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1089ブログ

魏・蜀・呉ってどんなとこだほ?

ほほーい! ぼくトーハクくん。今日は、市元研究員が見どころを紹介してくれるっていうから、特別展「三国志」の会場に遊びにきたほ!
市元さんよろしくだほ!

特別展「三国志」会場。奥に見えるのは関羽像(新郷市博物館蔵)です

よろしく。ところでトーハクくん、三国志に出てくる魏・蜀・呉って聞いたことあるかい?

ぎ・しょく・ご?

そう、どんなところだったかって知ってる?

うーん、三国志ってだいたい戦ってばかりいる感じで、それぞれの国のことまではイメージ沸かないほ。

そっか(笑)。今回の特別展「三国志」では、魏・蜀・呉がどのような国だったのかを知ることができる出土品を、色々見ることができるんだよ。

ほほ!

今日は、俑(よう)というお墓の副葬品として作られた人形や動物の模型を見て、実際に魏・蜀・呉を感じてみよう。

なんだかワクワクだほ!


儀仗俑(ぎじょうよう)
青銅製 後漢時代・2~3世紀
1969年、甘粛省武威市雷台墓出土
甘粛省博物館蔵



はじめに三国時代の前にあたる、漢時代の俑を見てみよう。
これは儀仗俑といって馬車と牛車の隊列を矛(ほこ)や戟(げき)で武装した騎兵が警護する様子を表した俑だよ。

本物そっくりだほ!

俑などの副葬品は生前の生活が死後も続くようにと作られるんだけど、漢時代のものは写実的なのが特徴。しかも、バランスよく作られていて、ちょっとやそっとじゃ倒れないんだよ。


体は立体的ですが、腕は平べったいです

この歩いている人の腕は本物っぽくないほ。

ちょっとおもしろいよね。腕だけを平べったく作ることに何か意味があったのかもしれないね。

うん。それでこれが三国時代になるとどうなるほ?

はいはい、それじゃあ、三国のうち、まずは呉を見ていこう。


武士俑(ぶしよう)
土製 三国時代(呉)・3世紀
1999年、湖北省赤壁市蘆林畈1号墓出土
赤壁市博物館蔵


これは、武士俑って言うよ。武士だから頭に冑(かぶと)をかぶってる。

ほー、ぼくにちょっと似てる! 市元さん、俑とぼく(埴輪)ってどう違うほ?



俑も埴輪もお墓の副葬品として作られたものだけど、埴輪はお墓の上や周りに並べるのに対して、俑はお墓の中に並べるんだよ。

ほほー。お家の中と外の違いかほ。

お家の模型もお墓のなかにいれるから、まあ考え方の違いなんだろうね。
他にも、こんなに色々な俑があるんだ。役割を細かく分けて仕事をしていたことが分かるね。


俑(よう)
青磁 三国時代(呉)・3世紀
2001年、湖北省武漢市黄陂区蔡塘角1号墓出土
武漢博物館蔵


ほー、なんか、心なしかみんな真面目な顔してるほ。

呉は経済的に発展していた国だったけれど、この俑たちのように真面目な人々が支えていたんだろうね。
トーハクくんも働くなら呉がいいと思うよ。

 ぼくはトーハクで十分だほ。


一級文物 牛車(ぎっしゃ)
青磁 三国時代(呉)・3世紀
2006年、江蘇省南京市江寧区上坊1号墓出土
南京市博物総館蔵


一方でこの牛車の模型は、一見シンプルだけど牛の顔から車輪まで特徴をよくとらえて丁寧につくられていることが分かる。
シンプルだけど手を抜かない。これも呉の特徴だね。

うん。牛の足の形とかもく見るとしっかりしてるほ。

そうでしょ。さて、次は蜀を見ていこう。


説唱俑(せっしょうよう)
土製 後漢~三国時代(蜀)・2~3世紀
重慶市忠県花灯墳墓群11号墓出土
重慶中国三峡博物館蔵



調理俑(ちょうりよう)
土製 後漢~三国時代(蜀)・2~3世紀
重慶市三峡庫区出土
重慶中国三峡博物館蔵



舞踏俑(ぶとうよう)(右)
石製 後漢~三国時代(蜀)・2~3世紀 重慶市出土 四川博物院蔵
舞踏俑(左)
石製 後漢~三国時代(蜀)・2~3世紀 重慶市出土 重慶中国三峡博物館蔵


