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1089ブログ

あなたが好きな龍はどれですか?(予告!特集陳列「天翔ける龍」3)

連載第3回は、東京国立博物館140周年記念特集陳列「天翔ける龍」(2012年1月2日(月・休)~1月29日(日))に関連したコンテンツ「投票」のご紹介です。

トーハクのウェブサイトでは、作品の人気投票を行う「投票」というコンテンツがあります。
過去には「梅雨時に思い出す、雨の名作ベスト10」、 「写楽展 看板役者はだれ?」といったタイトルで、特別展で展示中の作品や当館所蔵作品の人気投票を行いました。
結果は、バックナンバーのページでご覧いただけます。


今回は、特集陳列「天翔ける龍」にちなんで「トーハクの龍ベスト12」の投票を行います。
この特集陳列で展示予定の作品の中から、館職員がお気に入りの作品に投票して、12件をリストアップいたしました。

さらに、お客様に投票していただき、当館所蔵品の中で、一番人気の龍を決定したいと思います。

ご来館の予定がある方は、ぜひ、実際の展示をご覧になってから、
また、惜しくもご来館が叶わない方は、それぞれの作品の拡大画像をご覧いただいてから、 投票してください。

展示室では77件の龍の作品をご覧いただけます。
ベスト12の作品に選ばれなかったものの中でも、自分の中のお気に入りがきっとあるはずです。

ちなみに、私のお気に入りはこちら。
残念ながら予選落ちしてしまいました。

水滴 龍門の鯉
水滴 龍門の鯉 江戸時代・17~18世紀 10口のうち(2012年1月2日(月・休)~1月29日(日)展示)

「これが龍?」と思われるかもしれません。
激流を登る鯉のなかで優秀な1尾だけが龍になるという中国の言い伝えがあります。
「登龍門」という言葉は、現在も使われており、社会的地位のあるポジションをつかみ取るために乗り越えなければならない試練や関門のことをあらわす時に使われます。
鯉が滝を登る姿をモチーフにした作品は、立身出世の願いが込められているのです。
写真の鯉も、墨をする時に使う水入れ(水滴)に龍に変身しつつある鯉を表して、出世を祈願したものです。

同じく激流を登る鯉がモチーフになっている作品で、ベスト12の中に選ばれたのがこちら。
姿かたちはやはり似ていますね。比べてみると表情の違いがおもしろいです。


青花魚跳龍門香炉 中国・景徳鎮窯 明時代・17世紀 横河民輔氏寄贈
(2012年1月2日(月・休)~1月29日(日)展示)


展示室をのぞいてみると、年明けの公開に向けて着々と準備が進んでおりました。
ちょうど、私のお気に入りの龍がお目見えしている所でした。
実物を見ると、より愛着が沸いてきます。



迫力のある龍、姿の優美な龍、ユーモラスな龍。
様々な龍がいます。
皆さん、どうぞ好きなもの、そばに置きたいものを選んでみて下さい。

また、特集陳列に関連したハンズオンアクティビティ「東博龍めぐり」(2012年1月2日(月・休)、3日(火)、先着5000名)では、龍の作品を展示室で探してクイズに答えるアクティビティを行います。
展示室でも、ウェブサイトでも、皆様のお越しをお待ちしております。

カテゴリ:ウェブおすすめコンテンツ博物館に初もうでトーハク140周年

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posted by 広報室Web担当 at 2011年12月28日 (水)

 

予告!中谷美紀さんと鏡開き

2012年1月から2013年の3月まで、東京国立博物館140周年を祝って「ブンカのちからにありがとう」キャンペーンを行います。
キャンペーン期間中は特別企画展示やイベントが盛りだくさんです。

キャンペーンのトップを飾るのは、「博物館に初もうで」(2012年1月2日(月・休)~1月29日(日))。
その年の干支に関連した展示や、獅子舞や和太鼓演奏(ともに1月2日(月・休)、3日(火)開催)などの日本の伝統芸能など、日本のお正月を満喫できると毎年大盛況のイベントです。


