペースは、現在、好評開催中の特別展「茶の湯」の入館者数に匹敵します。

やるな、江戸庶民……!

こうして結縁灌頂の評判は広まり、霊雲寺は江戸の幕府と庶民になくてはならない存在となりました。
その様子は、19世紀に出版された「江戸名所図会」にも表されています。


江戸名所図会
江戸名所図会 齋藤長秋著 江戸時代・天保7年(1836)
灌頂の闇よりいでてさくら哉


中央に建つひときわ大きなお堂が、灌頂堂です。
春、霊雲寺で結縁灌頂を受け、目隠しをとって外へ出ると、明るい陽射しが桜にふりそそいでいる。
目隠しの闇とともに、仏と縁を結ぶことで心の闇も晴れた。
そんな特別な場所としての霊雲寺が、宝井其角の句に読まれています。
きっと、ここで結縁灌頂を受けた多くの人が共感できる気持ちだったことでしょう。

6月4日(日)まで。途中5月16日(火)より一部展示替えとなる作品があります。
 

関連事業
ギャラリートーク「幕府祈願所霊雲寺と開基浄厳」
2017年5月16日(火) 14:00~14:30 本館特別2室

 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 瀬谷 愛(保存修復室主任研究員) at 2017年04月27日 (木)

 

懐石のうつわ

本館14室では現在、特別展「茶の湯」の開催に合わせて、関連展示として「懐石のうつわ」(5月21日(日)まで)を特集しています。

懐石とは、茶事における食事のことです。 …ん?「茶事(ちゃじ)」?
お茶のお稽古をしている人はよくご存知でしょうが、そうでない人にはちょっとなじみのない言葉かもしれません。

茶事とは、お茶を飲むことを主目的として、人が茶室に集い、飲食を楽しむ会のことです。
季節やとり行なう時間帯によって茶事にはいくつかの種類があり、それぞれに約束事や特徴が異なります。
炭をおこすところ(炭手前)から、食事(懐石)、抹茶を飲む(濃茶、薄茶)ことまでがおよそ含まれ、この一連の流れを同席した客同士でともに過ごすことになります。(長いものでは、半日がかりにもなります。)
こうした茶事をとりしきる亭主は、客人に心ゆくまで茶を楽しんでもらうために、誠心誠意を込めて準備をし、当日もさまざまな心くばりでもてなしをするのです。

懐石では時季に合った食材選びなど、主役はあくまで料理ですが、そこで用いられるうつわも重要。
料理を引き立てつつ客人の目をも喜ばせる、大切なもてなしの道具なのです。
この特集では、懐石に用いられるうつわについて、館蔵品を中心に一堂に展示しました。


懐石では、はじめ飯椀、汁椀とともに向付(むこうづけ)と呼ばれる陶磁器に入った膾(なます)やお造りが出されます。

漆塗懐石道具、織部開扇向付
漆塗懐石道具 渡辺喜三郎作 昭和時代・20世紀、織部開扇向付 美濃 江戸時代・17世紀
懐石が漆器と陶磁器から構成されることを示しています。二つの椀の向こう側に置かれるので、「向付」です。


今回は、漆器の懐石具を代表する館蔵品として、5代中村宗哲の作品一式を展示しました。
朱に網目の模様が入った本作品は、「紀州侯より加州侯へ進ぜられし候節の好なり」(『茶道筌蹄』)という記録があり、大名家のための懐石道具でした。すべてが漆器でしつらえられ、格が重んじられています。

網絵懐石道具
網絵懐石道具 5代中村宗哲作 江戸時代・享和元年(1801)
表千家六代原叟(げんそう)好みとされています

大きなケース2つには、「桃山様式の懐石具」と「中国への注文の懐石具」を展示しました。
どちらも、安土桃山時代から江戸時代の初めにかけての茶の湯隆盛の時期に、各地の窯でさかんに作られていたもので、個性豊かな表現が見られます。
例えば、美濃の織部焼は、それまでには見られなかった破格の造形が用いられ、唐津の鉄絵の表現は飄々として伸びやかさが感じられます。
中国で明時代の末に日本からの注文で作られた古染付は、中国で注文の主題を解さないままに陶工の解釈で作り出され、もはや何を表現しているのかわからないものもあります。でもそれもまた一興。茶席を和ませます。

織部扇形蓋物
織部扇形蓋物 美濃 江戸時代・17世紀
伝統的な扇形を蓋物に作り上げています。蓋をしても、開けても楽しい作品です

古染付御所車図六角手付鉢
古染付御所車図六角手付鉢 中国・景徳鎮窯 明時代・17世紀 (広田松繁氏寄贈)
まっすぐ進めなさそうな御車に、不思議な烏帽子の人々。どこへ向かうのでしょう…



食事をすすめながら、さまざまな器のかたちや模様を楽しみ、会話を弾ませる。
茶事の懐石という形式のある場でも、同席の人と「ともに楽しむ」心は、日常の食事と変わらないのではないかと思います。

展示室では、多様な器種、文様を楽しんでいただきたく、沢山の懐石具を展示しています。
皆さんもぜひ、展示室でお気に入りのうつわを見つけてみてくださいね。
 

カテゴリ:研究員のイチオシ特集・特別公開

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posted by 横山 梓(保存修復課研究員) at 2017年04月25日 (火)