みんなニコニコ、なんかポーズも決まってるほ。

ホントいい笑顔だよね。蜀の人々の穏やかな気風が伝わってくるでしょ。
蜀は動物の模型もぜひ見てほしいな。


一級文物 犬
土製 後漢~三国時代(蜀)・2~3世紀
1957年、四川省成都市天迴山3号墓出土
四川博物院蔵


今にも動きだしそうだほ! ちょっと怖いほ~。

躍動感があって生き生きとしているね。呉は見たものの特徴をそのまま再現するけど、蜀はそれに加えてアーティスティックでクリエイティブな表現をする。

ほほー。アーティスティックでクリエイティブ!(ちょっと何言ってるかわからないほ)。

実在しない架空のものでも、生き生きとしているんだ。


揺銭樹台座(ようせんじゅだいざ)
後漢~三国時代(蜀)・3世紀
2012年、重慶市豊都県林口墓地2号墓出土
重慶市文化遺産研究院蔵


これは揺銭樹台座といって金のなる木を取り付ける台座だよ。この怪獣の顔とかユーモアがあって、なかなかいいよね。

怪獣のほかにも、鳥とか龍とかいろいろあるほ。

もう、アーティスティックでクリエイティブで、さらにファンタジックだね!

うんうん。あーでこーで、さらにファンタジックだほ!

トーハクくん、ちょっと馬鹿にしてるよね。

 やだなー、そんなことないほー。

気を取り直して、それでは最後の魏を見ていこう。


侍俑(じよう)
土製 後漢~三国時代(魏)・3世紀
2008~09年、河南省安陽市曹操高陵出土
河南省文物考古研究院蔵


この侍俑は魏の王、曹操(そうそう)のお墓、曹操高陵(そうそうこうりょう)から出土したものだよ。ちなみに女性だよ。

……なんていったらいいかわからないほ。

トーハクくんの気持ち、わかるよ。シンプルなうえ、呉と違って作りが雑なんだよね。前後の合わせ型で作ったものなんだけど、合わせ目のバリがそのままのこっててちょっと粗雑。

鼻もぺたんこだほ。

ぺたんこだね(笑)。
こっちにある曹操の息子の曹植(そうしょく)のお墓から出土した動物の模型を見てみて。水鳥、鶏、そして犬。


水鳥、鶏、犬(みずどり、にわとり、いぬ)
土製 三国時代(魏)・3世紀
1951年、山東省聊城市東阿県曹植墓出土
東阿県文物管理所蔵


……シュールだほ。ある意味、芸術的……。

同感、シュールで芸術的。侍俑のような雑さはないけど。

どうして魏の副葬品はこんなにシンプルなんだほ?

曹操の残した遺言が影響しているんだ。

どういうことだほ?

曹操は質素倹約を重んじていて、「自分の葬儀は手厚くするな」と遺言をのこしたんだ。

えー! すっごく偉い人なのに! なぜだほ!?

曹操はおそらく、それまでの漢王朝の秩序をかえて、新しい国の体制を築こうとしたんだと思う。手厚い葬儀にするとそれだけ手間がかかる、その手間を新しい国をつくっていくことに使いたかったんじゃないかと。

え、ちょっといい話だほ。なんだか曹操、ステキだほー!

どうだい、トーハクくん。こんな具合に、小説や歴史書だけじゃわからないことが、実際の出土品から読み解くことができるんだ。
まさに「リアル三国志」の世界だね。

うん、最高の世界なんだほ。ぼく、広報大使やっててよかったほ。



 特別展「三国志」は9月16日(月・祝)までです。ぜひ足をお運びください!(来てほー!)
 

特別展「三国志」チラシ

 

日中文化交流協定締結40周年記念
特別展「三国志」

2019年7月9日(火)~9月16日(月・祝)
平成館 特別展示室

 

特別展「三国志」チラシ

日中文化交流協定締結40周年記念 特別展「三国志」
2019年7月9日(火)~9月16日(月・祝)
平成館 特別展示室
 

 

カテゴリ:考古2019年度の特別展

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posted by 市元塁(東洋室) at 2019年08月26日 (月)