本館 14室
2017年4月18日(火) ~ 2017年5月21日(日)
懐石(かいせき)とは、茶事(ちゃじ)と呼ばれるお茶(抹茶)をふるまう会において亭主が茶事に招いた客人に提供する料理のことです。亭主は客人に心地よく過ごしてもらうために、入念な準備をし、あらゆる場面に心を配ります。茶事のメインは、濃茶薄茶(こいちゃうすちゃ)という抹茶をいただく席にありますが、懐石の席はその前に、食事を通じて主客が心を通い合わせる大切な意味合いを持ちます。
もともと、懐石の形式は「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」という質素なものにはじまりましたが、時代を経て料理の数を増やし、今日では配膳に応じて椀、向付(むこうづけ)、鉢、皿、徳利、酒盃といった多種のうつわが登場します。客人は舌だけでなく目でも料理を楽しむことになり、趣向をこらしたうつわ選びは、まさに亭主のもてなしの心の表われといえます。
懐石のうつわには、主に漆器や陶磁器が使われますが、この展示では、5代中村宗哲による漆の懐石具一式と、茶の湯で愛玩されてきた陶磁器のうつわを紹介します。黄瀬戸、志野、織部といった美濃のものや唐津のもの、古染付(こそめつけ)、祥瑞(しょんずい)といった中国への注文品などは、茶の湯が最盛期を迎えた安土桃山時代から江戸時代初期にかけて数多く作られ、今日もなお私たちを魅了します。
開催中の特別展「茶の湯」(2017年4月11日(火)~2017年6月4日(日))と合わせて、どうぞお楽しみください。