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2024年新年のごあいさつ

本年1月1日に発生いたしました令和6年能登半島地震にあたり、全ての被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。

つつしんで新春のお慶びを申し上げます。皆様にとって幸多い年となりますようお祈り申し上げます。
昨年1月に、「このままでは国宝を守れない」と題し、雑誌に寄稿しました。
そこでは、令和2年に、新型感染症に対する感染拡大防止が叫ばれ、博物館の臨時休館、来館者数の激減、入館料等の大幅な収入減や光熱費の高騰など、博物館を取り巻く環境が一層厳しさを増しており、国民共有の財産を守り伝えることに危険が生じていることをお伝えさせていただきました。

寄稿後、多くの方々から寄附金や賛助会員へのお申し込みをいただき、改めて、博物館を愛する多くの皆さま方に支えていただいていることを実感した次第です。しかしながら、光熱費をはじめ物価や人件費の高騰による博物館を取り巻く環境の厳しさは変わりません。昨年、当館は創立150周年を迎えましたが、これからの150年先を見据えて博物館運営を持続可能な形で継続するために、当館の使命・役割を広く訴え続けることが重要と考えています。

今年は、当館へのご支援の方法をわかり易くするための体制作りと、海外からの来館者が急増している機会を背景に、「世界の東京国立博物館」を目指して、国内外への情報発信に力を入れて行きます。

近年のコロナ禍によるさまざまな規制が緩和され、博物館も以前の賑わいが戻ってまいりました。特に、外国から多くの方にお越しいただいております。これまで外出を控えてきた方がそろそろ行ってみようと思っていただけるよう、また日本に初めてお越しになる方に「日本といえばまずは東京国立博物館へ」と言っていただけるよう、今年も魅力ある展覧会や企画を予定しております。昨年11月から金曜土曜の閉館時間を繰り下げ、午後7時まで開館としておりますが、今年も続ける予定です。お仕事帰りにお立ち寄りいただき、日本とアジアの芸術文化に触れていただければ幸いです。

年明けは1月2日より開館し、恒例「博物館に初もうで」で2024年の幕を開けます。今年は「辰年」ということで龍をテーマにした特集「謹賀辰年―年の初めの龍づくし―」を開催いたします。力強い龍の姿をご覧いただき、皆さまにパワーがあふれる年となるよう祈念したいと思います。館内ではおめでたい意匠や風景がみられる作品も随所に展示し、新しい年を寿ぎます。恒例となりました国宝「松林図屛風」の新春特別公開もいたします。また、今年はコロナ禍で中断していた新春のイベントも4年ぶりに復活。1月2日と3日の2日間限定で、和太鼓や獅子舞などのイベントを実施、日本のお正月をお楽しみいただけます。

年明け最初の特別展は、1月16日より「本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)の大宇宙」を開催します。16世紀から17世紀という戦乱の時代に生きた多才な総合芸術家・本阿弥光悦の深淵な世界を、書画や工芸の優品の数々でご紹介いたします。そのあと23日からは建立900年 特別展「中尊寺金色堂」を行います。岩手・平泉の世界遺産である国宝の中尊寺金色堂中央壇に安置される仏像11体が揃って東京にお目見えします。実物大の超高精細な映像で再現される金色堂堂内に入るかのような体験もお楽しみください。また、例年開催する台東区立書道博物館との連携企画が今年は拡大、朝倉彫塑館、兵庫県立美術館も加わった4館連携企画となります。中国の伝統書家・呉昌碩生誕180年を記念し、当館および書道博物館では「呉昌碩の世界」を開催、「金石の交わり」のなかで築かれた呉昌碩の芸術を紹介します。

新年度となる4月16日からは、特別展「法然と極楽浄土」を開催します。今年が浄土宗開宗850年を迎えるのを機に、全国の浄土宗諸寺院等が所蔵する国宝、重要文化財を含む貴重な名宝によって浄土宗開創から江戸時代までの発展の歴史をたどります。
6月25日からは特別企画として「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」を開催します。現代美術家が当館収蔵品から選んだ考古遺物と作家自身の作品で構成する空間作品を敷地内の3か所に設置、皆さまに新たな鑑賞体験を提供いたします。続く7月17日からは、創建1200年記念 特別展「神護寺―空海と真言密教のはじまり」を開催。国宝「両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)」をはじめ、空海ゆかりの寺である京都・神護寺にまつわる至宝の数々をご紹介します。
秋には当館蔵のはにわ「挂甲の武人」の国宝指定50周年を記念して「はにわ」展を開催します。人物、動物、器物など当時の生活の様子がわかるはにわの優品が勢ぞろい、古代の暮らしを垣間見るような楽しい展覧会です。
恒例の「博物館でアジアの旅」は「アジアのおしゃれ」をテーマに、衣服やアクセサリーなどアジア各地の多彩なファッションを楽しめる展示となります。
このほか、庭園散策やTOHAKU茶館など、さまざまなイベント等により、皆さまそれぞれに博物館をご利用、お楽しみいただけるよう尽力してまいります。

一方、来館することが難しい方にも博物館をご利用いただけるよう、オンラインでの取り組みも充実してまいります。ギャラリートークなど動画配信や文化財に親しんでいただけるデジタルコンテンツ開発も積極的に進める所存です。
多くの幅広い層の皆さまが「多様な楽しみ方ができる博物館」を目指してまいります。

多くの来館者で賑わう日常が戻る中、国民共有の財産を未来に引き継ぐために、職員一同、龍の如く、飛躍の一年となるよう尽力いたします。

今年も東京国立博物館をよろしくお願いいたします。

令和6年1月1日
東京国立博物館長 藤原誠

 

 

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posted by 藤原誠(館長) at 2024年01月01日 (月)