2012年の「博物館に初もうで」はさらにスペシャルなイベントが行われます。
新しい年と開館140周年を祝い、1月2日(月・休)午前10時よりに本館前にてご来賓の方々をお迎えして鏡開きのセレモニーを実施します。

そしてなんと!スペシャルゲストには、「ブンカのちからにありがとう」キャンペーンポスターにご登場いただいた、女優の中谷美紀さんをお迎えします。
ポスター撮影のときにお会いしましたが、本当にお美しい方でいらっしゃいました!
1089ブログでも以前ご紹介したこのキャンペーンポスターはすでに駅や街中で掲出されていますが、その反響の大きさに、当館職員も驚くほどです。

 
中谷さんご登場のキャンペーンポスター

そのほか、今年は干支の辰にちなんで、浅草・金龍の舞(1月2日(月・休))の披露や、館所蔵の名品の特別公開(1月2日(月・休)~1月15日(日))などが行われます。

毎年お越しいただいている方も、初めての方も楽しめるトーハク140周年のスペシャルな「博物館に初もうで」。
ご家族そろってぜひお出かけください!

カテゴリ:博物館に初もうでトーハク140周年

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posted by 広報室Web担当 at 2011年12月23日 (金)

 

トーハクポスターに現代の見返り美人

開館140周年の記念ポスターへ女優・中谷美紀さんにご出演いただきました!
本館の中央階段を背景に振り返るシーンと、龍の絵を背にした凛と立つお姿の2バージョンです。
すでにJR上野駅などでご覧いただいて、そのインパクトを体験されている方もいらっしゃるかと思います。

「博物館に初もうで」ポスター1

当館の人気作品、菱川師宣の「見返り美人図」が本歌になっています。

「見返り美人図」
菱川師宣筆 江戸時代・17世紀(展示予定は未定)
 

「博物館に初もうで」ポスター2

中谷さんとともに写っているのは、曽我直庵が描いた龍の絵です。

龍虎図屏風のうち龍図
龍図屏風 屏風のうち 曽我直庵筆 安土桃山~江戸時代・17世紀
開館140周年記念特集陳列「天翔ける龍」2012年1月2日(月・休)~1月29日(日)展示


直庵は安土桃山時代を代表する水墨画の巨匠。対面してこの絵をみると、その圧倒的な迫力を感じることになりますが、描かれた当時この屏風は、戦国武将の背後に立てられたものかも知れません。つまり武将の威厳を象徴する絵です。それだけの強さをもつ絵なのです。この絵の力強さに拮抗できる人物はそういないでしょう。中谷さんと初めてお会いしたのは、特別展「長谷川等伯」(2010年2月23日(火)~3月22日(月)) に関連した雑誌の撮影でした。国宝「松林図屏風」と共演されたとき、中谷さんのたたずまいからあふれる優雅さは「松林図」と甲乙付け難いとその場にいた誰もが感じました。

近年は「JIN-仁-」(2009年、2011年・TBS)で花魁「野風」役を演じられるなど、演じる役の幅もますます広げられています。その多忙なお仕事の合間に、何度か東京国立博物館においで下さり、特別展や総合文化展をご覧いただきました。先人たちが遺してくれた数々の品々をご覧になるとき、中谷さんの歴史に対する真摯なお気持ちがひしひしと感じられます。それは能や茶道といった伝統文化、伝統芸能をご自身で実践され深い造詣がおありになるからでしょう。案内する側は、身の引き締まる思いもたびたびです。世界展開されるお仕事のためと思いますが、さまざまな場面で研鑽を深める中谷さんに頭が下がります。
一方で、無理にお願いして見学させていただいた「JIN」の張詰めた撮影現場では、野風さんのいでたちのまま、スタジオの食堂でおそばをご馳走してくださいました。そんな中谷さんの分け隔てのないお人柄が、皆さん魅力を感じる所以でしょう。ほんとうに拝みたくなるほどです。

ポスター撮影は、モントリオール公演後の日本凱旋舞台「猟銃」(2011年)の全国公演中にかかわらず、時間をとっていただきました。限られた時間でこれだけのクオリティのポスターが完成したのは、フォトグラファー・杉田知洋江さんの尋常ではない感性、実力とともにスタイリスト、ヘアメイクといった多くのスタッフの方々と、当館広報室の綿密な打合せによって生み出されたものでしょう。そのなかで中谷さんの類稀なプロフェッショナル魂が発揮されたのだと思います。

