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連歌懐紙とやまと絵

特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」(10月11日(水)~12月3日(日))では、現在、四大絵巻を一同に展示していますが、ご覧いただけたでしょうか。
本展では、書の料紙装飾も「やまと絵」と比較しながらご紹介しています。室町時代・15世紀以降になると、連歌懐紙の料紙下絵が華やかに描かれるようになりました。


法楽歌仙連歌懐紙 初折
室町時代 応永30年(1423) 愛知・熱田神宮
展示期間:10月11日(水)~11月5日(日)
二紙を半期で展示します。二折は11月7日(火)~12月3日(日)まで展示します。

これは、応永30年(1423)11月13日に熱田神宮(愛知)で行われた法楽連歌を記した懐紙です。
本来はこれを横に半分に折って表と裏で見るものですので、下半分が天地逆に描かれています。上端と中ほどにそれぞれ金銀の揉み箔が撒かれていて、金銀泥などを使って下絵が施されています。
雲に少し隠れた金色の太陽と山と田舎屋、川で舟をこぐ人物も見えます。その先にある鳥居と松は神様を暗示していると考えられます。下半分には鶴と、笹が拡大して描かれています。この下絵は、以後に作られる連歌懐紙の下絵とは違い独特の雰囲気を持っています。
このあと16世紀に入ると連歌懐紙の下絵はおおらかな画風となります。


大原野千句連歌懐紙 第十帖
細川藤孝筆 室町時代 元亀2年(1571) 京都・勝持寺
展示期間:10月11日(水)~11月5日(日)
左側にいる蛙をさがしてみてください。


これは、元亀2年(1571)2月5日~7日、勝持寺(京都)で行われた千句連歌を、細川藤孝(幽斎、1534~1610)が清書した懐紙です。勝持寺は、現在も「花の寺」と呼ばれますが、「西行桜」をはじめ桜の名所として有名です。この千句連歌では、最初に「花」を詠む決まり事となっていたため、中央に桜が大きく描かれています。
この懐紙の下絵は、連歌で詠まれた内容に対応しています。そのため、「袖ふれて花の香とりの宮居哉(三大)」「藤なみこゆる露の玉垣(白)」「雨そそく池の蛙のうかひ出て(紹巴)」にあわせて、桜を中心に、右側に藤、鳥居と玉垣、伏籠、左側に雨と池から顔をのぞかす蛙が表されています。鳥居と玉垣は、勝持寺と歴史上深い関係にあった古社・大原野神社を示していると考えられます。
のびのびとした描線で楽し気にも見える下絵は、この時代の連歌懐紙の特徴ともいえます。それは、時代とともに変化した「やまと絵」の影響を受けているのではないでしょうか。

ぜひ、書の料紙下絵も注目して、特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」をご覧ください。

 

カテゴリ:「やまと絵」

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posted by 惠美 千鶴子(客員研究員) at 2023年10月18日 (水)