映画「源氏物語 千年の謎」(2011年・東宝)や、お正月から放映される「聖なる怪物たち」(2012年・テレビ朝日)といったドラマで中谷さんのご活躍をご覧いただいた方が、このポスターを目にされることで、東京国立博物館に少しでも関心を持っていただく機会になれば望外の喜びです。
ますます活躍の場を高め、広げられていく「辰女(たつおんな)」(辰年生まれのご自身談)・中谷さんとともに、皆様も天かける龍のごとく一年をお過ごしいただくよう祈念いたします。

カテゴリ:news博物館に初もうでトーハク140周年

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posted by 松嶋雅人(特別展室長) at 2011年12月20日 (火)

 

お正月こそ江戸の粋、江戸の洒落(予告!特集陳列「天翔ける龍」2) 

連載第2回は、東京国立博物館140周年記念特集陳列「天翔ける龍」(2012年1月2日(月・休)~1月29日(日))に展示される作品のご紹介です。
今回は全77件のうち、あらかじめ知っていると楽しめる、
江戸時代の作品2件を選びました。

まずはこちら、火事襦袢。
江戸時代の火消しは、吸水性に優れた木綿の刺子の襦袢を着て
火事の現場に駆けつけました。
じつはこれ、リバーシブル。表裏でずいぶん雰囲気が違います。

火事襦袢   黒木綿地波に雨龍模様刺子
火事襦袢   黒木綿地波に雨龍模様刺子 江戸時代・19世紀

火消しが現場に向かう時には刺子が施された黒い面を、
鎮火して揚々と帰ってくるときには誇らしげに翼のある応龍を描いた面を表にしました。
龍や波など水にゆかりの深い模様は、火が消えるようにと縁起を担いだのでしょう。
デザイン、使い道、そこにこめられた願い。まさに江戸の粋ですね。


続いてご紹介するのは、江戸のカレンダー。
江戸時代の暦は現代とはことなり、月の満ち欠けを基準にしていました。
新月の日を毎月の一日とし、1ヶ月が30日の“大の月”、29日の“小の月”があり
何月が大の月かは毎年変わっていました。
そこで江戸時代には新年、はがき大程度のカレンダーを交換していたのです。
そのカレンダーは、現代の私たちの慣れ親しんだカレンダーとは異なり
何月が大の月か、あるいは小の月かを、まるで暗号のように絵のなかに表し
読み解きを楽しみながらその年の月の大小を知るというもの。
これがいわゆる大小絵暦。
辰年の大小絵暦には、龍をデザインしたものもたくさんありました。


たとえばこちら。

大小暦類聚 辰年
大小暦類聚 辰年 江戸時代・18世紀より

カレンダー?と首をかしげたくなりますね。でも月の大小を示す絵暦です。
大の月が何月かが、どこに示されているのかわかりますか?
ぐぐぐっと寄ってみましょう。



そう、ここです。こんなところに文字が隠れていました。
龍の彫刻をする際の削りくずが文字になっているのです。
龍の左前脚奥に「大」の字が見えます。
つまり、この年の1(正)、2、4、6、7、9、11月が大の月。
天明4年(1784)の暦です。


それでは皆さん、こちらの絵暦を読み解いてみませんか?

大小暦類聚 
大小暦類聚辰年 江戸時代・18世紀より


上記画像部分

四角い印をみると、この暦は寛政8年(1796)の暦だとわかります。
丸い印には「銀漢よりも上は大、下は小」とあります。
「銀漢」が「天の川」だということがヒント。
わかった方は他の人には教えず、まだ黙っていてくださいね。
さあ、印から絵に目を移しましょう。
天の川の上下に星座のようなものが描かれています。
それぞれの星座を構成する星の数を数えてみると。
天の川より上に描かれた星座の星はそれぞれ2、4、7、9、11、12個。
もうわかりますね、寛政8年の大の月は2、4、7、9、11、12月です。

暦としての使いやすさよりもユーモアや頓知にあふれたデザインを競い、
その発想を楽しんでいたのでしょう。
大小絵暦には江戸の洒落がつまっているのです。

今回ご紹介した作品はどれも決して有名な作品ではありません。
けれども、江戸の粋や洒落にあふれた日常を伝える作品に私は心惹かれ
気づけば想像しているのです。
火事場から誇らしげに戻る火消しの姿、その火消しに憧れる子どもの眼。
年の暮れ、絵暦のデザインに悩むひとの後姿、読み解けずに悔しがるひとの表情。
年明けの雑踏に響く人々の明るい笑い声のなかに
こうした展示作品があったのかもしれない、と・・・
「龍」を集めた特集陳列で、江戸を感じるというのはどこか不思議ですが
龍のかたちをみるだけではなく、当時の様子やこめられた思いにも
注目してほしいと思い、あえてこの2件を紹介しました。
ほかにも様ざまな作品を展示します。
東博で迎える辰年。12年に一度のチャンスです。
ぜひお楽しみください。

カテゴリ:博物館に初もうでトーハク140周年

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posted by 川岸瀬里(教育普及室) at 2011年12月17日 (土)

 

書を楽しむ 第5回「元永本!!」

書を見るのはとても楽しいです。

より多くのみなさんに書を見る楽しさを知ってもらいたい、という願いを込めて、この「書を楽しむ」シリーズ、第5回です。

貴重な、すごい作品。
そんな作品を、トーハクでは新年に「特別公開」(2012年1月2日(月・休)~)します。
今回はその中から、「元永本」を先取りしてご紹介します。

ゲンエイボン?
と、思われた方!
なんだかよくわからなくても、
すごい、と言われる作品は、ぜったいに見ておいてください。

「元永本」とは、国宝「古今和歌集(元永本)」のことで、
元永3年(1120)の奥書があるため、ゲンエイボンと呼ばれます。

元永本1
(以下画像6枚) 国宝 古今和歌集(元永本) 上帖 平安時代・12世紀 三井高大氏寄贈
(2012年1月2日(月)~1月15日(日)展示。
展示されるのは上の画像の頁のみ)

どこがすごいのか、少しご紹介しますね。

その(1)
『古今和歌集』の和歌全部と、仮名序(仮名で書かれた序文)が書かれた、現在残っている中で一番古い作品です。

その(2)
料紙の装飾です。
「書を楽しむ」第3回で、装飾料紙のお話をしましたが、覚えていますか?
「元永本」の装飾料紙は、日本で作られた唐紙(からかみ)で、
その文様は、なんと13種類!!
さらに文様の無いページにも、金や銀の切箔や野毛が全面に散らされています。

元永本2, 3

紙は平面ですが、「元永本」の装飾料紙をじっくり見ると、立体的です。

元永本4, 5

雲母刷り(きらずり)なので、線の部分は、雲母が盛り上がっています。
雲母の文様は、見えにくい時がありますので、
そんなときはしゃがんで下から見たり、横から見たり、角度を変えてみると文字通り、キラキラ光って見えるはずです。

その(3)
筆者は、藤原定実です。
能書(のうしょ、書のうまい人)の家系で、藤原行成を祖とする世尊寺家(せそんじけ)第4代。
「元永本」はさまざまな装飾料紙を使っていますが、定実は、臨機応変に文字を散らすなどして、紙の文様と文字、そして空間とのすばらしい調和を生み出しています。

元永本6

残念ながら展示でお見せできるのは、見開きの2ページだけです。写真でいいから全部見たい、と思ったあなたは、当館ウェブサイトから「e国宝」に入っていただきますと、「元永本」は全部見られます。

でも、やはり、本物にはかないません。
本物は100%の魅力を発信しています。

本物のすごさを、ぜったいに体感してください!!
本館3室で、2012年1月2日(月・休)~1月15日(日)の、2週間限定です。

カテゴリ:書跡トーハク140周年

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posted by 恵美千鶴子(書跡・歴史室) at 2011年12月12日 (月)